"強化蘇生"~死ぬ度に強くなって蘇るスキル~

ハヤサマ

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強化蘇生【リバイバル】

老気横秋のインフェクション

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「...............は?」

 果たして誰の発した声であったか。その詳細は分からなかったが、確かにその間抜けた声は、ここにいるクラスメイト全員の総意を表したものに違いなかった。

 訳が分からない。いきなり年寄りのお爺さんが扉の外から現れて、“勇者”だの“世界を救う”だのと宣ったのだから。

 すると一目で高貴な位の人間だと思わせる豪奢な衣服を纏った老人は、呆然とする異世界出身の高校生達の姿を見て、「言葉が通じなかったのか?」という神妙な顔をし、後方に控える従者達に手で合図を送った後、再度一糸乱れぬタイミングで話した。


 「「「「ようこそおいでくださいました。真の勇者様方。どうか我らの世界をお救いくださいませ。」」」」」


「..........えっ?いやいや、どういうこと?」

 呆気にとられる龍二。他のクラスメイトも同じようにぽかん、口を開けている。すると老人はやはり、ついさっき行ったのと全く同じ予備動作を繰り返した後、


「「「「「ようこそおいでくださいました。真の勇者様方。どうか我らの世「もういいよ!?」


 壊れた蓄音機のように同じ文章をリピートする怪しげな集団にしびれを切らして、美琴が思わずツッコんでしまった。

 はっ、と両手で口を塞ぐようにして噤むが時既に遅し。明らかに高尚そうな気品を纏う老人率いる怪しい集団の視線が一気に彼女一人に注がれる。

「ひぃっ!? すいませんでした私が悪かったです何でもしますだから食べないでっ!」

 臆病な彼女がその視線に耐えきられるはずもなく、呪詛のように謝罪の念を一息に綴った美琴はそれきり唯の後ろ隠れて小さくなってしまう。

「あー、その、あなた達なの?私たちをこんなところに連れてきたのは。何か分かるように説明してほしいんだけど」

 誰一人その口から言葉を発することが出来ずにいた状態で、勇敢にもそう言い放ったのは唯である。背後に小さくなって怯えている美琴を背負っているからなのか、子を守る母のように老人に向けて問いかける。

 美琴は「唯ちゃん.....」と白馬の王子様でも見たかのように頬を赤らめている。すると老人は一瞬、びっくりしたように目を見開いたが、すぐに平静を取り戻した様子で口を開いた。

「これは失礼しました。真の勇者様方。こちらの世界の言葉が通じるようで手間が省けました。紹介が遅れましたが、この老骨めは名を、【アルンセリア・L・ハワード】と申します。以後お見知りおきを。そして仰る通り、私があなた方をここに召喚した張本人です。」

 堂々と誘拐宣言をする目の前に老人に呆気にとられているせいで、誰も二の句が継げない。

「いきなりこのようなところに連れてこられて、皆さんさぞ困惑されていることだと思いますが、急いては事を仕損じると申しますように、焦燥感に駆られていてはかえって混乱を招いてしまう。とりあえずは、こちらで用意させていただいたおもてなしを受けてからでも遅くはないとこの年寄りは考え申し上げますが、いかがでしょうか?」

 ハワードと名乗った男は、龍二達を諭すように捲し立てた。

 まるで話している最中に横槍を入れられないようにしているかの如く、老人が早口で説明を開始したので、クラスメイトの半分くらいはハワードの説明について行けていない。

 唯や千里など、聡く老人の話に意識を注いでいた残りの半分も、表情を殆ど変えずに皺だらけの唇のみを震わせて言葉を紡がれたせいで、その内容は大方把握しつつも老人の意図が理解できない。

 拉致があかない問答に、龍二が核心に触れる問いかけをする。

「っあなた達の目的はなんなんだッ」

 老人は何食わぬようすで龍二のいる方向を見やり、彼の糾問にも声色一つ変えずに答えた。

「先ほども申し上げたように、あなた達真の勇者様にこの世界を救っていただくためでございます。このままでは、悪しき魔王にこのアルンセリアが滅ぼされる日も近いのです。その打開策として、王国首脳会談で異世界から強大な力を持った勇者様をお喚びし、この国を滅亡に追い込まんとする魔王を倒していただこうという結論に至った次第でございます」


 話が怒濤の展開すぎてだれも何と言ったら良いのか分からない。

 そんな中、これまで殆ど話について来れず、イライラとしていた藤本が我慢の限界が来たのか、ついにその大きな口を開く。

「ふざッけんじゃねぇよ!このジジイが、お前らの世界の事情なんてこちとらどうだっていいんだよ!とにかく俺を元の世界に帰しやがれ!」

 “俺達”ではなく“俺”と言ってしまう点が引っ掛かるが、クラスの意向もだいたいそんな感じであり、藤本の暴言は今まで口を閉ざしていた他の生徒たちの引き金になった訳で。

「.....そうだよ!こんなところに連れてくるなんて、 おかしいでしょ!私たちを早く家に帰してよ!」
「そうだ!そうだ!元の世界に戻せ!!」
「こんな拉致紛いのことをして、タダで許されると思っているのか!」

 拐かされたことに生徒たちが次々と非難の声を上げる。最初は一人、二人が放っただけだった苦言は次第にその波紋を広げてざわつきと呼べる大きさなり更に、いつしか“帰せ”コールが巻き起こるほどの規模になっていく。


  かーえーせ!! かーえーせ!!


 龍二、唯、美琴、千里を除いたほとんどの生徒がその掛け声に便乗し、足で地団駄を踏むことでドンッ、ドンッと地響きを鳴らしながら、煩わしくなるほどコールが大きくなる。
 が、直後、彼らは冷水を浴びせられたように静まり返ることとなる。






 「ーーーーーー愚か者が、鎮まりなさい。」


 それは、老人が放った一言であった。

 決して大きな声で言った訳ではなく、むしろ呟くような、傍に控えている従者に届かせるためだけに放たれたぐらいの音量。

 しかし、その声は喧しく騒いでいた生徒たち全員に響き渡り、一人の例外もなく有無を言わさず黙らせる結果となった。
 
 そして、

 予兆は無かった。本当にふとした拍子に、それは起こった。



ーーー眼前の老人から、総毛立つような尋常ならざる覇気が滝のように溢れ出したのだ。

 一同、赤黒い気の奔流が幻視されるほどの猛々しい侠気のうねりに、体が硬直することを余儀なくされる。

 ハワードと名乗る老人の覇気が留まることを知らないように巨大に膨れ上がり、空気がヒリつく。否応なしに肌が粟立つほどの闘気がそこら中に溢れ、生徒の内数名はその迸るハワードの戦鬼を思わせるような覇気に身を蹌踉けさせている。美琴に至っては「あふぅぅぅ」と気絶寸前といった様子だ。

 それは龍二や唯とて例外ではなく、圧倒的な支配者の存在をどうしようもなく感受されられ、身の危険どころか一瞬ではあるが、死すら垣間見えたほどだ。

 そして、その発信源であるところの老人、ハワードが静かに、されど誰の胸をも強く叩くような語勢で言葉を紡いだ。

「落ち着きなさい。若者よ。感情的になってはいけない。怒りからは何も生まれない。憤懣からは何も芽生えない。目先の情動に囚われてはいけない。落ち着き、冷静に、冷徹に、泰然と自若をもって、ものを考えるのだ。道を切り拓くのには、そういった力が不可欠なものとなる。それが魔王討伐ほどの大業となれば、よほどの覚悟と意思がなければ成し得ない。揺るがぬ意思を持つのだ。己の感情に左右されないほど、山のように大きく、岩のようかたい、そういった意思を持つのだ。さすれば道は自ずと開こうぞ」



 ゴクリ、と生唾を呑む音が聞こえた。

 口調が先ほどの畏まったようなそれとは打って変わって、偉人の格言のような、古風で硬派なものとなっている。それが余計に生徒たちの心に響く結果となり、生徒の内何人かはそれらを瞬時に一言一句暗記してしまうほど、その言葉はするりと胸の内に浸透していった。

 ハワードがそう言い終わると同時、禍々しく放たれていた覇気は、その役割を終えたかのようにスッ、となりを潜めていく。

 目の前には、先ほどまで鬼気迫る闘気を撒き散らしたとはどう転んでも思えないような華奢な老人と、一連の流れの際にも一切微動だにしなかった老人の従者だけが残っていた。

 その事実に、安堵の溜息を盛大に漏らしながらドサーッ、と龍二たちが雪崩でも起こしたかのように床に力なく座り込んでいく。

「皆さんの示威を裁截るために止むを得なかったとはいえ、本来こちらから大きなお願いをしている勇者様方を恐慌させてしまったのは事実。どうかこの老獪めをお許しください。」

 その様子を見たハワードは謝罪を口にするが、その口角は密かに愉しげに曲がっている。まるで初めからこうなることが分かっていて、結果が予想通りにことが運んだときの満足を感じたような笑みだった。


 そしてハワードは、彼の従者に二、三言だけ口添えした後、十数人いる従者たちが海を割ったように左右へ掃け、その真ん中を通るようにして扉の奥へと消えていった。そうしてハワードの姿が完全に見えなくなった後、残った従者の内、口添えを受けた一人がハワードの代わりに龍二達に向けて言った。

 「皆様方を召喚するに至った過程や詳細は、後ほどおいおいと語っていきますので、今はどうか落ち着いて聞いてください。これより真の勇者様方を迎えるための歓迎式を行いますので、扉から少し進んで左手に見える控え室でしばしの休憩をお取りください。部下の一人に案内させます。」

 ハワードの鬼のような覇気を見せつけられた龍二たちは、その従者の言葉通りに行動する他なかった。






「........................おトイレ、どこですかぁ.....ッ!」

 ただ一人、この世の終わりのような表情をする美琴を除いて。
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