冥界の仕事人

ひろろ

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第ニ章: 見習い準備中

やる気はある!

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 パタパタ パタパタ……

 さすがに疲れた、ハー、ハー。


  第7の門を出てから、下りスタッフ専用通路をがむしゃらに飛んで来たのだ。


 気持ちが沈み過ぎて、飛ぶ気力が落ちてしまったようだ。


 ちょっと下に降りて、休もう……。


 三途の川が見えているから、ここは第2の門付近か……。


 ダツエ婆の所で、お姉ちゃんと一緒にこき使われたよな……。


 道端に座って休憩するが、気を抜くと涙が出てくる。


「オストリーッチ!」


「うん?スワンさん?」


  後方上空から、レイラを乗せたスワンがやって来た。


「どうしたんだ?」

 スワンとレイラが心配して側に来た。


「任務完了して、ここまで一気に飛んできたから、休憩しています、ヒック」


「もしや、泣いているのですか?我々は、目的任務を果たし、速やかに第1の門へと帰還した上で、任務完了となるのです。

 オストリッチは、まだ帰る途中ですから、任務完了していません!


 それに、何故泣いているのですか?

 まさか、別れて寂しいという理由ではないでしょうね?

 任務に私情を挟んではなりません!

 道先案内人の心得で、聞いたはずですが?

 だいたい、オストリッチは……」


「スワンさん、それくらいにしてあげましょう。さあ、帰りましょうか」


「はい、レイラさん。オストリッチも すぐに来なさい。先に行きますよ」


 また、スワンさんに叱られちゃった。


 第1の門に帰って任務完了となるのかーって、僕、任務完了していないの?


  僕は、一人前の道先案内人なんだから 、早く帰らなくっちゃ!


 そうして、秦広王の待つ第1の門へ帰って行ったのである。

……………

「とーしーみーちーさーん!居ませんかー?」

 あおいは、天界に到着してから、暇を持て余している。


「おはようございます、あおいさん。

 元気がいいですね」


「おはようございます、利通さん!

 昨日、話していた天界事務所に行きたくて……場所を教えて貰えませんか?」


 せせらぎ川からの帰り道に色々な事を教えて貰っていた。


「では、一緒に参りましょうか」


 公園の小川が流れている奥へと行く。

 乗ってきた舟は、もう無くなっていた。

「あおいさん、着きましたよ!
 あの建物に天界到着ロビーと事務所があります」

 
 利通と別れ、1人で中に入る。

中は、ホテルのロビーを思わせる造りだ。フロントがあって、黒のパンツスーツの女性スタッフが2名座っていた。

 フロントの向かい側にエレベーターが2機あった。

 きっと、どちらかに乗って来るはずだったのだろう。

「どうかなさいましたか?」

 キョロキョロしているから、スタッフから声を掛けられた。


「天界事務所に行きたいのですが……」


 利通から、事務所で登録すれば仕事をする事が出来ると聞き、早速、登録にきたのであった。

……………

「あおいさん、今日も早いですね!
 行ってらっしゃい」


「はい!行ってきまーす」


 事務所から支給されたポシェットにメモ帳とペンが入っている。


 登録して直ぐに働ける訳では無くて、冥界の勉強をしなければならず、本日も講習会である。


 仕事を始めたい希望者が他に3人いて、あおいより先に決められた単位を取得していた。


「皆さん、おはようございます。

 講師のユキトです。

 本日は、第7の門についてお話しします」


 今日の講師は、まあまあ若い男性だな。


「……には、3つの鳥居があって、死者たちが自分で選んで入ることになっています。ですが、死者の背中に判決の札を貼っているので、足が勝手に判決通りの鳥居をくぐるようになっています。


  その背中に札を付ける役は、スタッフです。

 緑札の人は、怖い事もあるので注意して下さい」


 あおいは、前にあるホワイトボードの文字を写す事に精一杯で、話しは入って来ない状態であった。



「……地区担当の死神が流れてきた札をすくい、このモバイルリストでデーターを読み取り、そのデーターをグループ調査員へと送信します」


 うん?死神って言った?

 聞いていなかったから、分からない!


「このモバイルリストは、実物です。
 見えますか?」


 うん、見たことある!


 優さんが持っていたもの!


「要するに死神が死亡予定者のデーターを各調査員へと送信するという事です。

  死神がすくった札が今、皆さんに付いている札なのです」

「はー、なるほど、そうですか!」と誰かが言った。

 
「それからは、あなた方がご存知だと思いますが、死神がやって来て、その後に調査員が来ましたね?」


 確かにそうだった……。


 知らない死神さんと調査員さんが来たんだよね……。


「ここからが本題です。

 生命いのちの泉で消えた蝋燭ろうそくを集める仕事があります。

 これは、簡単そうで難しいのです。

 万が一、他の蝋燭を消してしまう事があったら、その方は亡くなってしまいます!

 もしも、その職につく方がいたら、慎重にお願いします」


 生命の泉?って何?


 蝋燭?って何の事?


 ヤバイ!聞いていなかった……。


 まあ、その仕事は絶対に向いていないな……。


「本日は、これで終了です。明日は最後で、この天界について です。あっ、あおいさんは、まだまだ頑張りましょうね」


「はい、頑張ります」


 覚える事が沢山あるし大変だ!


 勉強は苦手だけど、やる事がある方がいいから、頑張ろう!

 でも、復習は水汲みの後にしようっと!


 1人で森の中に入った……。

 森の中は、冷んやりしている。

「ちょっと暗くて、怖いなぁ」


 トッキョキョカキョク……


 鳥が大きな声で囀っているが、姿は見えない。


 その声にもびくびくしながら歩き、明るい場所に出て、ホッとした時だった。


 立ち入り禁止区域の方向から、声が聞こえてきたのだ!


 あおいは何故か、まずいと思い大きな岩の陰に隠れた。


 悪い事はしていないが、反射的に隠れてしまっていたのだった……。


「何しているの?」


 しまった!見つかった……!
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