冥界の仕事人

ひろろ

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第三章: 見習い仕事人

仕事始め

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   冥界事務センターには、3つの部署があるが、鬼の威圧感が半端ないので、センター裏側に警備部を置き、出入りは別にしている。


 よって、事務所と呼ばれる部屋は、3分の2を職員が多い事務部で使用し、残りの3分の1をメンテナンス部で使用しているのであった。

事務所に入ってすぐが事務部で、あおいが担当するのは、到着ロビー係りである。

「着替えてきました」

 事務センター事務部職員の女性ユニホームは、黒のパンツスーツにすみれ色のスカーフに黒の靴である。


 胸には、“あおい”のネームプレートをつけていた。

「あおいさん、今いる到着ロビー係りの職員を紹介します」

 サクッと10人を紹介されたが、直ぐに覚えられない!

 先ず、私の教育係りは60代に見える女性のユウコさん。

 次は、見たことのある若い女性、1番若そうなユウカさん。

 もう1人見たことのある3、40代に見える女性のユウミさん。

 イケメン男子のユウキさん。

  迫力の体形の男性、ユウゾウさん。

 眼鏡を掛けた50代くらいの男性ユウジさん。


 独特の覚え方で6人の名前を覚えたが、あとはネームプレートを盗み見ようと思うあおいであった。


 皆が仕事に戻った後、ユウコから死者が冥界に来るまでを質問された。

「えっと、死神が予定者の所に行って、札を額に貼ってきて、その後に調査員が予定者の人間界 行いデーターを取って、冥界に送る。

それから、調査員が予定者をエレベーターに乗せる……でいいですか?」


「はい、その通りです!

 その後からは、我々の仕事となります。

 ここには、全ての札の方々がやって来ます。

 常に緊張感を持ちながら、臨機応変に対応してゆかなければなりません」


「暫くは この研修中のバッチを付けて下さいね、はい、どうぞ」

 あおいは、研修中を付けて見習い人となったのであった。

「先程、が冥界に来るまで……と私は質問しましたね。

 ところが、あなたは予定者と言いました。

 素晴らしい、よく勉強をしましたね!

 そうなのです。正確には、このロビーの外に出るまでは、予定者なのです。

 ただ、ほとんどの方が完全に亡くなってやって来る為、我々は死者と呼んでいるのです。

 仕事の都合上で、これからも死者と呼びます、ご注意下さいね」


「え……と、天界のユキト先生が話した通りに答えただけなんですけど……えっ!ロビーから出ないと死んでいないんですか?

 マジで?あっ、いえ、本当ですか?
ひょー!びっくり」


 あ……意味も知らず、言っただけかい!

何が “ひょー"だ!感心して損したわ!

 これは、ユウコの心の声である。

「極たまに、数年に一度くらいな感じで、ロビーから人間界に戻る方がいますからね」

「それって、メディアとかで臨死体験とかって、言われるやつですか?」


「メディア?あー、そうかもしれませんねぇ」

 まったく!若い者は、訳の分からんカタカナ言葉をすぐ使う!

 この娘をさっさと仕込んで一人前にして、そろそろ私が天界に行ってゆっくりしたいと考えているが、どうなることやら。


「間もなく5名到着します。

  白、5です。3名出動」

 ユウゾウさんが、突然、言った。

「ユウコ班行きます!
 さっ、あおいさんも来て」

 ユウカ、ユウミも同じ班だ。

 ユウコは、机に置いてあった電子手帳の様な物を首から提げた。

「あおいさん、エレベーターが着いたら、中から外へ出るように言いなさい。

 もたもたしていると、次の団体が来ちゃうから!皆んなも急いで!」

「今から来るのは白札が5人だから、そんなに心配はいらないはずよ」

 優しく声を掛けてくれたのは30代くらい?のユウミさんだ。
 よく見たら、40代より若そうだ。

「はい、これで誘導してね!」

 ユウカさんが拡声器を渡してくれた。
 私よりは年上なんだろうな。

「はいっ、来るよっ!準備して!」

ユウコさんが大きな声で言って、その場は緊張感に包まれた。

 その後すぐ、エレベーターが到着した。

 到着して、事務所の方からアナウンスをして、本人確認を行う。

「今日は、ユウゾウさんが司令とアナウンス担当です。エレベーターの中で、必ず本人確認をします。

 本人ならば、ドアを開けます」

 左右、3機、2機が到着し、ドアが開いた。

「さあ、外へ出て下さい!早く! 躊躇ためらわないで!出て!」

 拡声器を使って、あちこちに言って歩く。

 なかなか出ないとリモコンをエレベーターへと向け、ボタンを押す。

 すると、エレベーターの背後から強風が吹き、押し出される仕組みとなっている。

 皆、それぞれポケットに入れて持っていたのだった。

 私がここに着いた時、強風で押し出されたのは、これのせいだったのか!


 冥界に着いたばかりの人は、本当に不安しかないのだ。

 全員、キョロキョロしている!

 その気持ち、よくわかります!とあおいは思うのだった。

「あおいさん、瞬時に札の色を確かめて!ぼやっと色がにじんでいるように見えるでしょ?」

 
「えー!ユウコさん わかりません!滲んでいるようには、見えません」


「見慣れていけば、分かるようになるわよ!髪を上げてもらって、確かめて」


 それから、死者を集めて簡単に説明して、ロビーから受付へと案内をする。

 何だ、割と簡単な仕事だ!
 言う言葉を覚えれば、私、できるじゃん!

 4人で事務所に戻って、すぐに司令が入った。
 
「間もなく、深緑色3、緑2、白5です。
 
 7名プラスあおいさん出動!」

「ユウキ班、ユウジ班、出動して下さい!あおいさんが見習いなので、ユウコさんもお願いします」

「承知しました」

 深緑札と緑札の人がやって来るせいなのか、到着ロビーは張り詰めた空気が漂っている。


「あおいさんは、白札の人の所に行きなさい!

 エレベーターの扉の上の方に赤ランプが点灯しているのが、緑札だという印です。

 深緑札は、緑札に属しているので、どちらかが乗っているということです。


深緑色の札の人は、殺人や強盗とか凶悪犯の場合があるから、注意して」


「もう、来るぞ!

 皆んな、気を引き締めてな!」

 眼鏡のユウジさんが声を掛けた。

 
 左右に5機ずつエレベーターが到着した。

 深緑、緑札の人たちは、すんなりと外へでてきた。

あおいは、言われた通り白札の人の方に行って、声を掛ける。

「こちらは、冥界到着ロビーです。

 さあ、出て下さい。

  早く出ましょう!」

「よう、おっさん!ねーちゃんが出ろって言ってんぞ!

 もたもた、してねーで早よ、出ろさー」

 あおいに気がついた中年のおじさんがエレベーターの中の人に向かって言った!

 この人、緑札だ!どうしよう……

 「あっ、すみません 。ありがとうございます。大丈夫ですから……あちらの方に集まって下さい」

「ねーちゃん、若いねー!
 今、いくつ?肌がぴちぴちしていて、いいなぁ」

 そう言って、あおいの肩に手を回す。

「はい、その手を退けなさい!

 ここは、冥界 死者の国です。

 あなたは、これから裁きを受ける身です。

 冥界職員に無礼を働き、罪を重くするのは、損だと思いませんか。

 あちらへお集まり下さい」

 緑札の中年のおじさんは、チエッと舌打ちをし、ユウキが呼ぶ方へ向かった。

 あおいは、エレベーターの中で狼狽うろたえる白札の死者に出るように再度、促し出てもらった。

 死者たちは冥界の説明を聞いていた。

その時、20代後半に見える女性の額から、白札がはらはらと落ちたのだ。

 あおいが白札を拾うとユウコが側へやって来た。


 「今から、消えたエレベーターを1機戻します。

 札が取れてしまった方は、人間界に戻るのです。

 生き返るのです。

 あおいさん、そっと あの女性を連れて来て下さい。他の人に気がつかれないようにね」

ユウコが小さな声で話した。

 他の人に気がつかれないようにって言っても、難しいな!

 この女性は、札が落ちた事に気がついていない。

 あおいは、黙って女性の腕をツンツンして、“あっち”と口パクしながら指を指した。


 その姿をさっきの緑札のおじさんが見ていた事など、誰も知らないのであった。
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