冥界の仕事人

ひろろ

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第五章: 新人仕事人 恋模様

まさか蓮さんが現れるなんて!

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 里帰り最終日。

 あおいは、感謝の気持ちを込めて、家族の見送りをする。


「お母さん、今まで本当にありがとうございました。親不孝な娘で、ごめんなさい。

 身体に気をつけて、仕事を頑張って下さい。

 また、帰ってくるからね。

 気をつけて、行ってらっしゃーい」


 家族全員の見送りを済ませて、


あおいは部屋でアルバムを見ていた。
 

  成長していく写真と、母の書いたコメントを見ていると、思い出が蘇ってくる。


 この頃のあたしって、自分がもっとお金持ちのうちに生まれていたら、良かったのにぃ!なんて、思っていたんだよね。


とても大切に、育ててくれていたのにね……。


 それから、机の引き出しをチェックする。


 グレースに預けたノートの他に、見られたら恥ずかしい物が、入っていたら大変だもの。


「あれ?ここ開かない!鍵を掛けたっけ?鍵はどこだったかな」


 右側の1番上の引き出しに鍵を掛けていたのだった。


 鍵は、確かオルゴールの小箱に入れたはず……。


 このオルゴールは、おじいちゃんからの旅行土産だったっけ。

 
 小箱を開けるとメロディを奏でた。


 あった!これが鍵だ。


 カチっ


 開いた!


 何を入れたんだろう。すっかり忘れている。


「ごちゃごちゃ入っているなー!
 石?何でこんなの入れてあるの?

 干からびた押し花なの?この茶色のやつ。

 封筒?手紙が入っている。あっ、まさか、越野君あてになんか書いたっけ?」


 そうだ、越野君と仲良くなりたくて、連絡先を教えようと書いたんだ。


 ガサガサ


 手紙を読んでみる。


 越野君へ

この前、一緒に帰れて楽しかったです。
(おじいちゃんちに行く時)

 おじいちゃんちの猫が、化け猫だという事は、秘密にしておいて下さい。

 これは、私の連絡先です。

 もし良かったら越野君の連絡先を教えてくれたら嬉しいです。

                                               水島 あおい 


 この後、越野君たちと一緒にキャンプに行く事になって、連絡先を交換しあったから、渡す必要がなくなったんだよね。


 グレースの事を、化け猫って書いちゃっている。


 ここに置いておくのも恥ずかしいし、何とかしたいな。


 また、グレースにお願いするしかないか。

 
 迎えが来るまで、まだ時間はある。


 あおいは、瞬間ベルトに手を触れる。


「おじいちゃーん、あおいだよ!
 ごめんくださーい」

  
孝蔵宅の玄関前で声を張り上げて言う。


「おぉ、あおい!いつもの あおいだな!
よく帰ってきたな!」


「おじいちゃん、記憶を無くしていて、ごめんなさい。
また、忘れると思うけど、許してね。

それと、ノリタケさんが冥界では、コウさんと呼びなさいって言うから、そう呼ばせてもらうからね」


「そんな事は、どうだっていいから、あおいが、元気に仕事をしているって、蓮から聞いているよ。

 それが、嬉しいよ。さあ、中に入れ」


「うん、あのね。家から持ってきたい物があって、グレースに取ってもらいたいけど、グレースはいる?」


 きょとんとする孝蔵にグレースを呼んでもらい、再び、あおいの実家に戻ったのだった。


「今度は、ニャんですか?
これですか?あとはありませんか」


「えーと、待って!確かめるから」


 あおいは、色んなところをゴソゴソして、結構、散らかしていた。


「あっ、これやばい!赤点テスト!」


「そんニャのは、置いておきニャさい。
 あと、秘密がばれそうニャ物は、ニャいですか?」


「これだけですね?外に行きますね」


 グレースは、手紙を咥えて、昨日と同じように窓からカーポートへ降りて、木をつたって、下へと降りて行った。


 それから、孝蔵宅に行き、処分を頼んだのである。


「越野君へ……これって、陽太君か?何だ、あおい 付き合っていたか?」


「違うよ!キャンプに行くことになって、連絡先を教えようとしただけ!
 変な事、言わないでよ!もう」


「すまん、すまん、怒るなよ。
 今、燃やす用意をするからな」


 すると、今では、珍しい金物のバケツを物置から、庭に出した。


そして、バケツの中で、手紙を燃やしてくれたのだった。


燃える手紙を見て、淡い想いが、完全に消滅したと思った。
 

「ただいまー!何をしているんですか」


 ひょっこりと庭に現れたのは蓮だ。


「ああ、蓮、おかえり。仕事は、済んだのか?」


「まだ。夜 仕事で、一時帰宅です。
 何を燃やしていたの?あおいちゃん」


 ドキッ!


 蓮さんには、知られたくないから、適当に言おう!


「まあ、見せられないテスト……かな?

さあ、あたしは迎えが来ると行けないから、戻って、また、ここへと来るからね。

そうだ、おじいちゃんの作る卵焼きが、食べたいから作っておいて。じゃあね」


あおいは、そそくさと家に戻って行った。


越野君宛の手紙、燃やしているところを見られていなかったかな?


 部屋に戻った あおいは、散らかりに具合に溜息をつく。


 母親が見たら、泥棒が来たと思うだろう。


 あおいは、片付けを始める。


「お邪魔しまーす。

あおいちゃん、暇だから来ちゃった!」


 いきなり蓮が、部屋に入ってきて驚いた。


「えっ!蓮さん!何で?
おじいちゃんちにいたのに」


 蓮は、部屋に入るなりベットの上に、横になって言う。


「だって、孝蔵さんは料理を始めたし、グレースは、出掛けたし、私は暇だから来ちゃった。

これ、あおいちゃんのベットでしょう?いいね、フワフワしていて!
孝蔵さんの所には、ないんだよね」


「おじいちゃんは、煎餅蒲団が好きですからね。

おじいちゃんちに、蓮さん用の部屋ってあるんですか?」


 あおいは、さっと引き出しに、物をしまいながら聞いた。


「いや、特にないよ。
居間で、雑魚寝かな。
けど、あそこは居心地がいいんだ」


 ベットに横になり肘をつき、あおいを見て話す蓮に、ドキドキしてしまう。


これが、互いに生前の事だったなら、いいムードというのかもしれない。


「あっ!思い出した!
優から聞いたんだけど……」


 蓮は、起き上がった。


 えっ、何?もしかして、昨日の遊園地の事かな?もう、知っているとか?


蓮さんには、あまり知られたくなかったな……。


「生前のあおいちゃんの所に、優が遊びに来て、メロンソーダーをご馳走になって、それが美味しかった!ってことを聞いたよ。いいなぁ」


 なんだぁ、その事か。


今は、動きに制限があるから、作るのは無理かな。


「作るのは、無理だけど、炭酸ジュースなら何かあるかも。
一緒に台所に行きましょう」


 蓮にも手伝ってもらい、冷蔵庫の前でコップにサイダーを入れる。


 テーブルまでは、運べないから、床に2人で座って飲んでいた。


 チラリチラリと蓮の方に、視線を向けると必ず目が合ってしまう。


 何故だろう?


 恥ずかしいけれど、それが嬉しくて、やはり見てしまうのだった。


「あおいちゃん、もうそろそろ片付けをした方がいいね。

冥界タクシーが来るんでしょう。
ぷっ、冥界タクシーなんて、いい名前付けたね!」


「あれは、タクシーそのものですけど、ジェットコースターよりも凄かったですから、本当は、自分で帰りたいくらいです」


 コップを、さっと水で流し、元の場所に置いた。


 部屋に戻りながら、蓮が言う。


「じゃあ、今度、ジェットコースターに乗ろうか?」


「えー、昨日乗ったから……、うんんっ、あっ、そうですね、乗りましょう」


「 ? 」


 蓮は、一瞬 不思議そうな顔をした。


 ピンポーン!


その時、迎えがやって来た。


 午後の3時だ。


「じゃあ、先に孝蔵さんの家に行っているよ」


 あおいは頷き、自分の部屋を見回す。


「また、暫く帰ってこれないのか……。さようなら」


「運転手さん、お待たせしました。
 よろしくお願いします」


 あおいが車に乗り込み、あっと言う間に、孝蔵宅へと到着した。


もちろんスピードを出され、悲鳴を上げた あおいは、疲れきっていた。


 運転手は、庭に車を止めて待っていたが、結局、連れ出され、一緒に孝蔵の料理を食べたり、テレビを見て盛り上がった。


 里帰りの終わりに、あおいが孝蔵に挨拶をする。


「おじいちゃん、私、冥界で成長していっているから、安心してね。

 ……では、改めて……コウさん、冥界で会えたら、話しかけますから。
お元気で、さようなら」


「あおいもな……もし、婆さんに会えたら、お盆を楽しみにしていると伝えてくれな!じゃあな」


 パタン


 ゴーゴーゴー


 ギャアー!凄い!凄すぎるスピードだー


 あおいは、放心状態で冥界に戻り、札を剥がしたとたん、里帰りの内容を忘れてしまった。


ただ一つ、優と遊園地に行った事だけが頭に残っているのだった。


 忘れてしまったけれど、あったかい気持ちになっていたことは、何となく覚えているから良かった。
 
 
 また、明日から仕事を頑張るぞ。


 何てったって、個人旅行が近いからね。


 蓮さん、楽しみにしていていいですか。


 因みに、あおいの部屋にある机の様子がいつもと違うことに、母である弥生が気づき、机の鍵が開いているから、泥棒が入ったと騒いでいた。


 それを聞いた孝蔵が、鍵じゃなくて、物が引っかかっていたかもしれないし、取られる物なんて無いだろう?と弥生を諭したのだった。


「それもそっか!」と弥生は納得し、引き出しをあさった結果、赤点テストを発見した。


 そのテストは、暫くの間 仏壇の上に、
置かれていたのである。


「あおい!あの世で、勉強を頑張りなさいよっ!」
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