裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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Chapetr1

004 レティシアと寒い服

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「さっむい!」
 少し前にこの街は暖かいと言ったが、アレは嘘だ!
 あの時はまだ冬の初めだったし、何よりちゃんと服を着ていたんだから、寒いはずがなかった。
 季節は冬真っ盛り。街路樹たちも葉っぱを落としきって寒々としている。冬でもお天気だけは良いから、この風が止むと少し暖かく感じるんだけど、私の格好が問題だった。
 知ってる?袖無し。ノースリーブって言うのよ。私自慢のウツクシイ肩から指先にかけて、何もまとう物がないのよ。……寒い。
 春色の、私好みの淡いピンク。生地が薄くないと同じ色でも、命躍動し始める春らしさは表現しづらいの。襟元の開き具合もやや広くて、完全防備だった冬は終わったの感を演出。足元は察するべし!
 お婆ちゃんはよく言っていたわ。「寒い時に寒い格好して寒いと言うヤツは、馬鹿だ」と。
 違うのお婆ちゃん、仕事なの。
 私の仕事は季節を先どる、ファッションモデル!
 ステージで最先端とかじゃなくて、雑誌の普段着とかのカジュアルな方ね。だいたい、ステージのファッションショウなんて、サントルではやってないし。
 私は子供の頃からこの仕事をやっていた。タウン誌の子供服のページですが。
「レティシアちゃん、誰かに語ってないで次行くよ」
「は~い」
 背はそう高くないし、本職にするほどの情熱もなかったから、季節の変わり目くらいにこうやってタウン誌の一ページくらいを飾るのが丁度良い。さすがに今は子供服ではないよ。
 
 春は暖かい日があったり急に寒くなったり、毎年異常気象じゃない?と思ったりする。
 とはいえ暖かくなっていくのは確かなこと。服装も当然冬と違い、薄く涼しい物に変わっていく。 
 のは分かるけど!寒いのは寒い。
 私の育った丘陵地帯は半端なく寒くて、私の中では4月頃まではまだ冬カウントだ。ああ、寒い。
 ゴメンお婆ちゃん。レティシア馬鹿になっちゃった。
 
 わざわざ寒い中、屋外で撮影するには当然訳がある。
 では、お仕事スタート!

「あ~レティシアちゃんだ!撮影中?寒そうだね」
 自由大学の知り合いに遭遇。暖かそうな格好で登校中の彼女らは気軽に手を振ってくる。
 それに応えて笑顔で手を振り返すと、パシャリ。
 
「レティシアちゃん、寒そうね。これでも食べて暖まりな」
 通りのタイヤキ屋さんが焼きたてのタイヤキをくれる。好きな甘さだけどどうして魚型なのだろう。仕事中だけど折角だし、頂きます!をパシャリ。

 犬だ!モフモフだ!
「撫でて良いですか?」
 犬の散歩の飼い主さんに許可を貰う。犬か猫かで言うと断然猫派。でも猫は触らせてくれないからね~。
 ヨシヨシ、ここがエエんか~。パシャリ。

 冬とはいえ、日射しは眩しいのう。
 葉を落とした街路樹の枝の隙間からこぼれる日射しを直視して顔をしかめる。
「眩しっ!」
 パシャリ。
「えっ今のは駄目でしょ!めっちゃ変な顔してたよ」
 え?十分美人?ならいいか。 

 とまあ、普段着を扱うお店なので、街を歩きながらこういう自然な感じを撮影するのだ。
 でも街路樹の葉っぱとかはCGで描かせるんだって。季節感が大事?だったら背景全部そうしてよ……。

 撮影が終わり、スタジオで着替えた後にホットワインをいただく。
「ふえ~しみるねぇ」
 周囲の視線が外並みに寒い。
 スタイリストさんが泣いてる。こんな酒飲みになるなんて?仕方ないよ、体が欲するの。
 ちっちゃい頃はリンゴジュースで喜んでた?そら、子供は酒を飲まないからな。
「大丈夫、アルコールなんて殆ど飛んでるし、一杯で終わるから。ホント寒かったんだよ?」
 きちんとコントロール出来ていることをアピールしておかないと、強制治療だ。

 体も温まり、お開きとなる。
 報酬の一部としては今日着た服をもらう。私のサイズだと仕立て直して誰かが着るわけにもいかないらしい。
 私好みの可愛いワンピースだ。
 誰か良い人とのデートに着ていきたいな、今年は!
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