裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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Chapetr2

100 レティシアとちょっとアレな少佐

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「私は宇宙軍の少佐でユーリィ=ルブランという。初めまして、レティシア=エベールさん」
「はぁ」
 だれ?
 私が知らなくて、私の事を知っている。つまりアレだ、アカリさん関係だ。
 その人たちは謎の情報網を持っていて、ちゃんと色々調べてから事にあたるのだ、大人だ。
「君とは初対面ではないんだけど、覚えていないだろうね」
 私の家の畑に墜ちてきた宇宙船は、トレジエム宇宙軍の物で、その破片にも軍事機密が詰まっている。広範囲に飛び散ったそれらをどうにかする必要があったため、軍は周囲一帯を接収した。でも、人的被害も出ている……。出ているから強制的に接収というのも世間体が悪い。ということで遺族への慰謝料の一部とするために、軍が買い取ったという。
「だから家には入れないってことですか?」
「墜落地点から半径1キロメートルの範囲が立ち入り禁止区域だ」
「そんな!」
 私に厳しく言い放つ少佐さんの顔が、笑顔に変わる。軍人さんっぽい圧力がかき消えた。
「別に君に意地悪をするために来たんじゃないんだよ?そんな事したら友だちに怒られるしね。今のは建前。大事だよ?建前」
 打って変わってとても気さくなおじさん?そういうには若く見えるし、不思議な印象だけど、優しい口調で少佐さんは続ける。
「レティシアちゃん、君アカリに言っただろ?皆で実家を見に行くって」
 言ったかも。アカリさんも来て欲しいな~って。
 私のところは焦げちゃったけど他のところはすごく綺麗なんだから。
「で、現状を調べたあいつが僕を頼ってきてね。いや~うれしかったよ。あいつに頼られるなんて、戦争以来だったからね」
 うぁ、恋する表情とでも言うのかな?ちょっと引く。
「僕から管理部門に申請したらね色々文句がついてさ。そしたらアカリが怒って、施設に乗り込んできたんだ」
「え!?」
 施設ってきてね基地のことだよね?そんなことして大丈夫なの?
「すばらしい殺気だった!楽しかったあの頃を思い出したよ!」
「少佐だけですよ?あそこで喜んでたの。アカリさんと閣下の間の空間が歪んでいたんですよ、殺気か何かで」
 空気読めないジャーヴィの青ざめる顔が、異常事態が起こっていたことを物語っている。たぶん覇気使いじゃないと、気を失うアレだ。
「あの2人の挨拶さ。将軍も喜んでただろ?」
 仲が悪いんだ、昔から。と楽しそうに言われても。

「まあその辺はレティシアちゃんには関係ないけどね」
「実際問題、宇宙空間からの落下物だ。それなりに放射線もまだ出ている。残念ながら除染の優先度は低くてね」
 いきなり現実に引き戻された。実感としてはまだ分かっていないんだろうけど、生まれ育った所が、もう違う世界みたいになって、誰も笑える場所じゃなくなって。
「あのバスに、除染装置を取り付けたから。散策したらちゃんと処理するんだよ?操作方法は軍曹に聞くと良い」
 でもアカリさんも少佐さんも私が少しでも笑ってあの場所に立てるように色々考えてくれているんだ。
「ありがとうございます」
「さて、元気になったレティシアちゃんの顔もみれたし。帰るよ。そっかぁ、君がアカリの彼女になる日がくるなんて、人生って分かんないもんだ」
「いや、彼女とかではなくて!」
「アカリも焦って同じことを言ってたよ、まだ彼女じゃないって」
 まだ。
「ではもう行くよ、マシュー」
 いつの間にかバスの後ろに来ていた車から御付きの人が現れた。
「軍曹、少佐からだ。念のために持っていると良い」
「ありがとうございます。中尉殿」
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