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大海の海賊たち
出港
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「これが水の都『アクアガーデン』行きの船 『アクアガーディアン』だ!」
そう言って紹介された船は、とても大きな豪華客船だった。
「この船か……」
「バトラーの爺さんがこんなでっかいの用意してくれたんだから感謝しろよな!」
「わかってるよ」
それにしてもでかい。今まで元の世界で船自体に乗ったことがなかったが、一番最初がこの船というのはなんだか自分にはもったいない気がする。
「中身はどんな感じなんだ?」
「セレブ御用達のこの船にいちゃもんは出ないはずだぜ?」
おっしゃる通りで、入っただけでわかる。
中身までこうもすごいと、ますます自分の場違い感がすごい。
「肩身が狭いな」
「なんだよこっちはゲストなんだから胸張っときゃイイんだよ」
そうは言うがなかなか割り切れるものじゃあない。むしろゲストだからこそ、そう思ってしまう。
こうなったら、基本はこの自分の部屋の中で過ごしてあまり人目につかないようにしておこう。
汽笛の音が聞こえる。船が出航したのだろう。窓の外が変わりだす。
「部屋で休むついでにこっちの世界のことを知りたいんだが」
「おっ早速オレ様の出番か!」
そう言われるとチビルは羽をパタパタと羽ばたかせる。喜ぶと羽の動きが早くなるとのこと。
話し好きと聞いていたが本当のようだ。
「でぇ? 何が聞きたいんだ?」
「こっちの世界の『リン』はどんな奴なんだ?」
「オレ様も会ったことはねえけど 九つの『賢者の石』を貰って それを聖剣として扱った『聖剣使い』ってのがコッチのリン ……つまり『竜王』だな」
「賢者の石ってのは何なんだ?何処から出てきた?」
「『九賢者』って呼ばれるすごい力を持った奴らの力の結晶なんだとさ」
だから賢者の石なのか。
「じゃ竜王の由来は?」
「九つの力の『火』『水』『風』『土』『氷』『雷』『木』『闇』『光』の聖剣のを使う姿がまるで竜みたいだったからだってバトラーの爺さんが言ってぜ」
思ってた通り聖剣の力はやはり別の力が宿っているようだ。
それに何故そう呼ばれていたのかの理由もわかった。
別にこの世界のリンは、竜に変身していたからとかそんな理由じゃなくてよかった。まあ、この世界ならありえそうでなあるが。
「他は? 何でも答えてやるぜ!」
本当によく知っている。言葉に出して言えば文字通り飛んで喜ぶんだろう。
だがうるさそくなりそうなので今回はやめておこう。
「他はそうだな……魔法の使い方とか」
これはかなり気になっていた。無意識に使っていたが、あれは賢者の石の力であってリンの力ではない。
もしも使えるのならこれから役立つはずだ。
「それはこうギュ~となってグワーンとやったり……」
「そうか 役に立たない情報をありがとう」
「ああ!? 今信じなかったろ!?」
「今ので信じろと言う方が信じられんだろ」
「でもこういうのは感覚なんだよな~」
そう言うとチビルは手から電気や氷を作り出す。チビルの魔法はとても小さいが、自分にはそれすら出せない。
「案外もう出せるようになってんじゃねえの?」
「それでできれば苦労しないがな」
手から火を出せるように念じてみるがやはり出ない。もともと出したことがないのだから当然か。
「そういや賢者の石は何処に収納してるんだ? 見当たらないけど」
「ああ……それなら」
そう言われたから、力を込めて拳を握る。そうして手を広げると、そこから赤い光と共に賢者の石が現れた。
「お前そんなことできたのか!?」
「いつの間にかな」
「むしろ魔法よりすごいんじゃないか!」
「手品と同等な魔法なら宴会程度でしか盛り上がらんだろ」
これは何となく出来るようになっていた。身体の中に異物を入れてるわけで、気持ちのいいものではないが、身体に馴染んでいくのがわかる。
「まあとりあえず休憩にしてメシにしようぜ!」
「ここのご飯はどんな感じ何だろうな」
「甲板の上で食べるメシはサイコーだろうなぁ」
チビルはヨダレを垂らして部屋を出る。あまり乗り気ではないがこの部屋を出よう。さすがにお腹もすいてくる。
「きっと豪華なんだろうな」
部屋を出るとそこには子供がいた。今にも泣き出しそうな顔をしているところを見ると、迷子なようだ。
「何してる?」
しゃがみ、子供と同じ目線で話す。
本当ならあまり関わりたくないが、どうにもほっとけなかった。
「おにいちゃんだれ?」
「俺は『優月 輪』だ……迷子か?」
「ううん 友達とケンカしちゃって……」
「そうか」
予想が外れてしまった。子供の喧嘩にあまり口を出したくないが、ここまで聞いたら引き下がれない。
「何で喧嘩したんだ?」
「今日一緒に船に乗る約束したのに今日来れないって パパとママと別の船で行くことになったから今日は無理だって」
「それで一人で不貞腐れてたのか」
「あんなヤツ 死んじゃえばいいんだ!」
だんだん怒りが戻ってきたのか声を大きくしてそう言う。
ペチッと頬を叩く。叩くといってもあまり強くは叩けないので、ほとんど力はこもってないが、今の発言は許せなかった。
「冗談でもそんなこと言うな」
「だっだって……」
「もしもそれを言ってその友達が死んだらどうするつもりだ?」
「いいもん! 死んだって! 知らないもん!」
「今は良くてもきっと後悔する あんなこと言わなければよかったて一生後悔する」
「一生……」
「たとえ関係なくても『呪い』のようにつきまとう ……お前もそうなりたいか?」
首をブンブン横に振る。言葉の重みを理解してくれたのだろう。それで良い。今から理解して次がなくなればそれで良い。
「さて 説教も終わりだ こういう時はご飯でも食べて気を紛らわせるのが良いぞ?」
グゥ~とお腹が鳴る。恥ずかしそうにお腹を抑える姿は本当に子供らしい。
「一緒に行くか?」
「うん!」
その直後、轟音と共に船が大きく揺れた。
そう言って紹介された船は、とても大きな豪華客船だった。
「この船か……」
「バトラーの爺さんがこんなでっかいの用意してくれたんだから感謝しろよな!」
「わかってるよ」
それにしてもでかい。今まで元の世界で船自体に乗ったことがなかったが、一番最初がこの船というのはなんだか自分にはもったいない気がする。
「中身はどんな感じなんだ?」
「セレブ御用達のこの船にいちゃもんは出ないはずだぜ?」
おっしゃる通りで、入っただけでわかる。
中身までこうもすごいと、ますます自分の場違い感がすごい。
「肩身が狭いな」
「なんだよこっちはゲストなんだから胸張っときゃイイんだよ」
そうは言うがなかなか割り切れるものじゃあない。むしろゲストだからこそ、そう思ってしまう。
こうなったら、基本はこの自分の部屋の中で過ごしてあまり人目につかないようにしておこう。
汽笛の音が聞こえる。船が出航したのだろう。窓の外が変わりだす。
「部屋で休むついでにこっちの世界のことを知りたいんだが」
「おっ早速オレ様の出番か!」
そう言われるとチビルは羽をパタパタと羽ばたかせる。喜ぶと羽の動きが早くなるとのこと。
話し好きと聞いていたが本当のようだ。
「でぇ? 何が聞きたいんだ?」
「こっちの世界の『リン』はどんな奴なんだ?」
「オレ様も会ったことはねえけど 九つの『賢者の石』を貰って それを聖剣として扱った『聖剣使い』ってのがコッチのリン ……つまり『竜王』だな」
「賢者の石ってのは何なんだ?何処から出てきた?」
「『九賢者』って呼ばれるすごい力を持った奴らの力の結晶なんだとさ」
だから賢者の石なのか。
「じゃ竜王の由来は?」
「九つの力の『火』『水』『風』『土』『氷』『雷』『木』『闇』『光』の聖剣のを使う姿がまるで竜みたいだったからだってバトラーの爺さんが言ってぜ」
思ってた通り聖剣の力はやはり別の力が宿っているようだ。
それに何故そう呼ばれていたのかの理由もわかった。
別にこの世界のリンは、竜に変身していたからとかそんな理由じゃなくてよかった。まあ、この世界ならありえそうでなあるが。
「他は? 何でも答えてやるぜ!」
本当によく知っている。言葉に出して言えば文字通り飛んで喜ぶんだろう。
だがうるさそくなりそうなので今回はやめておこう。
「他はそうだな……魔法の使い方とか」
これはかなり気になっていた。無意識に使っていたが、あれは賢者の石の力であってリンの力ではない。
もしも使えるのならこれから役立つはずだ。
「それはこうギュ~となってグワーンとやったり……」
「そうか 役に立たない情報をありがとう」
「ああ!? 今信じなかったろ!?」
「今ので信じろと言う方が信じられんだろ」
「でもこういうのは感覚なんだよな~」
そう言うとチビルは手から電気や氷を作り出す。チビルの魔法はとても小さいが、自分にはそれすら出せない。
「案外もう出せるようになってんじゃねえの?」
「それでできれば苦労しないがな」
手から火を出せるように念じてみるがやはり出ない。もともと出したことがないのだから当然か。
「そういや賢者の石は何処に収納してるんだ? 見当たらないけど」
「ああ……それなら」
そう言われたから、力を込めて拳を握る。そうして手を広げると、そこから赤い光と共に賢者の石が現れた。
「お前そんなことできたのか!?」
「いつの間にかな」
「むしろ魔法よりすごいんじゃないか!」
「手品と同等な魔法なら宴会程度でしか盛り上がらんだろ」
これは何となく出来るようになっていた。身体の中に異物を入れてるわけで、気持ちのいいものではないが、身体に馴染んでいくのがわかる。
「まあとりあえず休憩にしてメシにしようぜ!」
「ここのご飯はどんな感じ何だろうな」
「甲板の上で食べるメシはサイコーだろうなぁ」
チビルはヨダレを垂らして部屋を出る。あまり乗り気ではないがこの部屋を出よう。さすがにお腹もすいてくる。
「きっと豪華なんだろうな」
部屋を出るとそこには子供がいた。今にも泣き出しそうな顔をしているところを見ると、迷子なようだ。
「何してる?」
しゃがみ、子供と同じ目線で話す。
本当ならあまり関わりたくないが、どうにもほっとけなかった。
「おにいちゃんだれ?」
「俺は『優月 輪』だ……迷子か?」
「ううん 友達とケンカしちゃって……」
「そうか」
予想が外れてしまった。子供の喧嘩にあまり口を出したくないが、ここまで聞いたら引き下がれない。
「何で喧嘩したんだ?」
「今日一緒に船に乗る約束したのに今日来れないって パパとママと別の船で行くことになったから今日は無理だって」
「それで一人で不貞腐れてたのか」
「あんなヤツ 死んじゃえばいいんだ!」
だんだん怒りが戻ってきたのか声を大きくしてそう言う。
ペチッと頬を叩く。叩くといってもあまり強くは叩けないので、ほとんど力はこもってないが、今の発言は許せなかった。
「冗談でもそんなこと言うな」
「だっだって……」
「もしもそれを言ってその友達が死んだらどうするつもりだ?」
「いいもん! 死んだって! 知らないもん!」
「今は良くてもきっと後悔する あんなこと言わなければよかったて一生後悔する」
「一生……」
「たとえ関係なくても『呪い』のようにつきまとう ……お前もそうなりたいか?」
首をブンブン横に振る。言葉の重みを理解してくれたのだろう。それで良い。今から理解して次がなくなればそれで良い。
「さて 説教も終わりだ こういう時はご飯でも食べて気を紛らわせるのが良いぞ?」
グゥ~とお腹が鳴る。恥ずかしそうにお腹を抑える姿は本当に子供らしい。
「一緒に行くか?」
「うん!」
その直後、轟音と共に船が大きく揺れた。
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