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大海の海賊たち
復讐のエド
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「フヒ! フヒヒヒヒヒヒヒヒヒフハハハハ!」
「何だコイツ!? 今何を出しやがった!?」
「レイ! 今すぐクレアに伝えろ! 船の奴ら呼んだこいってな!」
「お前は!?」
「時間稼ぎだ……上手くいくかわからんがな」
拳に力を込める。逆巻く炎が激しく燃え上がり、手には火の聖剣『フレアディスペア』が握られた。
「さてと……派手に燃やすとするかなぁ?」
感情が昂ぶる。今すぐ目の前の敵を倒したいと。
「……任せていいのかよ」
「オレを誰だと思ってる?」
「ソノヘラズグチガキニイラネエエエエエ!!!」
再び白い『何か』が放たれる。それを躱すと次はリンの番だった。
「火剣『紅蓮突貫』」
前方に剣を勢いよく突くとエド目掛けて炎が一直線に放った。この破壊力は、まるで炎の砲撃をぶち当てたかのようである。
「グフッ!?」
するとその勢いでエドは船から海に落ちた。これなら時間稼ぎには十分だろう。
「行け」
「今のでやったんじゃねえのかよ!?」
「さっきの得体の知らねえもん見ただろ 嫌な予感がする とにかく呼んだこい」
「チッ! 俺に命令すんなよ!」
そう言いながらもレイは船の中へと走った。今の音で何人かは気づいたはずだ。なるべく早く戦闘態勢って迎撃したい。
「出てこいエド 死んだフリには早すぎるぞ」
海を覗き込みエドが落ちた場所に向かってそう言うと、海からブクブクと泡が上がっている。
『グフ! グハハハハハハハハハ!!』
エドが再び姿を現わす。
だが、その姿はさっきまでとまるで違っていた。
「嘘だろ……?」
その姿は十本の触手を持つ白い生き物、元いた世界でも見たことのある生き物『イカ』のようだった。
ただし元いた世界と違うのは、十本の触手の内の1本はまるで『擬似餌』のようにエドが繋がっていること。
そしてその大きさは、知っている大きさとは比べ物にならない。
「二十……いや三十メートル以上はあるぞ!?」
『クウ! ゼンブゼンブクッテヤル!』
「おいおい 食べるのはともかく……イカに食われるのは流石に嫌だぞオレは」
なんとか余裕を見せてはいるが、実際には今までで一番心臓に悪い。
「その姿になれる理由を聞きたいが……最初からできたのか?」
「待たせたな! ちゃんと知らせて……ってなんだその化け物!?」
「……できなかったみたいだな」
レイの反応でわかった。アレは後天的に身に付けたものだと。
少なくともナイトメアの連中は知らない姿見なのであろう。それに最初からできたのなら前の戦いですでにみせていたはずだ。
『クウ! クウ! クウ! クウ!』
「話は通じなさそうだな」
「なあもしかしてあいつは……」
異形の姿となったエドを指差して、信じられない光景を見て息を呑む。
「そのまさかさ」
『ゼンブマトメテクッテヤル!』
触手はリン達目掛けて勢いよく迫ってくる。何とか躱すも触手は一本だけではない。
何せアレは『イカ』だ、八本の足と二本の腕を持った生き物、がとてつもない大きさでその触手を振り回しているのだ。一本はエドが先端に居るため襲っては来ないが、それでも数は九本もある。
「クソ! 的はデカイけどデカすぎて銃の弾じゃあ歯が立たねえ!」
「しかも船の砲門の前には立たねえか……理性なさそうな割にはそこはしっかりしてるじゃねえか」
何とか躱すも、それだけで体力は削られる。このまま続けば負けるのも時間の問題だ。
「焼くか あの触手全部」
「出来んのかよ? そんな事」
「わからん」
「おい!?」
「やらんことには状況も変わらん」
魔力を集中させて、ありったけの炎をぶつけることが出来れば、丸焼きには出来るかもしれない。
「でもお前病み上がりだろうが 無茶すんなよ」
「優しいな レイは」
「バッバカ! そんなんじゃねえやい!」
躱しながら作戦を立てる。こうしてみると身体能力がやはり上がっている。ついていけているレイも凄いのだが今まで戦いと無縁だった自分がここまでできているのは聖剣の力か。
(体力もそうだが聖剣に耐えられる時間もあと少しだろう 決めるしかない)
「おいどうするよ! 作戦の方は」
「……オレから離れるな」
「ヘ!?」
素っ頓狂な声で反応するレイ。
理由はわからなかったが、そのまま作戦を言う。
「奴の触手を一点に集中させる そこを叩くためには分散させるわけにはいかない」
「ごっ誤解を招く様なこと言うんじゃねえよ!」
やはりわからないが、作戦を理解してくれていればそれで良い。今はレイのチカラが必要だ。
「よくわからんが……それでいいな?」
「おっおう! それだそれ!」
作戦は決まった。後は実行するだけだ。
触手は更に速度を増す。これでは流石にいつ躱しきれなくなってもおかしくない。おそらくチャンスは一度だろうか。
「今だ! 真ん中に行け!」
「わかってんよ!」
隙を見て指示を出してレイと同時に船上の真ん中に同時に移動する。予想通りに触手はリンとレイ目掛けて突き刺す様に迫ってくる。
「やっちまえ聖剣使い!」
「火剣『迦具土神』」
聖剣は炎を纏い、塊となって触手目掛けて叩きつける。前回と違って何とかまともな火力を出せているはずだ。
「やったか!?」
「どうやら大当たりだ」
目の前にあった触手はなんとか消し飛ばせた。残るは巨大イカと、残りの触手の先にいるエドだけだ。
「今のでオレの出番は終わりだ……後を頼む」
「はっ! 頼まれなくったてやってやるさ!」
レイは両手に銃を構える。目標は人の形をしたエドだ、そこを狙えば巨大イカも倒せるかもしれない。
「さあて決着つけようぜエド 前からテメェは気に入らなかった……!?」
『グフ! グフフフフフハハハハ!!』
笑っている。まだやられてはないとはいえ、こちらの方が戦況は有利なはずだ。
だがその笑いの答えはすぐに理解できた。
「再生……してやがる」
「どうなってんだクソが! これじゃあ振り出しじゃあねえか!」
まだ絶望している最中だというのに、エドから容赦なく触手の槍が降り注ぐ。
「何だコイツ!? 今何を出しやがった!?」
「レイ! 今すぐクレアに伝えろ! 船の奴ら呼んだこいってな!」
「お前は!?」
「時間稼ぎだ……上手くいくかわからんがな」
拳に力を込める。逆巻く炎が激しく燃え上がり、手には火の聖剣『フレアディスペア』が握られた。
「さてと……派手に燃やすとするかなぁ?」
感情が昂ぶる。今すぐ目の前の敵を倒したいと。
「……任せていいのかよ」
「オレを誰だと思ってる?」
「ソノヘラズグチガキニイラネエエエエエ!!!」
再び白い『何か』が放たれる。それを躱すと次はリンの番だった。
「火剣『紅蓮突貫』」
前方に剣を勢いよく突くとエド目掛けて炎が一直線に放った。この破壊力は、まるで炎の砲撃をぶち当てたかのようである。
「グフッ!?」
するとその勢いでエドは船から海に落ちた。これなら時間稼ぎには十分だろう。
「行け」
「今のでやったんじゃねえのかよ!?」
「さっきの得体の知らねえもん見ただろ 嫌な予感がする とにかく呼んだこい」
「チッ! 俺に命令すんなよ!」
そう言いながらもレイは船の中へと走った。今の音で何人かは気づいたはずだ。なるべく早く戦闘態勢って迎撃したい。
「出てこいエド 死んだフリには早すぎるぞ」
海を覗き込みエドが落ちた場所に向かってそう言うと、海からブクブクと泡が上がっている。
『グフ! グハハハハハハハハハ!!』
エドが再び姿を現わす。
だが、その姿はさっきまでとまるで違っていた。
「嘘だろ……?」
その姿は十本の触手を持つ白い生き物、元いた世界でも見たことのある生き物『イカ』のようだった。
ただし元いた世界と違うのは、十本の触手の内の1本はまるで『擬似餌』のようにエドが繋がっていること。
そしてその大きさは、知っている大きさとは比べ物にならない。
「二十……いや三十メートル以上はあるぞ!?」
『クウ! ゼンブゼンブクッテヤル!』
「おいおい 食べるのはともかく……イカに食われるのは流石に嫌だぞオレは」
なんとか余裕を見せてはいるが、実際には今までで一番心臓に悪い。
「その姿になれる理由を聞きたいが……最初からできたのか?」
「待たせたな! ちゃんと知らせて……ってなんだその化け物!?」
「……できなかったみたいだな」
レイの反応でわかった。アレは後天的に身に付けたものだと。
少なくともナイトメアの連中は知らない姿見なのであろう。それに最初からできたのなら前の戦いですでにみせていたはずだ。
『クウ! クウ! クウ! クウ!』
「話は通じなさそうだな」
「なあもしかしてあいつは……」
異形の姿となったエドを指差して、信じられない光景を見て息を呑む。
「そのまさかさ」
『ゼンブマトメテクッテヤル!』
触手はリン達目掛けて勢いよく迫ってくる。何とか躱すも触手は一本だけではない。
何せアレは『イカ』だ、八本の足と二本の腕を持った生き物、がとてつもない大きさでその触手を振り回しているのだ。一本はエドが先端に居るため襲っては来ないが、それでも数は九本もある。
「クソ! 的はデカイけどデカすぎて銃の弾じゃあ歯が立たねえ!」
「しかも船の砲門の前には立たねえか……理性なさそうな割にはそこはしっかりしてるじゃねえか」
何とか躱すも、それだけで体力は削られる。このまま続けば負けるのも時間の問題だ。
「焼くか あの触手全部」
「出来んのかよ? そんな事」
「わからん」
「おい!?」
「やらんことには状況も変わらん」
魔力を集中させて、ありったけの炎をぶつけることが出来れば、丸焼きには出来るかもしれない。
「でもお前病み上がりだろうが 無茶すんなよ」
「優しいな レイは」
「バッバカ! そんなんじゃねえやい!」
躱しながら作戦を立てる。こうしてみると身体能力がやはり上がっている。ついていけているレイも凄いのだが今まで戦いと無縁だった自分がここまでできているのは聖剣の力か。
(体力もそうだが聖剣に耐えられる時間もあと少しだろう 決めるしかない)
「おいどうするよ! 作戦の方は」
「……オレから離れるな」
「ヘ!?」
素っ頓狂な声で反応するレイ。
理由はわからなかったが、そのまま作戦を言う。
「奴の触手を一点に集中させる そこを叩くためには分散させるわけにはいかない」
「ごっ誤解を招く様なこと言うんじゃねえよ!」
やはりわからないが、作戦を理解してくれていればそれで良い。今はレイのチカラが必要だ。
「よくわからんが……それでいいな?」
「おっおう! それだそれ!」
作戦は決まった。後は実行するだけだ。
触手は更に速度を増す。これでは流石にいつ躱しきれなくなってもおかしくない。おそらくチャンスは一度だろうか。
「今だ! 真ん中に行け!」
「わかってんよ!」
隙を見て指示を出してレイと同時に船上の真ん中に同時に移動する。予想通りに触手はリンとレイ目掛けて突き刺す様に迫ってくる。
「やっちまえ聖剣使い!」
「火剣『迦具土神』」
聖剣は炎を纏い、塊となって触手目掛けて叩きつける。前回と違って何とかまともな火力を出せているはずだ。
「やったか!?」
「どうやら大当たりだ」
目の前にあった触手はなんとか消し飛ばせた。残るは巨大イカと、残りの触手の先にいるエドだけだ。
「今のでオレの出番は終わりだ……後を頼む」
「はっ! 頼まれなくったてやってやるさ!」
レイは両手に銃を構える。目標は人の形をしたエドだ、そこを狙えば巨大イカも倒せるかもしれない。
「さあて決着つけようぜエド 前からテメェは気に入らなかった……!?」
『グフ! グフフフフフハハハハ!!』
笑っている。まだやられてはないとはいえ、こちらの方が戦況は有利なはずだ。
だがその笑いの答えはすぐに理解できた。
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