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大海の海賊たち
覚悟の炎
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この力が何なのか、自分でもわからない。
『ナンダ!? ソノテニモッテイルノハ!?』
「さあな まあ前より燃やせそうだから都合が良い」
手に持っていたのは、賢者の石が変化した『火の聖剣』だった。
だが、それは『今まで』の話で『今』ではない。
その手に握られていた聖剣は、真っ赤に燃え上がる黄金の『弓』に変化していた。
「覚悟しろ 今の俺は間違いなく俺だ今までと違うぞ……たぶん」
意識がハッキリしている。
今までのような、どこか遠くから自分を見ている感覚では無い。確かに『ここにいる』と、この場に立っているのだと理解している。
『ナニヲワケノワカラネエコトヲオオオオ!』
エドの触手が襲いかかるが、もう躱す必要などはしなかった。
手に持っていた弓には矢は付属していない。なぜならその必要がないからだ。
「火弓『九火』」
弓を引く手には火の矢が精製され、それを引く。すると火の矢は九本に分裂し、触手に追尾して全てを焼き払う。
レイを捉えていた触手を焼き払ったことでレイも解放され、落下するレイを受け止めた。
「大丈夫か?」
「はっはい……」
「クレアを頼むぞ 今度こそな」
なんで敬語だったかわからないがとりあえずそのことは後回しにした。
「身体が軽いな それにちゃんと俺が戦ってる」
『グッグアアううう』
「どうした? さっきまでの余裕が嘘みたいだな」
『ダマレレレレエエエエエ!!』
それでも触手は再生し、再び襲いかかる。
これではキリがない。何度も同じことを繰り返しても結局今までと同じ結果になってしまう。
(さあどうするか? 解決策がわからないんじゃな)
『アーアーこちらチビルこちらチビル 聞こえてますかーリン』
突然通信機からチビルの声が聞こえた。
「聞こえてるよ 見ればわかると思うけど交戦中につき手が離せません 後にしてどうぞ」
『やいやい! オレ様は別に遊びでかけてるわけじゃねえぞ!』
「じゃあさっさと要件を言え こっちは弱点探しで忙しいんだ」
『そのことで試したいことがあんだよ! ナイトメアのみんなに協力してもらう!』
「なんだ? 試したいことって」
『みんなに全方位から砲弾で攻撃してもらうんだよ! 小型船に乗せてる一番火力の出るやつ 簡易砲弾で一斉にな!』
「狙う場所は?」
『適当でいい! あとはエド次第だ!』
周りからの一斉攻撃で潰すつもりだろうか、だがそれはおそらく奴にダメージを与えることはほとんどないだろ。
何故ならそれはすでに試したのだ、最初の作戦がそれだったのだから結果は分かっている。そのことは上から見ていたであろうチビルもそれは知っているはずだ。
『リン達は一旦エドから離れてくれ! みんなにはオレ様が言っとくからよ!』
「わかった お前の考えはわからんが乗ってみるさ」
『へへ! まあ見てな!』
どうやら自信があるようだ、チビルの作戦の内容はわからないが、闇雲に攻撃しても埒があかないのはたしかだ。
ここはチビルの考えに賭けてみよう。
「みんなチビルの連絡は聞いたか? エドからは一旦離れてくれ」
「いったいチビルは何をする気なんすかねぇ?」
「考えがあるなら賭けてみようぜ! 他に手段もないしよ!」
ナイトメアの全員もその作戦に乗ることにした。
再び弓を力強く引く、引き離すための技も頭の中に次々と浮かんできてくれる。
「火弓『龍燈』」
放たれた炎の矢は、エドに向かって一直線に飛んでいく。あの図体では直撃は免れない。
当たった瞬間、その炎は瞬く間に炎上した。
『グオォ!?』
今放った火の矢はしばらくの間、相手に接触すると燃え続ける。これで牽制はできるはずだ。
(頭の中に浮かんでくるのは呪文か何かか……今までみたいに言葉にしたら技が出せるのはやはり『賢者の石』の力なのか?)
感情が制御できていなかった。
それを今まで強く実感していた。
炎のように感情が昂ぶり、闘争本能に心が支配されていた今までとは明らかに違う。
(賢者の石も剣じゃなくなってるし……いったい何が?)
火の聖剣『フレアディスペア』のもう一つの姿。
これは一体何なのか。そう考えているとチビルの指示通りに海賊達が、小型船でエドの周りを囲んでくれていた。
「よし!周りを言われた通りに包囲してるぞ!」
「でも最初に試した時もダメだったんだ これだけじゃ奴は倒せねえぞ!?」
他の海賊達も同じ事を思っていたようだ。
『とにかく見てなって! 撃ち方用意! ヘヘッちょっとやってみたかったんだ』
「まさかそれだけのためにやったとか言うなよ」
『違わい! オホン失敬失敬 全員……撃てい!』
ナイトメアの小型船からチビルの指示で砲弾が放たれる。一斉に放たれた砲弾はエドに命中するも予想通り無駄だった。
だがある一発の砲弾に対して、エドは唯一反撃したのだ。
「あれはイカ墨か? あの巨体で出されるとひとたまりもないだろうな」
今まで見せたことのなかった攻撃方法で反撃されたのだ。その攻撃はイカ墨、あの巨体で放たれたら凄まじい威力であろう。
だがそれはおかしい。何故なら今まで守ることなどしなかった。
それにあの攻撃方法は誰も知らなかった。ということは奥の手にとっていたのだろう。だが出さざるおえなかった。
「……チビルのおかげで弱点はあぶり出せたな エドの本体はイカの顔だ」
「え? でもエドなら最初から触手に繋がってるじゃあねえか?」
「あれはエド本体じゃない」
その言葉にナイトメアの船員たちはどよめいた。
「最初に感じた感想は『擬似餌のようにぶら下がってる』だった だがあれは本当に擬似餌だったんだ」
「じゃあ本体は!?」
「最初から姿を現してたあの巨大イカ自身だ」
灯台下暗しとはよく言ったものだ。エドは最初から本体を隠してなどいなかった。あのエドの形をした触手にまんまと騙されていたのだ。
「さあて年貢の納め時かな? あれだけデカイならイカ焼きには十分だろ」
弓を水平に構え、腰を深く落とす。全身の力を拳の一点に集中させると、そこから特大の炎の矢が精製される。
(頭の中に浮かんだ文字を言葉に あとは勝手に上手くいく……!)
そしてリンは発した。
「烈弓『天照』」
炎の矢は海魔の中央部へと射抜かれた。
『ナンダ!? ソノテニモッテイルノハ!?』
「さあな まあ前より燃やせそうだから都合が良い」
手に持っていたのは、賢者の石が変化した『火の聖剣』だった。
だが、それは『今まで』の話で『今』ではない。
その手に握られていた聖剣は、真っ赤に燃え上がる黄金の『弓』に変化していた。
「覚悟しろ 今の俺は間違いなく俺だ今までと違うぞ……たぶん」
意識がハッキリしている。
今までのような、どこか遠くから自分を見ている感覚では無い。確かに『ここにいる』と、この場に立っているのだと理解している。
『ナニヲワケノワカラネエコトヲオオオオ!』
エドの触手が襲いかかるが、もう躱す必要などはしなかった。
手に持っていた弓には矢は付属していない。なぜならその必要がないからだ。
「火弓『九火』」
弓を引く手には火の矢が精製され、それを引く。すると火の矢は九本に分裂し、触手に追尾して全てを焼き払う。
レイを捉えていた触手を焼き払ったことでレイも解放され、落下するレイを受け止めた。
「大丈夫か?」
「はっはい……」
「クレアを頼むぞ 今度こそな」
なんで敬語だったかわからないがとりあえずそのことは後回しにした。
「身体が軽いな それにちゃんと俺が戦ってる」
『グッグアアううう』
「どうした? さっきまでの余裕が嘘みたいだな」
『ダマレレレレエエエエエ!!』
それでも触手は再生し、再び襲いかかる。
これではキリがない。何度も同じことを繰り返しても結局今までと同じ結果になってしまう。
(さあどうするか? 解決策がわからないんじゃな)
『アーアーこちらチビルこちらチビル 聞こえてますかーリン』
突然通信機からチビルの声が聞こえた。
「聞こえてるよ 見ればわかると思うけど交戦中につき手が離せません 後にしてどうぞ」
『やいやい! オレ様は別に遊びでかけてるわけじゃねえぞ!』
「じゃあさっさと要件を言え こっちは弱点探しで忙しいんだ」
『そのことで試したいことがあんだよ! ナイトメアのみんなに協力してもらう!』
「なんだ? 試したいことって」
『みんなに全方位から砲弾で攻撃してもらうんだよ! 小型船に乗せてる一番火力の出るやつ 簡易砲弾で一斉にな!』
「狙う場所は?」
『適当でいい! あとはエド次第だ!』
周りからの一斉攻撃で潰すつもりだろうか、だがそれはおそらく奴にダメージを与えることはほとんどないだろ。
何故ならそれはすでに試したのだ、最初の作戦がそれだったのだから結果は分かっている。そのことは上から見ていたであろうチビルもそれは知っているはずだ。
『リン達は一旦エドから離れてくれ! みんなにはオレ様が言っとくからよ!』
「わかった お前の考えはわからんが乗ってみるさ」
『へへ! まあ見てな!』
どうやら自信があるようだ、チビルの作戦の内容はわからないが、闇雲に攻撃しても埒があかないのはたしかだ。
ここはチビルの考えに賭けてみよう。
「みんなチビルの連絡は聞いたか? エドからは一旦離れてくれ」
「いったいチビルは何をする気なんすかねぇ?」
「考えがあるなら賭けてみようぜ! 他に手段もないしよ!」
ナイトメアの全員もその作戦に乗ることにした。
再び弓を力強く引く、引き離すための技も頭の中に次々と浮かんできてくれる。
「火弓『龍燈』」
放たれた炎の矢は、エドに向かって一直線に飛んでいく。あの図体では直撃は免れない。
当たった瞬間、その炎は瞬く間に炎上した。
『グオォ!?』
今放った火の矢はしばらくの間、相手に接触すると燃え続ける。これで牽制はできるはずだ。
(頭の中に浮かんでくるのは呪文か何かか……今までみたいに言葉にしたら技が出せるのはやはり『賢者の石』の力なのか?)
感情が制御できていなかった。
それを今まで強く実感していた。
炎のように感情が昂ぶり、闘争本能に心が支配されていた今までとは明らかに違う。
(賢者の石も剣じゃなくなってるし……いったい何が?)
火の聖剣『フレアディスペア』のもう一つの姿。
これは一体何なのか。そう考えているとチビルの指示通りに海賊達が、小型船でエドの周りを囲んでくれていた。
「よし!周りを言われた通りに包囲してるぞ!」
「でも最初に試した時もダメだったんだ これだけじゃ奴は倒せねえぞ!?」
他の海賊達も同じ事を思っていたようだ。
『とにかく見てなって! 撃ち方用意! ヘヘッちょっとやってみたかったんだ』
「まさかそれだけのためにやったとか言うなよ」
『違わい! オホン失敬失敬 全員……撃てい!』
ナイトメアの小型船からチビルの指示で砲弾が放たれる。一斉に放たれた砲弾はエドに命中するも予想通り無駄だった。
だがある一発の砲弾に対して、エドは唯一反撃したのだ。
「あれはイカ墨か? あの巨体で出されるとひとたまりもないだろうな」
今まで見せたことのなかった攻撃方法で反撃されたのだ。その攻撃はイカ墨、あの巨体で放たれたら凄まじい威力であろう。
だがそれはおかしい。何故なら今まで守ることなどしなかった。
それにあの攻撃方法は誰も知らなかった。ということは奥の手にとっていたのだろう。だが出さざるおえなかった。
「……チビルのおかげで弱点はあぶり出せたな エドの本体はイカの顔だ」
「え? でもエドなら最初から触手に繋がってるじゃあねえか?」
「あれはエド本体じゃない」
その言葉にナイトメアの船員たちはどよめいた。
「最初に感じた感想は『擬似餌のようにぶら下がってる』だった だがあれは本当に擬似餌だったんだ」
「じゃあ本体は!?」
「最初から姿を現してたあの巨大イカ自身だ」
灯台下暗しとはよく言ったものだ。エドは最初から本体を隠してなどいなかった。あのエドの形をした触手にまんまと騙されていたのだ。
「さあて年貢の納め時かな? あれだけデカイならイカ焼きには十分だろ」
弓を水平に構え、腰を深く落とす。全身の力を拳の一点に集中させると、そこから特大の炎の矢が精製される。
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