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より強くなるために
褒美とは
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「この度は……馬鹿息子が本当に申し訳なかった」
「いえ 貴方が頭を下げる事ではありませんので」
夜になり聖剣使い御一行は大広間へと集められた。
リン以外はとりあえずリンに任せて姿勢を正して座り、静かに話を聞いていた。
広間に集められて早々、床に手をつき深々と頭を下げて誠意を持ってこの国の殿『ガンリュウノ シンゲン』が謝罪する。
その態度に不満などあろうはずもなく、リンは気持ちだけで十分であった。
「そうそう 二代目もこう言ってんだからいいって」
そんなふてぶてしい態度をとる。この状況を作り出している張本人は反省の色が見えない。
「まあよい これを使え」
そう言って殿はムロウの目の前にに脇差を投げた。
「ん? なんだよこの脇差」
「切腹じゃ」
「重いわ!」
「戯け! お前のしでかしたことに比べればその安い命で勘弁してやろうという親心がわからんのか!」
「息子の命で払おうとする親心があってたまるか!」
「大体いい歳した大人がいつまでもふらふらとしおって! いずれはこの『カザネ』を背負うという自覚はないのか!」
「だったらテメェがさっさと隠居してりゃあいいだろうが!」
「お前があまりにも頼りないから出来んのじゃろうが!」
「……そこまでにして頂けると大変有り難いのですが」
取っ組み合いどころか斬り合いになってしまいそうな勢いだったため流石に止める。
そもそもここに来たのはムロウの事ではなく、今後の事について聞きたいからだ。
「それにその事についてはとやかく言うつもりはございません ソレに腹を切られても寧ろ夢見が悪そうですから」
「一言多いぞ」
「まあそれもそうじゃな」
「お前ら……」
「それでご用件というのはどう言ったご用件で?」
何か言いたげなムロウは無視して話しを進める。
聖剣や魔王軍の事であれば嬉しいが、おそらく前に言っていた聖剣の代わりについてだろと予想する。
「うむ……大方の予想はついとると思うのじゃが ここにあった『ゲイルグリーフ』の代わりの物の話じゃ」
「あ~阿呆な殿様のせいで盗られたっていう」
「ええい! 煩いわ! こちらの事情も知らずに!」
「んなもん知るかよ! ザル警備だったのが問題だろうが! あの人の大切な物だってのによ!」
「……話を戻してもらってもよろしいでしょうか?」
「オッホン……そうじゃな」
どうにも前に進まない話しに呆れながらも、リンは真面目に話しを聞く。
内容としては、代わりのものとして『ある場所』に行けとのことだった。
「お主たちが決闘したという山……その隣の山の麓に行くが良い」
「そこに何があるのですか?」
「そこに『ムラマサ』と名乗るものがおる そいつに会ってくるが良い」
「「「ムラマサーッ!?」」」
「なっなんだ急に!?」
今まで黙っていたチビル、レイ、シオンが一斉に大きな声を上げて立ち上がる。(チビルは飛んでいた)
あまりに急な事に驚いて、リンは目をパチクリとさせて固まってた。
「そんなに……凄いのか?」
「スゲーッてレベルじゃねえよ!」
「伝説の刀鍛冶『マラマサ』 その人が鍛えた刀の前じゃこの世に存在する名剣名刀と言われる刀剣の殆どが敵わないって言われる生きる伝説よ!」
「メチャクチャ人を選ぶ性格だから殆ど刀をうってもらった人がいないせいでその手のマニアは喉から手が出るほど欲しがるんですよ!」
「……成る程な」
この三人にそれだけ凄いと言われる人の刀なら、聖剣の代わりとしては十分釣り合うという事なのだろう。
リンとしては、それが貰えるというのなら申し分なかった。
「案内役にはそこの馬鹿息子に任せる」
「聞いてねえぞ」
「今言ったからのう」
「他の案内役はいませんか?」
「お前は何さりげなく断ってんだ」
案内役のムロウが乗り気でないが、それはリンも同じであった。
こうして今話してはいるが、少し前まで敵として戦ったのだから当然のことであるのだが。
「ん~ 他に暇な奴もいないしのう」
「わかったよ! 連れてきゃあいんだろう!?」
「いえ 道さえ教えて頂ければ我々だけでも迎えますので」
「ほ~? そんなこと言って良いのかよ二代目? 気難しい人だから知り合いが行かなきゃまともに会ってもくれねえぞ?」
「そうなのですか?」
「うむ その事もあってムロウに任せたのじゃ」
「そうですか……」
「なあ露骨に嫌そうな顔はやめてくれねえか?」
あからさまに拒絶するリンの姿を見て、内心一人傷つくムロウ。
実際嫌だったのだから仕方がない、隠すつもりリンにはなかった。
「まあもう夜遅いしよう この辺におひらきにしようや?」
「お前が仕切るな 馬鹿息子」
「ですがその意見には私も賛成です リンもまだ戦いの疲れが言えたとは言えませんので」
「まあそうだな 目を覚ましたばっかだしこの辺にしとこうぜ殿様」
そう言って身体を心配してくれたのはシオンとチビルだった。
「ではそうするとしよう 話しは通しておるから明日好きな時に行くと良い ゆっくり身体を休めてな」
「ご心配痛み入ります それではお言葉に甘えて我々は休ませて頂きます」
「よーし! アニキの復活祝いに今日の夜はパーッと騒ぎましょう!」
「休むって言ってんだろうが」
どこかズレている妹分とシオンとチビル、そしてリンは大広間を後にする。
残ったムロウとその父、シンゲンの間に長い沈黙が続いた。
そして、先にその沈黙を破ったのはムロウだった。
「……で? どうなんだよ」
「どうとは何がじゃ?」
「二代目だよ おりゃあ戦ってみたが今のアイツにゃ刀を鍛えてもらえるとは思えんのだがね」
「まあそうじゃろうな」
「今のアイツに必要なのは刀じゃあねえだろ 魔王軍だっていつまでも待っててくれるような奴らじゃねえ 斥候か暗殺者か知らねえが……ここに魔王軍が来た以上は呑気にしちゃいられねえ」
「ふん よく考えておるではないか」
「わかってるならなんで……」
「ホッホッホ まあついて行けばわかるわい」
ムロウは知っていた。
こうやって何かを隠しているときは大抵ロクでもないことを企んでいると。
「いえ 貴方が頭を下げる事ではありませんので」
夜になり聖剣使い御一行は大広間へと集められた。
リン以外はとりあえずリンに任せて姿勢を正して座り、静かに話を聞いていた。
広間に集められて早々、床に手をつき深々と頭を下げて誠意を持ってこの国の殿『ガンリュウノ シンゲン』が謝罪する。
その態度に不満などあろうはずもなく、リンは気持ちだけで十分であった。
「そうそう 二代目もこう言ってんだからいいって」
そんなふてぶてしい態度をとる。この状況を作り出している張本人は反省の色が見えない。
「まあよい これを使え」
そう言って殿はムロウの目の前にに脇差を投げた。
「ん? なんだよこの脇差」
「切腹じゃ」
「重いわ!」
「戯け! お前のしでかしたことに比べればその安い命で勘弁してやろうという親心がわからんのか!」
「息子の命で払おうとする親心があってたまるか!」
「大体いい歳した大人がいつまでもふらふらとしおって! いずれはこの『カザネ』を背負うという自覚はないのか!」
「だったらテメェがさっさと隠居してりゃあいいだろうが!」
「お前があまりにも頼りないから出来んのじゃろうが!」
「……そこまでにして頂けると大変有り難いのですが」
取っ組み合いどころか斬り合いになってしまいそうな勢いだったため流石に止める。
そもそもここに来たのはムロウの事ではなく、今後の事について聞きたいからだ。
「それにその事についてはとやかく言うつもりはございません ソレに腹を切られても寧ろ夢見が悪そうですから」
「一言多いぞ」
「まあそれもそうじゃな」
「お前ら……」
「それでご用件というのはどう言ったご用件で?」
何か言いたげなムロウは無視して話しを進める。
聖剣や魔王軍の事であれば嬉しいが、おそらく前に言っていた聖剣の代わりについてだろと予想する。
「うむ……大方の予想はついとると思うのじゃが ここにあった『ゲイルグリーフ』の代わりの物の話じゃ」
「あ~阿呆な殿様のせいで盗られたっていう」
「ええい! 煩いわ! こちらの事情も知らずに!」
「んなもん知るかよ! ザル警備だったのが問題だろうが! あの人の大切な物だってのによ!」
「……話を戻してもらってもよろしいでしょうか?」
「オッホン……そうじゃな」
どうにも前に進まない話しに呆れながらも、リンは真面目に話しを聞く。
内容としては、代わりのものとして『ある場所』に行けとのことだった。
「お主たちが決闘したという山……その隣の山の麓に行くが良い」
「そこに何があるのですか?」
「そこに『ムラマサ』と名乗るものがおる そいつに会ってくるが良い」
「「「ムラマサーッ!?」」」
「なっなんだ急に!?」
今まで黙っていたチビル、レイ、シオンが一斉に大きな声を上げて立ち上がる。(チビルは飛んでいた)
あまりに急な事に驚いて、リンは目をパチクリとさせて固まってた。
「そんなに……凄いのか?」
「スゲーッてレベルじゃねえよ!」
「伝説の刀鍛冶『マラマサ』 その人が鍛えた刀の前じゃこの世に存在する名剣名刀と言われる刀剣の殆どが敵わないって言われる生きる伝説よ!」
「メチャクチャ人を選ぶ性格だから殆ど刀をうってもらった人がいないせいでその手のマニアは喉から手が出るほど欲しがるんですよ!」
「……成る程な」
この三人にそれだけ凄いと言われる人の刀なら、聖剣の代わりとしては十分釣り合うという事なのだろう。
リンとしては、それが貰えるというのなら申し分なかった。
「案内役にはそこの馬鹿息子に任せる」
「聞いてねえぞ」
「今言ったからのう」
「他の案内役はいませんか?」
「お前は何さりげなく断ってんだ」
案内役のムロウが乗り気でないが、それはリンも同じであった。
こうして今話してはいるが、少し前まで敵として戦ったのだから当然のことであるのだが。
「ん~ 他に暇な奴もいないしのう」
「わかったよ! 連れてきゃあいんだろう!?」
「いえ 道さえ教えて頂ければ我々だけでも迎えますので」
「ほ~? そんなこと言って良いのかよ二代目? 気難しい人だから知り合いが行かなきゃまともに会ってもくれねえぞ?」
「そうなのですか?」
「うむ その事もあってムロウに任せたのじゃ」
「そうですか……」
「なあ露骨に嫌そうな顔はやめてくれねえか?」
あからさまに拒絶するリンの姿を見て、内心一人傷つくムロウ。
実際嫌だったのだから仕方がない、隠すつもりリンにはなかった。
「まあもう夜遅いしよう この辺におひらきにしようや?」
「お前が仕切るな 馬鹿息子」
「ですがその意見には私も賛成です リンもまだ戦いの疲れが言えたとは言えませんので」
「まあそうだな 目を覚ましたばっかだしこの辺にしとこうぜ殿様」
そう言って身体を心配してくれたのはシオンとチビルだった。
「ではそうするとしよう 話しは通しておるから明日好きな時に行くと良い ゆっくり身体を休めてな」
「ご心配痛み入ります それではお言葉に甘えて我々は休ませて頂きます」
「よーし! アニキの復活祝いに今日の夜はパーッと騒ぎましょう!」
「休むって言ってんだろうが」
どこかズレている妹分とシオンとチビル、そしてリンは大広間を後にする。
残ったムロウとその父、シンゲンの間に長い沈黙が続いた。
そして、先にその沈黙を破ったのはムロウだった。
「……で? どうなんだよ」
「どうとは何がじゃ?」
「二代目だよ おりゃあ戦ってみたが今のアイツにゃ刀を鍛えてもらえるとは思えんのだがね」
「まあそうじゃろうな」
「今のアイツに必要なのは刀じゃあねえだろ 魔王軍だっていつまでも待っててくれるような奴らじゃねえ 斥候か暗殺者か知らねえが……ここに魔王軍が来た以上は呑気にしちゃいられねえ」
「ふん よく考えておるではないか」
「わかってるならなんで……」
「ホッホッホ まあついて行けばわかるわい」
ムロウは知っていた。
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