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より強くなるために
圧倒
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(攻めも守りも完璧……打つ手なんてどこにあるっていうの!?)
安っぽい挑発に乗ってしまった事を後悔しながらも、シオンは負けたくなかった。
今あるもので勝つ為の手段を模索する。少なくとも剣ではアヤカには敵わない。
(これだけ見せつけられちゃ認めるしかないわね……でもまだこれなら)
拳に力を込め地面へその力を流し込む。
剣では駄目だった、ならば魔法ならばとシオンは考えた。
「地に手を伏せるのは降参とみていいでござるかな!?」
「冗談……勝つために決まってるじゃない!」
触れていた地面が水色に輝き、アヤカに向けて光は突き進む。
「捉えた!」
「これは……水の魔法!?」
アヤカの足元でより一層輝きを増す。
「『アクアフォース』!」
そう言うと、巨大な水の柱が足元から一気に噴出する。
シオンの強さは剣ともう一つ、この『水の魔法』である。
「おーおーこれはまた当たればひとたまりもないでござるな~」
(躱された!?)
捉えたと思った一撃も、いつの間にか躱されている。
シオンは不意をついたかと思ったのだが、これでもまだアヤカには通用しない。
「今のは奥の手でござるか? だとしたら避けてしまって申し訳ないでござる」
「その余裕な態度の方を改めてくれると嬉しいんだけどね……」
もう戦いたくないと思いはするが、この戦いはシオンにとってどうにも負けられない戦いであり、負けたくない戦いである。
この戦いで今後の方針が決まってしまうのだからシオンにとって勝つしか選択肢はない。
(だとしてもなんだってここまで強いのよこの娘! ただ単純に強いだけなんて打つ手無いじゃない!)
その理不尽なまでの強さにシオンは理不尽な怒りがこみ上げてくるのだが、怒っていてもしょうがないと自分の頬を強めに両手で叩いて気を引き締める。
「まだ始まったばかり……負けるわけにはいかないんだから!」
「その意気でござる! もっともっと打ってくるでござるよ!」
「……やっぱちょっとムカつくわね 下に見られてるみたいで」
「でも事実でござろう?」
安い挑発も本当の事を言われると頭にくる。
木刀を握る手に力を込め、シオンから攻め手に入る。
接近戦をしつつ魔法を絡める戦法は、唯一アヤカに対抗出来る打開策であり、アヤカとの違いである。これを活かすしか手は無い。
だが近づこうものなら、一撃一撃が必殺と言っても良い攻撃を、シオンも躱さなくてはならない。
(どれだけ通用するかしらね?)
勢いよく攻め立てるがそれら全て悠々と躱され、魔法も既に見切られたのかそちらも躱され全く通用しない。
「チョロチョロと……ッ!」
「集中力が落ちたでござるな」
「しまっ……!?」
木刀ではなく蹴りによる一撃がシオンの横腹へと叩き込まれる。
ギリギリ同じ方向に飛んだ事により多少は軽減できても直撃は直撃である。体力を奪うには十分だった。
「くっ!」
吹き飛ばされ、なんとか着地するもよろけて膝をつく。
シオンの動き全てがうまくいかないせいで、怒りに任せた攻撃になってしまっていた。
「降参でござるか?」
「はは……まだ終わらせないわよ」
よろよろと立ち上がりアヤカを睨みつけるも、眼に映るの余裕のアヤカの表情。
先程の怒りから今度は呆れへと、感情は切り替わる。
「まったく……なんだってアナタそうも強いのよ」
「一日中強くなる事を考て……それをやってみてるだけでござるよ」
「……馬鹿っぽい回答だけど本当に強いと何も言えないわね」
左手に力を込め、魔力を水色に輝かせる。もう一度アヤカに魔法を向けて再び唱えた。
先程と違い水の柱が出現するのではなく、水の刃がアヤカ向けて放たれる。
(ほう……?)
離れた位置から放たれたという事もあって、アヤカは簡単躱す事ができた。
そして背後にあった木に当たると、その木は真っ二つとなる。
「シオン殿は器用でござるな! まだこんなことができたでござるか」
「ええ……なんならこんなふうにもできるわよ」
左手に再び光が満ちると、今度は大きな水玉がシオンの手に現れる。
すると先程の水の刃が一つではなく、複数の刃となって放たれた。
(これは流石に躱すが吉でござるか……)
当たればひとたまりもないことは確認済みである。ならば躱す事にアヤカは専念するだけだった。
(こんな雑な攻撃で当てられないことはわかっているはず……なら何か裏が?)
決してアヤカはシオンを侮ってなどいない。
だからこそ今できる最善の行動をとり、シオンと戦っている。
(やっぱりそう簡単には当たらないか……)
水の刃を連発するもその全てが当たらない。苛立ちを覚えるが今は我慢する。
「これでっ!」
水の魔力を勢いを良く叩きつけ水の槍が地面から無数に現れアヤカを追跡する。
この膨大な魔力を込めた一撃は、流石にシオンは躱されたくなかった。
「……ふむ」
するとアヤカは逃げるのをやめ、鞘はないが『抜刀術』の構えをとった。
「村正流擬似抜刀術……『蛟』」
鞘はなく、本物の刀でもない。
だがその木刀の一撃が、渾身の魔力を帯びた水の槍を一瞬にして斬り伏せる。
「なっ……!?」
「そこでござる」
今まで見せた中で最速の速さでシオンへとアヤカは走る。
シオンへのあと一歩というところで踏み込み、叩きつけようとして捉えた筈の視界は、アヤカの想像したものと違っていた。
「何と……!?」
アヤカは、シオンを斬りふせる直前でよろけたのだ。
安っぽい挑発に乗ってしまった事を後悔しながらも、シオンは負けたくなかった。
今あるもので勝つ為の手段を模索する。少なくとも剣ではアヤカには敵わない。
(これだけ見せつけられちゃ認めるしかないわね……でもまだこれなら)
拳に力を込め地面へその力を流し込む。
剣では駄目だった、ならば魔法ならばとシオンは考えた。
「地に手を伏せるのは降参とみていいでござるかな!?」
「冗談……勝つために決まってるじゃない!」
触れていた地面が水色に輝き、アヤカに向けて光は突き進む。
「捉えた!」
「これは……水の魔法!?」
アヤカの足元でより一層輝きを増す。
「『アクアフォース』!」
そう言うと、巨大な水の柱が足元から一気に噴出する。
シオンの強さは剣ともう一つ、この『水の魔法』である。
「おーおーこれはまた当たればひとたまりもないでござるな~」
(躱された!?)
捉えたと思った一撃も、いつの間にか躱されている。
シオンは不意をついたかと思ったのだが、これでもまだアヤカには通用しない。
「今のは奥の手でござるか? だとしたら避けてしまって申し訳ないでござる」
「その余裕な態度の方を改めてくれると嬉しいんだけどね……」
もう戦いたくないと思いはするが、この戦いはシオンにとってどうにも負けられない戦いであり、負けたくない戦いである。
この戦いで今後の方針が決まってしまうのだからシオンにとって勝つしか選択肢はない。
(だとしてもなんだってここまで強いのよこの娘! ただ単純に強いだけなんて打つ手無いじゃない!)
その理不尽なまでの強さにシオンは理不尽な怒りがこみ上げてくるのだが、怒っていてもしょうがないと自分の頬を強めに両手で叩いて気を引き締める。
「まだ始まったばかり……負けるわけにはいかないんだから!」
「その意気でござる! もっともっと打ってくるでござるよ!」
「……やっぱちょっとムカつくわね 下に見られてるみたいで」
「でも事実でござろう?」
安い挑発も本当の事を言われると頭にくる。
木刀を握る手に力を込め、シオンから攻め手に入る。
接近戦をしつつ魔法を絡める戦法は、唯一アヤカに対抗出来る打開策であり、アヤカとの違いである。これを活かすしか手は無い。
だが近づこうものなら、一撃一撃が必殺と言っても良い攻撃を、シオンも躱さなくてはならない。
(どれだけ通用するかしらね?)
勢いよく攻め立てるがそれら全て悠々と躱され、魔法も既に見切られたのかそちらも躱され全く通用しない。
「チョロチョロと……ッ!」
「集中力が落ちたでござるな」
「しまっ……!?」
木刀ではなく蹴りによる一撃がシオンの横腹へと叩き込まれる。
ギリギリ同じ方向に飛んだ事により多少は軽減できても直撃は直撃である。体力を奪うには十分だった。
「くっ!」
吹き飛ばされ、なんとか着地するもよろけて膝をつく。
シオンの動き全てがうまくいかないせいで、怒りに任せた攻撃になってしまっていた。
「降参でござるか?」
「はは……まだ終わらせないわよ」
よろよろと立ち上がりアヤカを睨みつけるも、眼に映るの余裕のアヤカの表情。
先程の怒りから今度は呆れへと、感情は切り替わる。
「まったく……なんだってアナタそうも強いのよ」
「一日中強くなる事を考て……それをやってみてるだけでござるよ」
「……馬鹿っぽい回答だけど本当に強いと何も言えないわね」
左手に力を込め、魔力を水色に輝かせる。もう一度アヤカに魔法を向けて再び唱えた。
先程と違い水の柱が出現するのではなく、水の刃がアヤカ向けて放たれる。
(ほう……?)
離れた位置から放たれたという事もあって、アヤカは簡単躱す事ができた。
そして背後にあった木に当たると、その木は真っ二つとなる。
「シオン殿は器用でござるな! まだこんなことができたでござるか」
「ええ……なんならこんなふうにもできるわよ」
左手に再び光が満ちると、今度は大きな水玉がシオンの手に現れる。
すると先程の水の刃が一つではなく、複数の刃となって放たれた。
(これは流石に躱すが吉でござるか……)
当たればひとたまりもないことは確認済みである。ならば躱す事にアヤカは専念するだけだった。
(こんな雑な攻撃で当てられないことはわかっているはず……なら何か裏が?)
決してアヤカはシオンを侮ってなどいない。
だからこそ今できる最善の行動をとり、シオンと戦っている。
(やっぱりそう簡単には当たらないか……)
水の刃を連発するもその全てが当たらない。苛立ちを覚えるが今は我慢する。
「これでっ!」
水の魔力を勢いを良く叩きつけ水の槍が地面から無数に現れアヤカを追跡する。
この膨大な魔力を込めた一撃は、流石にシオンは躱されたくなかった。
「……ふむ」
するとアヤカは逃げるのをやめ、鞘はないが『抜刀術』の構えをとった。
「村正流擬似抜刀術……『蛟』」
鞘はなく、本物の刀でもない。
だがその木刀の一撃が、渾身の魔力を帯びた水の槍を一瞬にして斬り伏せる。
「なっ……!?」
「そこでござる」
今まで見せた中で最速の速さでシオンへとアヤカは走る。
シオンへのあと一歩というところで踏み込み、叩きつけようとして捉えた筈の視界は、アヤカの想像したものと違っていた。
「何と……!?」
アヤカは、シオンを斬りふせる直前でよろけたのだ。
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