３８歳、オタク女子。婚活始めました。

春が来た…のか？３人目。③

居酒屋を出て駅のロータリーに向かう数メートル。到着すればもうお別れである。
酔っていたせいもあってか無性に手を繋ぎたくなった。
でも「手を繋ぎませんか。」の一言が言えない。
というか、こんな事って初回で言ってもいいものだろうか…。
 
そんな事を考えて、もどかしい気持ちになりながら彼の後ろを歩いていた。 


横断歩道を渡っている最中、真ん中辺りで急に立ち止まったので、
【？】と思っていると、Ｓさんは顔を近づけて覗いてきた。
【何か付いてるかな？近っ！】と思った瞬間、口びるが触れた。

全然思いもしなかった。不意打ち際のキス。
わずか２～３秒位の短い時間のフレンチキス…。


「キス…しちゃった。美沙ちゃん。酔ってるでしょー。」
Ｓさんはニコッと笑ってそう言うと再び歩き始めた。


【！？】
今のは何？何なのだ！？
酔ってるでしょ。の意味が良くわからないのだが…。

たった数秒間の間だったけど、確かに唇の感触はあった…。
何が起こったのか、理解出来ず頭が真っ白になる…。


しかし、Ｓさんにキスの話しを聞く暇もなく、あっという間にロータリーに着いてしまう。
代行を待たせているので時間が取れない…。

「じゃ、また今度…。」
Ｓさんはそう言うと代行の方に向かって行った。



Ｓさんの方を見送りタクシー乗り場に向かう。
久しぶりのキス…。まるでドラマやアニメのワンシーンの様な…。


気がない人にキスなんてしないよね…。
これって、もう一度会ってくれるんだよね…。
嬉しい…。

タクシーを待つ間、唇に手を当ててはニヤケて余韻に浸る、危ないアラフォー女がここに居たのは言うまでもない。