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第2巻 第10話:仲間の絆!ことだま戦士の誓い!
しおりを挟むことだま学園の中央広場に夕日が差し込んでいた。無言との戦いから一日が経過し、学園は一見平穏を取り戻したように見えた。しかし、全ての生徒と教師たちは知っていた。これは嵐の前の静けさに過ぎないことを。
「言霊の王の復活まで、あと一日か...」
天音は中央広場のベンチに座り、夕焼けを見つめていた。まだ彼の言霊は戻っていない。「言霊再生」の代償は想像以上に重かった。
「天音くん」
振り返ると、倉田が近づいてきた。彼女の手には小さな包みがあった。
「風香さんから。『元気づけになれば』って」
天音は包みを受け取った。中にはさわやかな香りのするハーブティーと手作りのクッキーが入っていた。
「風香さんが作ったの?」
「うん。彼女、料理上手なんだって」
天音は微笑んだ。風香のこんな一面は知らなかった。彼女は常に強く、厳しい表情をしているイメージだったが、こういう繊細な面もあるのだ。
「今、彼女とシオンくんは獅堂教授と作戦会議をしてるわ。明日の準備のために」
「そうか...」
天音は少し寂しそうな表情をした。言霊を失った今、作戦会議に参加しても役に立たないと思ったのだろう。
「天音くん、落ち込まないで。きっと言霊は戻ってくるよ」
「ありがとう、倉田さん。でも...」
彼は自分の手を見つめた。
「言霊がなくても、何か役に立ちたいんだ。明日の戦いで」
倉田は悲しそうな表情をした。彼女は天音の気持ちがよくわかる。自分自身も言霊の力を持たず、仲間たちの戦いを傍観するしかない立場なのだから。
「私にもその気持ち、よくわかるよ」
「倉田さん...」
「でも、私たちにもできることはあるはず。だから...」
彼女の言葉が途切れたのは、突然の気配を感じたからだった。
「天音、話があるんだが」
シオンが広場に立っていた。彼はいつものように木刀を腰に差し、冷静な表情をしていた。だが、どこか普段と違う雰囲気があった。
「シオン...」
「少し時間があるか?」
「ええ、もちろん」
天音は立ち上がった。倉田はその場を離れようとしたが、シオンが止めた。
「倉田も来ていい。聞かせたいことがある」
三人は学園の裏手にある小さな丘に向かった。そこには一本の大きな桜の木があり、学園全体を見渡せる絶好の場所だった。
丘の上には風香が既に待っていた。彼女は天音たちの姿を見つけると、少し緊張した様子で立ち上がった。
「天音くん...」
「風香さん、クッキーありがとう」
天音が笑顔で言うと、風香は少し照れたように頬を赤らめた。
「ど、どういたしまして...味はどう?」
「まだ食べてないけど、きっと美味しいよ」
シオンが咳払いをした。
「本題に入ろう」
彼は真剣な表情で天音を見つめた。
「俺は...言霊を憎んでいた。お前も知っての通りだ」
天音は静かに頷いた。シオンの言霊への憎しみは、これまでの言動からも明らかだった。
「だが、お前たちとの戦いや、無言との対決を通じて...考えが変わってきた」
風香が少し驚いた表情を見せた。シオンがそんな告白をするとは思ってもいなかったようだ。
「なぜ言霊を憎んできたのか...その理由を話そう」
シオンは桜の木に背を預け、遠い目をした。
「俺が五歳の時...家族がいた。父と母と、二歳の妹がな」
風が吹き、桜の葉が揺れる音だけが聞こえる。
「ある日、俺は『消えて』と言った」
彼の声が震えた。
「何気ない言葉だった。冗談のつもりだった...だが、その瞬間...」
シオンの目に痛みの色が浮かんだ。
「家族が本当に...消えた」
天音と倉田は息を呑んだ。風香は既に聞いていたのか、黙って目を閉じていた。
「完全に消えたわけじゃない。透明になったんだ。だが...実体はあったかどうか...」
シオンは苦しそうに続けた。
「気がついた時には、彼らはもういなかった。声も聞こえない。感触もない。まるで...この世から消えてしまったかのように」
「シオン...」
天音は言葉を失った。こんな悲劇があったとは。
「それから俺は言霊の力を持つことを知った。同時に、その力を憎むようになった。言葉に力を与えるなど...誰もが間違いを犯す可能性がある以上、危険すぎる」
シオンは空を見上げた。
「だからこそ、言霊を使いながらも、言葉そのものを信じないという矛盾した道を選んだ」
「でも...なぜ言刃を...?」
天音の質問に、シオンは薄く笑った。
「言葉を切り裂く力だ。皮肉だろ?俺は言葉を否定するために、言葉の力を使う」
風が強くなり、桜の葉が舞い上がった。
「だが、お前との出会いで...」
シオンは天音をまっすぐ見た。
「言葉には破壊の力だけでなく、繋げる力もあると気づいた。お前の『響け、言霊』がそれを証明している」
天音は静かに聞いていた。シオンの告白が、彼の心の奥深くから来ていることを感じ取っていた。
「無言との戦いで、お前が言霊を失ってまで俺たちを救った時...俺は決めたんだ」
シオンが真剣な表情で言った。
「もう言葉を拒絶しない。受け入れ、共に戦うと」
風香が前に出た。
「私も...天音くんに救われた一人。昔の私なら、シオンのような言霊の否定者とは絶対に手を組まなかったわ」
彼女は照れくさそうに微笑んだ。
「でも今は違う。シオンとも...天音くんとも...共に戦いたい」
「風香さん...シオン...」
天音は感動に言葉を詰まらせた。
「でも、お前に伝えなければならないことがある」
シオンの表情が一転、厳しいものになった。
「『言霊の王』についてだ」
獅堂教授から少しは聞いていたが、シオンが知っているとは驚きだった。
「王については、古文書よりも俺の方が詳しいかもしれない」
「どうして...?」
「俺の家系は...かつて王に仕えていた」
この告白に、風香も驚いた様子だった。彼女も初めて聞く話のようだ。
「仕えていた...?」
「ああ。『紫苑』の名は、王の側近の家系だった。代々、王の言霊を記録し、研究してきた」
シオンは苦い表情で続けた。
「言い伝えでは、王は『全ての言葉を支配する』力を持つという。単に言霊を操るのではなく、言葉そのものを自在に操る...」
「それはどういう意味?」
天音が問うと、シオンは暗い表情で答えた。
「言葉の意味を変える力だ。例えば『光』という言葉を『闇』の意味に変えることができる。約束や誓いを、まったく逆の意味に変えることも...」
天音は恐ろしさを感じた。言葉の意味を自在に変えられるなら、全ての会話、約束、祈り...すべてが無意味になる。
「そんな力が現実に...?」
「ああ。だからこそ、王は封印されたんだ。言葉の意味が保証されないなら、社会そのものが成り立たない」
シオンの説明に、全員が重い沈黙に包まれた。
「だが...」
シオンは再び口を開いた。
「王の力には弱点がある。それは...『響け、言霊』のような、心に直接響く力だ」
天音は驚いた。
「僕の...力が?」
「ああ。王が言葉の意味を変えても、心と心が直接響き合う力は変えられない。だからこそ...」
シオンは真剣な表情で天音を見た。
「お前の力が戻らなければならない。それが、王に対抗する唯一の手段かもしれない」
「でも...どうやって?」
天音は自分の手を見つめた。「言霊再生」の代償で失われた力が、簡単に戻るとは思えない。
「それについては...」
風香が小さな袋を取り出した。
「これを見て」
袋の中から、青く輝く小さな水晶が出てきた。
「これは?」
「私の家に伝わる『風の宝玉』の欠片よ。言霊を増幅する力がある」
風香は真剣な表情で続けた。
「理論上は、失われた言霊を呼び覚ますことも可能なはず」
「本当に?」
「確証はないわ。でも...試す価値はある」
シオンも頷いた。
「明日の戦いまでに、お前の力を取り戻す必要がある」
天音は水晶を見つめた。青く輝くその中に、かすかな希望を感じる。
「やってみよう」
風香は小さな円を地面に描き、その中心に水晶を置いた。
「天音くん、ここに座って」
天音は言われた通り、円の中に座った。風香とシオンは円の外に立ち、互いに顔を見合わせた。
「準備はいい?」
天音は深呼吸して頷いた。彼は両手を水晶の上に翳した。
「風香さん、シオン...僕を信じて」
「ええ、もちろん」
「当然だ」
二人の言葉に力をもらい、天音は目を閉じた。
「響け...心の声...」
彼は心の中で叫んだ。音にならない呼びかけ。失われた自分の言霊への懇願。
水晶が僅かに輝きを増した。
「続けて、天音くん」
「響け...」
天音は自分の内側に意識を向けた。言葉の力、心の声...それは完全に消えたわけではない。どこかに眠っているはずだ。
「この光...!」
倉田が驚いた声を上げた。水晶の光が急激に強まり、天音の体も青白く輝き始めた。
「天音...!」
シオンが心配そうに一歩前に出たが、風香が彼を止めた。
「大丈夫。これは...言霊が応えてる証拠よ」
天音の周りに風が集まり始めた。それは風香の力ではない。天音自身の内側から生まれる風だった。
「響け...言霊...!」
天音の心の叫びが、かすかに実体化し始める。目に見える波動となって広がっていく。
「戻ってきてる...!」
風香の表情に喜びが浮かんだ。
水晶の光が最大限に強まり、天音の体を完全に包み込んだ。あまりの眩しさに、皆が目を覆わなければならなかった。
光が収まると、天音が立ち上がっていた。彼の周りには波動が漂い、目には新たな輝きがあった。
「戻ったよ...『響け、言霊』が...!」
天音は両手を広げ、波動を解放した。穏やかな波が丘全体に広がり、皆の心に温かい感触を残す。
「本当に戻ったの?」
風香が確認するように尋ねた。
「ええ。しかも...前より強く」
天音は自分の力を感じていた。「言霊再生」の代償として失われていた言霊は、より深い形で戻ってきたようだった。まるで一度死んで復活したかのように、より鮮明に、より強く。
「よかった...」
シオンも安堵の表情を見せた。
「これで明日の戦いに...」
「いや、今夜だ」
シオンの表情が一変した。彼は空を見上げた。
「見ろ」
皆が空を見上げると、雲が異様な形で動いているのが見えた。それは渦を巻き、学園の上空に集まっていく。
「これは...」
「無言の仕業だ。予定より早く動き出したようだ」
シオンの声には緊張が滲んでいた。
「急いで獅堂教授に報告しなきゃ!」
風香が走り出そうとした瞬間、地面が揺れ始めた。
「地震...?」
いや、違う。学園全体が震えているのだ。まるで巨大な力が目覚めようとしているかのように。
「これは...『真言の塔』の封印が...!」
シオンが叫んだ。
「無言が最後の封印を解こうとしている!」
「行くぞ!」
天音が叫び、三人は丘を駆け降りた。倉田も後を追う。
「私も行くよ!」
「倉田さん、危険だ!」
シオンが止めようとしたが、彼女は頑として譲らなかった。
「私にもできることがあるはず!」
天音は倉田の決意を見て、頷いた。
「一緒に行こう」
四人は急いで学園の中央広場に向かった。そこには既に獅堂教授と水織教官が立っていた。
「先生!」
「来たか、天音!」
獅堂教授は天音を見て、驚いた表情を見せた。
「言霊が...戻ったのか?」
「はい!」
「それは...」
教授の言葉が途切れたのは、大きな音が響いたからだった。
「真言の塔」の最上部から、光の柱が空に向かって伸びていた。
「最後の封印が解かれる...!」
教授の声には焦りが混じっていた。
「急いで塔へ向かうぞ!」
一行は「真言の塔」に向かって走った。塔の入口には既に多くの生徒たちが集まり、混乱の様子を見せていた。
「道を開けろ!」
獅堂教授の声に、生徒たちが慌てて脇に寄る。
塔の内部は異様な雰囲気に包まれていた。床から天井まで、青白い光の筋が走り、空気が震えている。
「最上階へ!」
獅堂教授の先導で、一行は螺旋階段を駆け上がった。
最上階の「星見の間」に到着すると、そこには想像を絶する光景が広がっていた。
部屋の中央に無言が立ち、彼の周りに七つの光の玉が浮かんでいた。七つの封印の力だ。そして、床には複雑な魔法陣が描かれ、強烈な光を放っていた。
「間に合った...!」
獅堂教授が安堵の表情を見せた。儀式はまだ完了していないようだ。
「無言!」
天音が叫んだ。
無言は振り返り、天音たちを見た。彼の表情は意外なものだった。喜びに満ちていたのだ。
「よく来た、天音...そして皆」
彼の声には敵意がなかった。
「お前たちが来るのを待っていた」
「何...?」
「儀式に必要だったのだ。『響け、言霊』の力が...」
天音は警戒の表情を見せた。
「僕の力を奪うつもりか?」
「違う」
無言が首を横に振った。
「お前の力は奪わない。むしろ...解放するのだ」
彼は手をかざし、七つの光の玉が天音に向かって動き始めた。
「『言霊の王』の封印を解くためには、純粋な『響け、言霊』の力が必要だ。お前のような...王の血を引く者の力がな」
「王の血...?」
天音は衝撃を受けた。何を言っているのか。
「そう...お前は知らなかったのか?」
無言の目に驚きの色が浮かんだ。
「お前は『言霊の王』の末裔だ」
「嘘だ!」
シオンが叫んだ。
「天音がそんなはずない!」
「真実だ」
無言は静かに言った。
「彼の中に眠る力...それが何よりの証拠だ」
天音は自分の体を見つめた。確かに、「響け、言霊」は特別な力だと言われてきた。だが、それが「言霊の王」の血筋によるものだとは...
「信じないで、天音くん!」
風香が彼の肩をつかんだ。
「無言の言うことは全て嘘よ!」
しかし、天音の心に疑念が生まれ始めていた。自分の力の起源...ずっと知りたかったことだ。
「証明してやろう」
無言が手をかざすと、七つの光の玉が天音の周りを回り始めた。
「この封印の力は王の血に反応する。お前がただの言霊使いなら、何も起こらない」
光の玉が天音に近づくにつれ、彼の体から青白い光が放たれ始めた。まるで光の玉に呼応するかのように。
「見たか...反応している」
「天音くん!」
風香の叫びも届かないほど、天音は光に包まれていた。
その瞬間、彼の心に声が響いた。
「目覚めよ...我が血を継ぐ者...」
それは深く、古い声だった。まるで千年の時を超えて語りかけてくるような声。
「おまえの力こそが...世界を変える...」
天音は混乱していた。これが「言霊の王」の声なのか?自分の中に眠っていた記憶なのか?
だが、次の瞬間、別の声が彼の心に届いた。
「天音...」
シオンの声だった。
「お前は王ではない...」
そして、風香の声も。
「あなたは天音...私たちの仲間よ」
倉田の声も。
「天音くん、戻ってきて...」
さらに獅堂教授の声も。
「お前自身の道を行け...天音」
これらの声は、光を通してではなく、心と心の繋がりを通して届いていた。「響け、言霊」の力によって。
天音は目を開いた。彼の体から強烈な波動が放たれ、七つの光の玉を押し返した。
「なに...?」
無言が驚いた表情を見せた。
「お前が拒否するのか...?」
「僕は...『言霊の王』の末裔かもしれない」
天音は静かに言った。
「だが、それが何だ?僕は僕自身だ」
彼は友人たちを見た。
「僕には...進むべき道がある。仲間と共に」
天音の周りの波動が強まり、七つの光の玉が砕け始めた。
「待て...!」
無言が叫んだが、もう遅かった。
七つの光の玉がすべて砕け散り、その光が部屋中に散らばった。
「封印が...解けない...?」
無言の表情に混乱が浮かんだ。
「王の計画が...」
「もう終わりだ、無言」
獅堂教授が前に出た。
「言霊の王は封印されたままだ。今回も、お前の計画は失敗した」
無言は力なく膝をついた。
「なぜだ...?なぜ天音が拒否する...?彼は王の血を引く者なのに...」
「血筋より大切なものがある」
天音が静かに言った。
「仲間との絆...そして、自分自身の選択だ」
無言はしばらく沈黙した後、ゆっくりと立ち上がった。
「わかった...今回は負けを認めよう」
彼は天音をじっと見つめた。
「だが、これで終わりではない。いつか...王は必ず復活する」
無言の体が徐々に透明になっていった。
「その時、お前は選択を迫られるだろう...天音」
彼の最後の言葉と共に、無言の姿は完全に消えた。
部屋に静寂が戻った。
「終わったのか...?」
風香が不安そうに尋ねた。
「ああ...今回の危機は去った」
獅堂教授が安堵の表情で言った。
「無言の言っていた『言霊の王』の復活は阻止された」
天音は自分の手を見つめた。
「僕が...王の血を引く者...?」
「それが真実かどうかは...今はわからない」
獅堂教授が優しく言った。
「だが、お前が自分の道を選んだこと...それが何より重要だ」
シオンが天音に近づいた。
「血筋なんて関係ない。大事なのは、自分の選択だ」
風香も頷いた。
「そうよ。あなたは私たちの仲間...ことだま戦士よ」
天音は微笑んだ。仲間たちの温かさに包まれ、彼の心から不安が消えていった。
「ありがとう...みんな」
その瞬間、天音の体から優しい光が広がり、部屋全体を包み込んだ。それは「響け、言霊」の最も純粋な形だった。心と心を繋ぐ光。
光の中で、天音は決意を口にした。
「僕たちは...これからも共に戦おう」
「ああ」
「ええ」
シオンと風香が頷いた。
「ことだまの真実を探り、言霊の力を正しく使うため...」
三人は互いの手を重ね合わせた。
「ことだま戦士として...誓おう」
三人の周りに、それぞれの言霊の力が輝いた。天音の「響け、言霊」、風香の「風の言霊」、シオンの「言刃」。三つの力が調和し、美しい光となって部屋を満たした。
「素晴らしい...」
獅堂教授が感嘆の声を上げた。
「これこそが真の『言霊の共鳴』だ」
三人の力が一つになり、学園全体を包み込むように広がっていく。それは言葉にならない約束、誓いの力だった。
---
数日後、学園は平常を取り戻していた。失われた言霊を持つ生徒たちも、天音たちの力によって徐々に回復していった。
中央広場で、天音、風香、シオン、倉田の四人が集まっていた。
「これからどうするの?」
倉田が尋ねた。
「言霊の王の話...まだ終わったわけではないのよね?」
「ああ」
シオンが頷いた。
「無言は消えたが、『言霊の王』の脅威はまだある。いつか...また復活の危機が訪れるだろう」
「その時は...また三人で立ち向かいましょう」
風香が決意を込めて言った。
天音は空を見上げた。
「僕の正体...僕の力の起源...それもいつか明らかになるかもしれない」
彼は友人たちを見た。
「でも、それは今は重要じゃない。大切なのは...」
「仲間との絆だ」
シオンが言葉を継いだ。珍しく、彼の表情には柔らかさがあった。
天音は微笑んだ。どんな運命が待っていようと、仲間がいれば乗り越えられる。そう確信していた。
だが、シオンの心の奥深くには、まだ語られない秘密が隠されていた。彼だけが知る真実。天音と「言霊の王」の関係について...そして、自分自身の使命について...
それはまた、別の物語。
(第2巻終)
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