『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ

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第10話「ダンジョンのレベルアップ」

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朝露がみかげ村を包む早朝、御影要は村全体に意識を広げながら状況を確認していた。ダンジョンの暴走から三日が経ち、村はようやく平穏を取り戻しつつあった。東側の亀裂は埋められ、壊れた家屋も修復された。住民たちは日常を取り戻そうと、それぞれの役割に戻っていた。

しかし、表面的な平穏の下には緊張が漂っていた。誰が儀式を妨害したのか、その目的は何なのか。未だ解明されない謎が、用心深さを強いていた。

オーウェンは村の防衛体制を抜本的に強化していた。村の周囲に見張り台を増設し、冒険者たちも交代で警備に当たるようになった。トーマスはアルフレッド騎士に詳細な報告を送り、王国からの支援を要請していた。

エリシアとミラはダンジョンの研究に没頭していた。二人は朝早くから、変化したダンジョンの調査に向かっていた。

「御影さん、起きてる?」

リオが広場に出てきて、空に向かって声をかけた。彼の手には籠一杯の野菜があった。

「今朝は収穫がいいよ。畑が回復してる」

要は地面に「おはよう」と描いた。リオの元気な姿を見るのは嬉しかった。彼はこの村の最初の住民として、常に前向きな姿勢を崩さない。

「御影さん、ダンジョンはどう?」

リオは心配そうに尋ねた。彼も暴走の恐ろしさを目の当たりにしたからだ。

「安定している」と要は答えた。「ただし変化も」

確かに、ダンジョンは暴走後、大きく変化していた。レベル2に上昇し、構造が複雑化し、魔物の種類も増えていた。それはあくまで「予期せぬ進化」であり、計画的なものではなかったが、結果としてダンジョンの可能性は広がっていた。

「エリシアさんとミラさんが調査中なんだよね」

リオは空を見上げた。

「ねえ、御影さん。これからどうなるんだと思う?村は、ダンジョンは、そして僕たちは」

難しい問いだった。要自身も確かな答えを持っていなかった。だが、一つだけ確かなことがあった。

「共に成長する」と要は地面に描いた。「住民と村と私が」

リオはその言葉に安心したように微笑んだ。

「うん、そうだね。一緒に進んでいこう」

彼は籠を持って厨房へと向かった。今日は市場の日で、多くの訪問者が予想される。フィンの指示で、特産品の料理も用意されるという。

要は意識をダンジョンへと向けた。エリシアとミラの調査の様子が気になった。

ダンジョン内では、二人が中央の大部屋で会話していた。

「構造がより有機的になっているわ」

エリシアが壁を調べながら言った。

「まるで生きているような柔軟性を持っている」

ミラは青い光の筋が走る床を見つめていた。

「ダンジョンが自己修復能力を獲得しています。通常のダンジョンでも見られる現象ですが、この速度は異例です」

彼女は手を床に当て、目を閉じた。

「御影さんの意識がより深くダンジョンに浸透している。暴走が、皮肉にも両者の結びつきを強めたようです」

エリシアは精霊石を調べた。石は台座に戻り、安定して青く輝いていた。

「精霊石も変化しているわ。内部の魔力の流れがより整理されている。まるで…学習したかのように」

二人の観察は正確だった。要も同じことを感じていた。暴走によって生じた混乱は収まったが、その過程でダンジョンと自分の意識の境界がより曖昧になった。村としての自分と、ダンジョンとしての側面が、より一体化しつつあるのだ。

「御影さん、聞こえますか?」

ミラが空中に向かって言った。彼女はダンジョンマスターの血を引く者として、要の存在を敏感に感じ取れるようだった。

「私たちの計画していたダンジョン同化は失敗しましたが、結果として似た状態に近づいています。しかし、それは制御された過程ではなく、突発的な変化。これからはより慎重に進める必要があります」

要も同意見だった。今後は拙速に物事を進めるべきではない。まずは今の状態を正確に理解し、安全な発展の道を探るべきだ。

「新しい発見があります」

ミラが奥の通路を指さした。

「暴走によって新たな区画が形成されました。まだ完全には探索できていませんが、先ほど確認したところ、より高レベルの魔物が存在しているようです」

これは意外な情報だった。要はその新区画に意識を向けようとしたが、まだ完全には把握できなかった。ダンジョンの一部が自分の意識から独立したかのようだった。

「調査が必要ですね」

エリシアが言った。

「新区画の性質を理解できれば、ダンジョンの進化の方向性も見えてくるはず」

二人は慎重に新区画への探索を始めることにした。要は彼女たちの安全のために、できる限りダンジョン内の状況を把握しようと努めた。

村では、フィンの指揮の下、市場の準備が進んでいた。オーウェンは警備体制を見直し、トーマスは訪問者の身元確認の手順を厳格化していた。前回の事件から、村全体が危機管理の意識を高めていた。

正午近く、村に最初の訪問者が現れた。商人たちや冒険者たち、そして珍しく、王国からの使者も含まれていた。アルフレッド騎士の報告を受けて、王国が調査官を派遣したのだろう。

トーマスとオーウェンが使者を出迎え、丁寧に応対した。使者は中年の男性で、王国の紋章が入った正装を身につけていた。

「ロバート・ウィンザー、王国魔法省からまいりました」

彼は自己紹介した。

「先日の異常事態について調査するよう命じられています。御影様にもご挨拶したいのですが」

要は使者について警戒していた。前回のザカリアスの訪問も王国からだと称していたが、彼が儀式妨害に関わっていた可能性も否定できない。

しかし、直接的な証拠はなく、王国との関係も重要だ。要はロバートに会うことを承諾した。

「御影様、お会いできて光栄です」

ロバートは広場の中央で頭を下げた。

「王国としては、このような特殊な村とダンジョンの存在は極めて貴重だと考えています。今回の事件解明に全面的に協力させていただきたく」

彼の態度は誠実に見えた。要は「協力します」と地面に描いた。

「ありがとうございます。まずはダンジョンの状態を確認させていただけますか?」

要はオーウェンに目配せし、彼がロバートに応じた。

「エリシアとミラが現在調査中です。彼らの帰りを待ちましょう。それまでに、村の被害状況をご案内します」

オーウェンはロバートを村の東側へと案内した。要は二人の会話を注意深く聞いていた。ロバートは質問を投げかけながらも、不審な行動は見せていなかった。

市場では人々で賑わい始めていた。フィンの予測通り、ダンジョンの噂を聞きつけた冒険者たちが多く訪れていた。現在はダンジョンへの立ち入りを制限しているため、彼らは再開を待ちながら、村で食事や買い物を楽しんでいた。

「御影様、市場は順調です」

フィンが報告した。

「噂は広がっていますが、まだ詳細は知られていないようです。『ダンジョンが進化した』ということだけで、暴走の原因などは伏せています」

要はフィンの手際の良さに感謝した。彼の商人としての経験が、情報管理にも役立っていた。

午後、エリシアとミラが村に戻ってきた。二人は疲れた様子だったが、目には興奮の色があった。

「御影さん、すごい発見があったわ!」

エリシアが広場に駆け寄ってきた。オーウェンとロバートも話を聞くために近づいてきた。

「新区画には、完全な『ダンジョンコア』が形成されていたの」

ミラが説明を補った。

「ダンジョンコアは、ダンジョンの心臓部とも言える存在。通常、自然発生したダンジョンにのみ存在するものです」

ロバートは驚きの表情を浮かべた。

「それは…非常に珍しい現象です。人工的に作られたダンジョンが、自然のダンジョンの性質を帯びるとは」

エリシアは興奮した様子で続けた。

「しかも、コアの周りには新種の魔物が。スライムの進化形のような存在よ。より知性を持ち、複雑な行動が可能になっている」

ミラは静かに付け加えた。

「そして、コアには御影さんの意識の一部が宿っているようです。まるで…分身のような」

この情報は要にとっても驚きだった。確かに、新区画には自分の意識が届きにくいと感じていたが、それが自分の分身のような存在だったとは。

「これは…」

ロバートは言葉を選びながら言った。

「ダンジョンの進化としては異例中の異例です。通常、ダンジョンが意識を持つには何百年もの時間がかかると言われています。しかし、御影様の存在がそのプロセスを大幅に短縮したようですね」

要はこの現象について考えを巡らせた。もし新区画に自分の分身のような存在があるなら、それをより強く結びつけることで、ダンジョン全体への支配力を高められるかもしれない。

「同時に、これは危険も意味します」

ミラが警告した。

「御影さんの意識が分散すれば、村への集中力も低下する可能性があります。バランスを取ることが重要です」

一同は重要な岐路に立っていることを理解した。これからどう進むべきか、慎重に検討する必要がある。

「御影様」

ロバートが丁寧に頭を下げて言った。

「王国としては、このダンジョンの進化を詳しく調査したいと考えています。もちろん、村の安全を第一に。御影様とダンジョンの関係を深く理解することは、魔法研究の大きな進歩になるでしょう」

要は慎重に考えた後、「条件付きで」と答えた。

「村の自治を尊重する」「研究結果を共有する」「危険な実験はしない」という三つの条件を提示した。

ロバートは快く同意した。

「もちろんです。私たちは御影様と村の協力者でありたいと思っています」

その日の夕方、村の住民と王国の使者、そして冒険者の代表たちが集まり、今後の方針について話し合った。エリシアとミラは新区画の詳細な地図を広げ、発見したことを説明した。

「新区画は大きく三つの部分に分かれています」

ミラが説明した。

「入口に近い『試練の間』、中央の『迷宮区画』、そして最奥の『コア室』です」

エリシアが続けた。

「試練の間には、進化したスライムが数種類。通常のものより大きく、より知性があります。迷宮区画は常に形を変える通路と部屋からなり、方向感覚を失いやすい特性があります」

「そして、コア室には守護者が」

ミラが静かに言った。

「スライムキングと呼ぶべき存在です。通常のスライムの何倍もの大きさで、明確な知性を持っています。私たちに敵意は示しませんでしたが、コアには近づかせませんでした」

オーウェンが戦略的な視点から意見を述べた。

「この新区画は、村の防衛にも活用できるのではないでしょうか。侵入者がいれば、ダンジョンの魔物が対応してくれる」

フィンは経済的な側面から考えた。

「より高レベルのダンジョンは、より価値の高い魔力結晶や素材を産出します。村の収入源としても期待できますね」

ロバートは魔法研究の観点から興味を示した。

「コアの性質を理解することで、御影様の存在の本質に迫れるかもしれません。それは村全体の強化にも繋がるでしょう」

要はこれらの意見を聞きながら、ダンジョンの新たな可能性を感じていた。確かに危険はあるが、適切に管理すれば、村の大きな力になるはずだ。

「段階的に」と要は方針を示した。「まず研究を」

一同は頷いた。まずは新区画の性質を十分に理解し、安全な活用法を見出すこと。それが最優先課題だ。

夜が更けていく中、要は村全体とダンジョンの両方に意識を広げていた。村では住民たちが休息を取り、ダンジョン内では魔物たちが活動している。そして新区画のコアからは、微かだが確かな共鳴を感じていた。

要は試みに、その共鳴に向かって意識を集中してみた。まるで自分自身の別の側面と対話するかのような不思議な感覚だった。

「私は…ダンジョン…」

コアからの応答とも言える感覚があった。言葉というよりは、感情や意図の共有に近い。

「私たちは一つ」

要はそう伝えようとした。コアとの共鳴は徐々に強まり、ダンジョン全体がその調和に反応しているようだった。壁や床が微かに脈動し、魔物たちが穏やかになっていく。

【ダンジョンコアとの共鳴:開始】
【調和率:25%】

要の意識に新たな情報が流れ込んできた。コアとの共鳴が進めば、ダンジョン全体への影響力も高まるだろう。それは単なる「所有者と施設」の関係ではなく、「本体と分身」のような一体感だった。

朝が来て、要はエリシアとミラに昨夜の発見を伝えた。

「コアとの共鳴?それは素晴らしいわ!」

エリシアは興奮した様子で言った。

「これなら、計画していたダンジョン同化に近い効果が得られるかもしれない」

ミラはより慎重だった。

「しかし、共鳴には時間がかかるでしょう。焦らず、段階的に進めるべきです」

二人は早速、コアとの共鳴を促進する方法を研究し始めた。一方、ロバートも王国の知識を活かして協力した。

「古い文献によれば、『ダンジョンの心』と呼ばれる現象があります」

彼は説明した。

「ダンジョンが意識を持ち始めると、その核となる場所が生まれる。それが今回のコアなのでしょう。共鳴を深めるには、定期的に意識を向けることが重要だとされています」

要はその助言に従い、毎日一定の時間をコアとの対話に費やすことにした。日に日に共鳴は強まり、ダンジョンへの理解も深まっていった。

一週間が経ち、ダンジョンには目に見える変化が表れていた。通路や部屋の配置がより整然とし、魔物たちの行動もより調和的になった。新区画とその他の部分の境界も曖昧になり、ダンジョン全体が一つの有機体のように機能し始めていた。

【ダンジョンコアとの共鳴:進行中】
【調和率:60%】
【ダンジョン機能:向上】

村でも変化が感じられた。地面がより豊かになり、作物の成長が促進され、水の質も向上した。まるでダンジョンの力が村全体を潤しているかのようだった。

「御影さん、村が元気になってるよ!」

リオが嬉しそうに報告した。

「畑の収穫量が増えて、井戸の水もおいしくなった。ダンジョンとの共鳴の効果かな?」

要もそう感じていた。ダンジョンとの調和が進むことで、村としての力も高まっているようだった。

その日の午後、重要な発見があった。ミラがダンジョン内の調査から戻り、興奮した様子で報告した。

「御影さん、コア室に変化が!」

彼女は息を切らせながら言った。

「コアの周りに新たな魔法陣が自然に形成されています。そして…コアから直接、声が聞こえました」

一同は驚きの声を上げた。

「何と?」

エリシアが尋ねた。

「『準備が整った』と」

ミラの言葉に、静寂が広がった。

「御影さんの分身が話したというの?」

「はい。そして、その声は御影さんそのものでした」

要はこの現象に強い興味を持った。コアが「準備が整った」と言ったということは、次の段階に進む準備ができたということだろうか。

「調査してみましょう」

エリシアが提案した。

「コアの変化が何を意味するのか、確かめる必要があります」

要も同意見だった。オーウェン、トーマス、エリシア、ミラ、そしてロバートからなる調査チームが編成された。

「村は私が守ります」

フィンが申し出た。彼はリオと共に村の管理を担当することになった。

調査チームがダンジョンに入ると、すぐに変化を感じ取ることができた。ダンジョン全体がより活気に満ち、魔物たちもより活発に動いている。しかし、敵対的ではなく、むしろ調査チームを導くかのように振る舞っていた。

「まるで歓迎されているようだね」

トーマスが驚いた様子で言った。

新区画に入ると、以前の「試練の間」は様相を変えていた。より広く、明るくなり、床には美しい模様が刻まれていた。スライムたちは列を作って彼らを待ち受け、通路を示すように並んでいた。

「これは…儀式のような」

ミラが静かに言った。

迷宮区画に入ると、以前のような混乱はなかった。通路は一本道となり、まっすぐにコア室へと導いていた。壁には青い結晶が埋め込まれ、幻想的な光景を作り出していた。

「驚くべき変化です」

ロバートは魔法の測定器を使いながら言った。

「魔力の流れがより整理され、集約されています。まるで…意図的な設計のように」

ついに一行はコア室に到達した。そこは前回よりも格段に広く、天井は高く、床は磨き上げられた石で覆われていた。部屋の中央には台座があり、その上に青く輝くコアが浮かんでいた。

コアの周りには複雑な魔法陣が描かれ、柔らかく脈動していた。そして、その前にはスライムキングが静かに待機していた。

「来訪者たちよ、よく来た」

スライムキングから声が聞こえた。それは要の声に似ていたが、より深く、共鳴するような響きを持っていた。

「私はこのダンジョンの管理者、御影要の意志の一部である」

ミラが一歩前に出た。

「ダンジョンマスターの血を引く者、ミラです。この変化は何を意味するのでしょうか」

スライムキングは体を揺らして応えた。

「ダンジョンの進化が一つの節目を迎えた。共鳴が深まり、より高度な機能を獲得する準備が整ったのだ」

エリシアが質問した。

「具体的にはどのような機能が?」

「自己拡張、魔物創造の多様化、そして…空間制御」

スライムキングの言葉に、一同は驚きの声を上げた。

「空間制御?」

ロバートが驚いた様子で尋ねた。

「それは…ダンジョン内の空間を自在に変形できるということですか?」

「その通り。通常のダンジョンでも長い年月をかけて獲得する能力だが、御影要の存在により、加速された」

オーウェンが戦略的な視点から質問した。

「この能力は村の防衛に活用できますか?」

「もちろん。侵入者を閉じ込めることも、味方を安全に避難させることも可能だ」

要は村から、この対話を見守っていた。コアに宿った自分の意識の一部が、このように自立して機能していることに驚きを覚えた。同時に、この能力の可能性に期待も感じていた。

「進化を完成させるためには、儀式が必要だ」

スライムキングは続けた。

「御影要の本体と、このコアの完全なる同調。それにより、ダンジョンは真の力を発揮できる」

エリシアとミラは顔を見合わせた。

「前回の儀式の失敗を考えると…」

エリシアが懸念を示した。

「今回は異なる。外部からの干渉は防げる」

スライムキングは自信を持って言った。

「コア自体が防御機構を備えた。そして何より、内部からの変化であり、外部からの強制ではない」

一行は慎重に相談した後、儀式の詳細を聞くことにした。スライムキングの説明によれば、儀式は比較的シンプルなもので、要がコアに完全に意識を集中させ、同調を深めるだけでよいという。

「そのためには、静かな環境と、時間が必要だ。外部からの干渉がないこと」

要は村の住民たちと相談した後、儀式を行うことを決意した。今回は前回の失敗から学び、より万全の態勢で臨む。オーウェンを中心に村の防衛を強化し、エリシアとミラが儀式の準備を整え、ロバートも王国の知識を提供して協力した。

準備は三日かかった。その間も、要とコアの共鳴は深まり続け、調和率は80%に達していた。

儀式の日、村とダンジョンの両方で厳重な警戒態勢が敷かれた。オーウェンは村の周囲に見張りを配置し、トーマスは騎士団と冒険者たちで警備を固めた。フィンは市場を閉鎖し、村への訪問者を制限した。

要は意識を集中し、コアとの完全なる同調を目指した。村全体からダンジョンへと意識を向け、特にコアに焦点を合わせる。

最初は緩やかな共鳴だったが、徐々に強まっていった。村の地面が微かに震え、ダンジョン内の魔法陣が明るく輝き始めた。コアも強く脈動し、青い光が部屋中に広がった。

【ダンジョンコアとの共鳴:最終段階】
【調和率:90%…95%…98%】

要の意識はコアと一体化しつつあった。村としての視点と、ダンジョンとしての視点が混ざり合い、より広い認識が生まれる。魔物たちの存在、通路の形状、結晶の輝き、すべてが自分の一部として感じられた。

そして最後の瞬間、完全なる同調が達成された。

【調和率:100%】
【ダンジョンレベルアップ:2→3】
【新機能獲得:空間制御、高度魔物創造、自己拡張】

強烈な青い光がダンジョンから放たれ、村全体を包み込んだ。地面が震え、空気が震動し、一瞬の静寂の後、すべてが落ち着いた。


要の意識は大きく拡張していた。村としての存在も、ダンジョンとしての存在も、より鮮明に、より強く感じられるようになった。そして何より、両者の境界が薄れ、一つの統合された存在として機能し始めていた。

「成功しました」

ミラが驚きの声を上げた。

「ダンジョンと村が完全に調和している!」

エリシアも測定器を見ながら頷いた。

「魔力の循環が一つの系として完成しています。村で生まれた魔力がダンジョンを流れ、ダンジョンの魔力が村を潤す…完璧な循環です」

要はこの新たな感覚に浸っていた。より広い範囲を、より詳細に感じ取れるようになっていた。村の隅々まで、ダンジョンの奥深くまで、すべてが自分の体の一部のように認識できる。

そして何より、新たな能力の可能性が開けていた。

【空間制御】スキルを使えば、ダンジョン内の構造を意志で変化させることができる。通路を延長したり、部屋を拡大したり、さらには入口と出口を結ぶポータルのような機能さえ作れるかもしれない。

【高度魔物創造】スキルにより、単純なスライム以外の、より複雑で能力の高い魔物を生み出せるようになった。それぞれに特定の役割を持たせ、村やダンジョンの機能を補助させることも可能だ。

【自己拡張】スキルは最も興味深かった。これは村とダンジョンの範囲を少しずつ広げていける能力だ。将来的には、より広大な領域を包含する「要塞」へと発展する可能性を秘めていた。

「御影様、ご気分はいかがですか?」

ロバートが広場で尋ねた。彼は村に残り、儀式の影響を観測していたのだ。

「良好」と要は地面に大きく描いた。その文字は以前より明瞭で、力強いものになっていた。

住民たちは歓声を上げた。ダンジョンの調査チームも村に戻り、無事に儀式が完了したことを報告した。

「これからどのように進めていきますか?」

オーウェンが実務的に尋ねた。

要は「段階的に」と答えた。新たな能力は強力だが、一度に使いこなすのは難しい。まずは基本的な機能から習熟し、徐々に応用していくべきだろう。

「賢明なご判断です」

ロバートは頷いた。

「王国としても、この発展を記録し、研究させていただきたく。もちろん、村の自治を尊重しながら」

要はロバートの協力を受け入れることにした。王国との良好な関係は村の発展にとって重要だ。

その夜、村は祝宴に沸いた。ダンジョンのレベルアップを祝い、住民たちや冒険者たちが集まって食事と酒を共にした。広場には篝火が焚かれ、音楽と踊りで賑わった。

要は村全体としてこの喜びを共有していた。単なる廃村だった場所が、今や特別な力を持つ拠点へと成長した。そして何より、共に歩んできた住民たちとの絆が深まっていることを嬉しく思った。

宴の最中、リオが空を見上げて静かに話しかけた。

「御影さん、覚えてる?僕が最初にここに来た日のこと」

要はもちろん覚えていた。精霊石を持ち、盗賊団に追われていたリオ。彼が村の最初の住民となった瞬間から、すべてが始まったのだ。

「あの時は怖かったよ。でも、御影さんが守ってくれた。それからみんなが集まってきて、村が生き返って…」

リオの目には涙が光っていた。

「ありがとう、御影さん。僕たちの家を作ってくれて」

要も深い感謝を感じていた。リオたち住民がいなければ、自分も単なる廃村のままだったかもしれない。共に成長し、共に困難を乗り越えてきたからこそ、今がある。

「これからも一緒に」と要は答えた。

宴が終わり、夜も更けた頃、要は村とダンジョンの両方を静かに見回していた。平和な村の風景と、神秘的なダンジョンの光景。かつては別々のものだったそれらが、今や一つの存在として調和している。

しかし、平穏な日々が永遠に続くとは限らない。あの妨害魔法陣を仕掛けた者の正体はまだ明らかになっておらず、精霊石を狙うグリムの一味も完全に排除できたわけではない。

だからこそ、新たに獲得した力を鍛え、村とダンジョンをより強固なものにしていかなければならない。要はそう決意していた。

【御影要】
【村レベル:3→4】(ダンジョンとの完全同調による上昇)
【住民数:10】
【スキル:基本生活機能、ダンジョン化スキル(制限なし)、基本資源生産、基本防御構造、空間制御、高度魔物創造、自己拡張】
【ダンジョン:レベル3(村と完全同調)】
【次の目標:能力の習熟、村の拡張、防衛力の強化】

月明かりが村とダンジョンを優しく照らす中、新たな章の幕が開けようとしていた。

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実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

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