『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ

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第18話「村の意志、住民の絆」

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占領から二日が経過し、みかげ村は異様な静けさに包まれていた。クロード・クリスタル大佐の指揮する王国軍が村の至る所に配置され、住民たちの行動は厳しく制限されていた。中央広場には王国の旗が立てられ、議事堂は王国軍の本部として使用されていた。

要はわずかに残された意識で村の様子を断片的に感じ取っていた。装置の影響で村全体を見渡すことはできず、時々フラッシュのように断片的な映像が脳裏に浮かぶだけだった。大部分の意識は「避難所」に退避したままで、力を回復させていた。

朝、クロードは広場に全住民を集めさせた。彼は高台に立ち、冷酷な表情で住民たちを見下ろしていた。

「みかげ村の皆さん」

クロードは威圧的な声で話し始めた。

「王国の直接統治に移行したこの村は、今後『王立魔力研究施設』として再編される。村民は全員、魔力研究に協力する義務がある」

村人たちからは不満の声が漏れたが、武装した騎士たちの前では抵抗できなかった。

「本日より、ダンジョン内部の詳細調査を開始する。若い男性は全員、探索隊として参加せよ」

この発表に、村人たちの間に動揺が広がった。

フィンが一歩前に出て、丁寧に、しかし毅然とした態度で発言した。

「クロード大佐、ダンジョンには危険が潜んでいます。訓練を受けていない村人が入るのは命の危険があります」

クロードは冷笑した。

「だからこそ、地元民の案内が必要なのだ。心配するな、我が騎士団が護衛する」

エリシアも前に出た。

「少なくとも最低限の装備と魔法的防御が必要です。私が準備を…」

クロードは手を上げて彼女の言葉を遮った。

「魔法使いは特に監視が必要だ。お前は別の任務を与える。結界石の研究だ」

彼はエリシアを指差した。

「お前の魔法知識が必要だ。協力しない場合は…」

彼は目で捕らえられたリオを指し示した。リオは議事堂の前で、二人の騎士に監視されていた。顔には打撲の痕があり、怒りに満ちた表情で立っていた。

「わかりました」

エリシアは歯を食いしばりながら答えた。

クロードは満足げに頷き、指示を続けた。

「16歳から30歳までの男性は全員、一時間後に装備を持ってダンジョン入口に集合せよ。逃げる者は厳罰に処す」

彼は騎士たちに目配せし、集会を終了させた。

住民たちは不安と怒りを抱えながら、それぞれの家に戻っていった。フィンは急いでミラとガストンを見つけ出し、密かに相談を始めた。

「このままでは若者たちが危険だ」

フィンが小声で言った。

「クロードは村のダンジョンを徹底的に調査するつもりだ。おそらく『コア』を見つけ出そうとしている」

ミラが心配そうに答えた。

「ダンジョンのコアに触れれば、要さんにさらなるダメージを与える可能性があります。何としても阻止しなければ」

ガストンが提案した。

「まず、リオを救出する必要がある。彼は要との絆が最も強い。何か打開策があるかもしれない」

三人は頷き合い、それぞれの役割を確認した。フィンは若者たちの装備を整え、時間を稼ぐ。ガストンは騎士たちの注意を他に向ける策を練る。そしてミラはリオの救出を担当することになった。

一方、議事堂では、クロードが姉のヴァレリアと再び通信魔法で会話していた。

「調査は順調か?」

ヴァレリアの声が響いた。

「ああ。『村の意志』は抑制されたままだ。今日からダンジョンの中心部へ向かう」

クロードは地図を広げながら答えた。

「住民たちの協力は得られたか?」

「強制的にでも従わせている。問題ない」

ヴァレリアは少し沈黙した後、懸念を示した。

「あまり過酷な扱いをするな。後々、彼らの協力が必要になる」

クロードは苛立ちを隠せなかった。

「優しさは弱さだ、姉上。我々の目的達成のためには、多少の犠牲は避けられない」

「それでも…」

通信が途切れた。クロードは不満げに装置を片付けた。

午前中、20名ほどの若者たちがダンジョン入口に集められた。彼らは基本的な装備—短剣、ランタン、ロープなど—を持っていたが、明らかに不十分だった。クロードは10名の騎士を選び、探索隊を組織した。

「今日の目標は第二層までの探索だ。魔力の流れと特に強い魔物の有無を確認せよ」

彼は若者たちを見下ろし、冷たく付け加えた。

「逃げ出した者は、家族にも責任が及ぶ」

若者たちは恐怖と怒りを抱えながらも、指示に従うしかなかった。

ダンジョンの入口で、フィンが最後の確認をしていた。彼は若者たちに可能な限り良い装備を与え、静かに励ましの言葉をかけた。

「無理はするな。まず自分の身を守ることだ」

騎士たちが聞いていないことを確認してから、彼は付け加えた。

「要さんのコアは絶対に教えるな。わからないふりをしろ」

若者たちは微かに頷いた。

探索隊がダンジョンに入ると、村の別の場所では、ミラが密かに動き始めていた。彼女はダンジョンマスターの血を引く能力を使い、村の中に存在する小さなダンジョン要素—床下の隙間、壁の間の空間、地下の通路—を感知していた。

「ダンジョン同化」の影響で、村の一部は既にダンジョンの性質を持っていた。ミラはそれらを繋げ、議事堂への隠れた経路を作り出そうとしていた。

彼女は小さな空き家の床下に潜り込み、魔力を集中させた。床板が僅かに動き、地面に小さな穴が開いた。それは人一人がやっと通れるほどの穴だったが、確かに議事堂の方向へと続いていた。

「できた…」

ミラは小さく呟き、穴に入り込んだ。暗闇の中、彼女の手には小さな魔石が灯りとなっていた。

一方、エリシアは東側の「結界石」の場所で、クロードの部下の監視下で作業を強いられていた。彼女は表向き協力するフリをしながら、実際には意図的に間違った情報を伝えていた。

「結界石の魔力パターンはとても複雑です。解析には少なくとも一週間はかかります」

彼女は意図的に難解な魔法理論を説明し、騎士たちを混乱させていた。

「それに、この石は『月の満ち欠け』に影響されるので、正確な分析は次の満月まで待たねばなりません」

監視役の騎士は魔法の知識がなく、彼女の説明を鵜呑みにするしかなかった。

ダンジョン内部では、探索が難航していた。通常なら簡単に倒せるはずのスライムが、今日は特に攻撃的で、数も多かった。若者たちは互いに守り合いながら進んでいたが、明らかに何かが違っていた。

村の若者の一人、トビアスが騎士に向かって言った。

「おかしいです。普段はこんなに敵が多くないんです」

騎士は疑いの目を向けた。

「嘘をつくな。地図によればこの先に分岐点があるはずだ」

「いいえ、この通路はいつも真っすぐなんです」

若者たちは困惑していた。彼らがよく知っているはずのダンジョンの構造が、微妙に変化しているようだった。

議事堂では、リオが窓から外の様子を見ていた。彼の心は要と繋がっていると感じながらも、どうすることもできない無力感に苛まれていた。

突然、床に小さな揺れを感じた。彼が下を見ると、床板の一部が僅かに動いている。リオは警戒しながらも近づき、床に耳を当てた。

かすかに「リオ」と呼ぶ声が聞こえた。

彼はすぐにミラの声だと気づき、監視の騎士に気づかれないよう、慎重に床板を持ち上げた。下には小さなトンネルがあり、ミラが手を差し伸べていた。

「早く!」

ミラが小声で促した。

リオは一瞬の躊躇もなく、トンネルに滑り込んだ。床板は静かに元の位置に戻った。

騎士が不審に思って振り返った時には、リオの姿はなく、窓が開いていることに気づいた。

「囚人が逃げた!窓から脱出したぞ!」

彼は慌てて外に飛び出し、他の騎士たちに警報を発した。

地下のトンネルでは、ミラとリオが急いで村の外れにある古い井戸へと向かっていた。井戸の底には水ではなく、ダンジョンの一部と繋がる隠し通路があった。

「大丈夫?」

ミラが心配そうにリオの怪我を見た。

「平気さ。でも、御影さんは…」

リオは声を震わせた。

「もう一度繋がらないと。でも装置のせいで…」

ミラは彼を励ました。

「方法はある。だからこそ救出したんだ」

二人は井戸に到着し、ロープを使って下降した。井戸の底には古い壁があり、ミラがそれに触れると、壁が音もなく横に滑り、秘密の通路が現れた。

「ここは…」

リオは驚きの声を上げた。

「昔のダンジョンの廃棄部分。要さんが村になる前から存在していた洞窟の一部よ」

彼らは通路を進み、やがて小さな空間に出た。そこには古い石台があり、中央には小さな青い結晶が置かれていた。

「これが『場所の魂』の欠片」

ミラが説明した。

「ダンジョンの起源に関わる古代の魔法結晶。要さんの『村』としての力は、この結晶から派生している可能性がある」

リオは驚きの目で結晶を見つめた。

「これで御影さんを助けられるの?」

「直接は難しい。でも、この結晶と『同調』すれば、要さんの意識の一部と繋がれるかもしれない」

ミラは静かに結晶の前に座り、リオにも同じようにするよう促した。

「手を繋いでこの結晶に触れて。そして要さんを思い浮かべて」

二人は指示通りにし、結晶に触れた瞬間、青い光が彼らを包み込んだ。

村の各地では、不思議な現象が起き始めていた。ダンジョン内の探索隊は迷路のように変化する通路に困惑し、多くの騎士たちが方向感覚を失っていた。

「どうなっている!?」

隊長の騎士が怒鳴った。

「さっきまでここにあった通路が消えている!」

若者たちは混乱を装いながらも、密かに目配せし合っていた。ダンジョンが彼らを守るように変化していることを、彼らは直感的に理解していた。

村の中では、植物が急速に成長し始めていた。庭の花々が一気に咲き誇り、木々の枝が伸び、時には騎士たちの行く手を阻むように垂れ下がった。道には小さな段差や窪みが現れ、騎士たちが頻繁につまずくようになった。

家々も微妙に変化していた。扉が開きにくくなったり、窓が勝手に開閉したり、場所によっては壁が僅かに移動して道幅が狭くなったりしていた。

クロードは議事堂から出て、この異変に気づいた。彼は装置の調整に戻り、出力を上げようとした。しかし、装置は既に最大出力で動いていた。

「何が起きている…」

彼は不安を隠せなかった。

「『場所の意志』は抑制されているはずだ…」

彼が窓から外を見ると、村全体が微妙に脈動しているように見えた。土が僅かに波打ち、草木が風もないのに揺れ、家々が呼吸するかのように微動していた。

「これは…」

クロードは震える手で通信装置を取り出し、姉を呼び出した。

「姉上!異変が起きている。『場所の意志』ではない何かが村を動かしている!」

通信の向こうからはヴァレリアの冷静な声が響いた。

「住民たちだ。彼らの集合的な意志が村と共鳴している」

「どういうことだ?」

「『場所の意志』である村長は、住民との絆によって力を得る。我々は村長の力を抑えたが、住民たちの意志は抑制できない」

クロードは焦りを隠せなかった。

「対処法は?」

「住民たちを完全に分断するか、『精霊の里』の儀式を急ぐかだ」

クロードは決断した。

「増援を要請する。そして儀式の準備を急げ」

彼は通信を切り、騎士たちに新たな指示を出した。

「住民たちを全員家に閉じ込めろ。外出は一切禁止だ。そして、逃げた少年を探し出せ!」

騎士たちは村中を走り回り、住民たちを強制的に家に押し込めていった。しかし、奇妙なことに、多くの家の扉が開かなくなっていた。開いたと思ったら、内側から閉じられる。窓も同様だった。

「馬鹿な!」

騎士が扉を蹴り破ろうとすると、突然地面が揺れ、彼は転倒した。

このような現象が村中で起こり、王国軍は混乱に陥っていた。

秘密の洞窟では、ミラとリオが依然として結晶と接触していた。青い光は二人を包み込み、彼らの意識は奇妙な空間へと引き込まれていた。

そこは青と緑の光に満ちた無限の空間のようで、彼らの前に薄い人影が浮かび上がった。

「御影さん?」

リオが希望を込めて呼びかけた。

人影は徐々に形を取り、御影要の姿になった。しかし、それは半透明で、時折形が揺らぐ不安定なものだった。

「リオ…ミラ…」

要の声は遠く、かすかだった。

「皆…大丈夫か?」

ミラが前に出た。

「要さん、村は王国軍に占拠されています。あなたの力を制限する装置が設置されました」

要の姿が悲しげに揺れた。

「知っている…感じている…でも…完全には切り離されていない」

リオが興奮して言った。

「村が変化しているんです!道が変わったり、植物が急に成長したり。まるで村全体が王国軍に抵抗しているみたいに!」

要の姿が少し明るくなった。

「住民たちの…意志…私の力ではなく…皆の願いが…村を動かしている…」

ミラが理解したように頷いた。

「ダンジョンマスターの教えにあります。『場所の意志』と住民の思いが共鳴すると、新たな力が生まれると」

要の姿がさらに明確になってきた。

「皆の思いが…私に力を…休眠から目覚める準備が…」

リオは喜びに満ちた表情で前に出た。

「どうすれば完全に戻れますか?装置を破壊すれば?」

要は首を横に振った。

「まだ…直接対抗するには…弱すぎる…」

ミラが冷静に提案した。

「クロードたちの注意を惹きつけている間に、力を取り戻す時間を稼ぐのはどうでしょう」

要は同意した。

「今夜…月が昇る頃…装置の効果が…最も弱まる…その時…」

突然、洞窟が振動し、三人の意識の繋がりが揺らいだ。

「何かが起きている…」

ミラが身体に戻りかけながら言った。

「要さん、待っていてください。必ず助けます!」

要の姿が最後に言った。

「信じている…皆を…」

リオとミラは現実世界に意識を戻し、洞窟が揺れていることに気づいた。

「何が?」

リオが不安そうに周りを見回した。

ミラが急いで立ち上がった。

「クロードが何かをしている。急いで村に戻らなければ」

二人は洞窟を後にし、隠れ通路を通って村に戻った。彼らが井戸から出ると、空は既に夕暮れに染まっていた。

村の状況は一層混乱を増していた。植物は制御を失ったように成長し、道は波打ち、家々は僅かに位置を変えていた。騎士たちは村を制御できず、多くが混乱していた。

クロードは議事堂の前に立ち、怒りに震えていた。彼の周りには選りすぐりの騎士たちが集まり、彼の指示を待っていた。

「今夜中に『精霊の里』の儀式を行う」

クロードは冷酷に言い放った。

「このままでは村の制御を完全に失う。姉上の帰還を待っている余裕はない」

彼は騎士たちに指示した。

「議事堂の下の間を準備しろ。そして、五人の村人を連れて来い。儀式には生贄が必要だ」

騎士たちは動き出したが、その時、村全体が大きく震動した。地面から草が一気に生え出し、木々が唸りを上げるように揺れ、家々が軋む音を立てた。

クロードは恐怖と怒りに顔を歪めた。

「急げ!時間がない!」

リオとミラは遠くからこの光景を見ていた。

「生贄だって?」

リオが恐怖に目を見開いた。

ミラは冷静さを保ちながらも、明らかに動揺していた。

「儀式を阻止しなければ。でも、二人だけでは…」

その時、二人の背後に影が現れた。振り返ると、フィンとガストン、そしてエリシアがいた。

「無事だったのね」

エリシアが安堵の表情を見せた。

フィンが状況を説明した。

「ダンジョンの探索隊は全員無事だ。ダンジョン自体が彼らを守ったらしい。若者たちは今、密かに村に戻りつつある」

ガストンが付け加えた。

「水族の長老セイレーンからも連絡があった。彼らは東の湖から支援の準備をしているという」

ミラとリオは要との接触について話し、クロードの儀式計画を伝えた。

「御影さんは今夜、月が昇る頃に力を取り戻せるかもしれない。それまで時間を稼がなければ」

エリシアが決意を示した。

「クロードの儀式を阻止しましょう。私たちにもできることがあるはずです」

五人はそれぞれの役割を確認し、行動を開始した。フィンとガストンは若者たちを集め、騎士たちの注意を引くための策を練る。エリシアとミラは魔法で儀式を妨害する準備をする。そしてリオは、再び要との繋がりを強めるために村の中心に向かうことになった。

夜の闇が村を包み込む中、住民たちの間に静かな抵抗の意志が広がっていった。家々の窓から小さな光が灯り、それらが一斉に瞬くと、まるで村全体が息づいているかのようだった。

クロードの騎士たちが五人の村人—高齢者や弱っている人々—を連行している様子が見えた。その光景に、リオの中で怒りが燃え上がった。

「許さない…」

彼は小声で呟いた。

月が地平線から顔を出し始めた時、村全体が銀色に輝いた。そして何か大きな変化が起ころうとしていた。要の意識が徐々に戻りつつあり、村が目覚めようとしていたのだ。

議事堂の下で儀式の準備を進めるクロードは、その変化に気づいていた。彼は焦りを隠せず、儀式を急いでいた。しかし、彼が知らないところで、村全体が彼に対する抵抗の準備を整えていたのだ。

「御影さん…」

リオは中央広場に立ち、月に照らされた村を見上げた。

「帰ってきてください…皆があなたを待っています」

彼の言葉が夜風に乗って村中に広がると、地面が再び震え始め、そして今度は違った。これは恐怖や混乱からくる震えではなく、力強い目覚めの予兆だった。

御影要が、ついに目を覚ましつつあったのだ。

【御影要】
【村レベル:制限状態→回復中】
【スキル:一部回復中】
【状況:覚醒へのカウントダウン】
【次の目標:装置の破壊と村の解放】

---

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