『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ

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第20話「新たな脅威、新たな旅立ち」

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移動要塞への準備が急ピッチで進む中、東の空は依然として異様な色に染まっていた。紫がかった赤い光が地平線を覆い、時折閃光が走るのが見えた。

御影要は要塞の中央塔の最上階から、この不気味な光景を見つめていた。村全体を感知する彼の感覚は、遠方から押し寄せる魔力の波を明確に捉えていた。それは規則性のない、まるで生き物のように脈動する波だった。

「予想以上に状況は深刻ね」

背後からヴァレリアの声がした。彼女は昨夜から要塞に留まり、魔力暴走に関する情報を提供していた。彼女の表情は疲労と後悔の色に染まっていた。

「王都からの最新情報は?」

要が振り向くと、ヴァレリアは小さく溜息をついた。

「断片的な通信魔法が届いたわ。状況は悪化の一途を辿っているみたい」

彼女は手の中の魔法結晶を見つめながら続けた。

「中央宮殿の塔が崩落し、魔法学院は完全に機能停止。死傷者は数百人に上るとの報告…」

要は黙って頷いた。想像していた以上の惨事が起きているようだった。

「兄は?」

ヴァレリアは肩を落とした。

「クロードは…王都防衛のため急遽呼び戻されたわ。彼もまた、私たちがしてしまったことの責任を取らざるを得ない」

その時、階段を駆け上がる足音がして、エリシアとミラが現れた。二人は昨夜から古文書と魔力暴走の研究に没頭していた。

「重要な発見がありました」

エリシアが息を切らせながら報告した。

「古文書の詳細な解読とミラさんのダンジョンマスターとしての知識を組み合わせたところ、今回の現象の正体が見えてきました」

ミラが補足した。

「これは単なる魔力事故ではありません。『大陸魔力網』と呼ばれる、この世界を覆う魔力の巨大ネットワークの崩壊が始まっているのです」

要は二人の報告に集中した。

「大陸魔力網?詳しく説明してくれ」

エリシアが取り出した古い羊皮紙には、大陸全体を覆う網目状の線が描かれていた。

「かつてこの大陸には、魔力を安定させるための『網』が張り巡らされていました。『精霊の里』と呼ばれる特殊な場所が節点となり、魔力を循環させる役割を担っていたのです」

ミラが続けた。

「しかし古代戦争の結果、その網は傷つき、多くの『精霊の里』は失われました。残された『場所の意志』は封印されるか、眠りについた…」

ヴァレリアが自責の念を込めて付け加えた。

「私が『紫の賢者』の遺跡で見つけたのは、封印された『場所の意志』の断片。それを解放したことで、バランスが崩れてしまったのね…」

要は考え込んだ。彼自身も「場所の意志」として転生した存在。彼と同じような存在が他にもいたという事実は、驚きであり、また何かの可能性を感じさせた。

「我々の要塞がどう関われるというのだ?」

エリシアが興奮した様子で答えた。

「要さんは『場所の意志』として機能している上に、ダンジョンの力も融合させています。つまり、『精霊の里』の代替として、魔力網の節点になれる可能性があるのです!」

ミラもうなずいた。

「要さんの力が王都に届けば、暴走する魔力を安定させられるかもしれません」

要は窓の外を見た。彼の意識は要塞全体を包み込み、その状態を確認していた。確かに「ダンジョン要塞化」と「地盤移動」のスキルを獲得したことで、新たな可能性が開けていた。

「分かった。準備を急ごう」

彼は決意を固め、塔を下りた。

中央広場では、フィンとガストンの指揮の下、住民たちが移動の準備に取り組んでいた。食料や水の確保、貴重品の梱包、家財道具の固定など、やるべきことは山積みだった。

「予定より早く出発することになりそうだ」

要が広場に現れると、フィンが進捗状況を報告した。

「基本的な準備は整いつつあります。しかし、移動中の揺れに対する対策が心配です」

ガストンが実用的な提案を加えた。

「建物の補強は進めています。ですが、移動の振動がどの程度になるのか予測できないのが問題です」

要はうなずき、二人を励ました。

「できる限りの準備をしてくれ。私も要塞全体の構造を強化する」

彼は集まりつつあった村人たちに向けて宣言した。

「皆さん、状況が変わった。王都の魔力暴走は予想以上に深刻で、一刻も早く対応する必要がある。明日の夜明けには出発したい」

住民たちからは驚きと不安の声が上がったが、それと同時に、決意の表情も見られた。彼らは既に多くの危機を乗り越えてきた。今回もまた、共に立ち向かう覚悟ができていた。

「御影さん」

リオが前に出てきた。彼の表情は不安と決意が入り混じっていた。

「みんなを助けるために行くんですよね?それなら僕たちも全力で支えます」

リオの言葉に、多くの住民が同意の声を上げた。彼らにとって、御影要は単なる「場所」ではなく、共に生きる仲間だった。

「ありがとう」

要は感謝の意を表し、次の行動に移った。

日が傾き始めた頃、議事堂に評議員たちが集められた。オーウェンも北方からの偵察を終え、合流していた。

「情勢報告する」

オーウェンは地図を広げながら説明を始めた。

「北方の村々も異変を感じ始めている。動物が凶暴化し、作物の成長が異常に速まるなど、魔力の影響と思われる現象が報告されている」

彼は東を指さした。

「さらに東方では、空から魔力の雨が降り、触れたものを変質させているという。王都はその中心にあり、状況は最悪だ」

ヴァレリアが補足した。

「王宮の魔力研究所も機能停止。魔導師たちは対策を講じようとしているが、効果は限定的です」

要は状況を整理した。

「移動要塞として出発した後、どのルートを通るのが最善だろうか」

オーウェンは地図上に線を引いた。

「南ルートは山岳地帯があり、要塞の移動には適さない。北ルートは平地が多いが、距離が遠い。最も現実的なのは、東の森を抜ける直線ルートだ」

フィンが懸念を示した。

「東の森には盗賊団の残党が潜んでいるという情報もあります。また、魔力暴走の影響が最も強い地域でもある」

ミラが意見を述べた。

「しかし、魔力暴走が強い地域こそ、要さんの力が最も必要とされる場所。通過しながら影響を安定化できるかもしれません」

評議の結果、東の森を通る直線ルートを選択することに決まった。危険は大きいが、時間的制約と要の能力を考慮すれば、最も合理的な判断だった。

「では、移動の詳細を確認しよう」

要は自らの新たなスキルについて説明した。

「『地盤移動』のスキルは、要塞の基礎となる地盤ごと移動する能力だ。ゆっくりとした速度だが、要塞全体を損なうことなく移動できる」

エリシアが質問した。

「一日にどれくらいの距離を移動できますか?」

「現在のスキルレベルでは、一日に約5キロメートルが限界だろう。王都までの距離を考えると、最低でも一週間はかかる」

オーウェンが頷いた。

「遅いが、軍隊の行軍より速い。問題は移動中の防衛だ」

要は防衛計画も共有した。

「移動中も『ダンジョン要塞化』の能力は維持される。壁と四つの塔による防御、そしてダンジョン内の魔物たちも敵対者には対応する」

フィンが実務的な懸念を示した。

「移動中の揺れは?住民の生活への影響は?」

「極力揺れを抑える努力はするが、ある程度の動揺は避けられない。特に脆い物品や年配の住民への配慮が必要だ」

ガストンが提案した。

「私が特殊な防振装置を作成します。主要な建物には設置できるでしょう」

準備と計画が進む中、夕刻になると東の空の異変がさらに顕著になった。赤紫の光は強まり、時折雷のような閃光が走るようになった。

「魔力暴走が加速している」

エリシアが不安げに空を見上げた。

「このままでは…」

その時、遠方から急いでくる一団が西門に到着した。先頭にはクロード・クリスタルの姿があった。彼は疲労困憊し、装備も損傷していたが、緊迫感に満ちた様子で要塞に入ってきた。

オーウェンとフィンが警戒して迎え、クロードはすぐに要の前に連れてこられた。

「何の用だ?」

要の声は冷たかった。

クロードは以前の高慢さを失い、真剣な表情で頭を下げた。

「力を貸してほしい。王都は崩壊の危機にある」

彼は簡潔に状況を説明した。魔力暴走は想像を絶する速さで広がり、王宮の半分は既に崩壊、都市の東部は「魔力の嵐」に飲み込まれ、多くの市民が避難できずにいるという。

「我々の部隊は民間人の救出に全力を注いでいるが、魔力そのものを制御する術がない」

彼はヴァレリアを見つけ、安堵の表情を浮かべた。

「姉上、無事だったか」

ヴァレリアはクロードに歩み寄った。

「私たちがしてしまったことよ、クロード。これは私たちが責任を取るべき事態」

クロードは苦々しい表情でうなずいた。

「その通りだ。だからこそ…」

彼は再び要に向き直った。

「あなたの力が必要なのだ。王都の民を救ってほしい」

要は沈黙した。クロードは以前、彼を抑制し、村を占領しようとした敵だ。しかし今、彼の前には民を憂う一人の騎士がいた。

「我々は既に王都へ向かう準備をしている」

要は静かに答えた。

「明日の夜明けに出発する予定だ」

クロードは驚きの表情を見せた。

「要塞ごと?どうやって?」

要は簡潔に「地盤移動」のスキルについて説明した。クロードは困惑しながらも、希望の光を見出したように見えた。

「しかし、一日5キロメートルでは…」

「そう、王都に到着するまでに時間がかかる。だからこそ、できる限りの準備が必要だ」

クロードは考え込み、決断したように頷いた。

「私の部隊を置いていきたい。彼らは王都防衛の経験があり、移動中の要塞防衛にも役立つだろう」

要はオーウェンに視線を送り、彼の意見を求めた。

オーウェンは少し躊躇したが、実利を優先した判断を下した。

「戦力として有用です。受け入れるべきでしょう」

要はクロードの申し出を受け入れた。過去の敵対関係を超えて、今は共通の危機に立ち向かう時だった。

夜が更けていく中、準備は最終段階に入った。住民たちは家々を補強し、貴重品を安全な場所に移し、移動中の生活に備えていた。要は要塞全体を巡回し、構造の強化と安定化に力を注いだ。

深夜、中央広場に評議員たちが再び集まった。空には不気味な光が広がり続け、遠方からは時折、鈍い轟音が聞こえていた。

「最終確認をしよう」

要が皆の顔を見回した。

「フィン、物資の状況は?」

「食料と水は二週間分を確保。移動中も最低限の生活は保証できます」

「ガストン、建物の補強は?」

「主要な建物には防振装置を設置完了。ダンジョン部分も安定化しました」

「オーウェン、防衛体制は?」

「四つの塔に見張りを配置。クロードの部隊も含め、交代制で監視を続けます」

「エリシア、ミラ、魔力の研究は?」

二人は魔力網の地図を広げた。

「王都に近づくにつれ、要さんの『場所の意志』としての力が魔力網を安定させる可能性が高まります。ただし、近づきすぎると逆に飲み込まれる危険もあります」

「リオ、住民たちの状況は?」

「不安はありますが、みんな協力的です。特に子どもたちと高齢者の安全確保を徹底しています」

要はすべての報告を受け、満足げに頷いた。

「よし、あとは…」

彼は東の空を見上げた。光はさらに強まり、雲が渦を巻くように動いていた。

「明日の夜明け、我々は動き出す」

評議員たちは厳粛な面持ちで頷いた。彼らは未知の旅に出ようとしていた。村として始まり、ダンジョンへと進化し、今や移動要塞となる彼らの共同体。その行く末には多くの危険が待ち受けているだろうが、彼らには強い絆があった。

夜明け前、東の空がわずかに白み始めた頃、要塞全体に要の声が響き渡った。

「皆さん、準備はいいですか?」

住民たちは家の中で、あるいは広場で、その声に耳を傾けた。

「これから我々は前例のない旅に出ます。不安もあるでしょう。しかし、皆さんと共に乗り越えられないことはないと信じています」

要の声には力強さと温かさが混ざっていた。

「王都の民を救うため、そして我々自身の未来のために、『移動要塞みかげ』として進みましょう」

広場の中央に要の姿が現れた。半透明ながらも、以前より実体に近い形で現れるようになっていた。彼は両手を地面に押し当て、新たなスキルを発動させた。

「地盤移動、開始」

地面に青い光の筋が走り、要塞全体を包み込んだ。最初は微かな震動だけだったが、やがてそれは徐々に大きくなり、要塞が動き始めたことを告げていた。

壁や塔、家々はその位置を保ったまま、地盤ごと東へと動き始めた。それは非常にゆっくりとした動きだったが、確かに進んでいた。

住民たちは窓から外を見て、景色が少しずつ変わっていくのを不思議そうに見つめていた。子どもたちは興奮し、大人たちは畏敬の念を抱きながら、この歴史的瞬間を目撃していた。

評議員たちは中央塔に集まり、移動の様子を見守っていた。

「本当に動いている…」

フィンは驚きを隠せない様子だった。

オーウェンは厳粛な表情で頷いた。

「伝説の移動要塞が現実になるとは」

エリシアは魔力の流れを観測しながら興奮した様子で報告した。

「素晴らしい!要さんの魔力が地盤全体を包み込み、摩擦を減らしながら移動させています。理論上は不可能なはずなのに!」

ミラも感嘆の声を上げた。

「ダンジョンマスターの記録にもこのような例はありません。要さんは新たな歴史を創っているのです」

リオは窓から外を見つめ、静かに呟いた。

「御影さん…本当にすごいです」

要は全身全霊を込めて要塞を動かし続けていた。「地盤移動」のスキルは想像以上に魔力を消費したが、住民たちの思いがそれを支えているようだった。

要塞は森の中へと進んでいった。巨大な壁が木々を押しのけ、新たな道を切り開いていく。塔からは見張りが周囲を警戒し、内部では住民たちが新しい日常を始めようとしていた。

それは前例のない挑戦だった。「村」として始まり、「ダンジョン」へと進化し、今や「移動要塞」となった彼らの旅。この先には多くの困難が待ち受けているだろうが、彼らには乗り越えられないことはなかった。

【御影要】
【村レベル:8】
【住民数:100+】
【スキル:地盤移動(初級)発動中】
【状況:移動要塞として東へ進行中】
【次の目標:王都に到達し、魔力暴走を鎮静化する】

東の空には依然として不気味な光が広がっていたが、それに向かって進む要塞の姿は、希望の象徴のように輝いていた。

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みんなの感想(1件)

キラSS
2025.03.13 キラSS

あれ?オーウェンて5人グループで来たよね?他の4人は住人にならなかったのかな?

解除

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