冴えないおっさんが没落貴族に異世界転生~売れ残りの悪役令嬢を妻にめとって世界征服目指します~

masa

文字の大きさ
10 / 54

不幸中の幸い

しおりを挟む
「――なかなか、派手にやってくれましたな、セラ様」

 城の裏手に朝日が差し込んで、小鳥がチュンチュン鳴いていた。執事長のクラウスが怪訝な顔をしてこちらを見ている。

「すまんな、聖剣の扱いを少しばかり間違えたのだ」
「少し? 少し間違えたくらいで城壁を木っ端微塵になさったのですか?」
「いやぁ、だって、なぁ、ユリシーズ」
「まったく想定外だ。私の監督不行き届きではない」
「責任逃れか貴様っ!」

 ユリシーズがふいと顔をそらして、クラウスはため息を吐いた。城の一階、裏の武芸訓練場の出入り口付近で、男三人が立ち話をしている。俺と、白髪の執事と、仏頂面の元騎士である。

 開けっぱなしの出入り口の扉の向こうから小柄な人影が二つこちらに近づいてくる。次第に影がはっきりしてきて、何者か分かった。メイド長のセシルとエリザだ。エリザはじっくりと朝食を味わったあと、マイペースにくつろいでいて、俺はてっきり何も言ってこないかと安心していたのだ。これ、追加で説教される流れか?

「――クラウス」
「はっ」
「城壁の修復はこちらでどうにかしますから、わざわざ街の修復師など呼び立てる必要はございません。このアホ当主の説教は私が代行いたしますので、下がってよろしい」
「了解いたしました」

 クラウスがその場をあとにする。セシルはちょっとニヤニヤしている。何だ、馬鹿にしているのか、減給するぞ?

「セラフィム、耳を貸しなさい」

 セラ、ではなく、セラフィムと呼ぶときは、だいたいシリアスな話をするときだ。これは大目玉を食らうぞ……

 俺はおそるおそる彼女に耳を近づける。

「……でかしましたわ」
「え?」
「山肌の山頂付近をご覧なさい」

 エリザから手渡された望遠鏡で山頂のあたりを見てみると、斬撃で削られた山肌の一部が淡い紫色に変色していた。

「あれって、まさか魔力結晶?」
「まだインダイトの発色ですけれど、あそこまで浅い場所に浸透しているのだから、期待大ですわ」

 裏山とは例の魔力鉱脈が地下を通っていると睨んだエスピオ山の一部だった。俺のしでかした不祥事は不幸中の幸いとして、その山の鉱山としての価値を明らかにしていたのだ。ちなみにインダイトというのは魔力結晶の一種で、そう珍しいものでもない。

 そしてエリザのいう期待大とは、つまり鉱脈がこちらに逸れてからまだ年月が浅いにもかかわらず山の表面まで魔力が浸透してきているのだから、地下を流れる魔力の大河は相当に濃度が高いと見込まれる、ということを意味している。

「こんな具合だとは思いませんでした。言うなれば、山全体が丸ごと魔法結晶の巨大な塊です。……震えるほどのビッグチャンスですわ、まさかこんな田舎でこのような機会に出会えるとは、家を出て正解でしたわ」
「プランを変更するか」
「私の考えだと、もはやポイントに絞って採掘するまでもありません。少々荒っぽいですが、掘削機でどんどん掘り進めて、出て来た大量の魔力結晶を街に流します」
「もう始めるんだな」
「えぇ、こうなったら資金ではなく、魔力で工場を建設した方が早いですし、もとからあった農地も魔力を肥料として使用し、既存の農業形態も強力にバックアップします。これからは三倍速で近代化いたしますわよ……」

 ほくそ笑んだエリザはものすごく分かりやすい悪人の顔をしていた。おそらく、公開しても良い時期まで目一杯情報封鎖して、新しい魔力鉱脈の発見をギリギリまで王都に報告しないとか、あらゆる手を使って脱税パラダイスをかますとか、俺と同じく、きっとそういうことを考えているのだろう。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

処理中です...