冴えないおっさんが没落貴族に異世界転生~売れ残りの悪役令嬢を妻にめとって世界征服目指します~

masa

文字の大きさ
12 / 54

街の未来予想図

しおりを挟む
 ――朝は学問と通常魔法を学び、昼は剣と弓を習い、夜は珍しいタイプの聖剣の試行錯誤のようなで、さすがに息が詰まると思った俺は、時々執事を一人ボディーガードとして引き連れ、城下町へ繰り出していた。

 夜の街を練り歩き、外食ついでに色々と街の様子を見て回っていた。すると、街の至る所にボナパルト家正式発行の「鉱山労働者を求む」の広告チラシが貼ってあった。

 我が領土ホロンは当時、深刻な人口流出に悩んでいた。領主がポンコツで産業が育たないからろくな職業に就けず、よその街で心機一転、新しい商売を始めようという考えで家をたたむ輩が増えていたのだ。働き盛りの人間が離れていくのは街にとって痛手だった。

 公共事業、という建前で数年間の仕事を提供し、人材離れによる街の衰退を防ぎ、給料はエリザの持参金から捻出することになっている。そうやって鉱山で働く人間を大勢確保し、専用の工具と掘削機でエスピオ山を多面的に掘らせる予定だ。

 そろそろ機材運び込みや事業所の設立が終わり、本格的に魔法結晶の採掘が始まるような時期だった。連れていた執事のアシモフと夕食を平らげたあと、街の大通りを歩いて城に戻ろうとしていたとき、変装していた俺の正体に気づいた一般人の男が俺に尋ねてきた。

 男が俺のそばでひざまずき、アシモフがやめさせようとしたのを俺が制止した。街の人間の話を聞いてみたかったのだ。

「あぁ、セラフィム様。今日はお忍びですか」
「……いかにも」
「セラフィム様、私は一つお聞きしたい」
「どうした」
「エスピオ山で一体何が始まるのですか? 林業にしか使えないような、あの不要な山にたくさんの人間が出入りしているのを街の者達が大勢目撃しております。一部の不届き者は、ついに領主が気をやって無駄山に手を出したのだと吹聴しております」

 これまでのセラフィムの愚かな治政を思えば、そう思われても仕方なかった。俺は体よく返事をしておいた。

「なに、心配せずとも、余は正気だ。ちょっとした新規の資源が山の地下に見つかったのでな、街の民の力を借りたいと思っている。君も是非来たまえ、給料ははずむぞ。はっは!」

 その男の肩をぽんぽんと二回叩き、立ち上がらせたあたりで周りが騒がしくなってきた。フードをかぶっていたが、周囲にやりとりを聞かれて正体がバレかけていた。

「帰るぞアシモフ」
「はい、領主様」

 アシモフはすでに合図を送って道の端に馬車を待たせていた。下手に転移魔法で城に戻るところを庶民に見られて、領主が街をうろついていたなどと噂が広まるのはばつが悪いのだ。

 馬車の客室に二人して乗り込む。

「ふぅ、たまには庶民の味も良いものだな。地元で採れた肉と野菜をふんだんに活かしておったわ」
「おいしゅうございましたね。なんでもホロンきっての名店とか」
「ふむ、しかし飲食街は店が減っていたなぁ」
「腕利きの料理人が外に流れているようでして」
「料理にももっとバリエーションがほしいところだ……、して、アシモフよ。例の採掘事業の募集はどのような具合だ」
「順調に集まっております」
「そうか。上手くいくといいが」
「採掘開始までに詳しく調べておりまして、山肌の柔いところから掘削していけば、順当に行って半年ほどで魔力鉱脈に達すると見込まれています。それまでに大量の魔力結晶が副産物として採取されましょうから、工場の建設も同時に進めて参ります」
「……街が栄えれば、人も戻ってくる。これまでの愚行を帳消しにするほどの近代化が起これば、もう街の民が他の豊かな領土との格差に苛まれずに済むだろうて」
「もちろんでございます」
「貿易も再開させる。交通網を整理して、他領土と積極的に関わっていかねばならん」
「……人が変わられましたね、領主様」

 一瞬、ドキリとした。

「……そうか?」
「はい、以前は徹底して他領土との干渉を避けておられました。この御心境の変化はやはり、エリザ様との婚約が関わっておいででございましょうか」
「あ、あぁ! そうさ、そうなのだよアシモフ。なかなか鋭いではないか!」

 アシモフは優しく笑った。俺は日常を忙殺される最中で、まれに我を忘れて発言してしまうことがあった。そのたびにこうして冷や汗を流したものだった。

 俺は自分のことを忘れてなんかいない。三十五歳、会社員、残業疲れで肩こりのひどいことで有名な、独身男の中島孝則だ。これは俺の頭にはきっちり刻まれている。子爵家の当主であらせられる十六の美青年の若々しい脳みそだったら、きっと、ずっと忘れないでいてくれるさ。

 それにしても、セラフィムの意識はどこに行ってしまったのだろうか?

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

処理中です...