冴えないおっさんが没落貴族に異世界転生~売れ残りの悪役令嬢を妻にめとって世界征服目指します~

masa

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タレコミの犯人

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 観念したように魔力を注ぎ込み、他者と異なる輝きと、やたらにはしゃぐ夕暮れの乙女達が聖剣から溢れた。周囲の貴族からどよめきの声が漏れる。

「――ほう。噂通りだな」
「メビウス軍曹、あの者も連れて行きますか」
「そうしてくれ」

 騎士の一人が俺の方に近づいてくる。こうなることは分かっていたから、聖剣だけ渡してこう言った。

「いい、自分で行く」

 さっき連れて行かれた貴族のように無様な格好をさらしたくないからと、自分から自主的に部屋を出た。後を追うようにして、メビウス軍曹と呼ばれていたあのリーダー格の男だけが部屋の外の廊下に出て来て、扉を閉めた。

「……選抜を見届けないで良いのか」
「部下が行う。俺は最初の起動で異光聖剣を発現させた貴族だけをしょっ引く役目だ」
「騎士の間では異光聖剣と呼ばれているのだな」
「光属性以外が対象だ。異光聖剣で最も有名なのが、お前の前に連れて行かれた男が発現させた闇属性の聖剣だ。とはいえ、これを発現させてしまった者は残念ながら聖騎士団所属にはならないがな」
「……もしや、かの秘密組織に?」
「すでに公にも存在を知られつつある。秘密とはいえん」

 表舞台で活躍するのが聖騎士団なら、裏の汚い仕事をこなすのが暗黒騎士団と呼ばれる非公認組織だ。彼らは国にあだなす悪人(ヤクザ者や敵国のスパイ、反政府主義者)の始末や、敵国の権力者の暗殺などを計画実行しているとされ、国民の間でその存在がまことしやかにささやかれていた。

「余はこれからどうなる」

 男は顔をしかめて短い沈黙を挟んだ。

「遠方の貴族はみな勘違いしているようだが、貴族が偉そう接して良いのは直属の部下と平民に対してのみだ。貴族と騎士は対等。余、などと高位ぶった自称はやめろ」
「……そうか、では改めて聞こう。私の処遇はいかに」
「聖騎士団直属の養成機関に入ってもらう。つまり士官学校だ」
「やはりそうか……」

 ――男に案内され、後に付いていって、城の中を歩く。内心穏やかではない。

 この流れは非常にまずい。これではこの後の経済収支報告会にも出席できず、妻に頼まれていた他領土の領主との交渉も出来ないではないか! それどころか、このままではしばらく自分の領土にすら帰れないかもしれない。最悪の展開だ……

「お前には妻が一人あったな」
「あぁ」
「ならばお前の治める領土の管理は妻にやらせて問題ないだろう。連絡はこちらでしておくから、いらぬ心配はするな」

 余計心配だ。このことをエリザに知られたらどうなるか。当然機嫌を損ねるだろう。全くもって俺のせいではないが、現代風にいえば激おこぷんぷん丸だ。もし再会すれば即座に俺を能なしとか愚か者とか言ってなじりまくるに違いない。あぁ、想像するだけでうんざりしてきた。しばらく会いたくないな。

「徴兵令といっても、平民出身の騎士見習いのようにしごかれたりはしない。貧弱体質の貴族どもにいきなり訓練をさせればすぐにくたばるからな」
「ごもっともだ。士官学校の卒業試験合格率は、あの筋骨隆々とした生徒達をもってしても10パーセントもないと聞くし、我々貴族が騎士になるなど、いまだに信じられんよ」
「まぁ、ほとんどの貴族では無理だろうな。しかし一部の貴族には可能性がある」
「可能性?」
「そもそも我々はお前達に純粋な武力を身につけさせるつもりはない。ただ、お前達は腐っても貴族。魔力コントロールに関しては一流のものを持っているだろう。聖剣の本領は武力で振るうことではなく、霊力の放出にある。そのために必要な聖剣の回路組み替えは内部に通う魔力の繊細な操作が肝だ。貴族は常々聖剣を「たしなむ」などとたわけた事を言っているが、魔力に長けたお前達が聖剣をそれなりに操れることはこちらも知っている。貴族とは生来、聖剣の申し子なのだ」
「剣技試験や体力測定の項目はどうなる」
「特例でパスさせる」
「聖剣の能力だけを買われているのだな」
「当たり前だ。ゆえに選抜をしている。貴族の中でも選りすぐりの聖剣使いだけが将来的に有用な人材となる。中途半端な奴ではダメだ。抜群の資質を持つ者だけが戦場で使い物になる。求められているのは即戦力だ」
「しかし、戦況が著しく悪いという話は聞かないが」
「著しくはない。ただ、悪いことは確かだ。このまま行けばいつか主要な防衛ラインを突破されかねない。そうなる前に、通常の位置まで戦線を押し戻すことがミッションだ」
「はぁ……、あ、そうだ。もし士官学校を落第したらどうなる? 即時退学で領土に帰れたりしないのか?」
「あり得ないな。特にお前はあり得ない。卒業試験も至れり尽くせりの設定にして、何が何でも卒業させる。士官学校で甘やかすつもりはないが、お前ならば聖剣実技で落第なんて万に一つもない」
「どうしてそんな事がいえる」
「異光聖剣の使い手で落第した者はいない。それに、事前のタレコミによれば、お前の聖剣はいわくつきだ」
「タレコミがあったのか。そうか、それで私のことを知っていたんだな。しかし誰からのタレコミだ。……まさか」

 メビウス軍曹は口角をかすかに上げて微笑した。そのまさかだよ、とでも言わんばかりの表情に、俺は愕然とした。

「ユリシーズめっ……」
「我々はまだあの方を団長だと思っている。毎月書簡を取り交わしているから、お前の評判は良―く知っているぞ。セラフィム・ボナパルトならば、騎士団の新たなる道を示してくれるかもしれぬ、などと、大げさに書いておられたわ。ははは!」

 あのクソ野郎っ、絶対許さんっ! 今度会ったら解雇を言い渡してやる!
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