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出会い
頼まれました
しおりを挟むそういえば、今、何時なんだろう?
紅茶を飲み干して、ふと、時間が気になった。
掛け時計を見ると、14時になっていた。
…まだ2時間しか経っていないんだ。
色々あったから、もう15時は過ぎていると思ってた。
あ、パンフレット。
テーブルの端に置いたままだった、新しく配られたパンフレットを鞄に収める。
その間も、勇気くんと理事長さんの会話は続いていた。
「叔父さん、今日はこれで終わり?」
「ああ。…それより、世良くん。注意するのが遅くなってしまったけど、学園内では理事長と呼びなさい。あと、話し方も気を付けようか」
「あ、ああ…いや、はい」
「よろしい。だけど、仕事が終わったら、いつも通りでいいよ」
「分かった」
「―勇気、ゆっくりしていくだろう?久しぶりに会ったんだ、話そう」
「ん」
―僕は退出した方がいいかな?いつ声を掛けようか…そう思っていると、こちらを見た理事長さんと目が合った。
「桜井くん、この後何か予定はある?」
「え?あ、はい。人と会う約束をしています」
この後、冬人お兄ちゃんと秋人に会うんだ。
一緒にお昼ご飯を食べる約束だったけど、たぶん、無理だろうな…。
冬お兄ちゃん、委員会は終わったのかな?秋はちゃんとご飯食べたかなぁ。お腹空いたら先に食べて、って伝えたから、大丈夫だよね。
「それは残念だ。…勇気。2階にある、風紀委員室に行って、誰か一人連れてきてくれ」
理事長さんは少し残念そうな顔をした後、勇気くんに言った。
その風紀委員さんは、僕を寮まで案内してくれる人だと思う。
何で僕じゃないんだろう?
「あの、理事長さん。僕、自分で行きます」
不思議に思いつつ、頷こうとしていた勇気くんが返事をする前に言う。
「いや、違うんだよ」
理事長さんは緩く首を振った。
「私は桜井くんと話がしたいから、勇気に呼んできてほしいんだ」
お話?僕、何かしちゃったのかな…?
「電話使わないのかと思ったら、そういうことか。じゃあ、行ってくる」
「よろしく」
勇気くんが立ち上がって、扉に向かう途中で、理事長さんが声を掛けた。
「そうだ。エレベーターを使わず、階段で行くといい。…若いんだから、3階くらい歩きなさい」
「…なんか、若いんだからってとこ、強調された気がする」
おじさん扱いは地雷なのか。
勇気くんは何か呟いて、頷いた。
「分かった。ゆっくり行く」
―カチャ、パタン。
扉が開いて、閉まる音が聞こえた時、僕はあることに気付いた。
あっ。お礼…。また後で言おう。
「桜井くん」
真剣な声で名前を呼ばれた。
「はい」
緊張しながら理事長さんの言葉を待つ。
「話というのは、勇気のことなんだ」
「勇気くん、ですか?」
あれ?僕じゃないんだ…。
てっきり、何かしてしまったんだと思っていたのに。
「…勇気は、悪い子じゃないんだ」
理事長さんは静かに話し出した。
「あの子は誰に対しても、真っ直ぐ向き合っている。等身大で接して、誤魔化さず、本音で話すことが正しいと思ってるんだ。…だから、感じたことや思ったことは言ってしまう」
小さく溜め息を吐いて、困ったような笑みを浮かべている。
「正直者なんだ。良くも悪くも、ね」
そして、理事長さんは真面目な顔で、話を続けていく。
「…当たり前のことだけど、人には触れてはいけないことや言ったらいけないことがある」
誰にでもとは言わないが、ほとんどの人にはあるものだ。
「まあ…それは、さっき痛感したみたいだ」
何があったのか教えてくれなかったけど。
「それでも、今までしてきたことを直すのは容易じゃない。恐らく、また起こるだろう」
勇気に悪気はなくても。
「その時、フォローしてやってほしい」
「フォロー…」
僕に、出来るかな。
「ああ、難しく考えなくていいよ。無理に勇気と一緒にいてくれなくてもいいんだ」
ちゃんと出来る自信がなくて、頷けないでいると、理事長さんは勘違いしてしまったようで、そう言われた。
「ただ…あの子が何かをしてしまった時、もし、桜井くんがその場にいたら、どちらかをフォローしてほしい。勇気じゃなくていいから」
「ちゃんと出来るのか、自信はありませんが…分かりました」
「ありがとう」
僕が頷くと、理事長さんはほんの少し安心したような表情になった。
「済まないね。本当は私が言ってあげたいんだが、立場上出来ないんだ。それに、身内贔屓になってしまうといけないし」
「理事長さん」
これだけは言っておかないと。
「僕と勇気くんは、友達です。無理して、一緒にいるわけではありません」
「そう…。勇気のことを、頼んでもいいかな?」
「はい」
しっかりと頷いた僕を見て、理事長さんは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、桜井くん。大変だろうけど、あの子を頼んだよ」
―それから、扉がノックされるまで、僕は勇気くんの昔話を聞かせてもらった。
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