ぽんぽこタヌキの天狗退治

神伊 咲児

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第15話 天狗の大洪水

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 天狗が唇を尖らせると、ホースの放水みたいにブォオオオって大量の水を出した。

『大洪水の術!』

 古寺はたちまち水に浸かってしまう。

『ははは! 溺れてしまえぇえええ!! ブォオオオオオオオ!!』

 すさまじい水流!
 大人の村人でさえ胸まで水に浸かってしまった。

 まずい、このまま水が増えたらみんな溺れてしまうぞ。

 僕は飛んで逃げることができる。
 でも、他のみんなが助けられない。

 どうしよう!?
 みんな溺れちゃう!

 水はドンドン増える。

『うわぁあ! 大助ぇええ! 耳子泳げないピョン!』
『耳子さん、私に掴まってください!』
『うわぁああ! 沈んじゃうピョン!』
『ごめんなさい! 重すぎて飛べませんでした!』

 二人は水の中に沈む。
 村人も、僕も。みんな水の中。
 
 天狗は空を飛んでいるのだろう。
 上空から笑い声がする。

『ガハハハハ! 溺れろ溺れろぉおおおおおお!!』

 考えろぉお……。
 考えるんだぁ……。
 みんなを助ける方法を……。
 
 水の中で自由に動く方法。

 そうか!
 この手があったぞ!!

 これならみんなを助けることができる!

 で、でも、息が続かない……。

 ク、クソォオオ!
 必勝のアイデアは浮かんでいるのに、水の中を泳げないよ。
 手足をバタつかせても前に進めない。
 ああ、こんなことなら夏休み中に泳ぎをマスターしておくんだった。

 ダ、ダメだ……。
 このままじゃ息がもたない……。

 せっかく、葉っぱカードを五枚も集めてめちゃくちゃ強くなったのに……。

 って、待てよ!

 そうか!

 僕には葉っぱカードがあったんだ!

 このカードを頭に乗せて、

ポンポコポン!

「飛翔!」

 すると、僕の尻尾はグルグル回って、まるで船のスクリューみたいに水をかいだ。

グィーーーーーーーーーン!

 おお! 成功だ!
 飛翔カードの応用。
 尻尾のプロペラで水中を泳いでる!

 よし、これでみんなを助けられるぞ。
 と、いっても僕が運べる人数となれば、せいぜい一人が限界だろう。

 でも、それでいいのさ。
 一人だけでいい。
 一人だけを助けれればみんなを水中から出せるぞ!

 それは──!

 辞典蝶だ!

 君を助ける!

 僕は尻尾を回転させたまま、すさまじいスピードで事典蝶を回収した。
 このまま水面に出ちゃうと天狗に見つかっちゃうからね。僕たちは、そのまま古寺から離れた。
 古寺を出ると、水のない空間に飛び出した。

「あれ!? 水がない!?」

 振り返ると、古寺が水の中に包み込まれていた。透明なゼリーの中にあるような感じ。

『天狗の神通力でああなっているんです』

 なるほど。

『さぁ、大助さん。他の人も急いで助けに行ってください! 蝶々妖怪の私では一人も助けることができないのです!』

「いや。僕は助けないよ」

『な、なにを言い出すんですか!? こんな時に冗談はやめてください!』

「だって、僕だって一人を助けるのが精一杯なんだからさ」

『ひどいです! 見損ないました!! だ、だったら私がみんなを助けに戻ります!』

「違うよ。僕たちじゃ無理なんだって。あんなに深い水の中じゃあ息が続かないんだよ。だったらさ。水の中のエキスパートに力を借りた方が良くないかな?」

『ど、どういう意味ですか?』

「ふふふ。それはね──」




~~空にいる天狗から見た文章になるよ~~

 グフフ。
 しょせんは貧弱な化けダヌキよ。

 古寺を水で包み込んでやったが、今頃はたらふく水を飲んで死んでいるだろうよ。

 クハハハ!
 バカなやつらよのぉ。
  私わしに逆らうからこうなるのだ。

 どれ、もうずいぶんと時間が経っているからな。大洪水の術を解いて元の古寺に戻してやろうか。

 フフフ。
 水がドンドン引いていく。
 さてさて、どんな顔をしているかな?
 ククク。さぞや苦しんだことだろうよ。

 古寺は水浸しだな。
 さて、お堂の中に入ってやろうか。
 みんなはどんな顔──。

『なに!? いない!? そんなバカな!? どこに消えたんだ!?』

 突然、背後から声がする。

「古寺からは脱出させてもらったよ」

 こ、この声は!?

 振り返ると化けダヌキが立っていた。

『貴様ぁ、どうして!? 溺れたはずでは!?』

「ふふふ。さぁ、どうしてだろうね?」

 タヌキの後ろには村人たちがいる。

 みんな無事だとぉぉおお!?

『フフフ! 大助の発想は誰にもわからないんだピョン!』

 ……な、なんだ!?
 ウサギ娘の横にいる妖怪は?

 緑色の肌をした、カエルみたいな妖怪……。

 あんな奴。さっきはいなかったぞぉおおおおお!?

 あの妖怪はもしかしてぇええええええ!? 

 あの頭の丸い皿ぁああああ!

 間違いない!

『貴様ぁあ! 河童かぁあああああ!?』

 どうして河童が古寺にいるんだぁあああああ!?
 


~~化けダヌキの大助くんから見た文章に戻るよ~~

 どうして河童がいるかって?

「ふふふ。じゃあ、その説明をしてあげようかな──」

 時間は二十分前に戻るんだ。

 僕が事典蝶を助けて水の中から脱出した時ね。

 僕は事典蝶に転移の法を使ってもらった。
 この術は一度でも行った場所に戻ることができる便利なもの。
 転移の法で戻った場所は大きな川だった。
 僕がはじめて耳子の手料理を食べた河原。つまり、河童のいる川だ。
 そこで河童に協力を頼んだってわけ。
 
『オイラの力を借りたい? いいズラよ。どこに行くんだズラ?』

 ふふふ。
 河童には転移の法で古寺に来てもらってね。
 みんなを水の中から出してもらったってわけ。
 すっごい早さだったよ。水の中の河童ってスイスイ泳ぐんだから。
 協力を頼んで良かったよ。あっという間に、みんなを水の中から救い出してくれたんだ。

「──とまぁ、説明はこんな感じ。わかったかな?」

『ちくしょおおおおおおおおおおおおお! ふざけやがってぇえええええ!!』

 あらあら。
 赤い顔がさらに真っ赤になっちゃって。
 ずいぶんと怒らせちゃったみたいだぞ。
 でもさ。

「これで水の攻撃は通じないね。こっちには河童がいるんだからさ」

『わはーー! 大助はすごいピョン! 誰にも思いつかない発想だピョン!!』
『事典の私でも思いもつかない作戦でした! 見損なった、なんて言ってごめんなさい』

 ふふふ。
 普段からゲームできたえているんです!

『グヌヌヌゥウ! タヌキの分際で、味なまねをぉお!!』
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