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夢の香り
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目が覚めるといつも同じ香りがする。
いつも感じるあの懐かしい香り。
またか…そう思いながらまだ鳴る前のアラームを消し葛城儛兎(かつらぎまいと)は気怠げな体を起こし会社へと向かう準備を始める。いつからかこの香りでアラームが鳴る前に起きるようになった。まだ忘れられないのかな…自己嫌悪に陥る思考を振り切り、家を出た。
駅へ着き今日の己の不運さを恨む。
『ガチか…朝っぱらからかよ…』
駅へ着いた儛兎を待ち受けたのは突然の運休によって混乱を極めている大勢の人々だった。
急いでスマホを取り出し、会社への連絡を済ませようとしたその時、ふとまたあの香りがした気がした。儛兎は連絡をしようとした手をふと止めてしまった。
「ありえない…アイツはもう居ないんだ…」
気のせいだとわかっていてもどうしても己の都合の良いように解釈してしまう頭を振り切り、会社への連絡を済ませた。
こっからどうするかな…
迂回路を考えながら一度駅を出た。
その時ふとまたあの香りを今度は一際強く感じた気がした…思わず辺りを見回す。
だがその面影すら見つからない。思考を振り切り会社へと向かうことにした。
いつも通らない道だからだろうか…思考は未だに振り切れない…ふと花屋が目に入った。その時またあの香りを感じた。そこで思わずなんの香りか確かめたくなった。が…「会社…これ以上遅れるわけにはいかない…」と理性が働き帰りに寄ろうと心に決めた。
「お先に失礼します!」周りの同僚や先輩達が帰っていくのを見送る。今日はいつもより仕事が捗らなかった。「おい…葛城…お前大丈夫か?」と先輩にまで心配される始末。結局残業する羽目になり、気づけば時計の針は21:30を指していた。
なんとか仕事を終え、帰ろうとしたその時あの花屋の存在を思い出した。「もう閉まってるよな…」わかりつつもスマホで調べる。案の定、店は20:00で閉まっていた。今日はもう早く寝よう…そう思いながら家に帰った。
誰もいない部屋に帰り、ため息をつく。「ため息をつくと幸せが逃げるよ!」いつか誰かに言われた気がする…でもそんなことを気にしていられないくらいため息は止まらない。そんな気分のまま寝たのがいけなかったのだろうか…懐かしい夢を見た。
大学の食堂での記憶だ…
「儛兎!お前レポートおわったか?」
「奈留…お前まだやってなかったのか…?」
「バイト忙しかったんだって…!頼む!レポート見せてくれよ!単位がかかってるんだって!!!」
「はぁ…仕方ねぇなぁ…」
「儛兎ガチ神!あとでなんか奢るわ!」
こいつはいつもこうだ…俺があの顔に勝てないのをわかってやってるのか…いや、無自覚だろうな…
アイツにとって俺はただの友達だ。そんなのわかりきった話。この前なんて好きな人がいるなんて話を聞かされた。こんな苦しい思いをしながらも横にいる理由?そんなの一つしかねぇだろ…
俺のレポートを必死に眺めて解いていくアイツを見てると「やっぱり好きだなぁ…」と思わず心の声が漏れそうになる。
あの香りを感じる。その香りの発生源と思われるのはアイツだ…あ、あの花だ…朝あの花屋で見かけた…
そこで目が覚めた。
そこで俺は違和感を覚える。
何故だ…いつもしてたあの香りがしない…
時計を見ると時間は11:00を示していた。
どうしても何かする気になれずのんびりしてると突然目の前のスマホが鳴り出した。
誰だよ…と思いながら画面を見ると「姉貴」の文字が。姉貴からの電話なんて珍しいな…と思いながら仕方なく電話に出る。
「もしもし…?姉貴?どしたの…?」
「あ!儛兎!今から実家来れるー?私ね結婚するの。だからさ、旦那さんに会ってほしくて…」
「え?まじ?あの人と?」
俺の頭は突然の姉貴の結婚発表によりかなり混乱していた。
「そ!そこまで堅苦しいものじゃないし、食事会って感じ!おめかしなんて要らないから早く来てよね!」
「わ、…わかった…急いで向かう。」
「じゃ!早く来てねー!ブチッ」
「はぁ…」相変わらずだな…
思わずため息をつきながら家を出る支度をする。
実家に着くなり姉貴と母親に出迎えられ、そのままリビングへ連行された。
そのまま姉貴は母親と一緒に台所へと消えてしまった。父親も台所で何か張り切っているのが見える。あの様子だと俺が振る舞う!なんて息巻いて得意な唐揚げでも揚げているのだろう。
リビングへ行くとあの香りを感じた。
そして、食卓に赤い花が置いてあることに気づいた。ウチは食卓に花を置く文化などなかったはず…そう思いながらも食卓についた。
向かいには既に姉貴の旦那である龍史さんが座っていた。
「儛兎くん、こんにちは。突然だったのに来てくれてありがとう。」
「いえ…、それよりご結婚おめでとうございます…」
「儛兎くんが弟かぁー…なんだか嬉しいなー。」
食卓に飾られた赤い花が気になり当たり障りのない会話しか出てこない…。
その花に目を奪われていると龍史さんがポツリとこぼした。
「この花ね、俺が持ってきたんだ…シクラメンって言うんだけど、とってもいい香りでしょ?俺この花好きなんだよね…」
「シクラメン…そうなんですね…いい香りですね…」
「龍史さんも儛兎もなんでそんなよそよそしいのよ!もぅ…!無愛想な弟なんだから…」姉貴の一言でふと現実に戻る。
姉貴と両親が台所から戻って料理を並べていく。そこからは楽しい食事会だった。
食事を終え、俺は翌日も会社があるため帰宅することにした。帰りながらスマホを出してシクラメンについて調べる。
「シクラメン…っと…」
冬の花なんだな…花言葉を見て思わず息をのむ。ここであの花を知ったのはある意味運命なのかもしれない。
そろそろこの恋を終わらせるしかないのかと…。
俺は逃げたんだ…アイツの横にいるのが辛くなって。大学卒業と同時に実家のある県に戻り、大学の友人の連絡先も全て消した。もうアイツに会う可能性を消したかったからだ。
夕日が傾く橋に差し掛かった時、ふとまたしなくなったはずのあの香りがした。もう終わったはずなのに…しかもあの朝のような強い香り。思わず振り向いた。だが何もない。その時ふと心の中で整理がついた気がした。もう思い出にしよう。そう思いながら前を向こうとしたその時あの懐かしい声が聞こえた。
「見つけた…。」
ーシクラメンの花言葉
遠慮 内気 はにかみ
ー赤いシクラメンの花言葉
絆 愛情
いつも感じるあの懐かしい香り。
またか…そう思いながらまだ鳴る前のアラームを消し葛城儛兎(かつらぎまいと)は気怠げな体を起こし会社へと向かう準備を始める。いつからかこの香りでアラームが鳴る前に起きるようになった。まだ忘れられないのかな…自己嫌悪に陥る思考を振り切り、家を出た。
駅へ着き今日の己の不運さを恨む。
『ガチか…朝っぱらからかよ…』
駅へ着いた儛兎を待ち受けたのは突然の運休によって混乱を極めている大勢の人々だった。
急いでスマホを取り出し、会社への連絡を済ませようとしたその時、ふとまたあの香りがした気がした。儛兎は連絡をしようとした手をふと止めてしまった。
「ありえない…アイツはもう居ないんだ…」
気のせいだとわかっていてもどうしても己の都合の良いように解釈してしまう頭を振り切り、会社への連絡を済ませた。
こっからどうするかな…
迂回路を考えながら一度駅を出た。
その時ふとまたあの香りを今度は一際強く感じた気がした…思わず辺りを見回す。
だがその面影すら見つからない。思考を振り切り会社へと向かうことにした。
いつも通らない道だからだろうか…思考は未だに振り切れない…ふと花屋が目に入った。その時またあの香りを感じた。そこで思わずなんの香りか確かめたくなった。が…「会社…これ以上遅れるわけにはいかない…」と理性が働き帰りに寄ろうと心に決めた。
「お先に失礼します!」周りの同僚や先輩達が帰っていくのを見送る。今日はいつもより仕事が捗らなかった。「おい…葛城…お前大丈夫か?」と先輩にまで心配される始末。結局残業する羽目になり、気づけば時計の針は21:30を指していた。
なんとか仕事を終え、帰ろうとしたその時あの花屋の存在を思い出した。「もう閉まってるよな…」わかりつつもスマホで調べる。案の定、店は20:00で閉まっていた。今日はもう早く寝よう…そう思いながら家に帰った。
誰もいない部屋に帰り、ため息をつく。「ため息をつくと幸せが逃げるよ!」いつか誰かに言われた気がする…でもそんなことを気にしていられないくらいため息は止まらない。そんな気分のまま寝たのがいけなかったのだろうか…懐かしい夢を見た。
大学の食堂での記憶だ…
「儛兎!お前レポートおわったか?」
「奈留…お前まだやってなかったのか…?」
「バイト忙しかったんだって…!頼む!レポート見せてくれよ!単位がかかってるんだって!!!」
「はぁ…仕方ねぇなぁ…」
「儛兎ガチ神!あとでなんか奢るわ!」
こいつはいつもこうだ…俺があの顔に勝てないのをわかってやってるのか…いや、無自覚だろうな…
アイツにとって俺はただの友達だ。そんなのわかりきった話。この前なんて好きな人がいるなんて話を聞かされた。こんな苦しい思いをしながらも横にいる理由?そんなの一つしかねぇだろ…
俺のレポートを必死に眺めて解いていくアイツを見てると「やっぱり好きだなぁ…」と思わず心の声が漏れそうになる。
あの香りを感じる。その香りの発生源と思われるのはアイツだ…あ、あの花だ…朝あの花屋で見かけた…
そこで目が覚めた。
そこで俺は違和感を覚える。
何故だ…いつもしてたあの香りがしない…
時計を見ると時間は11:00を示していた。
どうしても何かする気になれずのんびりしてると突然目の前のスマホが鳴り出した。
誰だよ…と思いながら画面を見ると「姉貴」の文字が。姉貴からの電話なんて珍しいな…と思いながら仕方なく電話に出る。
「もしもし…?姉貴?どしたの…?」
「あ!儛兎!今から実家来れるー?私ね結婚するの。だからさ、旦那さんに会ってほしくて…」
「え?まじ?あの人と?」
俺の頭は突然の姉貴の結婚発表によりかなり混乱していた。
「そ!そこまで堅苦しいものじゃないし、食事会って感じ!おめかしなんて要らないから早く来てよね!」
「わ、…わかった…急いで向かう。」
「じゃ!早く来てねー!ブチッ」
「はぁ…」相変わらずだな…
思わずため息をつきながら家を出る支度をする。
実家に着くなり姉貴と母親に出迎えられ、そのままリビングへ連行された。
そのまま姉貴は母親と一緒に台所へと消えてしまった。父親も台所で何か張り切っているのが見える。あの様子だと俺が振る舞う!なんて息巻いて得意な唐揚げでも揚げているのだろう。
リビングへ行くとあの香りを感じた。
そして、食卓に赤い花が置いてあることに気づいた。ウチは食卓に花を置く文化などなかったはず…そう思いながらも食卓についた。
向かいには既に姉貴の旦那である龍史さんが座っていた。
「儛兎くん、こんにちは。突然だったのに来てくれてありがとう。」
「いえ…、それよりご結婚おめでとうございます…」
「儛兎くんが弟かぁー…なんだか嬉しいなー。」
食卓に飾られた赤い花が気になり当たり障りのない会話しか出てこない…。
その花に目を奪われていると龍史さんがポツリとこぼした。
「この花ね、俺が持ってきたんだ…シクラメンって言うんだけど、とってもいい香りでしょ?俺この花好きなんだよね…」
「シクラメン…そうなんですね…いい香りですね…」
「龍史さんも儛兎もなんでそんなよそよそしいのよ!もぅ…!無愛想な弟なんだから…」姉貴の一言でふと現実に戻る。
姉貴と両親が台所から戻って料理を並べていく。そこからは楽しい食事会だった。
食事を終え、俺は翌日も会社があるため帰宅することにした。帰りながらスマホを出してシクラメンについて調べる。
「シクラメン…っと…」
冬の花なんだな…花言葉を見て思わず息をのむ。ここであの花を知ったのはある意味運命なのかもしれない。
そろそろこの恋を終わらせるしかないのかと…。
俺は逃げたんだ…アイツの横にいるのが辛くなって。大学卒業と同時に実家のある県に戻り、大学の友人の連絡先も全て消した。もうアイツに会う可能性を消したかったからだ。
夕日が傾く橋に差し掛かった時、ふとまたしなくなったはずのあの香りがした。もう終わったはずなのに…しかもあの朝のような強い香り。思わず振り向いた。だが何もない。その時ふと心の中で整理がついた気がした。もう思い出にしよう。そう思いながら前を向こうとしたその時あの懐かしい声が聞こえた。
「見つけた…。」
ーシクラメンの花言葉
遠慮 内気 はにかみ
ー赤いシクラメンの花言葉
絆 愛情
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