龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

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龍王と狐の来訪者

51話目

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鞠に触れられるとその部位の魔力を吸われる。そう気付いた時には既に致命的だった。魔力を吸われ過ぎた俺の体は縮小し、そして俺の魔力を吸った分に比例して鞠は大きく育ってしまっている


そして厄介極まりない事に、この鞠を投げつける影絵は物理的な攻撃が通用しない。正確に言うなら、影だからだろうか。殴ろうと投げつけようと俺の攻撃が全てすり抜けるのだ、こうなってしまえば本当に手の打ちようが無かった


せめて魔法が使えたらやりようがあったが、こうなると……いや、待てよ……I think soいえば日本語を書いた時に魔法使えてたよな?
姫様よ。どうやらあの数日前の実験は俺にとっても意味のある事だったみたいだ


思い出せ、あの修行の日々を。姫は言っていた。俺が文字の内容を理解して魔力を流せばこの文字は魔法文字に変換されると言っていた……気がする


や、やるしかねえ。しかし影に効く魔法か。
インド洋……間違った。陰と陽。光と影。光が当たらない所に影が出来るのだ。そんな事、誰もが知ってる。当たり前のこと。つまり、魔力により生じた光を当てれば影など簡単に消えてしまうのではないだろうか?


「クハハ。随分と可愛いらしい姿になったものだ。時間稼ぎのつもりだったが、存外このまま削り殺すのも一興か……」


「《吠え面かきやがれぇぇぇ!
これが!!光の力だぁぁ!!!》」


"光"と地面に書いた。その字が魔法文字に変換され、眩い閃光が辺り一面に一瞬だけ迸る。効果は一瞬で瞬き程にも満たない時間だが、それでも視覚に強烈な刺激を与えてきた。俺の目にはカケラのダメージもないが、普通の人間が食らったら間違いなく一時的に失明するほどだろう。効果は一瞬だったが、それでも影絵は……消えていた。鞠だけなぜか残っているが、影も形も無いとは正にこの事


ヒャッハー!散々調子に乗ってくれちゃって。ギッタンギッタンにしてやるから覚悟しろよなと言わんばかりにはしゃぐ俺の姿を見て、アナムは尚おぞましく笑っていた


「最初にそれをやるべきだったな」


判断が遅い!と言いたいのだろうか。なんだ、この余裕は


「だがその精神力だけは大したものだ。我らの肉体で魔力が失われる事は想像を絶する痛みを伴うのだから」


「む?」


瞬間、気を失っている桐壺の目や鼻や口から、ドロリと濁った黒い血液が溢れる。それを見たアナムが視線を細めた


「これはいかんな。肉体が壊死しかけてる……」


「座興はこれで終いとしよう」


巨大に膨らんだ鞠を右手に宿ったアナムが大きく口を開けて果実に齧り付くみたいにムシャムシャと食べ始めた。一口食べる毎にアナムの力が爆発的に上昇していくのが分かる。負のオーラのようなものが桐壺の全身を包み込み始める


真の恐怖には理由がないとは誰の言葉だっただろうか。体が小さくなって脳味噌まで縮んでしまったとしか思えないほど頭が上手く働かず呆然とする。
生物が持つ理由のない恐怖を大きく形作っていく、凡そ生き物と言うには程遠いその総身は刃で出来た怪物であり、正しく怪奇であった。絶対に人と相容る事の出来ない同じ生物とさえ呼ぶのも憚かりたいほどの、圧倒的な忌諱。異形へとその姿を変貌させていた


見ただけでSUN値をゴリゴリ削ってしまう、醜怪な巨獣は天に向かって吠え上がる。山のように大きな獣が自己を世界に誇示するように地鳴りのような声で天地を鳴動させた


「■■■■!!!!!」


吠え終わると巨獣の黒く澱んだ単眼が俺をゆっくりと見下ろす。見つめられるだけで、恐怖か緊張か、言い知れぬ悪寒に体が僅かに硬直する


「……素晴らしい魔力だ。エニシダ・サバトにより殆ど破壊され一欠片程度だった魂もほぼ取り戻すとはな。此奴との契約を成した暁には、この国全ての命を我が糧にするとしよう。さすれば更に力を取り戻し、私はかつての姿により一層近付ける事になるだろう」


「そして今度こそ……いやそれよりも」


発声する器官は見当たらないが、話し終えた後に巨獣は俺から視線を外し、明後日の方へ顔を向ける。それは花ちゃんが項遠王を連れて逃げた方角であった


この巨躯に追われて暴れられれば、それだけで一体どれだけの命が消えることになるのか。考えたくもない。そんな光景を想像するだけで、俺の肝は冷える


「《おいおい連れないな。俺の相手をしてくれないのかい?》」


「お前とやるのは飽いた。今の私の全力の一撃を手向けに消えるといい」


単眼が魔力を込め始める。マズイ、これが、こんなのが、撃たれたら俺所か後方にある全てが消失する


咄嗟に俺は被害を抑える為に、アナムを飛び越えるほど上空へ高々と飛び上がる


「逃がすものか。さあ消えよ。終末を告げる息吹きフレアデス


死の光が収束して、その全てが俺に向けて撃ち放たれ身体で受ける。痛みはなかった。だがこのまま受け続けると死ぬ予感がする。考えろ。どうする、どうすれば────身体が魔力で出来ている。ならば、魔法を構成している魔力も体内に取り込めるのではないかとふと頭によぎった。
出来るのか?そんな事が。いややらねば。そして、俺は魔法の海の中で大きく息を吸った。そして……


「ふ。ふははは。ふはははは。なるほど。こうするのか。大声で笑うというのは確かに気分が良いものだな」


「さあ。これで何者にも邪魔はさせぬ。鏖殺だ。何もかも」


『マイクテスト。マイクテスト。あ、あー。ヴルカーン管理人かぐやでーす』


『外で騒いでるキモい芋虫。そう。そこのお前。五月蝿いんすけどー?ねえもう一度言うよ う・る・さ・い!んですけどー!これ以上うるさくするなら……』


「何者か知らぬがどうするというのだ。始祖である私を貴様如きがどうこうできるとでも」


『あーやだやだ。これだからカビの生えた奴らは嫌いなんだよー。いつまで最強気取ってんのかねー。まあ、分からせてやっても』


『……あっちが先か』


「なに?」


アナムは自身の攻撃で消し飛ばした方へ顔を向けてそのまま表情を凍りつかせた。流石のアナムも動揺を隠せなかった。何が起きたのか理解ができなかったのだろう


「《勝利宣言をするには気が早いな。そして次にお前が言う台詞は、馬鹿な!?なぜ生きていられる。だ》」


「馬鹿な!?なぜ生きていられ……ハッ!」


「《俺たち始祖ってやつの身体は恐らく魔力か何かで出来ているんだろ?なら魔力を元に構成している魔法も内部に取り込んで魔力に変換できる。違いますか?》」


魔法を食べて莫大な魔力を得られたからだろう。俺の体は元に戻り、更に今まで以上に力が漲っている


「ま、魔法を食べる、だと。無知がすぎるぞ。それらは魔力によって発動している力だ。始祖であろうと全く異なった理を通して発生したモノを食べられるものか。今のは何かの間違いだ」


そう言ってアナムは攻撃する。
ムシャムシャムシャ


「こんな。こんな事が…!仮に食べられたとしても、私の権能の"蝕"により貴様の身体は瞬く間に朽ちて果てるはず」


諦めずにアナムは攻撃する
ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ


「有り得ぬ、有り得ぬ、有り得ぬ。こんな事が出来るわけが……!」


無駄と理解してもアナムは攻撃し続ける
ゴクリッとその全てを俺は飲み込んだ。少し口元が痺れるな。まあさして問題はなさそうだが、これなら夢乃さんの料理の方がよほどキツかった


「《ご馳走様》」


頭が随分と冴え、全能感と多幸感に包まれている。少しだけこのアーカーシャという存在を理解出来たようだ。今なら誰にも負ける気がしないな


「《さて 来いよ、ド三流。俺とお前の格の違いってやつを見せてやる》」


「馬鹿な馬鹿な馬鹿な。あ、雨乃三具鞠!!」


「《そいつはもう攻略してみせたろうに》」


「《他の攻略法も見せてやろうかな》」


俺は空気を触れる。そしてその空気を捻じ曲げて、光を屈折させていく。今の俺なら此処ら一帯に降り注ぐ光全てを捻じ曲げて、周囲を闇にする事が可能だった。そしてそんな簡単な事で案の定影絵たちは消えてしまった


光だけでは無い。淡い影などより濃い闇で塗り潰す事もできる


「なんなのだ、お前は」


化物は化物らしからぬ悲鳴を上げた。暗闇であろうと、昼間のように俺にはその顔が恐怖に歪んでいる様がハッキリと見えた


後は醜悪な汚らしい生き物の体を細かく解体するだけの簡単な作業だった



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