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龍王と狐の来訪者
50話目
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何と表現すれば良いのだろう。桐壺の右手の甲に突然口が出現した。口だけでは無い、いつの間にか掌には大きな単眼が。洞穴の様に真っ暗で虚無としか言いようの光を知らない眼が俺の事をまざまざと穴が開いてしまいそうな程に凝視している。
そしてソイツは何が面白いのか突然、醜悪に。下品に。ゲラゲラと聞いてるだけで身の毛もよだつ嗤い声を恥ずかしげもなく辺りに響かせる
「無様だな。良いようにされて」
「《何の話だ?》」
「まあいいさ。"魂"と"契約"を司る始祖アナム。この名に賭けて邪魔はさせぬ」
俺が動くより先に右手……アナムは歌うように攻撃を仕掛けて来た
「"汝。咎人ニ罰ヲ与エルモノト知リ給エ"切り断ち」
首に強烈な違和感を感じる。直感的に何かが首を狙っているから守らなければいけないと感じた。遅れて腕で首を守ると1秒にも満たない刹那に目には見えないが何かをぶつけられた
「直感と認識による事象の先読み。そして忌々しい鱗は健在か。中身がどうであれ、今の我では詠唱有りでも首を飛ばすのは流石に無理だな」
「今度は力比べといこうか」
アナムが歌いながら指を振るうと空間から武器が宙に現れる
「"汝。塵ハ塵ニ灰ハ灰ニ帰スモノト知リ給エ"火具槌」
火具槌と呼ばれた黒い炎を身に纏ったハンマーが、俺の直上に突然出現して、持ち手もいないのに振り下ろされる。何よりも俺の度肝を抜いたのが、その槌の余りの巨大さだ。優に俺の身体の倍以上の大きさを誇っている
そのまま振り下ろされた巨大な槌に対して、俺はもちろん抵抗した。そう。拳で!
「《オラオラオラ!》」
俺の拳の数だけ槌が振り下ろされるが、力は互角で互いに一歩も譲らない
「実力伯仲か」
「汝。黒キ涙ハ悪魔ヲ呼ブモノト知リ給エ 愚九ノ血」
突然空が暗くなったかと思うと、爪が不気味に伸び、骨ばった老婆のような手首が宙に現れた。手には試験管を持っており、それをゆっくりと地面に向けて傾ける。試験管の中身がこぼれて、地上に降り注ぐと、触れた地面から9体の泥人形みたいな奴らが現れる
数で押す気かと一瞬だけ警戒したがそうではなかった。アナムは俺のことなど眼中にないのだ
「我が僕たちよ。逃げた奴らを追え」
「《んなことさせるかぁぁ!!》」
奴らが動くより先に翼を高速で泥人形に振るう。左右それぞれで2体ずつ刺し貫くと、人の形を維持できなくなったのか泥人形たちはドロドロになり溶けていく。残った5体もその調子で全滅させたかったが、アナムがそれをただ見ている訳がなく、いつの間にか俺の真横に入り込んでおり、火具槌を叩きつけてくる
「《くそっ。邪魔だっつうの!》」
殴られながらも、無視して更にもう1体を手で捕まえて握り潰す。残りは4体だが、アナムに更に追撃され、真上から地面に叩きつけられ、生まれた僅かな時間で残りは取り逃してしまう
「《こ、のやろう。調子に乗りやがって~!》」
「お前の相手は我だ」
「"汝。影法師ハ死ニ向ケテ手ヲ引ク者ト知リ給エ"雨乃三具鞠」
遠くから子供たちが笑い声と共に。鞠が地面を跳ねる音と共に。小気味良い鈴の音と共に。近付いてくる。いや俺の周囲に既にいて取り囲んでいる
「そしてじきに終わりだ」
無数の子供の影絵は俺を取り囲みながら、ポンポンと黒いシャボン玉の様な黒い鞠を突きながら俺めがけて緩慢に投げつけてきた
「《そんなものが効くわけ……》」
受けようとした瞬間にアナムの口角が僅かに、だが邪悪に吊り上がったのを確かに見た。その瞬間、反射的に身体が鞠を避けてしまったが、僅かに腕が触れる
痛みはなかったが、俺は更に大きく飛び退いて距離を取る。腕の力が少しだけ抜けたのだ
「《物理ではなく特殊能力系か。能力とか教えてくんない?》」
「後、何回か当たれば嫌でも分かる」
「《まあ教える奴はいないよな。だがどんな能力だろうとそんなもん当たらなければ、どうということはねえということを教えてやんよ》」
そしてソイツは何が面白いのか突然、醜悪に。下品に。ゲラゲラと聞いてるだけで身の毛もよだつ嗤い声を恥ずかしげもなく辺りに響かせる
「無様だな。良いようにされて」
「《何の話だ?》」
「まあいいさ。"魂"と"契約"を司る始祖アナム。この名に賭けて邪魔はさせぬ」
俺が動くより先に右手……アナムは歌うように攻撃を仕掛けて来た
「"汝。咎人ニ罰ヲ与エルモノト知リ給エ"切り断ち」
首に強烈な違和感を感じる。直感的に何かが首を狙っているから守らなければいけないと感じた。遅れて腕で首を守ると1秒にも満たない刹那に目には見えないが何かをぶつけられた
「直感と認識による事象の先読み。そして忌々しい鱗は健在か。中身がどうであれ、今の我では詠唱有りでも首を飛ばすのは流石に無理だな」
「今度は力比べといこうか」
アナムが歌いながら指を振るうと空間から武器が宙に現れる
「"汝。塵ハ塵ニ灰ハ灰ニ帰スモノト知リ給エ"火具槌」
火具槌と呼ばれた黒い炎を身に纏ったハンマーが、俺の直上に突然出現して、持ち手もいないのに振り下ろされる。何よりも俺の度肝を抜いたのが、その槌の余りの巨大さだ。優に俺の身体の倍以上の大きさを誇っている
そのまま振り下ろされた巨大な槌に対して、俺はもちろん抵抗した。そう。拳で!
「《オラオラオラ!》」
俺の拳の数だけ槌が振り下ろされるが、力は互角で互いに一歩も譲らない
「実力伯仲か」
「汝。黒キ涙ハ悪魔ヲ呼ブモノト知リ給エ 愚九ノ血」
突然空が暗くなったかと思うと、爪が不気味に伸び、骨ばった老婆のような手首が宙に現れた。手には試験管を持っており、それをゆっくりと地面に向けて傾ける。試験管の中身がこぼれて、地上に降り注ぐと、触れた地面から9体の泥人形みたいな奴らが現れる
数で押す気かと一瞬だけ警戒したがそうではなかった。アナムは俺のことなど眼中にないのだ
「我が僕たちよ。逃げた奴らを追え」
「《んなことさせるかぁぁ!!》」
奴らが動くより先に翼を高速で泥人形に振るう。左右それぞれで2体ずつ刺し貫くと、人の形を維持できなくなったのか泥人形たちはドロドロになり溶けていく。残った5体もその調子で全滅させたかったが、アナムがそれをただ見ている訳がなく、いつの間にか俺の真横に入り込んでおり、火具槌を叩きつけてくる
「《くそっ。邪魔だっつうの!》」
殴られながらも、無視して更にもう1体を手で捕まえて握り潰す。残りは4体だが、アナムに更に追撃され、真上から地面に叩きつけられ、生まれた僅かな時間で残りは取り逃してしまう
「《こ、のやろう。調子に乗りやがって~!》」
「お前の相手は我だ」
「"汝。影法師ハ死ニ向ケテ手ヲ引ク者ト知リ給エ"雨乃三具鞠」
遠くから子供たちが笑い声と共に。鞠が地面を跳ねる音と共に。小気味良い鈴の音と共に。近付いてくる。いや俺の周囲に既にいて取り囲んでいる
「そしてじきに終わりだ」
無数の子供の影絵は俺を取り囲みながら、ポンポンと黒いシャボン玉の様な黒い鞠を突きながら俺めがけて緩慢に投げつけてきた
「《そんなものが効くわけ……》」
受けようとした瞬間にアナムの口角が僅かに、だが邪悪に吊り上がったのを確かに見た。その瞬間、反射的に身体が鞠を避けてしまったが、僅かに腕が触れる
痛みはなかったが、俺は更に大きく飛び退いて距離を取る。腕の力が少しだけ抜けたのだ
「《物理ではなく特殊能力系か。能力とか教えてくんない?》」
「後、何回か当たれば嫌でも分かる」
「《まあ教える奴はいないよな。だがどんな能力だろうとそんなもん当たらなければ、どうということはねえということを教えてやんよ》」
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