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龍王と狐の来訪者
49話目
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ーーアーカーシャsideーー
こんにちは。役立たずアーカーシャです!
余りにも役立たず過ぎて、国外追放(物理)されてしまいました。これから真の仲間を見つけて、追放した奴を見返してやるです!!
まあ、冗談は置いといて
現在進行形で桐壺の攻撃を前に為す術なく俺は遥か遠方まで飛ばされていた。もはや王都が影も形も見当たらない。頭を悩ませていると突然全身に力が漲り、身体が元に戻る。抗えなかった強力な斬撃の波が途端に鬱陶しく張り付いてくる錆びついた刃物のせせらぎ程度になり、腕を振るうと消し飛んだ。ふっ、他愛無い
「《どこまで飛ばされたんだ、これ》」
姫に飲まされた魔法丸薬の効果が切れたのか、はたまた別の理由か、どちらにせよ元の大きさに戻ったのなら、あの悪趣味なパワーアップをした桐壺を止めることも可能だろう。しかし場所が分からない。此処はどこ?俺は誰だ?思い出せるのは、前の世界に彼女がいたという情報だけだ
「《一直線に進めばいいのかねぇ……おろ?》」
異世界で初の迷子。うわぁ…どうしよ。途方に暮れていると背後から誰かが近づいてくる気配を感じたので反射的に振り返ると犬っぽい獣人がいた
ま、まさか!迷子を助ける為の犬のおまわりさん的なやつ!!?
「運が悪いなぁ……自分フリューゲルに急いでるって時に、よりにもよってなんで龍が」
あ、違うわ。これ。もう人当たり悪すぎるもん。強面の警官でもここまで露骨な職質はしないよ?
誰に言うでもなく、ボソリと毒づく彼女は、トレンドマークと言わんばかりに立派な犬に似た獣耳が頭頂部には付いており、2mはある鉄棒のような物を背負って、滞空しながら俺を睨みつけている
桐壺みたいに力技で宙を蹴って飛んでいるのではなく、身につけているブーツから魔力を噴射して滞空している。魔法で空を飛ぶといえば、俺たちの世界でいえば箒だったり、絨毯だったんだがな
それにしても、魔力を噴射して空を飛ぶ靴なんてあるんだな。なんだろう、こういうの見ると、この世界のスポーツはもしかして、良い道具を用意出来ないと、およそ公平な勝負が出来ない様になってない?
鳥人間コンテスト開いて、人によっては人力飛行機だったりするのに、用意出来るなら別に軍用機使うのも可とか言われたら、前者に全く勝ち目無くなっちゃうんですけどぉぉぉ!!?
ってか今は一分一秒が惜しいというのに、やるか?やるしかないのか?どうする? どーすんの オレ? ライフカードを確認!!
【戦闘】 【逃走】 ▶︎【説得】
「《同じ赤色同士仲良くやろうぜ。だからそんな殺気をさっきからださないで……な~んてね。うぷぷ》」
「……何か話しかけてる?玉手箱起動。この龍の言葉を翻訳して」
《おはようございます。みんなの玉手箱。気軽にタマと呼んでください》
某スマホのAIはシリで異世界のAIはタマなのか(困惑)。これもう環境型セクハラなんじゃないかと思えてしまうな。お前の所属する教会多分近いうちに行政指導入るから覚悟してくれよな!!
「《やっはろー。アーカーシャだよ。挨拶ついでに道を教えてくれると嬉しいなって》」
《俺様の名はアーカーシャ。後告白してます。単刀直入に言おう。お前に惚れた。俺様の嫁になれ!と言っています》
「《いってなあああい!!!》」
「え、えぇぇ!!?それってプロロロポぼぽ!!?
こここ困るよ。自分まだ16だしっ!……え、でもこの龍そんなに顔は悪くないし、アリなのかな?いやいやでもまだまだ魔導師として働きたいし、ナシだよね?……で、でも生まれて初めて告白されたし強そうだし、やっぱりアリかも。でもでも、雪先輩と同じ仕事をせっかくしてるのに、やっぱナシ!……ま、まってまって自分、勇気出して告白してくれた相手を振るのも可哀想じゃない?アリにしてあげた方が《まあ告白はぜーんぶ嘘ですけどね》
「乙女の純情を誑かしたなぁぁぁ!!!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。アナタを殺して自分も死ぬ!!」
赤い獣娘の瞳から一瞬でハイライトが消える
「《自己紹介しただけでどうしてこうなるの?もしかして魔導師ってみんなこんな変な感じなの?》」
今のやり取りだけで何となく人柄は掴めた、情熱的にして思い込みが強く子供の様に直上的な印象を強く受ける。
泣き喚く少女を表すイメージカラーは間違いなく赤と誰もがそう答えるだろう。だって所々が跳ねているショートヘアは豪奢で憂愁を思わせる夕焼けと同じ茜色と同じであり、ほっぺはりんごの様に赤みを帯びている。見てるだけでうっとりとする紅玉のような瞳も、身に付けているアクセサリーや着ている高級感あふれるモフモフのコートも。その全てが赤ばかりであるのだ。赤は危険。はっきりわかんだね
「《っていうかこのAIタマのせいだよ。人間関係捻ってるんだが。最早捻りすぎて捻切れてるレベルなんだが?》」
《……ふむふむ。龍とか亜人とか関係ない。俺にはお前が必要なんだ》
最早言ってもないことを翻訳し始めたんだが、おい業者はよリコールかけてくれえええ!ここに!今ここに現在進行形で被害者がでてますよぉぉ!!
「そ、そうなんだ。因みに自分のどんな所が好きなんですか、あ、あ、アカシャ様!」
この子情緒不安定なの?もう距離の詰め方おかしい。誰か病院連れてってくれーー!取り返しがつかない事になっても知らんぞ!!
「《……犬みたいで可愛い所?》」
《犬みたいで可愛い所》
「は?」
一番の真顔だった。ハイライトがまたしても消失しているが、もうこのおぞましい流れ止めない?Nice boatの画面なんて見たくねえんだよ、俺は
「誇り高いライカンを、よりにもよって犬畜生と同じにするんですか?
確かに自分は人とライカンの混血種なんですけど……酷い。責任とってよ!」
「《なんの?》」
誠に遺憾ながら俺の配慮に欠けた物言いが、思いがけずかなり癪に触ってしまったらしいので、俺は直ぐ様に謝罪を述べることにした
「《とりあえずごめん。悪気があったわけじゃないんだ。気を悪くしないでくれ。仲良くするのが無理なら、じゃあ、俺はこれで》」
三十六計逃げるに如かず。すると彼女は肩に背負ってる長い鉄棒を手に取ると、鉄棒が仰々しく武器として形を変えていき、あたかも彼女の意思を如実に形にしていく様だった。率直に言おう。怖い
「《待て待て待て。君あれだろ?魔導師ってことは姫と絶対知り合いだろ。俺は白雪姫って魔導師と契約している使い魔アーカーシャだぞ。ほれこの立派な主従の証を見よ》」
《……自分は魔導師白雪姫の使い魔だと言ってます》
胸に刻まれていた、実際は対等には程遠い奴隷契約を交わした哀れな紋章を見せつける。初めこそ訝しげであったが、俺と姫の契約の証を見たら徐々に顔を青ざめさせていく
「え、えぇぇ!?雪先輩の使い魔様!
ま、まさか。自分が遅かったのでわざわざ迎えに来てくれたんですか!?」
何言ってんだ、こいつ?
でも乗るしかねえ、このビッグウェーブに!
「《……そうだよ!チンタラしてんじゃないよ!早く俺の背に乗りな!》」
《そうだと言ってます》
ビッグウェーブに便乗する事にした。まあ便乗するというか、便乗させるんだけどね
序列8位『赤』を冠する魔導師赤空花。それが彼女の名前だった。学院時代の姫の後輩にあたるらしい。そういや姫って何歳くらいなんだろう。俺とそう年は離れてないはずだが
どうやら2日前の夜。つまり清正さんと戦ったあの日の夜に先輩である姫に呼びつけられたので、急いでバルドラ首都に向かっていた様だった。不眠不休で2日もかけて。健気すぎるだろ
「クンクンクン。確かによく嗅ぐと雪先輩の魔力の残り香を感じる。先輩の尻がここに。ハァハァ……」
「ああ~雪先輩に早く会いたい」
スンスンと花ちゃんが鼻を鱗にくっ付けて、恍惚感に包まれた声色と尻尾を振りながらそんなことを洩らす
名前通りに百合という名の立派な花を咲かせているみたいですね。あと舐めるのやめろ
そういえば、神の子を産んだ聖母様と白百合には深い繋がりがあるとかないとか聞いたことがある。
百合。純潔。受胎告知。天使の祝福。ここから導き出される答えは……そう、つまり、百合こそジャスティスという天からの啓示的なやつなんじゃないかな……あと舐めるのやめろ
「《姫のこと随分と慕ってるのね》」
《白雪姫が好きなのかと聞いてます》
「好き?そんな俗な言葉で片付けないで欲しいですね!アカシャ様!これは崇拝。そう何を隠そう雪先輩は私にとっての神に等しいのです。アカシャ様は知らないだろうから、姫先輩の伝説を教えてあげましょう。先ず史上最年少で魔導学院オーウェンに入学し、1回生の時点で数多の魔導具や魔法術式を創り上げた事で銀杖星位勲章を授与され、更には秘匿されていますが、とある功績により4人目の特級魔導師に認定。まあそっちは四賢人と揉めて剥奪されてますけど……ともかく!」
「姫先輩のこと聞きたいなら教えれる範囲で教えますよ。自分と契約している人の事は知っておいたほうがいいからね。使い魔契約は契約者を知ることで発揮できる力が大きく変わりますよ。その代わりそっちも自分の知らない情報があったらギブアンドテイクということで」
「《ごめん。力になれそうもないわ》」
あいつやばいシンパ抱えてんだな。
そうこうしている内に王都が見えた。その瞬間に突然全身に強い魔力が覆い被さってきた。これは桐壺の魔力だ。だがさっきよりも更に巨大に膨れ上がっている。拙いほどに
花ちゃんも獣耳を澄ませて何か感じ取り、何かのスイッチを切り替えたように真剣な顔つきになる
「この馬鹿げた魔力はどこから…。
あの1番デカい建物近くに大きな魔力反応が2つ。で、でも急がないとアカシャ様!!その内の片方がもう消えかけてる!!」
花ちゃんに急かされるまでもなく、既に俺は全力で空を蹴り視界に捉えた桐壺の目前に向かっていた
ーーー
「アーカーシャ」
そして今に至る。桐壺が震える様な声で俺の名を呼ぶ。俺が離席した僅か数十分の間に、項遠王と桐壺の決着は着いていた。
王は片腕が切り落とされ、傷口からは水道の蛇口でも捻ったかのように止めどなく血が溢れ出てており、血溜まりの池に体を沈めていた。
そして勝った桐壺が今まさに敗者にトドメを刺そうとしていたのを俺が阻んだ形だったのだが、桐壺の表情を見るとそう単純な状況ではない様だった。
よく見ると、攻撃しようとしている右手を左手で掴んで必死に抵抗しているように見て取れる
右手が疼くのか!?つまりこれはその厨2的な……
「コイツを止めてっ……!」
コイツとは、誰かなど論じる暇もなく、それは口を開いた
「邪魔をするな、人間。幸せな夢を見せてあげるから少し寝ていろ」
桐壺は何処からか声が聞こえたかと思うと突然意識を奪われたのかガクリと項垂れる
右手にある黒いエネルギーが桐壺の全身を徐々に満たしていくのが分かる。このエネルギー自体にドス黒い意思のようなものがあることが感じられる。俺には分かる。こいつは相当な悪いやつだ。なにせゲロ以下の臭いがぷんぷんとしやがるからな!
「状況分かんないけど、怪我人は自分に任せて。きちんと雪先輩のとこまで連れて行くんで、だからあいつ任せますよ」
「《おう任された》」
「玉手箱起動。10番の棺桶で怪我人を保存。自分の魔力を使って可能な限り治癒お願い」
《かしこまりました》
赤空花は項遠王の巨体を変形させた棺桶に詰め込み、それを軽々と担いで一目散にこの場を離れようとするが、眼前の奴がただ見ているわけがなく、攻撃を仕掛けて来る
「誰が逃げて良いと言ったかな?」
右手が斬撃を飛ばしてくるが、俺はそれを指で両断する
「《誰か追っても良いといったか?》」
あとがき
赤空花のテンションがやばいのは不眠不休による大陸横断のためハイになってるからです。今回だけこんなキャラになってるって考えてください
こんにちは。役立たずアーカーシャです!
余りにも役立たず過ぎて、国外追放(物理)されてしまいました。これから真の仲間を見つけて、追放した奴を見返してやるです!!
まあ、冗談は置いといて
現在進行形で桐壺の攻撃を前に為す術なく俺は遥か遠方まで飛ばされていた。もはや王都が影も形も見当たらない。頭を悩ませていると突然全身に力が漲り、身体が元に戻る。抗えなかった強力な斬撃の波が途端に鬱陶しく張り付いてくる錆びついた刃物のせせらぎ程度になり、腕を振るうと消し飛んだ。ふっ、他愛無い
「《どこまで飛ばされたんだ、これ》」
姫に飲まされた魔法丸薬の効果が切れたのか、はたまた別の理由か、どちらにせよ元の大きさに戻ったのなら、あの悪趣味なパワーアップをした桐壺を止めることも可能だろう。しかし場所が分からない。此処はどこ?俺は誰だ?思い出せるのは、前の世界に彼女がいたという情報だけだ
「《一直線に進めばいいのかねぇ……おろ?》」
異世界で初の迷子。うわぁ…どうしよ。途方に暮れていると背後から誰かが近づいてくる気配を感じたので反射的に振り返ると犬っぽい獣人がいた
ま、まさか!迷子を助ける為の犬のおまわりさん的なやつ!!?
「運が悪いなぁ……自分フリューゲルに急いでるって時に、よりにもよってなんで龍が」
あ、違うわ。これ。もう人当たり悪すぎるもん。強面の警官でもここまで露骨な職質はしないよ?
誰に言うでもなく、ボソリと毒づく彼女は、トレンドマークと言わんばかりに立派な犬に似た獣耳が頭頂部には付いており、2mはある鉄棒のような物を背負って、滞空しながら俺を睨みつけている
桐壺みたいに力技で宙を蹴って飛んでいるのではなく、身につけているブーツから魔力を噴射して滞空している。魔法で空を飛ぶといえば、俺たちの世界でいえば箒だったり、絨毯だったんだがな
それにしても、魔力を噴射して空を飛ぶ靴なんてあるんだな。なんだろう、こういうの見ると、この世界のスポーツはもしかして、良い道具を用意出来ないと、およそ公平な勝負が出来ない様になってない?
鳥人間コンテスト開いて、人によっては人力飛行機だったりするのに、用意出来るなら別に軍用機使うのも可とか言われたら、前者に全く勝ち目無くなっちゃうんですけどぉぉぉ!!?
ってか今は一分一秒が惜しいというのに、やるか?やるしかないのか?どうする? どーすんの オレ? ライフカードを確認!!
【戦闘】 【逃走】 ▶︎【説得】
「《同じ赤色同士仲良くやろうぜ。だからそんな殺気をさっきからださないで……な~んてね。うぷぷ》」
「……何か話しかけてる?玉手箱起動。この龍の言葉を翻訳して」
《おはようございます。みんなの玉手箱。気軽にタマと呼んでください》
某スマホのAIはシリで異世界のAIはタマなのか(困惑)。これもう環境型セクハラなんじゃないかと思えてしまうな。お前の所属する教会多分近いうちに行政指導入るから覚悟してくれよな!!
「《やっはろー。アーカーシャだよ。挨拶ついでに道を教えてくれると嬉しいなって》」
《俺様の名はアーカーシャ。後告白してます。単刀直入に言おう。お前に惚れた。俺様の嫁になれ!と言っています》
「《いってなあああい!!!》」
「え、えぇぇ!!?それってプロロロポぼぽ!!?
こここ困るよ。自分まだ16だしっ!……え、でもこの龍そんなに顔は悪くないし、アリなのかな?いやいやでもまだまだ魔導師として働きたいし、ナシだよね?……で、でも生まれて初めて告白されたし強そうだし、やっぱりアリかも。でもでも、雪先輩と同じ仕事をせっかくしてるのに、やっぱナシ!……ま、まってまって自分、勇気出して告白してくれた相手を振るのも可哀想じゃない?アリにしてあげた方が《まあ告白はぜーんぶ嘘ですけどね》
「乙女の純情を誑かしたなぁぁぁ!!!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。アナタを殺して自分も死ぬ!!」
赤い獣娘の瞳から一瞬でハイライトが消える
「《自己紹介しただけでどうしてこうなるの?もしかして魔導師ってみんなこんな変な感じなの?》」
今のやり取りだけで何となく人柄は掴めた、情熱的にして思い込みが強く子供の様に直上的な印象を強く受ける。
泣き喚く少女を表すイメージカラーは間違いなく赤と誰もがそう答えるだろう。だって所々が跳ねているショートヘアは豪奢で憂愁を思わせる夕焼けと同じ茜色と同じであり、ほっぺはりんごの様に赤みを帯びている。見てるだけでうっとりとする紅玉のような瞳も、身に付けているアクセサリーや着ている高級感あふれるモフモフのコートも。その全てが赤ばかりであるのだ。赤は危険。はっきりわかんだね
「《っていうかこのAIタマのせいだよ。人間関係捻ってるんだが。最早捻りすぎて捻切れてるレベルなんだが?》」
《……ふむふむ。龍とか亜人とか関係ない。俺にはお前が必要なんだ》
最早言ってもないことを翻訳し始めたんだが、おい業者はよリコールかけてくれえええ!ここに!今ここに現在進行形で被害者がでてますよぉぉ!!
「そ、そうなんだ。因みに自分のどんな所が好きなんですか、あ、あ、アカシャ様!」
この子情緒不安定なの?もう距離の詰め方おかしい。誰か病院連れてってくれーー!取り返しがつかない事になっても知らんぞ!!
「《……犬みたいで可愛い所?》」
《犬みたいで可愛い所》
「は?」
一番の真顔だった。ハイライトがまたしても消失しているが、もうこのおぞましい流れ止めない?Nice boatの画面なんて見たくねえんだよ、俺は
「誇り高いライカンを、よりにもよって犬畜生と同じにするんですか?
確かに自分は人とライカンの混血種なんですけど……酷い。責任とってよ!」
「《なんの?》」
誠に遺憾ながら俺の配慮に欠けた物言いが、思いがけずかなり癪に触ってしまったらしいので、俺は直ぐ様に謝罪を述べることにした
「《とりあえずごめん。悪気があったわけじゃないんだ。気を悪くしないでくれ。仲良くするのが無理なら、じゃあ、俺はこれで》」
三十六計逃げるに如かず。すると彼女は肩に背負ってる長い鉄棒を手に取ると、鉄棒が仰々しく武器として形を変えていき、あたかも彼女の意思を如実に形にしていく様だった。率直に言おう。怖い
「《待て待て待て。君あれだろ?魔導師ってことは姫と絶対知り合いだろ。俺は白雪姫って魔導師と契約している使い魔アーカーシャだぞ。ほれこの立派な主従の証を見よ》」
《……自分は魔導師白雪姫の使い魔だと言ってます》
胸に刻まれていた、実際は対等には程遠い奴隷契約を交わした哀れな紋章を見せつける。初めこそ訝しげであったが、俺と姫の契約の証を見たら徐々に顔を青ざめさせていく
「え、えぇぇ!?雪先輩の使い魔様!
ま、まさか。自分が遅かったのでわざわざ迎えに来てくれたんですか!?」
何言ってんだ、こいつ?
でも乗るしかねえ、このビッグウェーブに!
「《……そうだよ!チンタラしてんじゃないよ!早く俺の背に乗りな!》」
《そうだと言ってます》
ビッグウェーブに便乗する事にした。まあ便乗するというか、便乗させるんだけどね
序列8位『赤』を冠する魔導師赤空花。それが彼女の名前だった。学院時代の姫の後輩にあたるらしい。そういや姫って何歳くらいなんだろう。俺とそう年は離れてないはずだが
どうやら2日前の夜。つまり清正さんと戦ったあの日の夜に先輩である姫に呼びつけられたので、急いでバルドラ首都に向かっていた様だった。不眠不休で2日もかけて。健気すぎるだろ
「クンクンクン。確かによく嗅ぐと雪先輩の魔力の残り香を感じる。先輩の尻がここに。ハァハァ……」
「ああ~雪先輩に早く会いたい」
スンスンと花ちゃんが鼻を鱗にくっ付けて、恍惚感に包まれた声色と尻尾を振りながらそんなことを洩らす
名前通りに百合という名の立派な花を咲かせているみたいですね。あと舐めるのやめろ
そういえば、神の子を産んだ聖母様と白百合には深い繋がりがあるとかないとか聞いたことがある。
百合。純潔。受胎告知。天使の祝福。ここから導き出される答えは……そう、つまり、百合こそジャスティスという天からの啓示的なやつなんじゃないかな……あと舐めるのやめろ
「《姫のこと随分と慕ってるのね》」
《白雪姫が好きなのかと聞いてます》
「好き?そんな俗な言葉で片付けないで欲しいですね!アカシャ様!これは崇拝。そう何を隠そう雪先輩は私にとっての神に等しいのです。アカシャ様は知らないだろうから、姫先輩の伝説を教えてあげましょう。先ず史上最年少で魔導学院オーウェンに入学し、1回生の時点で数多の魔導具や魔法術式を創り上げた事で銀杖星位勲章を授与され、更には秘匿されていますが、とある功績により4人目の特級魔導師に認定。まあそっちは四賢人と揉めて剥奪されてますけど……ともかく!」
「姫先輩のこと聞きたいなら教えれる範囲で教えますよ。自分と契約している人の事は知っておいたほうがいいからね。使い魔契約は契約者を知ることで発揮できる力が大きく変わりますよ。その代わりそっちも自分の知らない情報があったらギブアンドテイクということで」
「《ごめん。力になれそうもないわ》」
あいつやばいシンパ抱えてんだな。
そうこうしている内に王都が見えた。その瞬間に突然全身に強い魔力が覆い被さってきた。これは桐壺の魔力だ。だがさっきよりも更に巨大に膨れ上がっている。拙いほどに
花ちゃんも獣耳を澄ませて何か感じ取り、何かのスイッチを切り替えたように真剣な顔つきになる
「この馬鹿げた魔力はどこから…。
あの1番デカい建物近くに大きな魔力反応が2つ。で、でも急がないとアカシャ様!!その内の片方がもう消えかけてる!!」
花ちゃんに急かされるまでもなく、既に俺は全力で空を蹴り視界に捉えた桐壺の目前に向かっていた
ーーー
「アーカーシャ」
そして今に至る。桐壺が震える様な声で俺の名を呼ぶ。俺が離席した僅か数十分の間に、項遠王と桐壺の決着は着いていた。
王は片腕が切り落とされ、傷口からは水道の蛇口でも捻ったかのように止めどなく血が溢れ出てており、血溜まりの池に体を沈めていた。
そして勝った桐壺が今まさに敗者にトドメを刺そうとしていたのを俺が阻んだ形だったのだが、桐壺の表情を見るとそう単純な状況ではない様だった。
よく見ると、攻撃しようとしている右手を左手で掴んで必死に抵抗しているように見て取れる
右手が疼くのか!?つまりこれはその厨2的な……
「コイツを止めてっ……!」
コイツとは、誰かなど論じる暇もなく、それは口を開いた
「邪魔をするな、人間。幸せな夢を見せてあげるから少し寝ていろ」
桐壺は何処からか声が聞こえたかと思うと突然意識を奪われたのかガクリと項垂れる
右手にある黒いエネルギーが桐壺の全身を徐々に満たしていくのが分かる。このエネルギー自体にドス黒い意思のようなものがあることが感じられる。俺には分かる。こいつは相当な悪いやつだ。なにせゲロ以下の臭いがぷんぷんとしやがるからな!
「状況分かんないけど、怪我人は自分に任せて。きちんと雪先輩のとこまで連れて行くんで、だからあいつ任せますよ」
「《おう任された》」
「玉手箱起動。10番の棺桶で怪我人を保存。自分の魔力を使って可能な限り治癒お願い」
《かしこまりました》
赤空花は項遠王の巨体を変形させた棺桶に詰め込み、それを軽々と担いで一目散にこの場を離れようとするが、眼前の奴がただ見ているわけがなく、攻撃を仕掛けて来る
「誰が逃げて良いと言ったかな?」
右手が斬撃を飛ばしてくるが、俺はそれを指で両断する
「《誰か追っても良いといったか?》」
あとがき
赤空花のテンションがやばいのは不眠不休による大陸横断のためハイになってるからです。今回だけこんなキャラになってるって考えてください
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