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龍王と冒険者ギルド
66話目
しおりを挟むコロッセオ。その語源は昔ローマという国が運営していた大衆娯楽文化の場所に起因していた……筈だ。
しかし、この見た目がファンキーでファンシーで挑戦的な現代アートを体現しているポッポさん(推定年齢未成年)の言うコロッセオとはやや意味合いが異なる様だった
「知っていましたか?
コロッセオは"始まりの従魔士"と呼ばれるとある兄弟が従えた魔物を競い合わせたのが始まりとされているんですよ。偉大なる龍王様」
「《へぇ~?もちろん知らないが》」
流石姫。お前は何でも知ってるな
……何でもは知らない。知ってることだけ、なんてね。
まあ知識って一つの事を知ると別の事も知り得るポイントがあるから、そうやって知識は体系化されて人は見識を深めていくのだろう。知らんけど
「しかしコロッセオ自体をやるのは初めてだろう?
だからポッポさんはオーソドックスな交流戦。"拳腕試合"を提案させてもらうがどうかな」
《拳腕試合。勝利条件は相手に"参った"と言わせる。若しくは戦闘不能にするのどちらか。ただし相手を死に至らしめた場合は反則負けとなる、ですね》
「ふむ ルールはシンプルですね。では偉大なる龍王様、やれますか?」
姫は了承して、我の方に目を向ける。だが反応するより早くポッポさん(同世代)が慌てて声を上げた
「おいおい待て待て。待ってくれ。その龍は傷物には出来ない。別のやつにしてくれ」
「とは言われましても、私が契約しているのは彼1人なのですが」
そう言われて彼女は姫の隣に立っていた男トーチカさんを指差す
「何を言う。そこにいるじゃないか、立派なオーガみたいな奴が」
「誰がオーガだっ!俺は人間だぞ。やるわけねえだろ!」
「……てっきり亜種かと思った。すまない、ポッポさん魔物を見る目には自信があったんだが」
「マスターポッポは悪くありません。全てはあの凶悪な人相が悪いのです。落ち込まないで下さい」
「眼球引きずりだして節穴にしてやろうか?」
そこで花ちゃんが元気よく手を挙げる
「はいはーい!自分!自分が先輩の従魔として頑張ります!」
「任せて良いの、花?」
「勿論です!」
先輩の為に率先してやろうとするなんて、こんな健気な後輩が欲しかった。我の前世なんて後輩がいたにはいたが、悲しいことに『先輩 どうせ暇ですよね?今すぐ夏休みの宿題手伝いに来てください』と先輩を先輩とも思わないツラ以外最悪の後輩しかいなかった。
年上を敬うのは常識である。例えそれが一年であろうと。なんなら一日だろうが敬え……あいつ元気かな。生意気だったけど面倒見てたし、我いなくなってちょっとは落ち込んでるんだろうか
「決まったようだな。こちらポッポさんはベネノペリンカンのベネットちゃん3歳。君に決めた!ほら、挨拶しなさい」
「ヨ、ロ、シ、クェェ~!」
そして、挨拶が終わったその瞬間にペリカンの魔物ベネットは口から思いっきり吐瀉物、ゲロのようなモノを花ちゃんに吹きかけた
不意打ちを避けきれずに花ちゃんの身体はゲロに覆われる。女性としての精神ダメージが大きそうだ
「……これはズルなのでは」
「ポッポさんの師曰く、戦う相手が分かって、目が合ったなら、その瞬間に戦いのゴングは鳴ってる、だとさ」
「安心しろ。ベネットちゃんの酸は鉄をも溶かすが、非致死性魔法だ。そんな顔しないでも、死にはしない。全身軽度の火傷程度はするがな」
勝ち誇った顔をするポッポさんに対して、埋もれた花ちゃんが這いずり出てくる
全身が焼け爛れていた、訳ではなく、真っ赤な鎧に身を包んでいた
「玉 ありがと」
《自己判断により6番鎧に自動換装を行いました。対象の魔法攻撃に対して、若干の耐性獲得に成功しています》
「やってくれましたね」
「!?……飛んで! ベネット!」
獣のように飛びかかる花ちゃんを躱すように、ベネットは翼を広げて飛翔する
「花 ジャンプ」
すかさず優に地面から数メートルは空を飛ぶベネットに対して、花ちゃんはそのまま垂直に跳んだ
「クエッ!?」
「つ、か、ま、え、た」
そのまま掴んだ片足を引きずり下ろすと、ベネットがなす術なく墜落して地面に激突するのとは対照的に花ちゃんは身軽に降り立つ
「鳥如きに本気で勝ち目があると思ったのか? 言っておくが自分はライカンだぞ」
「おいおいそっちこそ、不意打ちの後はノープランだとでも?あまりポッポさんの従魔を舐めるなよ」
「ベネットちゃん"フォールダウン"だ!」
「クエッ!」
ベネットが羽を大きく広げると、無数の羽がまるで意思を持つかのように舞い、その羽が無数に鎧に触れた
「なにをして」
《原因不明の負荷を確認。移動不可。解析を開始します》
「見たことのない魔法。ベネットペリンカンにそんな魔法は使えないはずですが」
「従魔士は其々の魔物の秘められた才能を引き出す事に特化してる。そしてベネットちゃんの魔法フォールダウンは数秒間、羽に触れた相手を真下に強制的に降下させる効果を持ち、当たれば地面での移動を封じることが出来る」
「ぐ、ぬ、ぬ。こんなことして、時間稼ぎにしか」
「それで十分。その間に大きく飛べ。さっきの高度よりもっと高く!一方的に攻撃を加え続けてそれで終わりだ。酸の耐性があろうが限度があるはずだからな」
ベネットはその大きな翼で飛翔する。明らかに跳躍などでは届かない距離だった。
だがよくよく考えたら花ちゃんには空を飛ぶ手段があるではないか。軍国バルドラに向かう時に履いていたあの空飛ぶブーツがあるのだから
「飛ぶのは鳥だけの専売特許じゃないんだから……」
「花。飛んではダメよ」
「なぜですか、先輩!?」
「馬鹿。玻璃は心配してんのさ。あの妙な羽を万が一お前があの高度から食らったら、それで即死だからな」
「分かりました。だったら0番でぶっ殺してやります!」
《推奨できません。その方法だと対象を死亡させる恐れがあり、こちらの敗北となります》
「……くっ。それならあっちも死なせたら負けです。そもそもそこまでは」
「確かに死なせてしまってはマスターポッポの負けだが、マスターは向こう見ずな方だ。例え殺すと分かってても土壇場で退いたりはしないぞ。
死ぬのが嫌なら早く負けを認めることだ」
「その通り。そちらは死なずに済むし、こちらは依頼の完遂と龍のお友達もGetだ。win-winといこうじゃないか」
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