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龍王と魔物
77話目
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バルディア大山脈とはアナシスタイル大陸の中央部から北側部分にかけて縦貫しており、そのため様々な気候と環境が織りなす雄大な土地となっている。生息する生き物の数は実に数万種類。冒険者管理局に設定された全体アベレージはCなので、立ち入る者たちにも相応の実力が求められるのだそうだ。
そんなバルディア大山脈であるが現在まで5つの種族により分割統治され均衡を保っていたらしい
一つ目に猪頭族
カテゴリー上は亜人ではなく魔物。我の生きてた世界ではそもそも架空の生き物ではあるが、これほど邪悪と言われてしっくりくる種族もまあいない。
というか、このオーク=悪者のイメージ戦略を最初に人々に植え付けたのはどこの誰なんだろう。オークからしてみたら迷惑な話である。仮に我がオークに転生していたのなら、こいつがどこに隠れていようが必ず見つけ出して、訴訟で尻の毛まで毟り取ってやる次第である。
百歩譲って事実だとしても特定の種族に対してここまで露悪的なプロパガンダが世界的に流布してしまっているのは、もはや精神的なホロコーストと言っても過言ではないだろう。事実陳列罪による名誉毀損である。
閑話休題。
オークはこのバルディア大山脈における最大勢力でヒッタイト草原を中心に生活しているらしい。
身体は生来巨大、顔は猪と豚に似ており眼光は飢えた獣のように鋭い。大きな口からは牙を覗かせて、鉤爪のような鋭い爪を持っていて多産で繁殖力が強い。後述に目線がいやらしいとあったがメトローナ個人の主観なので触れなかった。聞いた話を含めて我らの前の世界で類型化している情報とそう大した差異は見られない内容だった。群れを率いる族長は代々ウルクと呼ばれて、今代のウルクは特に武闘派らしい。種族全体のアベレージはB
二つ目に昆蟲族
猪頭族に次いで大きな勢力を誇っているらしい。ヒッタイト草原に面するラガシュ森林を根城としている為、オークと小競り合いも多いらしい。
マトローナ以外の見た目は人と甲殻類を組み合わせた感じである。なんだろう。この見た目だと完全に火星でゴキブリ駆除してそうな奴らなんだが……
目の前にいる大きな蜘蛛に良く似た魔物マトローナがグランセクターっていう種族のリーダー的な役割を果たしているらしい。どうやらガイアセクターっていうのはそれを守る強いボディガードみたいなようだ。オークより単体の質は僅かに上らしいが数で大きく劣る分、戦力的には劣勢らしい。
マトローナ曰く自分の強さは先述したウルクと互角とのことだ。
三つ目に地竜族
どうやらこいつらは飛竜の亜種らしいが見た目は芋虫に近く中々のグロテスクだそうだ。かつては地下で暮らしており、死骸や鉱石をボリボリ喰い漁ってたみたいだが、この数十年で龍脈により近いところで生活している分、種族全体が急激に力を付けて、地上にまで侵襲してきているらしい。マトローナ曰く特にアースイーターって呼ばれている次世代のワームが厄介らしく今後数が増えるのを危惧しているらしい
四つめに宝人族
見た目は殆ど人間と変わらないらしいが、世にも珍しい死ぬとそのまま身体が美しい宝石に変わる種族らしい。そのせいで冒険者や悪漢たちに狩られ過ぎて絶滅危惧種にまで陥ってるそうだ。特定のリーダーはいないらしいが、水辺の近く中心で助け合って営んでいるらしい。マトローナ曰く、穏やかであり争いごとを好まない性質だが、戦うと強いらしい。昆蟲族とは同盟関係にあるとの事だ
最後に魔狼
族じゃないのに頭とはこれ如何に。こいつのみが完全に個で勢力として成立しており、バルディア大山脈の丁度中心地のアケメネス高原を縄張りとしているらしい。
ワンマンアーミーしてるだけあって、冒険者ギルドの規定では魔物で討伐レートSランク以上は龍族のみと定められているにも関わらず、Sランク認定された数少ない例外の内の一体らしい。龍ってだけでSランク認定されるなら我はどうなるんだろう。なんたって龍王なんだからな。Sの更に上。SSSくらいかな?
当然ながらバルディア大山脈における最強の魔物だそうで、魔眼の最高位である"星の魔眼"に次ぐ"冠の魔眼"を所持しているらしい
「5部族の事は頭に入りましたでしょうか?
では次に現在の情勢についての────」
「《アヤメ。一旦休憩にしよう。》」
「あ、アーカーシャ様はお疲れです。休憩を少し取りますので、その間は……そうですね。お前たちは壁の修繕でもしておいて下さい」
なんかアヤメ、この人たちに冷たくない?いや人じゃないんだけど。相手の機嫌を損ねないだろうか。なんて思っていたが
「かしこまりました。」
マトローナは傅くように頭を下げて、糸を出して壁の修復作業に取りかかった
「《取り敢えず、我なんとなく流れが読めてきたよ》」
「そ、そうなんですか?」
「《きっとあれだよ。オークと地上に進出したワームが同盟結んだから今までのパワーバランスが崩れて争いが激化したとかそんなんだよ》」
「オークとワームが……ですか」
「《だからお帰り願おうか。我らに出来ることは何もない。争いごとはごめん被る》」
「流石。偉大なる主 アーカーシャ様には既にお見通しでしたか。
忌々しい猪頭族と地竜族が同盟を組んだ事により、膠着していた勢力図が塗り変わりつつあり、昆蟲族と宝人族ではこれを止められません」
振り返ると壁の修繕が終わったマトローナが立っていた。余りに近いので一歩後ずさるとぐいっとその分、更に2歩詰められた。怖い
「ならフェンリルを頼ればいい。なぜアーカーシャをわざわざ主として担ぎ上げる」
蜘蛛なので表情は分かり辛いが、その言葉に僅かに苦虫を噛み潰したように顔を顰めたのが伝わった
「……たしかに強いですが、彼奴は誰かを統べる為の主人になり得ない。だから独りなのです。」
「《我なんて人の使い魔に成り下がってるんですが?上に立つ所か下で鎖に雁字搦めにされてるんですが?》」
「じ、事情は分かりました。しかしお力にはなれません。この地を捨てて別の地で生きるのもまた手だと彼の御方は仰ってます」
マトローナは僅かに動きを止めて思考した様だった、そして徐に言葉を吐き出した
「この世は弱肉強食、仰る通りです。先祖代々の地を捨てるのは悔しいですが、皆の命には代えられませんね」
「《本当に申し訳ない。新天地探しには流石に協力するよ》」
「愚カナ。逃ガシハセヌゾ」
低い声がした。地底からゴゴゴと何かが地表に向けて掘り進めてくる音がする。地面が割れて、1匹の巨大なワームが治したはずの岩壁を更に大きく抉り取って豪快に現れた。頭の中でプッツンと何かが切れる
「アースイーター!?こんなところまで」
「マトローナ、オマエハ、ゲボぁぁぁ!」
「《だから家壊すなって言ってんだろ!》」
思わず手が出てしまった。アースイーターはそのまま言葉途中で吹っ飛んでいき、空の彼方に飛んで消えていった。多分死んじゃいないだろう
そんなバルディア大山脈であるが現在まで5つの種族により分割統治され均衡を保っていたらしい
一つ目に猪頭族
カテゴリー上は亜人ではなく魔物。我の生きてた世界ではそもそも架空の生き物ではあるが、これほど邪悪と言われてしっくりくる種族もまあいない。
というか、このオーク=悪者のイメージ戦略を最初に人々に植え付けたのはどこの誰なんだろう。オークからしてみたら迷惑な話である。仮に我がオークに転生していたのなら、こいつがどこに隠れていようが必ず見つけ出して、訴訟で尻の毛まで毟り取ってやる次第である。
百歩譲って事実だとしても特定の種族に対してここまで露悪的なプロパガンダが世界的に流布してしまっているのは、もはや精神的なホロコーストと言っても過言ではないだろう。事実陳列罪による名誉毀損である。
閑話休題。
オークはこのバルディア大山脈における最大勢力でヒッタイト草原を中心に生活しているらしい。
身体は生来巨大、顔は猪と豚に似ており眼光は飢えた獣のように鋭い。大きな口からは牙を覗かせて、鉤爪のような鋭い爪を持っていて多産で繁殖力が強い。後述に目線がいやらしいとあったがメトローナ個人の主観なので触れなかった。聞いた話を含めて我らの前の世界で類型化している情報とそう大した差異は見られない内容だった。群れを率いる族長は代々ウルクと呼ばれて、今代のウルクは特に武闘派らしい。種族全体のアベレージはB
二つ目に昆蟲族
猪頭族に次いで大きな勢力を誇っているらしい。ヒッタイト草原に面するラガシュ森林を根城としている為、オークと小競り合いも多いらしい。
マトローナ以外の見た目は人と甲殻類を組み合わせた感じである。なんだろう。この見た目だと完全に火星でゴキブリ駆除してそうな奴らなんだが……
目の前にいる大きな蜘蛛に良く似た魔物マトローナがグランセクターっていう種族のリーダー的な役割を果たしているらしい。どうやらガイアセクターっていうのはそれを守る強いボディガードみたいなようだ。オークより単体の質は僅かに上らしいが数で大きく劣る分、戦力的には劣勢らしい。
マトローナ曰く自分の強さは先述したウルクと互角とのことだ。
三つ目に地竜族
どうやらこいつらは飛竜の亜種らしいが見た目は芋虫に近く中々のグロテスクだそうだ。かつては地下で暮らしており、死骸や鉱石をボリボリ喰い漁ってたみたいだが、この数十年で龍脈により近いところで生活している分、種族全体が急激に力を付けて、地上にまで侵襲してきているらしい。マトローナ曰く特にアースイーターって呼ばれている次世代のワームが厄介らしく今後数が増えるのを危惧しているらしい
四つめに宝人族
見た目は殆ど人間と変わらないらしいが、世にも珍しい死ぬとそのまま身体が美しい宝石に変わる種族らしい。そのせいで冒険者や悪漢たちに狩られ過ぎて絶滅危惧種にまで陥ってるそうだ。特定のリーダーはいないらしいが、水辺の近く中心で助け合って営んでいるらしい。マトローナ曰く、穏やかであり争いごとを好まない性質だが、戦うと強いらしい。昆蟲族とは同盟関係にあるとの事だ
最後に魔狼
族じゃないのに頭とはこれ如何に。こいつのみが完全に個で勢力として成立しており、バルディア大山脈の丁度中心地のアケメネス高原を縄張りとしているらしい。
ワンマンアーミーしてるだけあって、冒険者ギルドの規定では魔物で討伐レートSランク以上は龍族のみと定められているにも関わらず、Sランク認定された数少ない例外の内の一体らしい。龍ってだけでSランク認定されるなら我はどうなるんだろう。なんたって龍王なんだからな。Sの更に上。SSSくらいかな?
当然ながらバルディア大山脈における最強の魔物だそうで、魔眼の最高位である"星の魔眼"に次ぐ"冠の魔眼"を所持しているらしい
「5部族の事は頭に入りましたでしょうか?
では次に現在の情勢についての────」
「《アヤメ。一旦休憩にしよう。》」
「あ、アーカーシャ様はお疲れです。休憩を少し取りますので、その間は……そうですね。お前たちは壁の修繕でもしておいて下さい」
なんかアヤメ、この人たちに冷たくない?いや人じゃないんだけど。相手の機嫌を損ねないだろうか。なんて思っていたが
「かしこまりました。」
マトローナは傅くように頭を下げて、糸を出して壁の修復作業に取りかかった
「《取り敢えず、我なんとなく流れが読めてきたよ》」
「そ、そうなんですか?」
「《きっとあれだよ。オークと地上に進出したワームが同盟結んだから今までのパワーバランスが崩れて争いが激化したとかそんなんだよ》」
「オークとワームが……ですか」
「《だからお帰り願おうか。我らに出来ることは何もない。争いごとはごめん被る》」
「流石。偉大なる主 アーカーシャ様には既にお見通しでしたか。
忌々しい猪頭族と地竜族が同盟を組んだ事により、膠着していた勢力図が塗り変わりつつあり、昆蟲族と宝人族ではこれを止められません」
振り返ると壁の修繕が終わったマトローナが立っていた。余りに近いので一歩後ずさるとぐいっとその分、更に2歩詰められた。怖い
「ならフェンリルを頼ればいい。なぜアーカーシャをわざわざ主として担ぎ上げる」
蜘蛛なので表情は分かり辛いが、その言葉に僅かに苦虫を噛み潰したように顔を顰めたのが伝わった
「……たしかに強いですが、彼奴は誰かを統べる為の主人になり得ない。だから独りなのです。」
「《我なんて人の使い魔に成り下がってるんですが?上に立つ所か下で鎖に雁字搦めにされてるんですが?》」
「じ、事情は分かりました。しかしお力にはなれません。この地を捨てて別の地で生きるのもまた手だと彼の御方は仰ってます」
マトローナは僅かに動きを止めて思考した様だった、そして徐に言葉を吐き出した
「この世は弱肉強食、仰る通りです。先祖代々の地を捨てるのは悔しいですが、皆の命には代えられませんね」
「《本当に申し訳ない。新天地探しには流石に協力するよ》」
「愚カナ。逃ガシハセヌゾ」
低い声がした。地底からゴゴゴと何かが地表に向けて掘り進めてくる音がする。地面が割れて、1匹の巨大なワームが治したはずの岩壁を更に大きく抉り取って豪快に現れた。頭の中でプッツンと何かが切れる
「アースイーター!?こんなところまで」
「マトローナ、オマエハ、ゲボぁぁぁ!」
「《だから家壊すなって言ってんだろ!》」
思わず手が出てしまった。アースイーターはそのまま言葉途中で吹っ飛んでいき、空の彼方に飛んで消えていった。多分死んじゃいないだろう
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