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龍王と魔物
86話目
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ーーー†††ーーー
魔導師の始まりは、初代魔王ルーテンを含めた7人の弟子が"天魔"より魔導書を与えられたことから始まったとされている。
凡ゆる『魔』の分野に対して精通したスペシャリストたち。大まかには上級魔導師、中級魔導師、下級魔導師、見習い魔導師(最初の一年のみで例外有り)の四階級で構成されており、現在の総数は6000人程度。
しかし年間、数万人の秀才や非凡と持て囃された優秀な魔導師候補生が年に2回ある試験でしのぎを削り競い合い蹴落としあって、百にも満たないその一握りの席を奪い合う事から、有象無象の魔導師になるというだけでも狭き門の一端を窺い知ることができる
その選りすぐりの6000人の中でも更に上澄み。50人といない上級魔導師の中から、当代の筆頭魔導師により選ばれた色付きと呼ばれる序列持ちの上級魔導師たちの全員がビブリテーカー中央本殿にて集結しようとしていた
何を隠そう其処に向かう、白雪姫と赤空花もその一員である。
「偉大なる龍王様。あんまりはしゃがないでください。ん。あれですか?あれは獣装魔車ね。まだ魔導具の手綱とそれに対応した魔導車両の試験運用段階だから此処以外ではあまり見れないけど、移動に適した魔物は力も速さも馬より強いから数年後には、外でも一般的になるわよ」
「あれは────よ。それで────ね。あれは……よく分からないわね。デザインで青風が創ったというのは感じ取れるのだけれど……」
「あれは少し前に糸が発表したイデアの箱ですね。使うとアカシャ様という存在を抽出して肉体のみを変換するという魔導具です。まだ1日しか効果が保たないみたいですけど」
「???」
「えと、つまりですね、アカシャ様が龍ではなく、人間だったら。別の魔物だったら。亜人だったら。という、もしもの可能性を実現させてくれる魔導具ですね。まあ肝心のサンプルが不足し過ぎて、多種族の情報を蒐集してる段階です」
「これが完成したら、性別どころか自分の成りたい種族で生きられる選択肢が大幅に広がるから、糸には頑張って欲しいですね」
「あら?でもそうなると、当時の主席と次席の長年の争いに遂に決着が着くのかしら?」
「雪先輩意地悪!じ、自分だって、いつか玉を元に自立型魔導具の完全な製造法を確立するもん!」
赤空花が隣で不貞腐れているが、アーカーシャはそれどころではなかった。子供のように目を輝かせている。右を見ても左を見ても見たことのない奇跡が溢れていたからだ
「ふ ふふ 連れてきた甲斐がありますね。
見てわかる通り、ビブリテーカーには魔導具が溢れています。外との技術格差は小さく見積もって10年といった所でしょうか。ただ進み過ぎた技術は戦争に応用出来てしまいますからね」
「だから簡単に情報が持ち出されないように、此処に立ち入るのは、今回私たちが来たみたいに特殊な転移魔法陣を使う。若しくは魔導教会が独占する魔導飛空艇での移動です。それ以外だと、あ!丁度あんな風になりますよ」
飛行能力を持っている魔物の群れがビブリテーカーに近づいて来ている。結構な数だ。それなりの兵力による対処が求められる危険だろう。だが誰一人として慌てる様子はない。気にかけてすらいない。魔物がビブリテーカーの領域に立ち入ろうとした瞬間、ジュッ!と溶けて無くなった
「皇国など一部の優れた魔法技術を保有する大国が城壁などに使用する魔導防壁と同じ原理ですね。ああやって外敵を超高密度な障壁で遮断します。
貴方が突破したレザンテリスの結界も出力はそう変わらない筈だから、偉大なる龍王様なら強行突破出来るけどね。そうじゃないなら消し炭になります」
「Gao」
「所で雪先輩。アカシャ様も総本殿に連れて行くんですか?」
「そうね。当事者だもの。」
「?」
◇△○×
「Gib」
「大きいでしょう」
ビブリテーカーの中央に位置するのが魔導教会トラオム総本殿アムステルダムスだ。敷地面積は一万坪。豪華絢爛では飽き足らず、舞踏会場や美術館や図書館まで備えており、部屋数は接見室まで含めると700を超える。総本殿裏には色付きの上級魔導師専用の棟まで建てられている。
立ち入りが出来るのは、魔導師であるならば中級魔導師以上。そして本殿の役割を補助する為の侍従1000人のみである
「お嬢。久方ぶりです」
「銀せんせーだ!お久しぶりです!」
「赤空。もう先生呼びは控えろ」
「あら銀。魔導戦隊を率いる貴方まで会議に顔を出すなんてよっぽどね」
「賢人から勅命が降ったらしくてな。拒否は許さぬそうだ」
その中で雪姫を待っていたかのように声をかけたのは、この世の神秘を研究する魔導師でありながらその威容はまるで歴戦の兵士に勝るとも劣らない屈強な肉体と空気を身に纏った鋭い眼光を有する上級魔導師が1人 銀鉱石であった。
「どれだけ待たせるんだ 君は!」
「……じゃあ3人で行きましょうか」
「っておい!僕の存在を露骨に無視して行こうとするんじゃない」
銀鉱石の隣に立っていたのは、宝石のように光沢のある長い緑の髪の毛を揺らしながら、女性のような輪郭とスッキリとした目鼻立ちをした美男子であったが、雪姫の態度に不服そうに顔を歪めていた。名を翠雨光と言う
「あら翠雨、いたのね?
気が付かなかったわ」
「嘘をつくな!目合ってただろ!」
「ぐ、ぐぬぬ。いつまで余裕の態度でふんぞり返ってられるかな!?君が引きこもってる間に、僕は序列3位にまで上り詰めたんだぞ!どうだ驚いたか」
「銀。仮にも先代筆頭から支えていた貴方が出し抜かれたの?」
「な!なんて失礼なんだ 君は!実力だ! 実力で追い抜いたに決まってるだろ」
「貴方の実力を疑うわけではないけれど、序列を書き換える功績というのを知りたいわね」
「最上位魔獣タルタロスの子 ギョウキにトドメを刺したんだ!」
「……」
「な、なんだ、その疑いの眼差しは!
僕が良い所取りだけしたとでも言いたいのか!!」
「そう言ってやるな、お嬢。
言っておくが今の翠はかなり強い。これから先鍛錬を積めば、戦闘力という分野では筆頭を超えるとさえ俺は確信している」
「……うかうかしてられないわね」
「だからお嬢と花も頑張れよ!
んじゃ先いっとくぜ」
「なっ!抱えるな!離せ!銀!もう僕は子供じゃない!魔導戦隊の隊長でも、副隊長とはいえ序列が上の僕にこれは失礼だろっ!!!」
姫は銀にしか聞こえない声量でそう呟いた。
数百年魔導師を続けている銀は次代を引っ張るであろう魔導師たちをどこか優しい眼差しで見つめながら、奥に入って姿を消した
ーーー
「全員揃ったね。私の感覚ではそう間隔は空いてないと思うけれど、念のため前回の会議内容を簡潔に先ずは伝えとくね」
屋内だというのに、傘を差して黒いフードに身を包んだ黒髪のエルフ 序列1位にして黒の魔導士 黒水歪が集まっている全員の顔を嬉しそうに見渡して口を開いた
「先ずは、魔導戦隊により上位魔獣ギョウキの討滅が完了。今回の功績と銀鉱石からの提案もあり、翠雨光の序列を3位。銀鉱石の序列を4位へと変更」
「又今作戦における魔導師の死亡者は15名。討滅した際に引き起こされた瘴没によりエルガルム大陸海洋一帯に少なくとも五千の魔獣化を引き起こしていると考えられ、島国である扶桑の産業に深刻な経済ダメージを与えている。目下解決に向けて尽力中。」
「続いて────。」
数十分かけて膨大な確認行為が漸く終わる。少しだけ気が抜けていたアーカーシャだが次の言葉に身体を強張らせることとなる
「そういえば、雪の……コホン。白雪姫の使い魔を見て思い出したけど、先日、アナシスタイル東方大都市レザンテリスの結界を破り、巡礼中だったキケ・オピー司教と従者の方々が赤龍に襲われたという情報があったよね?
それと同一個体かは不明だけど、ティムール大陸の方でも軍事大国バルドラでの騒動と旧クノアノスの森にて餓鬼 鈴鹿との戦闘にも赤龍が関わっているみたいなんだよね」
「筆頭!り、龍って希少保護に該当するのではないでしょうか!」
慌てるように手を挙げて発言したのは序列8位赤の魔導師 赤空花だ。事情をある程度とはいえ把握している彼女は、今後万が一にでもアーカーシャが討伐指定されるのを防ぐ為であった
「それはどうでしょうか。後述の2件は兎も角、司教襲撃は完全にアウトです。条例にも抵触している。議論の余地はないように思えますが」
反論したのは、序列7位青風糸だ。パチリ、その瞬間に学院時代からの犬猿ならぬ狼猫の仲である彼女たちの間に激しい火花が散る。
「……そもそも同一個体じゃない可能性もあんでしょうがよ」
「近年絶滅したとも言われる稀少な龍がこのタイミングで偶々2体確認された、と?それ本気で言ってるの?
それに情報が足りない以上、被害が出てからでは遅い。各国と冒険者ギルドに情報を流して連携した方が良い」
「だ、そうだけど、この件で白雪姫から通達があるそうです」
「その件の赤龍なんだけど、それ私の使い魔なのよね。名前は偉大なる龍王様と言うのだけれど」
「「は?」」
「g...gaon」
突然のカミングアウトに流石に全員が素っ頓狂な声を上げた。
「nimlatdeg@jmg@p.???」
移動兼就寝用の人型棺桶にその身を包んだ序列6位吸血鬼の灰土刃はここで初めて興味を示したのか質問をした
「暴走ではないですよ。全て私の指示によるものです。話すと長くなってしまうので、詳しい情報は追って報告書でまとめますので、この件の処遇については一旦待ってもらえないでしょうか。納得出来ない者がいるのなら、責任を取り魔導師の資格剥奪も受け入れます」
雪姫が素直に頭を下げる事に対して、面を喰らう者も多かった。彼女の経歴は少々他と比べて特殊である。元特級魔導師であり、現序列2位まで登り詰めた上級魔導師。プライドも高いからだ
そして今回の不祥事一つと比較しても余りある功績と実力を持つ彼女を簡単に切り捨てるのは、魔導教会としても替えが利かないかなりの痛手であったのだ
「……赤龍アーカーシャの件は一旦私預かり。それでいいね?」
黒水の言葉に異論を挟むものはいない。
パンッと手を叩いて再度気を張り直させていた
「じゃあ本題に入ろうか。四賢人たちより緊急通達があった。まずはこれをみて」
テーブルの真ん中が投影されて映像が出る。写っているのは数名の仮面の者たちだ。その中には、アーカーシャの見覚えのある巳の仮面の女マヤもいた
「して何者なのだ?こいつらは」
「正体は不明。名称も不明なので、仮称としてマスカレイドと呼称する。で、こいつらマスカレイドは明確な目的を持って行動している」
「知っての通り、リアクターは再現性の無い超魔法だ。この星の魔力の通り道、龍脈の力を使い、忘れられし大陸エクリフィスを檻として最上級魔獣たちの封印に用いている。
奴らは全大陸に張り巡らした、数百あるリアクターの設置された場所を把握して破壊している。これが何を意味するかは分かるよね?」
「まさか……冗談だろう。そんなことをすれば……」
「かつての獣亡之戦の再来か」
「封印されている12体の最上級魔獣が解放されると結果的にそうなるね。」
「四賢人たちからも最優先解決事項としての勅命が下されている。今この時点より準戦時特例形態に移行。速やかに仮面の集団マスカレイドを除去する」
魔導師の始まりは、初代魔王ルーテンを含めた7人の弟子が"天魔"より魔導書を与えられたことから始まったとされている。
凡ゆる『魔』の分野に対して精通したスペシャリストたち。大まかには上級魔導師、中級魔導師、下級魔導師、見習い魔導師(最初の一年のみで例外有り)の四階級で構成されており、現在の総数は6000人程度。
しかし年間、数万人の秀才や非凡と持て囃された優秀な魔導師候補生が年に2回ある試験でしのぎを削り競い合い蹴落としあって、百にも満たないその一握りの席を奪い合う事から、有象無象の魔導師になるというだけでも狭き門の一端を窺い知ることができる
その選りすぐりの6000人の中でも更に上澄み。50人といない上級魔導師の中から、当代の筆頭魔導師により選ばれた色付きと呼ばれる序列持ちの上級魔導師たちの全員がビブリテーカー中央本殿にて集結しようとしていた
何を隠そう其処に向かう、白雪姫と赤空花もその一員である。
「偉大なる龍王様。あんまりはしゃがないでください。ん。あれですか?あれは獣装魔車ね。まだ魔導具の手綱とそれに対応した魔導車両の試験運用段階だから此処以外ではあまり見れないけど、移動に適した魔物は力も速さも馬より強いから数年後には、外でも一般的になるわよ」
「あれは────よ。それで────ね。あれは……よく分からないわね。デザインで青風が創ったというのは感じ取れるのだけれど……」
「あれは少し前に糸が発表したイデアの箱ですね。使うとアカシャ様という存在を抽出して肉体のみを変換するという魔導具です。まだ1日しか効果が保たないみたいですけど」
「???」
「えと、つまりですね、アカシャ様が龍ではなく、人間だったら。別の魔物だったら。亜人だったら。という、もしもの可能性を実現させてくれる魔導具ですね。まあ肝心のサンプルが不足し過ぎて、多種族の情報を蒐集してる段階です」
「これが完成したら、性別どころか自分の成りたい種族で生きられる選択肢が大幅に広がるから、糸には頑張って欲しいですね」
「あら?でもそうなると、当時の主席と次席の長年の争いに遂に決着が着くのかしら?」
「雪先輩意地悪!じ、自分だって、いつか玉を元に自立型魔導具の完全な製造法を確立するもん!」
赤空花が隣で不貞腐れているが、アーカーシャはそれどころではなかった。子供のように目を輝かせている。右を見ても左を見ても見たことのない奇跡が溢れていたからだ
「ふ ふふ 連れてきた甲斐がありますね。
見てわかる通り、ビブリテーカーには魔導具が溢れています。外との技術格差は小さく見積もって10年といった所でしょうか。ただ進み過ぎた技術は戦争に応用出来てしまいますからね」
「だから簡単に情報が持ち出されないように、此処に立ち入るのは、今回私たちが来たみたいに特殊な転移魔法陣を使う。若しくは魔導教会が独占する魔導飛空艇での移動です。それ以外だと、あ!丁度あんな風になりますよ」
飛行能力を持っている魔物の群れがビブリテーカーに近づいて来ている。結構な数だ。それなりの兵力による対処が求められる危険だろう。だが誰一人として慌てる様子はない。気にかけてすらいない。魔物がビブリテーカーの領域に立ち入ろうとした瞬間、ジュッ!と溶けて無くなった
「皇国など一部の優れた魔法技術を保有する大国が城壁などに使用する魔導防壁と同じ原理ですね。ああやって外敵を超高密度な障壁で遮断します。
貴方が突破したレザンテリスの結界も出力はそう変わらない筈だから、偉大なる龍王様なら強行突破出来るけどね。そうじゃないなら消し炭になります」
「Gao」
「所で雪先輩。アカシャ様も総本殿に連れて行くんですか?」
「そうね。当事者だもの。」
「?」
◇△○×
「Gib」
「大きいでしょう」
ビブリテーカーの中央に位置するのが魔導教会トラオム総本殿アムステルダムスだ。敷地面積は一万坪。豪華絢爛では飽き足らず、舞踏会場や美術館や図書館まで備えており、部屋数は接見室まで含めると700を超える。総本殿裏には色付きの上級魔導師専用の棟まで建てられている。
立ち入りが出来るのは、魔導師であるならば中級魔導師以上。そして本殿の役割を補助する為の侍従1000人のみである
「お嬢。久方ぶりです」
「銀せんせーだ!お久しぶりです!」
「赤空。もう先生呼びは控えろ」
「あら銀。魔導戦隊を率いる貴方まで会議に顔を出すなんてよっぽどね」
「賢人から勅命が降ったらしくてな。拒否は許さぬそうだ」
その中で雪姫を待っていたかのように声をかけたのは、この世の神秘を研究する魔導師でありながらその威容はまるで歴戦の兵士に勝るとも劣らない屈強な肉体と空気を身に纏った鋭い眼光を有する上級魔導師が1人 銀鉱石であった。
「どれだけ待たせるんだ 君は!」
「……じゃあ3人で行きましょうか」
「っておい!僕の存在を露骨に無視して行こうとするんじゃない」
銀鉱石の隣に立っていたのは、宝石のように光沢のある長い緑の髪の毛を揺らしながら、女性のような輪郭とスッキリとした目鼻立ちをした美男子であったが、雪姫の態度に不服そうに顔を歪めていた。名を翠雨光と言う
「あら翠雨、いたのね?
気が付かなかったわ」
「嘘をつくな!目合ってただろ!」
「ぐ、ぐぬぬ。いつまで余裕の態度でふんぞり返ってられるかな!?君が引きこもってる間に、僕は序列3位にまで上り詰めたんだぞ!どうだ驚いたか」
「銀。仮にも先代筆頭から支えていた貴方が出し抜かれたの?」
「な!なんて失礼なんだ 君は!実力だ! 実力で追い抜いたに決まってるだろ」
「貴方の実力を疑うわけではないけれど、序列を書き換える功績というのを知りたいわね」
「最上位魔獣タルタロスの子 ギョウキにトドメを刺したんだ!」
「……」
「な、なんだ、その疑いの眼差しは!
僕が良い所取りだけしたとでも言いたいのか!!」
「そう言ってやるな、お嬢。
言っておくが今の翠はかなり強い。これから先鍛錬を積めば、戦闘力という分野では筆頭を超えるとさえ俺は確信している」
「……うかうかしてられないわね」
「だからお嬢と花も頑張れよ!
んじゃ先いっとくぜ」
「なっ!抱えるな!離せ!銀!もう僕は子供じゃない!魔導戦隊の隊長でも、副隊長とはいえ序列が上の僕にこれは失礼だろっ!!!」
姫は銀にしか聞こえない声量でそう呟いた。
数百年魔導師を続けている銀は次代を引っ張るであろう魔導師たちをどこか優しい眼差しで見つめながら、奥に入って姿を消した
ーーー
「全員揃ったね。私の感覚ではそう間隔は空いてないと思うけれど、念のため前回の会議内容を簡潔に先ずは伝えとくね」
屋内だというのに、傘を差して黒いフードに身を包んだ黒髪のエルフ 序列1位にして黒の魔導士 黒水歪が集まっている全員の顔を嬉しそうに見渡して口を開いた
「先ずは、魔導戦隊により上位魔獣ギョウキの討滅が完了。今回の功績と銀鉱石からの提案もあり、翠雨光の序列を3位。銀鉱石の序列を4位へと変更」
「又今作戦における魔導師の死亡者は15名。討滅した際に引き起こされた瘴没によりエルガルム大陸海洋一帯に少なくとも五千の魔獣化を引き起こしていると考えられ、島国である扶桑の産業に深刻な経済ダメージを与えている。目下解決に向けて尽力中。」
「続いて────。」
数十分かけて膨大な確認行為が漸く終わる。少しだけ気が抜けていたアーカーシャだが次の言葉に身体を強張らせることとなる
「そういえば、雪の……コホン。白雪姫の使い魔を見て思い出したけど、先日、アナシスタイル東方大都市レザンテリスの結界を破り、巡礼中だったキケ・オピー司教と従者の方々が赤龍に襲われたという情報があったよね?
それと同一個体かは不明だけど、ティムール大陸の方でも軍事大国バルドラでの騒動と旧クノアノスの森にて餓鬼 鈴鹿との戦闘にも赤龍が関わっているみたいなんだよね」
「筆頭!り、龍って希少保護に該当するのではないでしょうか!」
慌てるように手を挙げて発言したのは序列8位赤の魔導師 赤空花だ。事情をある程度とはいえ把握している彼女は、今後万が一にでもアーカーシャが討伐指定されるのを防ぐ為であった
「それはどうでしょうか。後述の2件は兎も角、司教襲撃は完全にアウトです。条例にも抵触している。議論の余地はないように思えますが」
反論したのは、序列7位青風糸だ。パチリ、その瞬間に学院時代からの犬猿ならぬ狼猫の仲である彼女たちの間に激しい火花が散る。
「……そもそも同一個体じゃない可能性もあんでしょうがよ」
「近年絶滅したとも言われる稀少な龍がこのタイミングで偶々2体確認された、と?それ本気で言ってるの?
それに情報が足りない以上、被害が出てからでは遅い。各国と冒険者ギルドに情報を流して連携した方が良い」
「だ、そうだけど、この件で白雪姫から通達があるそうです」
「その件の赤龍なんだけど、それ私の使い魔なのよね。名前は偉大なる龍王様と言うのだけれど」
「「は?」」
「g...gaon」
突然のカミングアウトに流石に全員が素っ頓狂な声を上げた。
「nimlatdeg@jmg@p.???」
移動兼就寝用の人型棺桶にその身を包んだ序列6位吸血鬼の灰土刃はここで初めて興味を示したのか質問をした
「暴走ではないですよ。全て私の指示によるものです。話すと長くなってしまうので、詳しい情報は追って報告書でまとめますので、この件の処遇については一旦待ってもらえないでしょうか。納得出来ない者がいるのなら、責任を取り魔導師の資格剥奪も受け入れます」
雪姫が素直に頭を下げる事に対して、面を喰らう者も多かった。彼女の経歴は少々他と比べて特殊である。元特級魔導師であり、現序列2位まで登り詰めた上級魔導師。プライドも高いからだ
そして今回の不祥事一つと比較しても余りある功績と実力を持つ彼女を簡単に切り捨てるのは、魔導教会としても替えが利かないかなりの痛手であったのだ
「……赤龍アーカーシャの件は一旦私預かり。それでいいね?」
黒水の言葉に異論を挟むものはいない。
パンッと手を叩いて再度気を張り直させていた
「じゃあ本題に入ろうか。四賢人たちより緊急通達があった。まずはこれをみて」
テーブルの真ん中が投影されて映像が出る。写っているのは数名の仮面の者たちだ。その中には、アーカーシャの見覚えのある巳の仮面の女マヤもいた
「して何者なのだ?こいつらは」
「正体は不明。名称も不明なので、仮称としてマスカレイドと呼称する。で、こいつらマスカレイドは明確な目的を持って行動している」
「知っての通り、リアクターは再現性の無い超魔法だ。この星の魔力の通り道、龍脈の力を使い、忘れられし大陸エクリフィスを檻として最上級魔獣たちの封印に用いている。
奴らは全大陸に張り巡らした、数百あるリアクターの設置された場所を把握して破壊している。これが何を意味するかは分かるよね?」
「まさか……冗談だろう。そんなことをすれば……」
「かつての獣亡之戦の再来か」
「封印されている12体の最上級魔獣が解放されると結果的にそうなるね。」
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