龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

文字の大きさ
110 / 141
龍王と魔物と冒険者

106話目

しおりを挟む
"略奪者たちの王"は世界最大規模を誇る冒険者ギルドである。当然有名であるが故に所属するには名を背負うだけの相応の実力が求められるが、ランクに応じて他では考えられないほどの高価な支給品を与えている。
Aランク高位冒険者はシュウのように他所から引き抜かれてきた外様が殆どを占めるが、扱いは変わらずに与えられる支給品に差はない。その内の一つには高性能転移魔法搭載ポータルが含まれていた。バイデたちは互いに懐からそれを出す。


「この辺りで使えば一気に抜けれるはずだ。使った事はあるか?」


「何度か。粗悪品だけど」


「ならいい。行くぞ」


ポータルをお互い砕くと光に包まれてその場を転移で後にする。だがこの見立ては大きく外れる事となる。此処は既に異界である。
強い魔力場により空間移動系の魔法は本来の座標を乱され狂わされ誤差を起こして遠くかけ離れた場所に転移する羽目になってしまうのだ。
そして2人の冒険者の行き着いた先。そこは3区の最深部であった。其処はバルディア大山脈で非戦闘員の魔物たちが多く住んでいる隠れ里だ。
そんな事はつゆ知らず想定外の事態に困惑した2人は互いに顔を見合わせる。当然の反応だ。そして自分達以外にも大量の話し声と気配が感じられるのを察した。
不慮のアクシデントは正常な判断能力を狭める。2人は緊迫した面持ちで武器を抜いた。武力で切り抜けるしかないと判断したからだ。


「‥‥‥ふぅ」


「油断するなよ シュウ 何が出てくるか‥‥‥」


「あれ 君たち見ない顔だね、そんなとこでなにしてんのー?」


すぐ近くで声がした。歳は自分たちとそう変わらない女性が見ていた。2人の目にはこれが人間のように見えた。だが本当に人間か?一分の疑問を挟まずそう言えただろうか。先程の少女と同じ人型の怪物ではないかと危惧したのだ。息の詰まるような圧迫感は感じられ無い。油断してるなら先手を取るしかない、バイデは思考をかなぐり捨てて武器を目の前の女性に振るっていた。
目に映る相手が人間に見えた時点で本来なら先ずは敵意の有無を確認すべきだろう。管理局により、人命は最優先されるべきと規定されているからだ。如何な逼迫した状況だろうと、故意の殺人は到底許されるものではない。


ガキンっ!金属がぶつかる音が耳をつんざいた。


「なっ‥‥‥おまえ!」


バイデの武器が横からシュウの剣により払い除けられていた音であった。


「間違えた……わけじゃなさそうだな。
なんのつもりだ? シュウ」


「バカヤロウが!そっちこそ今のはどういうつもりだ。どうしてこの人を殺そうとした!?」


シュウが女性を背後に庇うようにして、そのまま剣先をバイデに向けた。その様子にバイデは苛立たし気に吠えた


「人、だと!?いいか よく考えろ!
こんな所に人間なんか住んでいるわけがねえ!魔物に決まってる。」


「決まってる?俺にはこの人の反応が人間に見えた。それに仮に魔物だとしても少なくともあんたよりは危険じゃねえ」


「バカが、期待してたんだがなぁ。甘ちゃんが」


「最後通告だ、そいつを殺してさっさと離脱する。班長命令だ。従え」


「……ああ、やっぱ駄目だ、納得出来ない」


バイデの魔法はfish chip魔魚を生み出す魔法だ。
返事の直後に空気が弾けて1匹の歪な頭部をした魔魚が生まれて苛烈な攻撃をシュウと庇う形でその背後にいる女性に仕掛ける形で襲い掛かった。魔魚の攻撃。受けた剣が火花を散らしている。
互いに本気ではない。だが仮にも支部を任せられるだけの実力を持つバイデとシュウとではそもそもの地力が違う。


「……どうした怪物殺し 後ろが気になりすぎてるとそんなものか?」


「っせーよ!これが実力だっつうの!」


何度かの攻防を経て、その時点でシュウの身体の幾つかは皮膚を食い破られ牡丹色に服を染め上げていた。


「き、君。血がこんなに!もういいから!」


「いいから俺の後ろに隠れとけ!」


「……なにをカッコつけてやがる」


時間をかけすぎた。執拗に女性を狙う意味はもう無い。ただシュウの子供地味た行動が誰かとダブって気に入らなかった。ありありと自分の全てが間違いを突きつけられているかのように感じられるのだ。だから自分の行動は間違っていたと後悔させてやりたかった。


それなのにこいつはどれだけ嬲られても、決して守るのをやめない。最後に倒れる瞬間まで


「白けた。ここまで来るとバカすぎて付き合いきれねえよ。いいさ、そんなに死にたいなら……」


「ッッ……この人を傷付けるな!」


女性は倒れたシュウを守るように抱きしめて、全身を宝石化させていく。その特徴的な能力は一つの種族を想起させた。


「お前まさか宝人族か。しかも宝石化を任意で出来るってことは高位だ!待てよ。つまり、此処はあの宝人族の……
はっはっは!マスターに思わぬ手土産が出来た。」


「行け!」


魔魚を細かく分裂化させる。肉を啄む鳥のように、この煌びやかな宝石の悉くを魔魚は手に入れてくれるだろう。迫る幾千にして群れる数の暴威はまるで黒い海のようであった。
だがヒュンと音がした。それと同時に黒い海は真っ二つに割れていた。


「ボナード!きて、くれたんだ」


そう呼ばれた黒髪の彼は、少しだけ混乱した様子であった。


「アヤメ様が魔力を補足したから、駆けつけられたが……これはどんな状況だ?なんでお前が冒険者なんかを守ってる」


「説明は後だよ、私たちを守って」


向かい合うボナードにバイデは手を挙げる。一目で自分より強いと気付いたのだ。目を合わせると互いの意図を理解した。今この場で降伏しても絶対に殺す。
その瞳は醜い欲望に染まっていたことにボナードは気付いていたからだ。この目は自分たちを金になる道具としか見てない者の目だと内心唾を吐いた。


「今回は退かせてもらおう。そして今度はもっと大勢で来るさ。覚悟するんだな」


「今度なんてない」


地面より魔魚が何匹も現れる。ウツボみたいにウネウネと。
それを全て片付けた時にはバイデの姿は見えなくなっていた。


「逃したか」


そう言ったボナードは自身の妹と血塗れの人間を交互に見やってからため息をついた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...