龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

文字の大きさ
111 / 141
龍王と魔物と冒険者

107話目

しおりを挟む
貴方と会ったら何て言おう。何を伝えよう。最近は気付けばそればっかりずっとずーっと考えていた。
なのにいざとなったら笑っちゃうくらい何も浮かばない。色々な考えばかりがよぎっていって溢れる思いが形にならない。そんなあたふたしている私を貴方はそっと唇を緩めてゆっくりと話しかけてきてくれた。


「《お 身長少し伸びたね。雰囲気も変わってる。イメチェンでもした?》」


彼の声が優しく響く。前と変わらない。目頭が急に熱くなって抑える。泣かないように私は唇をキュッとしめた。泣き虫だって思われたくなかったから。


「こういうのは、成長したって言うんだよ。そっちは大分小さくなったね……
私オーウェンっていう魔導師になるための学院に入れたんだ。それでね、色んな人と会って。友達も出来て。魔法も学べて。すっごい楽しい。だからね、アーカーシャのおかげなんだよ。」


「《我なんかしたか?イルイが頑張ったんだろ。》」


声が少し震えていたのに、彼は毛ほども気にした様子は無くとぼけた言い方をするものだから、思わず笑みがこぼれてしまう。貴方はずるい。龍なのにそんなギャップを魅せてくるのだから。


「したよ。あの時助けてくれたじゃない。にしても、その我って、ふふ。似合わない」


「《かっこいいだろ!威厳が出て。分っかんないかなー!?お子ちゃまには。このかっこよさが!!》」


「そうだね、かっこいいよ。会った時からね」


「《おっふ……》」


「その子はアカシャ様のお知り合いですか?」


彼が連れていた真っ赤に燃え盛る髪の毛の綺麗な獣人の子が耐えかねたように問いかけてきた。
貴方はどうやら新たに言葉を伝える手段を得ていたらしい……な、なにを私は残念がっているのだ!色んな人とお話し出来るのは良いことじゃないか。あの時だって龍の姿を見た村の人たちは凄く怖がっていた。そんな事がこれまでだってあったはずだ。そんな思いをするべきではない。貴方の人となりを皆が知るべきなのだ。


【うむ。この世界で出来た最初の友達。イルイっていうんだ。こっちは赤空花。】


「!!? ええーーっ!!あ、貴女様があの最年少魔導師の天才魔導師赤空花様!?ごめんなさい。あまりにも可愛すぎて私全然気が付かなくて!貴女と姫さまに憧れてこんな風に成りたくて魔導師を目指しました!私もあの場所で生きてみたいと目標をもてたのは貴女たちのお陰なんです。よければ握手してください!」


【早口すぎて草。少し落ち着け。舌噛むぞ】


「アカシャ様。この子……めちゃくちゃ良い子じゃないですか。」


《あほーーー!絆されるな!
思わぬ伏兵に玉は至急この場からの離脱をpiーーー!エラー!エラー!piーーー!恋愛の波動を感知!》


【煙ふいたぞ】


「横から失礼。君がアーカーシャか。話は聞いてるよ。雪の使い魔やってるんだってね。
にしてもこんな所で会えるなんて奇遇だ。まあ是非一回くらいはお話ししたいと思ってた所だけどさ。ほら対話が図れる龍ってすごい貴重だから。」


【えーっと、黒水……ひずみ様、で合ってましたかね?】


「畏まらないでよ。歪でいい。敬称も不要だ。
あれ?勘違いじゃなければ……君、私の視認妨害の術式を突破して私の貌を視てるね。なんともないの?」


【いや 特には。】


「そう。そうなんだ。効かないんだね」


私も一度貌を視たから分かる。頭が沸騰しそうになるあの感覚は生まれつき高い魔力と魔法抵抗力を備えている私も抗えなかった。人に好かれる処か狂わせてしまう恐るべき呪い。
それが全く効かない彼は流石だが、そんな事よりも認識阻害が掛けられている黒いフード越しにも分かるほど、黒水様は嬉しそうだった。


「……雪と交渉してみようかな」


【?】


「筆頭。私の自己紹介もお願いしたいんですが」


「ああごめん。こっちは青風糸。そっちにいる空とは仲良しで親友だよ」


「「仲良しじゃない!」」


「「真似するな!」」


すごい息ぴったりである。喧嘩するほどってやつだろうか。こういうの少し憧れちゃいますね。
そういえばこの2人はいつからの仲なのだろうか。赤空様と青風様って学院は別々の筈だから、魔導師になってからのライバルなのかな?


「アカシャ様。この猫には近付かない方がいいですよ」


「心の狭さは相変わらずだな この狼は」


「なんですか。どっちが上か今赤青つけてやってもいいんですよ」


「それを言うなら白黒でしょ、バカめ」


「はいじゃあ自分が雪姫先輩の派閥で白。お前が黒水様の派閥で黒。白星は勝ちって意味だから自分の勝ち~」


「ちょっ!ふざけるな!そんな屁理屈通るか!」


「ね?仲良しでしょ。」


「確かに」【仲良しだな】


「「違うって言ってるでしょ!」」


同時に否定する2人。やっぱり息ぴったりたった。
厨房から獣人の子が注文した物を幾つも器用に持ち運びながら出てくる。


「楽しいのは分かるけどあんまりはしゃいで目に余ると他のお客様の迷惑にゃん。警告は一回だけにゃん。次は店長が出てくるにゃん。」


そう和やかな笑みとともに最後通告をしながら注文したオムライスが置かれる。見たところ、穀物類をふわふわの卵で包んだ食事らしい。美味しそうではあるがシンプルそうに見えて、正直私でも簡単に作れそうな感じがした。複雑な工程を経ているわけでもないのに、あの金額を取るのはいかがな物だろうか。これってやっぱりぼったく……


「ここはイシュロアスのお店だ。言うことに従うべきだよ、風と空は反省しなさい」


「「しゅーん」」


他のお客様はいないけど、確かに煩くし過ぎたので店員の指示に従うべきだろう。


「よければアーカーシャと空も一緒に食べよう。
奢るよ、お姉さんだからね。」


なんだかお姉さんって言葉をやけに強調した気がする黒水様。だけどその誘いはとても嬉しい。私としても…


【あー……折角誘ってくれたのにすまん。今日は花ちゃんとデートしてるんでな。こっちを優先にしたい。だから向こうの席で2人で食べたいな、我としては。花ちゃんは?】


「え!?あ、その、アカシャ様が、それで、いいなら、自分も……」


《今日1番の確変きたーーー!!!》


「それなら仕方ない。それによく考えたらこっちもでぇとだった。さっきのは忘れて」


「《んじゃ、イルイ。学校頑張って》」


貴方はそう言って離れていった。


「あいつの料理前に食べた時より更に腕が上がってる」


「だねー。ほらイルイも食べてみなよ、中に使われてるキャラメルバターライスが絶品だよ。甘いけど食べ易い、ほらほら」


黒水様はスプーンで掬ったオムライスを私の口に半ば無理やり突っ込んだ。味が口内に広がってゆく。
だが私の目はずっと貴方たちを追っていた。私の大切な恩人が私の憧れの人と一緒にご飯を仲睦まじく食べている。喜ばしいその光景を見ているとなんだか無性に胸が。


苦しいにがい


「えぇっ……」


そんな言葉が思わず漏れ出ていた
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...