龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

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龍王と魔物と冒険者

112話目

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アレクセイが堂々と立ち、そして高らかに宣言する。


「聞け!略奪者たちの王ヴァイキングたちの誇る30万の精鋭達よ!先に聞いての通り、勇敢な調査隊の報告でこの地バルディアに新たなる災厄の王が生まれた可能性が高いと報告を受けた。
新たなる王が生まれた時には国が興り大きな戦が起こると歴史が証明している。三狂王が生まれ凌ぎを削った大陸統一戦争!多種族が擁した魔王による独立戦争!この災厄の王が次なる大戦を引き起こさない保証はない!
奴らの勢力は日に日に増している。可及的速やかにこの芽を摘み取らねばならない。その力がある我々はこれを阻止する義務があると考える。今ならまだ間に合う。取り返しがつく。故にこの地に棲まう邪悪な魔物たちを俺たちが征伐する!」


冒険者ギルドは軍ではない。厳格に統率されているわけではない。だがこの瞬間、一つの目的を持って武器を持ち戦意を持ち高い戦闘能力を有する彼ら彼女たちを或いは軍と呼んでも差し支えないだろう。


聖皇歴1■■■年 略奪者たちの応援ヴァイキングの大軍がバルディア大山脈の南方部分に侵入。
迎え撃つ為に陣頭指揮を執るのは黒の妖精アヤメを筆頭とした魔物種族の代表たちである。
後に建国戦争と呼ばれることとなる戦いの火蓋が切って落とされた。


「わははは!スケルトン如きで我々が止められるかぁ!」


バルディアに入るには幾つかのルートが存在するが海から行くのはリスクがある。陸から行くのが一般的だろう。今回選ばれたルートはバネテス平野であった。
ヴァイキング第一陣で真っ先に先陣を切るのは、Aランク冒険者の租水。シャブール。サーム。シャースフ。姜亥の5名を中心としたB,C混成による各二千の合計1万の部隊であった。


迎え撃つのは同規模の武装したスケルトン1万体。
だが頭数が同じであろうと、質による戦力には大きく開きがあった。ぶつかり合うものの、瞬く間にスケルトン側の陣形が大きく突き崩される。30分もあれば優に殲滅されてしまうだろう。


『アヤメ様。吾輩が言うのも何ですが、スケルトンだけであれを止めるのは力不足かと。
骸骨将軍ジェネラルスケルトンのガレスとパロデミスの投入を具申させて頂きます!』


『大丈夫。これは様子見よ。互いにな。それに駒は弱くても地の利は此方にあるもの。』



戦いの最中、足元から突然煙が立ち上がった。
煙を生み出す魔草フエグチによる物である。
突然視界を奪われ冒険者たちの足が止まる。そしてスケルトンたちは人間と違い五感で相手を認識している訳ではない。
広くはないが一定の範囲に魔力場を作り、それで捉えた敵に対処しているのだ。

そして現在黒の妖精アヤメはバルディア全土に感覚を拡げている。魔力感知は元よりネズミ1匹の気配ですら索敵で捕まえる事が可能だ。更にはアヤメの感覚機能を張り巡らした魔力糸を用いて、スケルトン全員に感覚共有させるという埒外の技術。つまるところ、スケルトンたちには煙の影響など全くの皆無であった。


「遠距離部隊は魔法は撃つな。同士討ちになるぞ!」


「何も見え……ぐわぁ!」


「こいつら煙の中で俺たちのことが見えてるぞ!」


視界不良のまま反撃に遭い、スケルトン側が少しずつ押し返し始める。


「租水!この妙な魔草が煙を出してるみたいだ。くそっ。面談だ。どうする、毟っていくか!?」


シャブールも慌てているのか冷静な判断が下せていないようだ。そして混乱が長く続けばその分、魔物側との数の差は開いていく。アヤメの狙い通りでもある。


「慌てるな!近距離部隊は視覚が駄目なら魔力感知に切り替えろ!死角は互いにカバーしあえる位置で背中合わせに対処すれば問題ない筈だ」


『と相手は考えるわよね。固まってくれた方がこちらも助かる。当て易くなるもの』


租水が真っ先に立て直しを図ろうとするが、それを更に許さず追撃が来る。矢の雨が降ってきたのだ。両者の位置を完全に把握している魔物たちは、煙の中で正確に冒険者たちだけを補足して狙い撃ちしてきた。現場の混乱は更に加速していく。


「ぎゃ!」


「畜生!しかもこの矢毒が塗られてやがる!肉を持たないスケルトン共は毒食らっても死にゃしないが、こっちが食らえば終わりだ!租水。早めになんとかしないと最悪全滅するぞ」


「……聞け!遠距離部隊で風系統の魔法が使える者たちは上に展開矢を防ぎ、土系統の魔法が使えるやつは地面をひっくり返せ!早く!」


想定外の状況に苦戦を強いられることになった冒険者たちは、大煙により数分間一方的に攻撃を受け続けた。
遠距離部隊が魔法を使って煙を晴らしていく。そうして目にした光景に租水は驚愕した。この一手で恐ろしいほどの死傷者の山を築いていたからだ。


「半分近くやられたのか‥‥‥くそっ。」 


「違う。まだ半分も残っている!スケルトンたち相手にこれだけいれば十分だ!」


「あいつがこのスケルトンを率いてる将か!打ち倒すぞ!」


戦意が折れかけたが姜亥に発破をかけられたことで、租水たちは一時的に士気を持ち直してそこから一体のスケルトンに狙いを定める。
それは明らかに1体だけ他とは違うスケルトンだったからだ。スケルトンから進化した存在。骸骨戦士スケルトンウォーリア。冒険者たちは五千弱。対してスケルトンの数は8千強。冒険者側に勝機は十分すぎるほどあった。


『アヤメ様。あの一手はお見事。ですが、やはり』


『私は鳳仙カムイ様の創りし6番目の魔迷宮"屍たちの墳墓"を管理する黒の鍵でもある。魔迷宮の財を持って準備出来た物がある』


「カマエッ!」


突撃してきた冒険者たちに対してスケルトンウォーリアが吠えるとスケルトンの軍団が綺麗な隊列を組み銃を構える。
そう。この世界には"銃"がある。
1番初めにこの世界で銃が登場したのは外の世界の住人、つまり『渡航者』たちの知識と規格外の力チートにより持ち込まれたのが始まりだ。
当然普及していないのには相応の理由がある。
先ず、外の世界の理を持ってして生まれた銃はそれ故に原理が解き明かされた今でも、この世界の物では無く外部から持ち込まれた"異物"として世界に認知されている。その結果、どういうわけか他の武器と違って魔力がほぼ纏えなくなっている現象が起きている。魔力操作が卓越した者が辛うじて弾丸の運動エネルギーの操作をすることが出来る程度なのだ。魔力という物理現象を超越した概念がある世界で運動エネルギーのみで対抗しなければならない。この条件は人間以外を相手にする場合は心許ないと言わざるを得ないだろう。

他にも魔法金属レアメタルを用いての防具の発展で、事実上鎧を着た兵士を銃で貫通殺傷する事が現実的では無くなってしまった。当然銃そのものを大型化するという案もある。例えば30mmの口径とそれに見合った大型弾倉にすれば鎧の防御性能を突破するだろう。だがそれを個人携帯して戦いで使用するのは余りに現実的ではないし、そもそも労力的にもコスト的にも他の武器を使ったほうが安く済む。


話が長くなったが決して銃を軽んじるわけではない。これは相性の話なのだ。虫を殺すには殺虫剤を用いる様に。巨大怪獣を殺す時にはスペシウム光線を使うように。巨大な魔物たちの質量攻撃を受けるのではなく回避する事前提の冒険者たちの身軽な服装と、つまるところ銃という武器は非常に相性が良かったのだ。


「撃テッーーー!!!」


銃口から火を吹き、先頭を走ってた冒険者たちが何人もバタバタ倒れていく。
虚を突かれ、訳も分からない恐怖で冒険者たちの足が止まる。だが租水が駆けながら言葉を発する。


「足を止めるな!魔力放出に長けた奴らを前にだせ!
銃の弾は矢よりも魔力による影響を受けやすい。軌道を捻じ曲げる弾除けの加護を擬似的に再現して距離を潰せ!
魔法が使えるやつは遠距離部隊はその援護だ!」


『対処が早いわね。』


租水の言葉通り、銃撃は多量の魔力が放出された空間内では極端にその精度を失うのだ。
あと300m。壕が幾つも掘られている。それから相手の侵入を阻む見窄らしい柵。それがなんだ。
勢いよく乗り越えて足を止めず進む。200m。足を進めていた冒険者たちの一列が50m手前で一斉に消えた。地面が落ちた。否。地面でなく彼らが掘られた落とし穴へと落ちたのだ。当然勢い任せに来ていた冒険者たちは次から次へと止まらずにどんどん落ちていく。


「上カラ撃チ殺セ!」


「やめろーーー!」


そこからは一方的であった。断崖という高所が発生したことで銃を握ってるスケルトン凡そ3千程度が一斉に撃ち降ろしたのだ。逃げ場がない地獄の底で大地が夥しいほどの血を吸い赤く染まっている。音が止む頃には近接部隊はほぼ戦闘不能といえる状態に陥っていた。


凄惨たる光景に思わずガクリッと租水の膝が折れる。


「クソっ!全滅する!このままじゃ!スケルトン相手に!こんなっ!」


「撤退!撤退だーーー!」


その叫びを掻き消すように弾丸の雨が租水たちに向けられ放たれる。数千の弾丸をいなすだけの数は既に失われていた。
死ぬだけだ。だがその全ての弾丸が硬い金属に阻まれて跳弾し逆にスケルトンたちを襲う。


《お嬢様。待機命令が出ておりましたが》


「badよ爺や。そんなの知ったこっちゃないと伝えなさい。」


「ワーオ。私怒ってる。とってもとっても怒ってる。だからシチー。全部私に任せるといいよ。それでぜんぶぜんぶノープロブレムね」


「譲る気はないわ フラン!だってこの熱はあいつらに全部ぶち込んで差し上げないと気が済まないもの」


「ンー。じゃあ早い者勝ち……」


言葉途中ぇカコンっと銃弾がフランクリンの頭に突き刺さりのけぞる。しかし生身であるにも関わらず、彼女はケロリとした様子だ。


「アナタどんな身体してるのよ」


「私いっぱいいっぱいトレーニングしてる。身体がガンジョー当たり前、ね!」


ベイビー・フランクリンが地面を大きく蹴り上げるとその桁外れの威力で地面がパックリと地割れのように裂けた。丸ごと数百のスケルトンがそのまま大地に飲まれ、そして開いた大地の口を膂力で無理やり閉じて中にいたスケルトンたちを土葬する。


「相変わらず大雑把ね。でも熱いから好きよ。その戦い方」


「テンキュテンキュでーす。どっちがアレ先に倒せるか勝負でもしますか?」


「いいわよ」


シチー・スペンサーの体表から金属の性質を持つ液体の形状をした何かがドロリと出てきた。彼女の動作に合わせて金属が動き、無数の刃に変質してスケルトンをバラバラに切り刻んでいく。
当然銃や弓による反撃もされる。だが彼女の魔法"甲鉄のカーテン"は自動で凡ゆる物理攻撃に反応し阻む。傷をつけることすら容易ではない。


「踊りなさい」


ベイビーが一撃重視のパワーによる激しい動の戦い方であれば、シチーの戦いは正反対。まるで美しい舞のようであった。
数百のスケルトンを蹴散らし、そのまま骸骨戦士を瞬き程度の間に叩き潰していた。


『あれが冒険者最強に位置付けられるSランクというやつか。
想定よりも一回りは強い。真っ向から戦うと犠牲が大きいな。もう少し手の内を探るか。』


ほぼ無傷の八千のスケルトンたちをたった2人で殲滅する冒険者の戦い方をアヤメは終始観察していた。
蓋を開けば、初戦はどちらもほぼ痛み分けであった。
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