龍王転生〜転生したら魔導師ってのに出待ちされてた件について〜

波動砲

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龍王と魔物と冒険者

114話目

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魔女。その存在は前生きていた我の世界でも馴染み深い言葉だ。いわゆる被虐思考を持つ人たちのことを指す。
……魔女っていうかそれはマゾじゃね?ん?どっちがどっちだ?
えと、毒リンゴを喜んで作るのが魔女。毒リンゴを喜んで食べるのがマゾ。火炙りにされて灰になるのが魔女。蝋燭プレイをしてhighになるのがマゾ。他にも共通点として魔女のイニシャルのMが……我は今恐ろしい闇に触れてるのかもしれない。恐ろしいというか悍ましい。おぞましいというかおマゾしい。闇と病み。業を背負って生きているという点で彼らはきっと同じなのだ。どうか強くあれ。


「イルイもついてくると良い。」


「筆頭それはいくらなんでも危なくないですか?」


「危ないときは死んでも守るよ」


「は、はい!でも死なないで下さいね」


「自分から誘ったのにごめんなさい。アカシャ様は先に帰っていて下さい。」


「ま、またね!アーカーシャ!」


【お仕事ガンバ】


冗談はさておき、現在の状況を端的に説明するなら我と花ちゃんのデートは黒水さんの命令で残念ながら中止となった。休日なのに突然仕事を振られて正直イラッとしそうなもんだけど、花ちゃんは我より大分大人の対応を取っていた。こちらに謝りながらも快くそれを了承する社会人の鏡である。


【これ食い終わったら帰るでいい?】


「好きにしろ」


この場に残っているのは牛の人形サキと我だけだ。店を退店して、彼女を背中に乗せて一緒に帰ることにした。途中露天が多くある通りに差し掛かると、サキはとある店の商品に興味があるのかずっとそこを見ていた。気になったので質問する。


【アイス食べたいの?奢るけど】


「この身体で食えねーっての。そういや弟が好きだったなって。そんだけ」


【お姉ちゃんだったか。我もお兄ちゃんだ。妹がいる。】


「聞いてねぇよ」


【あんまり弟さんに顔向け出来ないような悪いことすんなよな。】


「ふん。何にも知らない癖に」


【そうだな。じゃあ今あんたに弟がいる事が知れたし、我には妹がいることをあんたは知った。はい次は?】


「……は?」


【は。じゃないよ。お前のこと知らないから文句つけられないって言うから、ちゃんと知って、そっから死ぬほど文句言ってやろうと思って】


「なんだそれ。」


【それに正直気になってた。お前はそんなに悪い奴には見えない、けどなんであんな事をしてたんだろうなって】


サキが俯きながらポロリと呟いた。


「…… 私があいつらに協力していたのは、どうしても解放しなきゃいけない魔獣がいるからだよ。
私が聖騎士成り立ての時代に忘れられし大陸エクリフィスに踏み行ったことがある。調査でな。その時に最上位魔獣ゾディアック"七殺告知"のマキナと出逢った」


サキは心底嫌な物を思い出したと言いた気にゲンナリしており、率先して続きを話そうとはしなかったので催促する。


【……そいつに拘るのはどうして?】


『ガハッ……なんで私だけ殺さない』


────私が此処に封じられて長い年月が経った。退屈なんだ。途轍もなく。だからゲームをしよう。一年毎に君の大切な人をさっき見た通りの権能で殺していく。私の告知に距離は関係ないからね。私を殺すか、此処から解放してくれたらやめてあげる。だから頑張ってね?



「あいつが私の大切な人を殺していくんだ。この4年で恋人も親友も両親も死んだ。次は多分弟だ。
私にはもうあいつしかいない。だから、私は……」


(ゾディアックって奴らコトアは知ってる?)


【前にも言ったろう。そもそも瘴気の問題は神々の時代にはなかった事だ。それで派生した問題は何も知らない】


ふむ。最上位魔獣。その名の通り、巨大な力を持つ魔獣の頂点。我がイルハンク区で見た魔獣も数人がかりだったが、きっと桁が違うのだろう。それこそ軍隊を動員しなきゃいけやいレベルで。サキに悪いがそんな奴らを外の世界に出したら取り返しがつかないことになるのは必至だ。


(マキナって奴は封印されているのに、そんなこと出来るの?)


【人間の封印魔法は未熟だ。あくまで肉体的な部分で制限している程度だ。××。お前もよく目を凝らして見てみろ。こいつは力に掴まれているぞ】


サキを下ろして、自分の片目を押さえて見つめてみる。今の我は見るだけで、大抵のものは看破できるからだ。だがぱっと見てもサキに違和感などは感じない。アーカーシャの目を持ってしても見えない力だとでもいうのだろうか


「んだよ」 


更に集中する。
突然、サキの周りの空間の色が変わってみえた、そして気付く。その瞬間、ゾクリと全身を悪寒が駆け抜けた。少しでも気付けば後はそうとしか視えなくなっていた。
巨大な力の塊がまるで人の掌みたいにサキの体に絡みついていた。


思わず翼を振るった。コトアが教えてくれたのだ。アーカーシャの権能は現在発現していると。
鳳仙カムイカグラが万象たる有限を操れるように。
鬼姫夜叉が全てを超越する無限のように。
龍王アーカーシャは空の空間。即ち零。権能は"虚空"。あらゆる力を包括し擁し色も形も全てを無為にする力だ。とはいってもかなり我の方が未熟なので未完成であるのだが。


翼を使ってサキの周りを取り囲んでいたエネルギーを丸ごと消し飛ばそうとするが、この力も相当に巨大らしい。バチバチと弾こうと拮抗していた。


「……お前、まさか、そんなこと出来るわけが、だってこれは絶対の力で、だから抗えるわけが」


【××。そのマキナというのがどの程度の存在かは知らないけど、その状態の貴方より確実に上と言える。いくらアーカーシャの力を使っても絶対に破れないよ】


【絶対? 笑わせてくれる。Eclipse first, the rest nowhere 皐月賞も菊花賞も日本ダービーも有馬記念も譲らない!】


撃ち合う度に空間のエネルギーが蒸発していく。少しずつヒビが入っていく。ぶちぶちと何かが切れる音がした。構わない。まだだ。もっと。もっと。力を絞り出す


「バカなことはやめろ!お前目から血が出てるぞ!」


【もう気付いてるだろ。××は先日の大悪魔ネクロフィリアスとの戦いで使った魔力分がまだ回復しきっていない。
だから日頃から無意識に姿が小さくなっているんだ。】


魔力が足りてない?閃いちまったぜ、なら毒魂アナムの時と同じじゃないか。この力の元となる魔力そのものを糧にすればいいだけのこと。翼と同時に牙も突き立てる。


【絶対?絶対はこの我だぁぁぁ!!!】


パキパキパキという音がした。身体が熱い。燃えているようだ。だが関係なしにエネルギーから魔力を無理矢理啜る度に虚空の力が増し、魔力も回復していく。
相手の力の分だけ、こっちは回復と自己強化が出来る。永久機関の完成だ。これでノーベル賞は我のものだ!


【無茶苦茶だよ。まるでかつての────】


「嘘だろ。まさか本当に」


サキにかけられた力を全て外し終える。結構な力技だったが、これで彼女が悪事を働く理由はもうないことになるので弟さんと共に真っ当に生きてもらおう。


【ホッとしたら少しだけ精神的に疲れた、かも。】


急激な眠気に襲われる。やばい、意識が保っていられず視界が歪む。


「お、おい!アーカーシャ!大丈夫か!?」


【悪い。ちょっとだけ寝るわ。先に帰っといて……zzz】


返事を待たずに、我はそのまま仰向けに寝そべり抗い難い眠気に誘われるまま瞼を閉じ、意識を沈めていく。
何やら誰かが近付いてくる気配がしたがそこに気をかける余裕はもうなかった。
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