129 / 141
龍王と魔物と冒険者
125話目
しおりを挟む
「あれが大父の言っていた……始祖や最上位魔獣にも届き得る神装霊具の一つ ムニョルニルか」
眩い雷光が何度か落ちた所をマヤは恨みがましく睨みつける。ゲイルの生死は不明だが少なくとも先程の攻撃で数千はいたデッドマンのほぼ全てが焼失したのは明白だった。それでいてあれだけの数を容易く処理できる出力。それに加えて対象以外は他の誰も傷付けない神がかった精密性。一言で言えば異常。
あんなモノがいるなんて、と。誰も見てなければ地団駄を踏んでいたに違いない。或いは目の前の最強の魔導師と比較しても尚。
勇者と呼ばれる者たちが持つ資質であり、恐らく人の身で許された最高峰の才の一つ
「だがお前さえ殺せれば、今はそれで良い」
何度目になるか分からない混成獣と黒水の拳が激突する。獣は本能で。魔導師は経験で。互いの力量は既に十分に察知している。
眼前の相手が難敵だと理解したキメラは咆哮と同時に形態変化をした。より強く大きく確実に目の前の敵を殺せるように。対して黒水は力動制御魔法(魔法とは名ばかりの技術)を使用して、魔力を凝縮し爆発的に身体能力を高めていた。オルガノンの杖の影響は受けていない。
黄金樹の禁断果実を口にした者は僅かな時間であるが途方もない力を手に入れる。一体のオークは最高位まで行き着き、一体の地竜は地龍にすら至るほどの力を。
キメラは或いはその2体に決して劣らぬ強さであった。驚くべきはその肉体に内包したエネルギーだ。数百年鍛えあげた黒水の魔力量と肉体的なスペックを比較してみても両者にそこまで大きな差がない。
寧ろ、この多対一という圧倒的に不利な状況でほぼ生身の状態でそれらに対抗している黒水の方が凄いとさえいえる
「随分と身体が鈍ってるね。窮地だこれは」
キメラを相手にしながら、更に背後のアンタレスの爪を避け距離を取るが死角から現れたロロカールの拳が迫る。展開している魔力で察知し逆にカウンターをしかけようとするも、足元にいたマヤの影の蛇がタイミングをずらして邪魔をする。そちらの対応も同時にするも、ロロカールの拳に僅かに遅れて攻撃を許し仰反る。並の人間なら半身を砕かれるほどの一撃だ。その直後に背後を裂く鋭い一閃。ミアラタの刃が黒水の背中を捉えていた。辛うじての回避だが完全では無く、背中から血が噴き出す。
コンマ数秒の攻防。それは徐々にであるが黒水の命を確かに削っていった。
「流石にジリ貧だね。ヘタをしたら死ぬかもしれない」
「この状況でその余裕は大したものだ。
幾つか不確定要素はいたが、杖を手に入れ、アイリーンの身柄も確保。お前が死ねば、成果としては上々といえるだろう」
項星によりゲイルとデッドマンを失った。赤い暴力の化身龍王アーカーシャを止める術もない。連れてきた魔女がやられるのも時間の問題だろう。だがもしも魔導教会トラオムで四賢人不在の今、筆頭魔導師を殺すことが出来たのなら、その死は計り知れない影響をもたらす。少なくとも魔導教会トラオムが組織的な機能不全を起こすのは明白だろう。
「少し寝ている間に面白いことになっているのね、歪筆頭」
肌を刺す冷気の瀑布が明確に意思を持って、黒水に襲いかかったマスカレイドたちだけを押し流していた。
「お待たせしました。これからは私も混ぜてもらいますよ」
「アノ姿。丑ノサキヲ破ッタ魔導師カ」
「白夜の弟子。だがたった1人増えたところで……」
言葉半分で目隠しをしたアンタレスが攻撃の来る刹那に鋭敏に気付いた。鈴の音がする次の瞬間、ボロボロの装いの黄穂鈴の加速した蹴りを6本ある腕の右半分で受けとめていた。
「わーお。見た目通り強いんだね。初見で止められたのは久しぶりだ。だったら黄穂ちゃんも本気出しちゃうんだぞ~」
「チッ!」
続いてロロカールと同じ体格をしたハドラー・アルカンが立っていた。こちらも既に大分ボロボロであるがその目には些かの戦意の衰えは見られない。寧ろ逆だ。
「何者だ」
「へへっ、冒険者さ ケンカ好きのな」
ミアラタも刀を構える。目の前には髪を団子状に結っているスーツ姿の女性が殺気を放ち立っていた。手には真っ黒な骨を握っているロレイだ。
「某の名前はミアラタ。立ち会いたければ名乗られよ」
「うるせーな。早く来い」
予想外に援軍が早く、歯噛みしながらマヤは上空を見て、今の今まで傍観していた玉兎を呼びつける
「……はいはい。やりますよ、やればいいんでしょ」
重い腰を上げようとした瞬間に、背中から蹴りが入り叩き落とされる
「魔女め。これ以上は好きにさせない」
「お前、2回目だぞ。」
赤い魔導師赤空花と玉兎が睨み合う。
数の上では完全に互角になる。いや時間は完全に自分達に不利になるとマヤは悟った。だが諦めた様子はなく、眼前の白と黒の2人の魔導師を睨みつける
「逃げるなら早い方がいいわよ?」
「舐めるなよ、白夜の弟子!
何を勝った気でいやがる。勝負はこれからだろうが!」
眩い雷光が何度か落ちた所をマヤは恨みがましく睨みつける。ゲイルの生死は不明だが少なくとも先程の攻撃で数千はいたデッドマンのほぼ全てが焼失したのは明白だった。それでいてあれだけの数を容易く処理できる出力。それに加えて対象以外は他の誰も傷付けない神がかった精密性。一言で言えば異常。
あんなモノがいるなんて、と。誰も見てなければ地団駄を踏んでいたに違いない。或いは目の前の最強の魔導師と比較しても尚。
勇者と呼ばれる者たちが持つ資質であり、恐らく人の身で許された最高峰の才の一つ
「だがお前さえ殺せれば、今はそれで良い」
何度目になるか分からない混成獣と黒水の拳が激突する。獣は本能で。魔導師は経験で。互いの力量は既に十分に察知している。
眼前の相手が難敵だと理解したキメラは咆哮と同時に形態変化をした。より強く大きく確実に目の前の敵を殺せるように。対して黒水は力動制御魔法(魔法とは名ばかりの技術)を使用して、魔力を凝縮し爆発的に身体能力を高めていた。オルガノンの杖の影響は受けていない。
黄金樹の禁断果実を口にした者は僅かな時間であるが途方もない力を手に入れる。一体のオークは最高位まで行き着き、一体の地竜は地龍にすら至るほどの力を。
キメラは或いはその2体に決して劣らぬ強さであった。驚くべきはその肉体に内包したエネルギーだ。数百年鍛えあげた黒水の魔力量と肉体的なスペックを比較してみても両者にそこまで大きな差がない。
寧ろ、この多対一という圧倒的に不利な状況でほぼ生身の状態でそれらに対抗している黒水の方が凄いとさえいえる
「随分と身体が鈍ってるね。窮地だこれは」
キメラを相手にしながら、更に背後のアンタレスの爪を避け距離を取るが死角から現れたロロカールの拳が迫る。展開している魔力で察知し逆にカウンターをしかけようとするも、足元にいたマヤの影の蛇がタイミングをずらして邪魔をする。そちらの対応も同時にするも、ロロカールの拳に僅かに遅れて攻撃を許し仰反る。並の人間なら半身を砕かれるほどの一撃だ。その直後に背後を裂く鋭い一閃。ミアラタの刃が黒水の背中を捉えていた。辛うじての回避だが完全では無く、背中から血が噴き出す。
コンマ数秒の攻防。それは徐々にであるが黒水の命を確かに削っていった。
「流石にジリ貧だね。ヘタをしたら死ぬかもしれない」
「この状況でその余裕は大したものだ。
幾つか不確定要素はいたが、杖を手に入れ、アイリーンの身柄も確保。お前が死ねば、成果としては上々といえるだろう」
項星によりゲイルとデッドマンを失った。赤い暴力の化身龍王アーカーシャを止める術もない。連れてきた魔女がやられるのも時間の問題だろう。だがもしも魔導教会トラオムで四賢人不在の今、筆頭魔導師を殺すことが出来たのなら、その死は計り知れない影響をもたらす。少なくとも魔導教会トラオムが組織的な機能不全を起こすのは明白だろう。
「少し寝ている間に面白いことになっているのね、歪筆頭」
肌を刺す冷気の瀑布が明確に意思を持って、黒水に襲いかかったマスカレイドたちだけを押し流していた。
「お待たせしました。これからは私も混ぜてもらいますよ」
「アノ姿。丑ノサキヲ破ッタ魔導師カ」
「白夜の弟子。だがたった1人増えたところで……」
言葉半分で目隠しをしたアンタレスが攻撃の来る刹那に鋭敏に気付いた。鈴の音がする次の瞬間、ボロボロの装いの黄穂鈴の加速した蹴りを6本ある腕の右半分で受けとめていた。
「わーお。見た目通り強いんだね。初見で止められたのは久しぶりだ。だったら黄穂ちゃんも本気出しちゃうんだぞ~」
「チッ!」
続いてロロカールと同じ体格をしたハドラー・アルカンが立っていた。こちらも既に大分ボロボロであるがその目には些かの戦意の衰えは見られない。寧ろ逆だ。
「何者だ」
「へへっ、冒険者さ ケンカ好きのな」
ミアラタも刀を構える。目の前には髪を団子状に結っているスーツ姿の女性が殺気を放ち立っていた。手には真っ黒な骨を握っているロレイだ。
「某の名前はミアラタ。立ち会いたければ名乗られよ」
「うるせーな。早く来い」
予想外に援軍が早く、歯噛みしながらマヤは上空を見て、今の今まで傍観していた玉兎を呼びつける
「……はいはい。やりますよ、やればいいんでしょ」
重い腰を上げようとした瞬間に、背中から蹴りが入り叩き落とされる
「魔女め。これ以上は好きにさせない」
「お前、2回目だぞ。」
赤い魔導師赤空花と玉兎が睨み合う。
数の上では完全に互角になる。いや時間は完全に自分達に不利になるとマヤは悟った。だが諦めた様子はなく、眼前の白と黒の2人の魔導師を睨みつける
「逃げるなら早い方がいいわよ?」
「舐めるなよ、白夜の弟子!
何を勝った気でいやがる。勝負はこれからだろうが!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~
ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。
彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる