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第四章
≪Ⅹ≫俺を男だと認識しておけよ【1】
しおりを挟むあ~……、何か朝の声が聞こえます。
でも動けません。
「起きたのか、メル」
「……おはよう、ございます、ヴォル」
後頭部からの音声に少し掠れた声で答えます。
ヴォルはいつものように──結局後ろから抱き締める方が寝やすいらしく──私は抱き枕状態なのです。えぇ、いつもとちがうのは肌が直接触れ合っているという事だけで。
そうなのです。昨夜は私、いつ夢の世界に旅立ったのかすら覚えていませんからね。
「水を飲むか?」
「……はい」
半身起き上がったヴォルが、ベッドサイドの水差しから注いでくれます。私はそれに応えようとして──あ……、動けませんでした。
情けない顔をしていたのでしょうか。ヴォルが僅かに口許を緩めた後、私の首筋に腕をまわして頭を起こしてくれました。
「あ、ありがとうございます」
そのまま飲ませてもらい、本当に申し訳ないです。
おまけに私の空気の読めないお腹がクゥ──、と鳴いたではありませんか。
「……すみません」
顔が熱いです。
ヴォルはクックッと笑っていて、本当にこの人が無表情だったなんて信じ難いですね。
良く笑いますし、意外と瞳に感情表現されるのですけど。
「もぅ……、笑いすぎです」
「すまない、あまりにも可愛くて」
ふて腐れてみると、またまた意外な反応が返ってきました。
更に柔らかく微笑んだまま頭を撫でられ、逆に困ってしまいますよ。
「湯に入るか?」
「あ……、入りたいのはやまやまですが……。すみません、動けません」
足腰に力が入らないという感じでして、更には微妙に筋肉痛でもあります。──勿論ヴォルにだって、その原因は分かっているのでしょうけれど。
「問題ない。俺が連れていく」
「あ……、え?」
至極簡単な事のように返され、ふわりと身体が浮かびました。
はい、結論から言えば私の返答は必要なかったようです。答える前に抱き上げられ、そのままお風呂に連れていかれましたから。
──って言うか、シーツくらい掛けてくださいよ!
「……まさか、抱き付かれるとは思わなかった。積極的だな」
驚きを押し殺したような声でしたが、私はそれに気付ける心の余裕がありません。
何も身に付けていない状態で姫抱きされているので、その自分の姿を隠すにはヴォルの首に掴まるようにして抱き付くしかなかったのです。
「み……見ないで、下さい……っ」
恥ずかしさのあまり、消え入りそうな声で訴えます。
「散々見ているから今更だろ」
「い、今更でもダメなのですっ」
「そう恥ずかしがられると、余計に俺のものだと主張したくなる」
言いながらも器用に扉を開けて進み、もうお風呂場でした。ヴォルは昨夜と同じ様に、水と火の魔法を唱えます。
そう言えば、魔法をこの様な──普通の生活に使っても問題がないのでしょうか。っていっても、旅の最中でも魔法で洗い物とかしてましたが。
「入るぞ」
「はい……え?あ、ありがとうございます」
ボンヤリしながらの返事をしてしまい、お湯に共に入ってから我に返ってお礼を告げる私でした。
──またまた一緒にですか。
お湯の中で下ろしてはくれましたが、私の腰元をしっかりと抱き留めてくれています。
この状況、どうなんでしょうか。──当たり前のようにお風呂へ一緒に入っていますけど。
まぁ今の私は、一人だと確実に溺れる自信がありますが。
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