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第五章
≪Ⅳ≫お前が一番【1】
しおりを挟む「ペルニギュート。ならば、俺がお前を滅しよう」
一歩踏み出したヴォルの身体が少しフラつきます。
やはり鎧も何も身に付けていないので、先程のダメージは計り知れないものに違いありません。それでも、全く苦痛を表情に出していませんでした。
「フフッ……、僕を?兄さんが?……フフフッ」
楽しそうに笑うペルさんは、ヴォルが攻撃などしないと思っているようです。
私の周囲には虹色の膜が張られ、完全にヴォルの結界に包まれていました。
「Honoo no tama.」
そして何の警告もなしに、ヴォルはペルさんに火炎玉を投げ付けます。
大きさは手を一杯に広げたくらいでした。
「っ?!」
足元で破裂した魔法球は床と砂山を焦がし、ペルさんのズボンを僅かに焼きます。
本当に自分へ攻撃してくると思っていなかったのか、避けもしませんでした。
「……やってくれるねぇ」
ペルさんは笑顔を浮かべてはいるものの、目に怒りが現れています。
先程の攻撃は最後の警告なのかもしれません。
「Koori no yari.」
それでもヴォルは何の返答もなく、次に氷の槍を放ちました。そしてそれは確実にペルさんに当たる軌道で。
「ちょっと、本気なのっ?!」
ペルさんは叫びながらも、それを黒い炎の壁で受け止めます。
普通の炎と同じなのか、氷の槍は音を立てて蒸発しました。
「Honoo no tama.」
「って、話聞いてるのっ?!」
黒い炎はいつも間にかモヤモヤとした影の壁に変わっています。そしてそれに打ち付けられる火炎玉は、先程より威力が増しているようでした。
私はヴォルの作ってくれた結界の中で、ただその光景を見ているだけです。そうやって戦っているヴォルの表情は──消えていました。
そうですよね。弟さんと戦いたい訳がないです。
「Koori no yari.」
「もぅっ?!僕は兄さんと戦う為じゃなくて、一緒にやろうよって言ってるのに!」
幾度もヴォルから魔法を打ち付けられ、ペルさんの黒い壁が重くなってきているようでした。
先程より動きが悪くなってきているように思えますね。
「……Ore wa sekai wo mamoru.」
「魔法石になれって決められてるのにっ?おかしいじゃないかっ。何でっ?魔力持ちが犠牲にならなければ成り立たない世界なんて、なくなっても良いっ!」
あれ──?ペルさん、ただ世界を壊したい訳ではないのでは?
防戦一方に見えますが、本当にペルさんはヴォルと戦う気がないのでしょうか。
更に私にヴォルの言葉は聞き取れませんが、ペルさんへは伝わっているようです。
「Mamono ga iru kagiri , kono shisutemu wa kawaranai.」
「それじゃあどうするんだよぉ!いつまでも魔法石の補充要員が生まれる訳じゃないんだって、兄さんだって分かってるでしょっ?このままじゃ魔力持ちがいなくなるか、精霊つきがいなくなったらお仕舞いなんだよっ。」
「Maryoku mochi wa fuete iru.」
「うん、増えているよ?魔力持ち自体はね。でも、精霊つきが現れていないっ。兄さんの後、この21年間一度もね。普通の魔力持ちなんて、精霊つきに比べたらカス同然だよっ」
ペルさんの言葉で、何を話しているのか理解する私でした。でもその内容は世界を滅ぼすなんて事からかけ離れていて、ただ兄の事を気に掛ける弟さんの気持ちが伝わってくるばかりです。
そして──精霊に好かれた者が他にいないって、前にヴォルから聞いていたと思いますが……?ヴォルの他にいないって事は……、確実に彼が魔法石になるって事……ですか?!
私は初めて知るその事実に、ただ愕然としてしまいました。魔法石になってしまうなんて……、ヴォルがいなくなるなんて嫌ですっ。
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