「結婚しよう」

まひる

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第六章

6.抑えが利(きか)なくなる【5】

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「あの、怪我をしている方々は大丈夫なのですか?」

「えぇ……、何とか持ちこたえてはいるわ」

 わずかに眉を寄せたユーニキュアさんでした。
 どうやら、口で言う程大丈夫ではないのでしょう。

 それもそうです。私達の手持ちの薬草では簡単な治療しか出来ません。しかも、商団の方々は人数が多すぎます。
 元々彼等が運んでいた荷物は魔物に襲われて使える状態の物が少なく、しかも馬車の中へ怪我人を収容する為に不要な荷物はほとんど置いてきてしまいました。

「貴女達の薬草も使ってしまってごめんなさい。このまま町に辿り着く事が出来れば、必ずお礼をするわね」

 無意識なのか、ユーニキュアさんに諦めにも似た空気が漂います。ヴォルやベンダーツさんがそばにいない事で、更に不安が増しているようでした。
 それでもユーニキュアさんは強いです。歩ける人が徒歩で、怪我人の方々が馬車なのだと彼女が言いました。さすがに反論する人もいましたが、それは彼女を思っての事なのでしょう。
 そしてユーニキュアさんは言葉通り不馴れな筈の旅路を徒歩で行く事を選び、私が勧めたウマウマさんにも乗りませんでした。

 あ、そういう私はウマウマさんに乗っています。──と言うか私も歩いたのですが、その速度の遅さに怒られました。すみません。

「魔物って、こんなにもいるのね。町にいた時は気付きもしなかったけど、商団を移動させるのがこれ程大変だったなんて」

 溜め息をくようにユーニキュアさんが周囲を見回します。彼女の瞳に映るのは疲弊しつつも文句を言わず、黙々と足を進める仲間達なのだと思いました。
 そうですよね。私も村にいた時は──いえ、知りたくもなかったです。両親を亡くしてからは、魔物自体からも目をらしていましたから。
 そうなのです。私にとって冒険者の方々とは、その姿すら視界に入れたくない存在でした。──えぇ、ヴォルに会って連れ出されるまでは。

「以前旅をした時には、これ程魔物がいなかったと思います」

「そう……。何処かおかしくなっているのかしら。それともこれは一時的なものなのかしら」

 ユーニキュアさんの言葉に、私は引っ掛かりを感じました。
 魔物が──でしょうか。
 それともこの世界が──。

 そんな時、後方左手から激しい光の爆発が見られました。そうです。それはヴォル達のいる方向で。

「何? 貴女の魔剣士の魔法かしら……」

 ユーニキュアさんが呟きます。でも、私は答える事が出来ませんでした。
 不安が募ります。現在私達は、ヴォル達の討伐地点を大きく右に迂回する形でサガルットへ向かっていました。

 魔物達は強い魔力に引き付けられてか、私達を無視してヴォル達の方へ向かっていきます。つまり私達は結界の効果もあり、魔物からノーマークで進めている訳ですが。

「行かなくて良いの?」

 ユーニキュアさんが問い掛けてきます。
 そんな──事、当たり前ではないですか。行きたいですよっ、今すぐ!

 でも──出来ません。私はこの商団の方々をヴォルから任されたのですから。
 本当に私自身は何も出来ませんが、ヴォルの掛けてくれたこの結界がある限り大丈夫です。

 ──大丈夫です。

 …………大丈夫……ですよね?

「このまま進みましょう」

「……分かったわ」

 私は無理矢理前を向きます。ユーニキュアさんも何か思うところがあるでしょうけど、それ以上何も言わずにいてくれました。
 まだ目指すサガルットまでは距離があります。ここで私が商団を足止めしてしまえば、全員の生存率が下がるのだと心に鞭打ちました。
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