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第八章
9.有り得ない【2】
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「何処の発生箇所でも同じ魔法石化ですか。……協会長はその時もこの教会にいらしたのですか?」
「そうなのだ。この結界で……今は決壊してしまったがの?ハッハッハ。で、助かったのはここにいる我々魔力協会の職員23名だけだな」
「これで全部……?生き残りが?」
ヴォルと協会長さん、そしてベンダーツさんが真剣な顔を付き合わしています。
でも三人が話している中、あまりの事態に私は少しばかり現実逃避をしていました。──ヴォルが敬語で話していますねとか、結界が決壊って何ですかとか。
偏に、私はこれが現実として認識したくなかったからでした。
町の人達全員が自然現象的に魔法石になってしまったとか──いえ、これは自分の目で見てしまっているので疑いようがないのですけど。更に他の町や村も同じ様になっているらしいとか、もうどうしたら良いのか頭が働きませんでした。
でも、魔力協会員がこの事態を故意に招いた訳でない事だけは唯一の救いです。先程の言葉が偽り知り、私はとても安堵しました。
「実際にどの様な経緯でこうなったのか、知っている範囲で教えていただけませんか」
「そうだな……あれは七日程前の昼過ぎだったか。突然大地が揺れたかと思うと赤い光が吹き出して……。我々はここで打ち合わせ中でな。外に見回りに行った仲間も帰って来ないし、かといってその時はあまりの事態に教会の結界の外にも出られずな」
ヴォルの問いに、協会長さんは長い髭を触りながら答えます。
教会内から外を見て皆が魔法石になっていれば、それは外に出るのが勇気が必要なのは想像に難くありませんでした。
「俺達が来た時に騙しにかかった理由は?」
そんな協会長さんに刺々しくベンダーツさんが問います。
ベンダーツさんは根に持っているようでした。
「すまないな、悪気はないのだ。ただ原因が何かすら分からない、次の発生地点も分からないという有り様。ただでさえ少なくなってきた魔力所持者に、これ以上数を減らされては困るのだよ」
「それで、追い払おうとしたと?」
「まぁ、そんなところだ。しかし、教会の強力な結界を破壊するとはな。以前の……五年程前の査定時より、一段と力をつけたのだな」
失礼な程のベンダーツさんの言い方にも、協会長さんは怒る事もしないで告げます。
そしてまた、査定という単語が使われました。五年前というと、ヴォルが成人した後でしょうか。
「まぁ……成人してからも魔力が上がるなんて、ヴォルくらいじゃね?」
続けられたベンダーツさんの言葉には、若干の呆れが込められているようでした。
この会話から推測するに、通常は成長と共に魔力量が落ち着くようです。
「魔力査定で診断出来る割合が低すぎる。そもそも俺は全力を出したとは言っていない」
「あぁ、そうかい。ここまで主の査定の度に、共に足を運ばないとならない付き人の事も考えてくれよ。しかもちったぁ本気出せって」
「あ、あの……定期的に魔力を検査しに来るものなのですか?」
言い合いを始めたヴォルとベンダーツさんの間に割って入り、私は疑問をヴォルに投げ掛けました。
しかも、ベンダーツさんも一緒にここに来ていたようです。
「そうだ。成人まで五年ごとに査定と呼ばれる魔力量の検査を行う」
「そう、しかも強制的にね。元々首の後ろに印を刻まれてるから、逃げも隠れも出来ないんだけどさ」
「すまないな。それは力ある者を纏める為に必要なのだよ。管理しておかないと、他より強い力を持った者の天下になってしまうからな」
淡々と答えてくれるヴォルに、ベンダーツさんは刺のある言い方をしました。
あまり魔力協会に良い印象を持っていないと伝わるベンダーツさんの言葉に、それを分かって尚も協会長さんは怒りもしないで応じます。
当たり前ですが人それぞれに事情がありますから、思うところは様々なのでしょう。
「そうなのだ。この結界で……今は決壊してしまったがの?ハッハッハ。で、助かったのはここにいる我々魔力協会の職員23名だけだな」
「これで全部……?生き残りが?」
ヴォルと協会長さん、そしてベンダーツさんが真剣な顔を付き合わしています。
でも三人が話している中、あまりの事態に私は少しばかり現実逃避をしていました。──ヴォルが敬語で話していますねとか、結界が決壊って何ですかとか。
偏に、私はこれが現実として認識したくなかったからでした。
町の人達全員が自然現象的に魔法石になってしまったとか──いえ、これは自分の目で見てしまっているので疑いようがないのですけど。更に他の町や村も同じ様になっているらしいとか、もうどうしたら良いのか頭が働きませんでした。
でも、魔力協会員がこの事態を故意に招いた訳でない事だけは唯一の救いです。先程の言葉が偽り知り、私はとても安堵しました。
「実際にどの様な経緯でこうなったのか、知っている範囲で教えていただけませんか」
「そうだな……あれは七日程前の昼過ぎだったか。突然大地が揺れたかと思うと赤い光が吹き出して……。我々はここで打ち合わせ中でな。外に見回りに行った仲間も帰って来ないし、かといってその時はあまりの事態に教会の結界の外にも出られずな」
ヴォルの問いに、協会長さんは長い髭を触りながら答えます。
教会内から外を見て皆が魔法石になっていれば、それは外に出るのが勇気が必要なのは想像に難くありませんでした。
「俺達が来た時に騙しにかかった理由は?」
そんな協会長さんに刺々しくベンダーツさんが問います。
ベンダーツさんは根に持っているようでした。
「すまないな、悪気はないのだ。ただ原因が何かすら分からない、次の発生地点も分からないという有り様。ただでさえ少なくなってきた魔力所持者に、これ以上数を減らされては困るのだよ」
「それで、追い払おうとしたと?」
「まぁ、そんなところだ。しかし、教会の強力な結界を破壊するとはな。以前の……五年程前の査定時より、一段と力をつけたのだな」
失礼な程のベンダーツさんの言い方にも、協会長さんは怒る事もしないで告げます。
そしてまた、査定という単語が使われました。五年前というと、ヴォルが成人した後でしょうか。
「まぁ……成人してからも魔力が上がるなんて、ヴォルくらいじゃね?」
続けられたベンダーツさんの言葉には、若干の呆れが込められているようでした。
この会話から推測するに、通常は成長と共に魔力量が落ち着くようです。
「魔力査定で診断出来る割合が低すぎる。そもそも俺は全力を出したとは言っていない」
「あぁ、そうかい。ここまで主の査定の度に、共に足を運ばないとならない付き人の事も考えてくれよ。しかもちったぁ本気出せって」
「あ、あの……定期的に魔力を検査しに来るものなのですか?」
言い合いを始めたヴォルとベンダーツさんの間に割って入り、私は疑問をヴォルに投げ掛けました。
しかも、ベンダーツさんも一緒にここに来ていたようです。
「そうだ。成人まで五年ごとに査定と呼ばれる魔力量の検査を行う」
「そう、しかも強制的にね。元々首の後ろに印を刻まれてるから、逃げも隠れも出来ないんだけどさ」
「すまないな。それは力ある者を纏める為に必要なのだよ。管理しておかないと、他より強い力を持った者の天下になってしまうからな」
淡々と答えてくれるヴォルに、ベンダーツさんは刺のある言い方をしました。
あまり魔力協会に良い印象を持っていないと伝わるベンダーツさんの言葉に、それを分かって尚も協会長さんは怒りもしないで応じます。
当たり前ですが人それぞれに事情がありますから、思うところは様々なのでしょう。
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