「結婚しよう」

まひる

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第九章

4.魔力とは【2】

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「王立図書館にあった書物の内容だったな」

「はい。他にも何冊かございました」

「俺も見たが、あれは本心から焼き捨てたいと思わせた」

 ベンダーツさんの報告に、何やら珍しく激しい感情を見せるヴォルでした。
 でもそれだけ心を動かされたと言う事なのでしょう。

「それは困ります。あれは貴重な歴史的文献ですからね。魔法石関連の事柄は別としても、政治的な背景や史実が書き記されている物は少ないのです。大体、あれの作者は研究者ですからね。ヴォルティ様と同じく、魔法を研究していたようですよ」

「研究者はろくなものではない。基本的に自己満足の塊だからな」

 貴重な文献を軽々しく無きものにしようと思っていたヴォルに驚いたのは私だけではなかったようで、ベンダーツさんは真顔で制されていました。

「ヴォルティ様もそうおっしゃる研究を好んでなされていたのではありませんでしたか?」

「あの時は他に関心を向けるものがなかったからな。……だが、今でも魔法そのものに興味がなくなった訳ではない」

「魔法はお好きなのに魔力を消そうとしているなどとは、どれだけ我が儘なのですか」

 呆れたように溜め息をついたベンダーツさんは、それでも笑みを浮かべています。
 けれども恐らく他にどういった理由があったとしても、きっとベンダーツさんも私もヴォルのそばにいると思いました。魔力等は関係ないのです。

「でも魔法って素敵ですよ。お話の中では多種多様な魔法使いの方がいました。本当の魔法とは違うかも知れませんが、色々な事が出来そうですから」

「メルシャ様はお知りにならないだけです。現実的にそれがどの様な影響を及ぼすか。権力者は己が舵取りを出来ないと判断すれば、何の情もなく切り捨てますからね。強すぎる力は本来隠しておくべきなのですよ」

 私はうらやましく思っている事を口にしましたが、ベンダーツさんは苦笑いを浮かべました。

「今更力を隠せと言ってももう遅いだろ」

「えぇ、ヴォルティ様は目立ちすぎました。容姿だけでも人目を引くというのに、そのあふれんばかりの魔力は隠しようがありませんからね。覚えておいででしょうか、貴方様が幼く……まだ市井しせいにいらっしゃった頃、日に日に強くなっていく魔力を察知した城内の魔力所持者が恐れていました。城下に迎えがいったのも、丁度その頃ですよ」

 ヴォルは呆れたように告げますが、ベンダーツさんは感情を見せずに言葉を続けます。
 そう言えば、ヴォルは幼い頃にお城から迎えが来たのだと聞いていました。

「魔力所持者さん同士は、互いの魔力を感じる事が出来るのですか」

「ある程度はな。魔力所持者は協会を通じて、魔力制御を教えられる。自身の魔力を極力体外に漏らさないように求められる為、互いが魔力所持者と言う程度しか判別がつかないくらいになる」

「えぇ。それまでのヴォルティ様は、魔力垂れ流しの状態でしたけどね。幼さと周囲の知識不足の為でしたが、早い段階で保護された事は良かったと思われます。ちなみに保護される前でも、ヴォルティ様の周囲はお誕生される前から、常に数人の騎士の護衛がついておりました」

 ヴォルは淡々と続けますが、ベンダーツさんの言葉に私は目を見開きます。
 驚きの事実でした。でも考えてみれば当たり前の事です。身重の女性が町で一人生きていくのは、いくら治安の良いセントラルとは言え厳しいものがありました。
 皇帝様はヴォルのお母様が市井しせいに下りた際から、ずっと見守っていらっしゃったようです。
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