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第四章
1.抱き枕以外だ【4】
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「朝食の準備が整っております。それでは参りましょう」
朝の支度が済み、ガルシアさんに促されて廊下に出ます。
ん~、何かが物足りない気分でした。何でしょうか。こう……、ポッカリと穴が空いたような感覚があります。
「メルシャ様。どうかなされましたか?」
「えっと……、何ですかね。何かが物足りないです。何でしょうね、はっきりとは分からないのですが……」
私の身の回りのお世話をずっとガルシアさんがして下さっているので、お付き合いもそれなりに長いのです。その為か、彼女とは他の方より気負わないで話が出来るようになりました。
「……お気付きではないのですか」
「えっ?」
良く聞こえませんでしたよ、ガルシアさん。真っ直ぐ見つめ直しますが、何だか溜め息をつかれたような気がしますけど。
「いえ。本日はまだ、ヴォルティ様にお会いしていないのではありませんか?」
「あ……」
言われて初めて気付きます。そうですよ、まだ『おはようございます』をしていません。
いつもは寝ている私の後ろにいるので、起きた一番初めに挨拶をしていました。──旅の途中も、このお城に来てからもです。
「そうでした。あの、ヴォルは何処にいますか?」
言われてからしか気付けない私も何ですが、とにかく朝の挨拶ですよ。
「はい、存じております。朝食を召し上がっておられませんので、お声を掛けてきて頂けますか?研究室にいらっしゃると思います」
「あ、はいっ。分かりました、行ってきます!」
元気に返事をします。だって研究室までの道のりは、食堂と部屋と勉強部屋以外で知っている唯一の場所ですから。
思い切りダッシュするつもりで駆け出しました。
「走ってはお行儀が悪うございますよ」
「は~い!」
なんて、返事だけの私です。ヴォルがいると思われる研究室まで、ほぼ競歩のような早足で移動します。
農村にいた時には身に付ける事のなかった裾の長いスカートも、ここでは当たり前のように毎日着ているのでだいぶ扱いにも慣れてきました。──勿論初めの頃は、足にまとわりついて何度も転びそうになったのですが。
研究室の前まで急いで来たので、何回か深呼吸をしてからノックします。
「ヴォル?」
「……メルか」
少しの間の後、中からヴォルの反応がありました。それからすぐに扉を開けてくれたので、本日初のヴォルとの対面です。
「何かあったのか?」
私の呼吸がまだ荒かったからか、扉を開けて顔を出した途端に不審な表情を浮かべられました。
「あ、いえ……。えっと、おはようございます。あの、朝食が出来てるとガルシアさんが……」
「あぁ。……そうか」
「はい……?」
朝の挨拶をしまして用件を話します。けれども何だか反応が鈍いと言いますか。
あれ?何だか不思議と会話に間がありますね……?
「少し待ってくれないか。片付ける」
「あ、あの……」
「……どうした、メル」
「中に……入っても良いですか?」
研究室内に戻ろうとしたヴォルを引き留めました。何だか、このまま扉を閉められそうでしたから。
朝の支度が済み、ガルシアさんに促されて廊下に出ます。
ん~、何かが物足りない気分でした。何でしょうか。こう……、ポッカリと穴が空いたような感覚があります。
「メルシャ様。どうかなされましたか?」
「えっと……、何ですかね。何かが物足りないです。何でしょうね、はっきりとは分からないのですが……」
私の身の回りのお世話をずっとガルシアさんがして下さっているので、お付き合いもそれなりに長いのです。その為か、彼女とは他の方より気負わないで話が出来るようになりました。
「……お気付きではないのですか」
「えっ?」
良く聞こえませんでしたよ、ガルシアさん。真っ直ぐ見つめ直しますが、何だか溜め息をつかれたような気がしますけど。
「いえ。本日はまだ、ヴォルティ様にお会いしていないのではありませんか?」
「あ……」
言われて初めて気付きます。そうですよ、まだ『おはようございます』をしていません。
いつもは寝ている私の後ろにいるので、起きた一番初めに挨拶をしていました。──旅の途中も、このお城に来てからもです。
「そうでした。あの、ヴォルは何処にいますか?」
言われてからしか気付けない私も何ですが、とにかく朝の挨拶ですよ。
「はい、存じております。朝食を召し上がっておられませんので、お声を掛けてきて頂けますか?研究室にいらっしゃると思います」
「あ、はいっ。分かりました、行ってきます!」
元気に返事をします。だって研究室までの道のりは、食堂と部屋と勉強部屋以外で知っている唯一の場所ですから。
思い切りダッシュするつもりで駆け出しました。
「走ってはお行儀が悪うございますよ」
「は~い!」
なんて、返事だけの私です。ヴォルがいると思われる研究室まで、ほぼ競歩のような早足で移動します。
農村にいた時には身に付ける事のなかった裾の長いスカートも、ここでは当たり前のように毎日着ているのでだいぶ扱いにも慣れてきました。──勿論初めの頃は、足にまとわりついて何度も転びそうになったのですが。
研究室の前まで急いで来たので、何回か深呼吸をしてからノックします。
「ヴォル?」
「……メルか」
少しの間の後、中からヴォルの反応がありました。それからすぐに扉を開けてくれたので、本日初のヴォルとの対面です。
「何かあったのか?」
私の呼吸がまだ荒かったからか、扉を開けて顔を出した途端に不審な表情を浮かべられました。
「あ、いえ……。えっと、おはようございます。あの、朝食が出来てるとガルシアさんが……」
「あぁ。……そうか」
「はい……?」
朝の挨拶をしまして用件を話します。けれども何だか反応が鈍いと言いますか。
あれ?何だか不思議と会話に間がありますね……?
「少し待ってくれないか。片付ける」
「あ、あの……」
「……どうした、メル」
「中に……入っても良いですか?」
研究室内に戻ろうとしたヴォルを引き留めました。何だか、このまま扉を閉められそうでしたから。
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