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2.異世界人の習性を実際に見てみた
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何故この様なところへ迷い込んだのか。
思えばオレは、前世でもこういった事が頻発していた。
言われた場所に辿り着けない、なんてざらで。──何故だ。
「おい。お綺麗な坊やが、こんなところに何の用だ?」
立ち止まって思考していたオレは、後ろから投げ掛けられたダメ声に意識を引き戻される。──がらがらの聞き取り難い声だった。
振り返ってみれば、そこには三人の体格の良い男達。だが服装は皆かなりのボロで、前世の浮浪者でももう少しマシな格好をしていると思った。
「……用はない」
「何だとぉ!」
問われたので、『ここに用はない』と答えただけである。しかしながら、何故か男は逆上して大声を張り上げた。
だが何故こうも、体格の良い人間ばかりなのか不思議である。オレは海外に行った事がないから知らないが、アメリカに行ったとしてもこんな感じなのだろうか。──決してオレが極端に小さい訳ではないと思う。
「おいこらっ。無視するなんて、随分余裕だなぁ!」
「トーリ様」
「ぐわあっ!」
内心で溜め息を吐いていると、男の一人がオレに向かって拳を振り上げてきたようだ。オレが気付いた時には、既にセスの防御機能によって吹き飛ばされていたが。
後方へ数メートル吹き飛んで地面に倒れた男を見て、他の二人の男達が顔を合わせて互いに頷く。そして手に丸太や板切れを握り締め、共に飛び掛かってきた。
「煩いですね、コバエどもは」
オレの襟巻き状態になっている可愛いセスは、見た目に反して辛辣な言葉をのたまう。
対する相手二人は既に持っていた筈の得物を風の魔法で粉砕され、愕然とした様子でセスを見ていた。──イタチが会話した事に驚いているのかもしれないが。
「もう少し世界へ役に立つ生き方をしなさい」
ツンと鼻先を上げたかと思ったら、次の瞬間には悲鳴のような声を残してオレの視界から消えていた。──凄いな、セス。
上空へキラリと飛んでいったような気もするが、あれらは確かにいない方が他の人の為だろう。それに結果的にオレは何も出来なかった訳で、全てセスが処理してくれたのである。
「本当にありがとう、セス。オレは全然役に立たないな」
「いいえ、トーリ様。セスはトーリ様から御許し頂けたからこそ、こうしてお傍で御仕え出来るのです。そのセスがトーリ様を御守りする事はもはや摂理でございます。御不快かもしれませんが、どうかこのままセスが侍る事を御許し下さいませ」
肩に乗ったままではあるが、セスが小さな頭を下げてきた。──可愛い。
いや、そうではなく。
許すも許さないもなく、オレはセスがいないと非常に困るのだ。生きていける確率が大幅に下がる。精神的な支えでもある為、逆にオレの方が見捨てないでくれと頼みたい程だ。
「オレの方こそセスが必要だ。こちらからお願いしたい」
「ありがとうございます、トーリ様。セスは一生懸命お仕え致します」
「ありがとう、セス」
そうしてほんわかと和む。
だが、根本的問題は全く解決していなかった。
改めてオレは周囲を見渡し、現状を把握する事に努める。──だが勿論、現在地が何処で出口が何処だか分からない訳で。
「この際ですから、この辺りを一掃してから家を建てましょうか?」
オレが悩んでいる事に気付いたのか、セスが少し論点の離れた問い掛けをしてきた。
その言葉の内容を頭の中で噛み砕き、首を傾げる。──『一掃』って?
「セス?」
「申し訳ございません、トーリ様。……またコバエが寄って来たようです」
単語を聞き間違えたのかと確認の為に名を呼んだのだが、セスはツイッとオレの背後へ頭部を向ける。
同時にバタバタと荒立たしい足音を立て、また体格の良い男達が現れた。先程の者との関連性は不明だが、今度は五人。気付けば反対側の路地からも三人である。
完全に前後を挟まれた形になったオレとセスだ。しかも総勢八人で、さすがに数が多すぎる。
「お前か?俺様の部下を吹き飛ばしてくれた野郎は」
その中で一番筋骨隆々な大きな男が、肩に担いだ巨大な金槌状の武器を、オレに突き付ける様に持ち上げながら言葉を放った。
『部下』という事は、先程の男と仲間なのは確かである。そうかといって、オレとしても素直にやられてやる筋合いはない。
「だから何だ」
「ふん、威勢だけは良いなチビ助。少しは魔法を使えるようだが、その程度じゃあ俺様には勝てねぇぜ?ガキだといっても容赦はしねぇ。謝って有り金全部置いていけば、許してやらなくもねぇんだがな?」
物凄く在り来たりな悪役的セリフを口にする男と、周囲を囲む下卑た笑みを浮かべたその他大勢だ。
先程セスとほんわかした気分も掻き消える。
「はぁ。オレって、絡まれやすいのか」
溜め息と共に、ポツリと愚痴が溢れた。
団長さんもこの男達も、良し悪しを別として何故オレに構うのか分からない。──あれか、国外の人間だからか。
国民ならば少なからず周囲との繋がりがあるから、相手を選ばなくては後で大変な事になるかもだ。──どうであれ、オレは遠慮したいが。
思えばオレは、前世でもこういった事が頻発していた。
言われた場所に辿り着けない、なんてざらで。──何故だ。
「おい。お綺麗な坊やが、こんなところに何の用だ?」
立ち止まって思考していたオレは、後ろから投げ掛けられたダメ声に意識を引き戻される。──がらがらの聞き取り難い声だった。
振り返ってみれば、そこには三人の体格の良い男達。だが服装は皆かなりのボロで、前世の浮浪者でももう少しマシな格好をしていると思った。
「……用はない」
「何だとぉ!」
問われたので、『ここに用はない』と答えただけである。しかしながら、何故か男は逆上して大声を張り上げた。
だが何故こうも、体格の良い人間ばかりなのか不思議である。オレは海外に行った事がないから知らないが、アメリカに行ったとしてもこんな感じなのだろうか。──決してオレが極端に小さい訳ではないと思う。
「おいこらっ。無視するなんて、随分余裕だなぁ!」
「トーリ様」
「ぐわあっ!」
内心で溜め息を吐いていると、男の一人がオレに向かって拳を振り上げてきたようだ。オレが気付いた時には、既にセスの防御機能によって吹き飛ばされていたが。
後方へ数メートル吹き飛んで地面に倒れた男を見て、他の二人の男達が顔を合わせて互いに頷く。そして手に丸太や板切れを握り締め、共に飛び掛かってきた。
「煩いですね、コバエどもは」
オレの襟巻き状態になっている可愛いセスは、見た目に反して辛辣な言葉をのたまう。
対する相手二人は既に持っていた筈の得物を風の魔法で粉砕され、愕然とした様子でセスを見ていた。──イタチが会話した事に驚いているのかもしれないが。
「もう少し世界へ役に立つ生き方をしなさい」
ツンと鼻先を上げたかと思ったら、次の瞬間には悲鳴のような声を残してオレの視界から消えていた。──凄いな、セス。
上空へキラリと飛んでいったような気もするが、あれらは確かにいない方が他の人の為だろう。それに結果的にオレは何も出来なかった訳で、全てセスが処理してくれたのである。
「本当にありがとう、セス。オレは全然役に立たないな」
「いいえ、トーリ様。セスはトーリ様から御許し頂けたからこそ、こうしてお傍で御仕え出来るのです。そのセスがトーリ様を御守りする事はもはや摂理でございます。御不快かもしれませんが、どうかこのままセスが侍る事を御許し下さいませ」
肩に乗ったままではあるが、セスが小さな頭を下げてきた。──可愛い。
いや、そうではなく。
許すも許さないもなく、オレはセスがいないと非常に困るのだ。生きていける確率が大幅に下がる。精神的な支えでもある為、逆にオレの方が見捨てないでくれと頼みたい程だ。
「オレの方こそセスが必要だ。こちらからお願いしたい」
「ありがとうございます、トーリ様。セスは一生懸命お仕え致します」
「ありがとう、セス」
そうしてほんわかと和む。
だが、根本的問題は全く解決していなかった。
改めてオレは周囲を見渡し、現状を把握する事に努める。──だが勿論、現在地が何処で出口が何処だか分からない訳で。
「この際ですから、この辺りを一掃してから家を建てましょうか?」
オレが悩んでいる事に気付いたのか、セスが少し論点の離れた問い掛けをしてきた。
その言葉の内容を頭の中で噛み砕き、首を傾げる。──『一掃』って?
「セス?」
「申し訳ございません、トーリ様。……またコバエが寄って来たようです」
単語を聞き間違えたのかと確認の為に名を呼んだのだが、セスはツイッとオレの背後へ頭部を向ける。
同時にバタバタと荒立たしい足音を立て、また体格の良い男達が現れた。先程の者との関連性は不明だが、今度は五人。気付けば反対側の路地からも三人である。
完全に前後を挟まれた形になったオレとセスだ。しかも総勢八人で、さすがに数が多すぎる。
「お前か?俺様の部下を吹き飛ばしてくれた野郎は」
その中で一番筋骨隆々な大きな男が、肩に担いだ巨大な金槌状の武器を、オレに突き付ける様に持ち上げながら言葉を放った。
『部下』という事は、先程の男と仲間なのは確かである。そうかといって、オレとしても素直にやられてやる筋合いはない。
「だから何だ」
「ふん、威勢だけは良いなチビ助。少しは魔法を使えるようだが、その程度じゃあ俺様には勝てねぇぜ?ガキだといっても容赦はしねぇ。謝って有り金全部置いていけば、許してやらなくもねぇんだがな?」
物凄く在り来たりな悪役的セリフを口にする男と、周囲を囲む下卑た笑みを浮かべたその他大勢だ。
先程セスとほんわかした気分も掻き消える。
「はぁ。オレって、絡まれやすいのか」
溜め息と共に、ポツリと愚痴が溢れた。
団長さんもこの男達も、良し悪しを別として何故オレに構うのか分からない。──あれか、国外の人間だからか。
国民ならば少なからず周囲との繋がりがあるから、相手を選ばなくては後で大変な事になるかもだ。──どうであれ、オレは遠慮したいが。
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