SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

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2.異世界人の習性を実際に見てみた

2-7

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「どうした、今更泣き言かぁ?」
「親分の得物にびびったんじゃねぇですか?」

 金槌男その一が楽しそうな笑みを浮かべながら金槌を再び背に背負えば、それを見て短刀男その二短刀武器を手元でくるくると回しながら宙へ投げている。

「この辺りではあまり見ねぇ黒髪じゃないっすか」
「東の出身ですかねぇ。見た目も悪くねぇんで、奴隷商に売れば良い金がつくんじゃねぇですか?」
「俺、金払いの良い奴隷商につてがありますぜ」

 長剣一男その三長剣二その四がオレの外見に興味を持ったようだ。
 そしてその五が手にした鞭を左右に引っ張りながら、尾を振る犬のように舌を出している。

 反対側の三人はあくまで壁役なのか、他五人と同じ様な黄色い歯を剥き出しにして笑いながらこちらを見ているだけだ。
 オレとの距離は車二台分程。あちらが武器を振りかざし、大股で三歩も歩けば届く距離である。

「セスだけでも逃げられないか?」
「トーリ様。その御言葉は承諾しかねます」
「……そうか」

 小声でセスに問い掛けるが、きっぱりと拒絶された。
 狭い通路とはいえ、小さな猫サイズのセスでも大勢の男達の間をり抜ける事は困難なのだろう。真っ白な身体は目立つし、細く長い為に攻撃が一度でも当たれば命に関わる。

 離脱不可能ならばと、オレはない頭を必死に回転させた。
 こちらに攻撃手段はないし、多勢に無勢。──詰んだか。
 そう、オレの脳内で『THE END』の文字が流れ始めた時だ。

「おいっ、こっちだ!」
「早くっ」

 ざわめきと共に、大勢の足音と金属をこすり合わせるような音が近付いてくる。
 更なる敵の襲来を予想し、オレは絶望感からセスの小さな背中に手を伸ばした。──思った以上に柔らかくスベスベの手触りっ。

「トーリ、無事かっ?!」

 ところが、第二陣かと思っていた集団からオレを呼ぶ声が上がる。
 目を凝らせば、キラキラした銀色の鎧とそれに負けない神々しい金髪の御仁がいた。その装いでオレの名前を知っているとなると、団長さんで間違いないだろう。

「な、何で保安騎士団がっ?!」
「こいつ、騎士団の関係者かっ?」
「チッ、ずらかるぞっ」

 長剣一その三その五が慌てふためく。
 そして金槌その一が舌打ちすると、団長さんが周囲のその他に指示を飛ばした。

「逃がすなっ、追え!」
「はっ!」

 逃げ惑う者、追う者。オレは邪魔にならないように壁際へ身を寄せ、その様子を無関係のように伺う。
 そんな中で捕まった二人が、オレの方を鋭い視線で睨み付けていた。──いや、オレのせいじゃないし?
 敵意を向けられても、初めから言い掛かりをつけてきたのはあちら側である。八つ当たりはやめてほしい。

「トーリ、怪我はないかっ?」
「……問題ない」

 そうして傍観していたオレに、焦りながら駆け寄ってきた団長さん。大きな背を丸めてオレの身体をあちらこちら見る事で、怪我などの有無を調べているようだった。
 オレとしてはあの乱暴な口調の男達にれられてすらいないので、逆にこの過剰な心配されている風な状況が酷く申し訳なく思えて苦痛である。

 思わず眉根が寄ったオレに気付いたようで、団長さんはわずかばかり身を引いて物理的距離をあけた。

「すまない。俺がキミを独りにしたばかりに……」
「団長~。その言い方は誤解を招くっす」
「そうですよ。彼は騎士団団員団長のものではないので、押しが強すぎると嫌われます」
「嫌わ、れ……」

 団長さんの後ろから、茶髪のチャラ男が茶化す。そしてそれを後押しする形で、紺色の髪をした真面目そうな男がとどめを告げたようだ。
 団長さんはなかば口を開いたまま、ガーンという効果音が出そうな顔をしている。──オレには、何故そこまでショックを受けているのか不明だ。

 ところでオレは紺色を初めて見るが、この人も騎士団団員なのだろう。鈍色にびいろの鎧の下に同じ様な黒い詰め襟の服を着ているからだ。

「と、とにかく貧民街ここから出よう。もう木の時リロアだから、繁華街まではせめて案内させてくれ」
「……分かった」

 団長さんに促され、オレは渋々それに従う。
 本当は早々に立ち去りたかったが、既に陽は完全に沈んでいる。辺りは薄暗くなっていて、空腹も感じていた。
 中心地まで行けばさすがに町の外への道は分かるだろうから、オレはそこまでは団長さんに任せる事にしたのである。

「助かったよ、ニット。キミが団長を呼んできてくれなかったら、どうなった事か」
「大丈夫っす。俺は警邏けいら中だったんで、ザバルさんに出会っただけっす」

 背後から聞こえてくる紺色とチャラ男の会話だ。
 断片的に聞こえるから詳細は不明だが、紺色がオレを発見してチャラ男が団長さんを呼びに走ったらしい。
 礼を告げるべきか少し考えたが、オレとしてはこれ以上関係性を築きたくない事に思い至った。どうせなら嫌われても良いから、放っておいてほしい。

 そう内心で結論が出た為、オレはこの面々に感謝の意を伝えない事に決めたのだ。──もう本当はセスと二人になりたい。
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