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4.人が住んでいない森に家を建てて暮らしてみる
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新しい人員が増える度に衣食住を提供するオレだが、最近ではヒト種だけではなく動物類も増えてきていた。勿論見る為の動物ではなく、実用的な家畜の枠に入るものである。
オレは森の中を整地して、ヒト用の丸太小屋を出した。家畜用にも柵を出したり小屋を出したりする。畑を作りたいと言われ、鍬などの道具も出した。こういったものはオレだけの発想では賄えない為、希望する形状や素材を確認したりしながらだ。
そんなこんなで、今ではまるで一つの集落のようだった。
当然ながら人数が増えると争い事も出てくる筈だが、何故か大した喧嘩にならない。物理的な暴力まで発展する事なく、自然と和解していくのだ。良い事なのだが、何処かおかしくはないだろうか。
別にオレは何も強制していないし、それぞれに意見があるだろう事は想像出来る。逆に鬱憤が溜まり過ぎると、そのベクトルがオレに向けられそうで怖いのだ。それが一番怖い。小心者だからな。
魔獣は闇の精霊の力で容易に精神操作出来るし、動物も同じである。本能で生きているような存在は食べ物か命の危機に強く反応するので、扱いが簡単だった。それもこれも、闇の精霊の精神魔法のおかげだけれど。
そんなオレだが、ヒト種に対する場合は少し難しい。感覚的であると分かっているが、相手が思ってもいない事を強要したくないと無意識に思ってしまうのだった。
オレ自身がそうされたくないからか、他者に強制出来ない。結果的にそういった強要をやろうとした事がなかった。賊のような──気を遣わなくて良い相手なら試してみたいが、それでも最終的に死んでしまったら気分が悪い。
「トーリ様。おはようございます」
「あぁ」
「トーリ様。今朝搾りたての山羊的動物の乳です。お届けしておきますね」
「あぁ」
「トーリ様。こちらは今朝採れた野菜です。お届けしておきますね」
「あぁ」
オレが外を歩けば、あちらこちらから声が掛けられる。単に散歩という名の見廻りをしているだけなのだが、様々なケモ耳達が話し掛けてくるのだ。──もう何というか、コミュ障のオレに対応を求めないで欲しいと叫びたい。
皆は元主人達から解放された事でオレに恩義を感じているのだろうけど、収穫した作物や動物のミルクを無償でくれるのだ。
断っても聞き入れてくれなくて、オレに受け取ってもらおうと色々と言葉を尽くしてくる。結果的に断るオレのボキャブラリーが足りず、受け取った方が早いとセスに言われてしまった。
オレはセスとティユの三人暮らしだ。その辺りは獣人達も考えているのか、貰っても困る程の量を押し付けられる事はない。しかしながらオレとセスのコンボスキルで、亜空間から無限に飲み食いする事が可能である。──今のところ限界知らずだ。何処までやれるか、オレもセスも把握出来ていない。
そんな理由から、わざわざ手間隙掛けて育てた食物や動物のミルクを、なくても困らないオレなんかに配らなくて良いのだ。更に言うなら貰ったら使わなきゃならないが、そもオレは料理が出来ない。
遠回しに、そう伝えたのだがな。この森の中で生活する分には金銭は必要ない為、獣人達はそれぞれが欲しい物を物々交換しているのだ。オレに対するそれらは感謝に値する御返しで、何もしないと与えられてばかりの自分達が許せないという。
ここまで言われてしまっては『施しを与える』って意味に取られかねないので、そんなつもりのないオレは分が悪い。確かに、彼等の側に立ってみればそれも分かる。オレも、貰ってばかりでは気分的に嫌だ。
そうして受け取る事にしたのだが──貰ってばかりでは、で思い出した。リドツォルの町で、オレはソロから与えられる側だった。
衣食住全てプラス、安全面まで。おまけにアフターサービス付の紋章まで貰っていた。
「なぁ、セス。ソロのところに届け物って出来ないか?」
「リドツォルの、ですか。……距離はありますが、空間魔法で繋げられなくもないですね」
「そうか。ソロに手紙を出したい」
「かしこまりました、トーリ様。すぐに準備致します」
丸太小屋に戻って来た時には、オレの両手にはたくさんの貢ぎ物である。
きゅうり、とうもろこし、ゴーヤ、枝豆、なす。
この世界の名前までは分からないが、オレが想像した野菜の種から栽培されたものだ。物知りのクマ耳獣人が市場で見た事があると言っていたから、似た物があるのだろう。
「お帰りなさい、トーリ様」
「ティユ。これを頼む」
「はあい~」
戻って来たオレに、空の洗濯かごを持ったティユが駆け寄ってきた。まだ幼いのに、今では立派な嫁的働きをしてくれる。本当の意味での嫁ではないがな。
出会った頃に聞いたら六歳と言っていたティユ。戸籍とかある訳ではないらしいので、正確な誕生日などが把握されていないようだ。
それでも、親といた時には深い愛情を受けていたと伝わってきた事を思い出す。奴隷に堕ちる前までらしいが。
オレは森の中を整地して、ヒト用の丸太小屋を出した。家畜用にも柵を出したり小屋を出したりする。畑を作りたいと言われ、鍬などの道具も出した。こういったものはオレだけの発想では賄えない為、希望する形状や素材を確認したりしながらだ。
そんなこんなで、今ではまるで一つの集落のようだった。
当然ながら人数が増えると争い事も出てくる筈だが、何故か大した喧嘩にならない。物理的な暴力まで発展する事なく、自然と和解していくのだ。良い事なのだが、何処かおかしくはないだろうか。
別にオレは何も強制していないし、それぞれに意見があるだろう事は想像出来る。逆に鬱憤が溜まり過ぎると、そのベクトルがオレに向けられそうで怖いのだ。それが一番怖い。小心者だからな。
魔獣は闇の精霊の力で容易に精神操作出来るし、動物も同じである。本能で生きているような存在は食べ物か命の危機に強く反応するので、扱いが簡単だった。それもこれも、闇の精霊の精神魔法のおかげだけれど。
そんなオレだが、ヒト種に対する場合は少し難しい。感覚的であると分かっているが、相手が思ってもいない事を強要したくないと無意識に思ってしまうのだった。
オレ自身がそうされたくないからか、他者に強制出来ない。結果的にそういった強要をやろうとした事がなかった。賊のような──気を遣わなくて良い相手なら試してみたいが、それでも最終的に死んでしまったら気分が悪い。
「トーリ様。おはようございます」
「あぁ」
「トーリ様。今朝搾りたての山羊的動物の乳です。お届けしておきますね」
「あぁ」
「トーリ様。こちらは今朝採れた野菜です。お届けしておきますね」
「あぁ」
オレが外を歩けば、あちらこちらから声が掛けられる。単に散歩という名の見廻りをしているだけなのだが、様々なケモ耳達が話し掛けてくるのだ。──もう何というか、コミュ障のオレに対応を求めないで欲しいと叫びたい。
皆は元主人達から解放された事でオレに恩義を感じているのだろうけど、収穫した作物や動物のミルクを無償でくれるのだ。
断っても聞き入れてくれなくて、オレに受け取ってもらおうと色々と言葉を尽くしてくる。結果的に断るオレのボキャブラリーが足りず、受け取った方が早いとセスに言われてしまった。
オレはセスとティユの三人暮らしだ。その辺りは獣人達も考えているのか、貰っても困る程の量を押し付けられる事はない。しかしながらオレとセスのコンボスキルで、亜空間から無限に飲み食いする事が可能である。──今のところ限界知らずだ。何処までやれるか、オレもセスも把握出来ていない。
そんな理由から、わざわざ手間隙掛けて育てた食物や動物のミルクを、なくても困らないオレなんかに配らなくて良いのだ。更に言うなら貰ったら使わなきゃならないが、そもオレは料理が出来ない。
遠回しに、そう伝えたのだがな。この森の中で生活する分には金銭は必要ない為、獣人達はそれぞれが欲しい物を物々交換しているのだ。オレに対するそれらは感謝に値する御返しで、何もしないと与えられてばかりの自分達が許せないという。
ここまで言われてしまっては『施しを与える』って意味に取られかねないので、そんなつもりのないオレは分が悪い。確かに、彼等の側に立ってみればそれも分かる。オレも、貰ってばかりでは気分的に嫌だ。
そうして受け取る事にしたのだが──貰ってばかりでは、で思い出した。リドツォルの町で、オレはソロから与えられる側だった。
衣食住全てプラス、安全面まで。おまけにアフターサービス付の紋章まで貰っていた。
「なぁ、セス。ソロのところに届け物って出来ないか?」
「リドツォルの、ですか。……距離はありますが、空間魔法で繋げられなくもないですね」
「そうか。ソロに手紙を出したい」
「かしこまりました、トーリ様。すぐに準備致します」
丸太小屋に戻って来た時には、オレの両手にはたくさんの貢ぎ物である。
きゅうり、とうもろこし、ゴーヤ、枝豆、なす。
この世界の名前までは分からないが、オレが想像した野菜の種から栽培されたものだ。物知りのクマ耳獣人が市場で見た事があると言っていたから、似た物があるのだろう。
「お帰りなさい、トーリ様」
「ティユ。これを頼む」
「はあい~」
戻って来たオレに、空の洗濯かごを持ったティユが駆け寄ってきた。まだ幼いのに、今では立派な嫁的働きをしてくれる。本当の意味での嫁ではないがな。
出会った頃に聞いたら六歳と言っていたティユ。戸籍とかある訳ではないらしいので、正確な誕生日などが把握されていないようだ。
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