SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

文字の大きさ
34 / 53
4.人が住んでいない森に家を建てて暮らしてみる

4-7

しおりを挟む
 新しい人員が増えるたびに衣食住を提供するオレだが、最近ではヒト種だけではなく動物類も増えてきていた。勿論見る為の動物ではなく、実用的な家畜の枠に入るものである。
 オレは森の中を整地して、ヒト用の丸太小屋を出した。家畜用にも柵を出したり小屋を出したりする。畑を作りたいと言われ、鍬などの道具も出した。こういったものはオレだけの発想ではまかなえない為、希望する形状や素材を確認したりしながらだ。
 そんなこんなで、今ではまるで一つの集落のようだった。

 当然ながら人数が増えると争い事も出てくる筈だが、何故かたいした喧嘩にならない。物理的な暴力まで発展する事なく、自然と和解していくのだ。良い事なのだが、何処かおかしくはないだろうか。
 別にオレは何も強制していないし、それぞれに意見があるだろう事は想像出来る。逆に鬱憤うっぷんが溜まり過ぎると、そのベクトルがオレに向けられそうで怖いのだ。それが一番怖い。小心者だからな。

 魔獣は闇の精霊の力で容易に精神操作出来るし、動物も同じである。本能で生きているような存在は食べ物か命の危機に強く反応するので、扱いが簡単だった。それもこれも、闇の精霊の精神魔法のおかげだけれど。
 そんなオレだが、ヒト種に対する場合は少し難しい。感覚的であると分かっているが、相手が思ってもいない事を強要したくないと無意識に思ってしまうのだった。
 オレ自身がそうされたくないからか、他者に強制出来ない。結果的にそういった強要をやろうとした事がなかった。賊のような──気を遣わなくて良い相手なら試してみたいが、それでも最終的に死んでしまったら気分が悪い。

「トーリ様。おはようございます」
「あぁ」
「トーリ様。今朝搾りたての山羊的動物メメギの乳です。お届けしておきますね」
「あぁ」
「トーリ様。こちらは今朝採れた野菜です。お届けしておきますね」
「あぁ」

 オレが外を歩けば、あちらこちらから声が掛けられる。単に散歩という名の見廻りをしているだけなのだが、様々なケモ耳達が話し掛けてくるのだ。──もう何というか、コミュ障のオレに対応を求めないで欲しいと叫びたい。
 皆は元主人達から解放された事でオレに恩義を感じているのだろうけど、収穫した作物や動物のミルクを無償でくれるのだ。
 断っても聞き入れてくれなくて、オレに受け取ってもらおうと色々と言葉を尽くしてくる。結果的に断るオレのボキャブラリーが足りず、受け取った方が早いとセスに言われてしまった。

 オレはセスとティユの三人暮らしだ。その辺りは獣人達も考えているのか、貰っても困る程の量を押し付けられる事はない。しかしながらオレとセスのコンボスキルで、亜空間から無限に飲み食いする事が可能である。──今のところ限界知らずだ。何処までやれるか、オレもセスも把握出来ていない。
 そんな理由から、わざわざ手間隙てまひま掛けて育てた食物や動物のミルクを、なくても困らないオレなんかに配らなくて良いのだ。更に言うなら貰ったら使わなきゃならないが、そもオレは料理が出来ない。
 遠回しに、そう伝えたのだがな。この森の中で生活する分には金銭は必要ない為、獣人達はそれぞれが欲しい物を物々交換しているのだ。オレに対するそれらは感謝に値する御返しで、何もしないと与えられてばかりの自分達が許せないという。

 ここまで言われてしまっては『ほどこしを与える』って意味に取られかねないので、そんなつもりのないオレはが悪い。確かに、彼等の側に立ってみればそれも分かる。オレも、貰ってばかりでは気分的に嫌だ。
 そうして受け取る事にしたのだが──貰ってばかりでは、で思い出した。リドツォルの町で、オレはソロから与えられる側だった。
 衣食住全てプラス、安全面まで。おまけにアフターサービス付の紋章まで貰っていた。

「なぁ、セス。ソロのところに届け物って出来ないか?」
「リドツォルの、ですか。……距離はありますが、空間魔法で繋げられなくもないですね」
「そうか。ソロに手紙を出したい」
「かしこまりました、トーリ様。すぐに準備致します」

 丸太小屋 オレ達の家に戻って来た時には、オレの両手にはたくさんの貢ぎ物である。
 きゅうり、とうもろこし、ゴーヤ、枝豆、なす。
 この世界の名前までは分からないが、オレが想像した野菜の種から栽培されたものだ。物知りのクマ耳獣人ダヴィスが市場で見た事があると言っていたから、似た物があるのだろう。

「お帰りなさい、トーリ様」
「ティユ。これを頼む」
「はあい~」

 戻って来たオレに、からの洗濯かごを持ったティユが駆け寄ってきた。まだ幼いのに、今では立派な嫁的働きをしてくれる。本当の意味での嫁ではないがな。
 出会った頃に聞いたら六歳と言っていたティユ。戸籍とかある訳ではないらしいので、正確な誕生日などが把握されていないようだ。
 それでも、親といた時には深い愛情を受けていたと伝わってきた事を思い出す。奴隷に堕ちる前までらしいが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...