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4.人が住んでいない森に家を建てて暮らしてみる
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「見に行くか」
「はい、トーリ様。ティユはいつものように、ここの守護をしてください。知らない者は入れないようにお願いします」
「はいっ。トーリ様、お土産宜しくね~」
「いや、遊びに行く訳じゃないがな」
結界近くへ出る時は、ティユには必ず留守番をさせている。獣人族である彼女に対する他のヒト種の対応が分からないし、ティユ自身がどう反応するのかという不確定要素が多すぎるからだ。
彼女本人は何も言わないが、出会った頃のオレに向けた警戒心が未だ脳内に残っている。それと震えながら涙を流し、誰かに謝罪している辛そうなティユ。寝る時になるとそれが続いていたが、最近ではあまり見なくなった。この環境に慣れてくれたのならば嬉しいが。
セスいわく丸耳のヒト種は他種族に比べ、それ以外へ向ける差別的意識が強いのだとか。
ヒト種の中でも丸耳族は特筆すべき能力がない為であると、セスが辛口なコメントをしていた。それによれば魔力に秀でている訳でも身体能力が高い訳でもなく、寿命も頑丈さも知識力も凡庸なのだと。腹黒さで一番になってもどうかとオレは思うぞ。
前世でも人間は同族同士で差別的行動が半端なかったし、何ならわざわざ個を差別化させて虐めなどの汚い行動をとっていたのだ。これはもう、種に刻まれた悪習としか思えない。他の生物はもっと生きる事に必死だから、知能が高過ぎる故の思考なのかもしれないがな。──正直、誰が上で下だとかどうでも良い。
そんな思考の中にいても、オレはセスの案内で無事侵入者を視界に納める事が出来た。
現在地としてオレがいる場所は高台で、侵入者は丸耳のヒト種が五人。そして身なりが小綺麗なそいつらとは違い、やけに貧相なケモ耳が十人である。今回はやたら数が多いな。
ウサギ、イヌ、ウマっぽい耳を頭頂部に装備した男女の獣人。年齢も様々だが、揃って服とは言えないボロ雑巾のような布一枚だけを身に纏っていた。明らかに奴隷的扱いで、ヒトとしての尊厳を与えていない事は見て取れる。──ホント、くそ。
更に獣人達の首には、これ見よがしに幅広の首輪。鎖などで繋がれてはいないものの、恐らくは魔法か何かで誓約を受けているのだろう。内容を把握したりしてはいないが、これまでの経験上拘束系の魔法が掛けられているのだ。
そうでなければあのような多数の場合、それぞれが別方向へ走って逃げる事も出来るからだ。誰しも己が可愛いのだから。
「ほら、早くしろっ」
「ここから三匹組になって薬草類を探せ。採取には充分気を遣え。質が落ちればお前達のエサが減る事を忘れるなよっ」
「さっさと行けっ」
「ぐっ」
クマ耳獣人の男へ鞭を降り下ろし、その呻き声に気分良さそうに気色悪い笑みを浮かべていた。──あぁ、吐き気がする。無駄に傷を付けるなよ。
オレはこういった様子を何度となく見せられ、この世界でヒト種に対する嫌悪感が日に日に強くなっていた。リドツォルの町にいた時にも差別的発言を投げ付けられた事があるが、それ以上である。
何で自分がされたら嫌だと思える事を、他者に対して平気で出来るのか分からない。
「トーリ様」
「……あぁ、魔獣を呼んだ」
「お早いですね、さすがトーリ様です」
セスとオレの声は、風の精霊によって周囲の音から隔離されていた。風の扱いが上手いのはセスで、オレはどちらかと言うと精霊達へお願いするような使い方である。
感覚的にオレの中にある魔力はオレが自由に使えるものではなく、精霊が対価として都度吸収していく感じだ。しかも多くの精霊と契約をしているからか違法行為的搾取はされず、お願いしていない時にはオレが無自覚に垂れ流している魔力で充分に賄えているらしい。──締まりが悪い蛇口のようなオレだからこそ、多くの精霊が契約を申し込んでくれたのかもしれないがな。
そしてその中の闇の精霊は、精神系の魔法を使える。今回のような場合はその能力をいかし、周囲から魔獣を呼び集めるのだ。
当然殺すつもりはないので、オレは素早さ重視の魔獣を呼ぶ。殺すと、後が余計に手間が掛かると予想されるからだ。それこそ、この森に大掛かりな討伐隊でも連れて来られては疲れる事しか想像出来ない。
撹乱させて獣人達から意識を逸らし、最終的に丸耳だけが逃げてほしいからな。いや、違うか。ケモ耳達から離れて欲しい、が正解だ。
通常、ヒト種は武器を使っての攻撃か、精霊契約での魔法で応戦する。それをオレの契約精霊にお願いし、属性を相殺する事で魔法を使えなくさせるのだ。そして必然的に武器での応戦しか出来なくし、じわじわ追い詰める。で、獣人族を置いて逃げる丸耳族を死なない程度に痛め付けてから森の外へ棄ててくる。
そうして邪魔者を片付けてから、獣人達を治療する。この時点ではオレも丸耳だから警戒されてるんだけど、首輪につけられた誓約魔法を解除して解放するまでが一連の流れ。いや、もはや今のオレの趣味だ。
けれども従属魔法から解放されたヒト達に帰る場所はないのか、大概はこの森に住み着く。まぁ、ここから出たところでまた捕まるからという気持ちもあるのだろうけど。
「はい、トーリ様。ティユはいつものように、ここの守護をしてください。知らない者は入れないようにお願いします」
「はいっ。トーリ様、お土産宜しくね~」
「いや、遊びに行く訳じゃないがな」
結界近くへ出る時は、ティユには必ず留守番をさせている。獣人族である彼女に対する他のヒト種の対応が分からないし、ティユ自身がどう反応するのかという不確定要素が多すぎるからだ。
彼女本人は何も言わないが、出会った頃のオレに向けた警戒心が未だ脳内に残っている。それと震えながら涙を流し、誰かに謝罪している辛そうなティユ。寝る時になるとそれが続いていたが、最近ではあまり見なくなった。この環境に慣れてくれたのならば嬉しいが。
セスいわく丸耳のヒト種は他種族に比べ、それ以外へ向ける差別的意識が強いのだとか。
ヒト種の中でも丸耳族は特筆すべき能力がない為であると、セスが辛口なコメントをしていた。それによれば魔力に秀でている訳でも身体能力が高い訳でもなく、寿命も頑丈さも知識力も凡庸なのだと。腹黒さで一番になってもどうかとオレは思うぞ。
前世でも人間は同族同士で差別的行動が半端なかったし、何ならわざわざ個を差別化させて虐めなどの汚い行動をとっていたのだ。これはもう、種に刻まれた悪習としか思えない。他の生物はもっと生きる事に必死だから、知能が高過ぎる故の思考なのかもしれないがな。──正直、誰が上で下だとかどうでも良い。
そんな思考の中にいても、オレはセスの案内で無事侵入者を視界に納める事が出来た。
現在地としてオレがいる場所は高台で、侵入者は丸耳のヒト種が五人。そして身なりが小綺麗なそいつらとは違い、やけに貧相なケモ耳が十人である。今回はやたら数が多いな。
ウサギ、イヌ、ウマっぽい耳を頭頂部に装備した男女の獣人。年齢も様々だが、揃って服とは言えないボロ雑巾のような布一枚だけを身に纏っていた。明らかに奴隷的扱いで、ヒトとしての尊厳を与えていない事は見て取れる。──ホント、くそ。
更に獣人達の首には、これ見よがしに幅広の首輪。鎖などで繋がれてはいないものの、恐らくは魔法か何かで誓約を受けているのだろう。内容を把握したりしてはいないが、これまでの経験上拘束系の魔法が掛けられているのだ。
そうでなければあのような多数の場合、それぞれが別方向へ走って逃げる事も出来るからだ。誰しも己が可愛いのだから。
「ほら、早くしろっ」
「ここから三匹組になって薬草類を探せ。採取には充分気を遣え。質が落ちればお前達のエサが減る事を忘れるなよっ」
「さっさと行けっ」
「ぐっ」
クマ耳獣人の男へ鞭を降り下ろし、その呻き声に気分良さそうに気色悪い笑みを浮かべていた。──あぁ、吐き気がする。無駄に傷を付けるなよ。
オレはこういった様子を何度となく見せられ、この世界でヒト種に対する嫌悪感が日に日に強くなっていた。リドツォルの町にいた時にも差別的発言を投げ付けられた事があるが、それ以上である。
何で自分がされたら嫌だと思える事を、他者に対して平気で出来るのか分からない。
「トーリ様」
「……あぁ、魔獣を呼んだ」
「お早いですね、さすがトーリ様です」
セスとオレの声は、風の精霊によって周囲の音から隔離されていた。風の扱いが上手いのはセスで、オレはどちらかと言うと精霊達へお願いするような使い方である。
感覚的にオレの中にある魔力はオレが自由に使えるものではなく、精霊が対価として都度吸収していく感じだ。しかも多くの精霊と契約をしているからか違法行為的搾取はされず、お願いしていない時にはオレが無自覚に垂れ流している魔力で充分に賄えているらしい。──締まりが悪い蛇口のようなオレだからこそ、多くの精霊が契約を申し込んでくれたのかもしれないがな。
そしてその中の闇の精霊は、精神系の魔法を使える。今回のような場合はその能力をいかし、周囲から魔獣を呼び集めるのだ。
当然殺すつもりはないので、オレは素早さ重視の魔獣を呼ぶ。殺すと、後が余計に手間が掛かると予想されるからだ。それこそ、この森に大掛かりな討伐隊でも連れて来られては疲れる事しか想像出来ない。
撹乱させて獣人達から意識を逸らし、最終的に丸耳だけが逃げてほしいからな。いや、違うか。ケモ耳達から離れて欲しい、が正解だ。
通常、ヒト種は武器を使っての攻撃か、精霊契約での魔法で応戦する。それをオレの契約精霊にお願いし、属性を相殺する事で魔法を使えなくさせるのだ。そして必然的に武器での応戦しか出来なくし、じわじわ追い詰める。で、獣人族を置いて逃げる丸耳族を死なない程度に痛め付けてから森の外へ棄ててくる。
そうして邪魔者を片付けてから、獣人達を治療する。この時点ではオレも丸耳だから警戒されてるんだけど、首輪につけられた誓約魔法を解除して解放するまでが一連の流れ。いや、もはや今のオレの趣味だ。
けれども従属魔法から解放されたヒト達に帰る場所はないのか、大概はこの森に住み着く。まぁ、ここから出たところでまた捕まるからという気持ちもあるのだろうけど。
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