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6.ここが魔の森だって知らなかった
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※ ※ ※ ※ ※
ソロと手紙のやり取りを定期的に続け。最近になってオレは、初めて知った事実があった。
どうやら。ここはリドツォルの町が所属するペゼトゥートの国土ではあるものの、ヒト族未攻略の地らしい。魔の森と呼ばれ、誰も森深くは入らないという。
リドツォルからそこそこ近いと思うのだが。ヒト族では対抗出来ない、凶悪な魔物がいるらしい。しかしながら森深くに住む狂暴な魔物は、餌が豊富なこの森から出る事はないようだ。
それでも、もしもの時の為に保安騎士団があるようで。実際にはここ数十年、大きな魔物被害はないとの事。──言われる程、狂暴でも凶悪でもなさそうである。
この森の中には貴重な鉱石や薬草があるものの、冒険者達も浅い部分で採取するだけらしい。奥地は危険だから、と。
稀に強欲な冒険者が森深くへ立ち入った時などは、ボロ雑巾のような肉塊となって森の外に捨てられるようだ。それこそ『食べる価値もない』、という言葉のない意思表示がなされる。
詳しい場所を伝えた訳ではないが、オレが住む地を幾度となく聞いてきたので答えた。それとなく返答した筈だが、土地勘は当然のようにソロが上である。
リドツォルから遠く離れている訳ではない。かつ、オレが告げたような『森』となると。ソロいわく、魔の森しかないらしい。薬草が豊富で、鉱石があって。冒険者が獣人を連れてやって来る。さらに、魔物もいる。
これだけで分かってしまったのだから、もうこれ以上は誰にも話さないようにしよう。
そもオレは村人以外の知り合いはいないのだから、ソロが口外しなければ問題はない。勿論他言しないようには伝えたが、ソロは当然とばかりに告げてくれている。
セスはそれでも警戒しているようだ。オレが信頼していると言った手前、それ以上は何も言わないでいてくれているだけだろう。──本当に色々とありがとうだ、セス。
※ ※ ※ ※ ※
魔の森という名前が分かったとはいえ、現状の村は既に森とは異なる空間に存在している。
例え山火事で森が焼失しようとも、全く支障がない程だ。
それでも。いや──だからこそ、か。村の纏め役であるクマ耳獣人には伝えたが、彼は既に知っていた。──というか。そもオレが助けた獣人たちは、丸耳のヒト族に奴隷として使われていたのだった。
荷物持ち兼囮兼ストレス解消用。
──あぁ、思い出したらまた苛ついてきた。
はぁ。
それで、現在は空間の入り口が接しているだけ。
そも周辺にはセスの結界があるから、魔物も野獣も近付く事はない。狭い範囲だからと、安全面を考慮して結界強度を上げてあるらしい。──素晴らしいぞ、セス。
そんな中でも、外部の状況は分かるようになっているようだ。
今でも時折、質の悪い冒険者がやって来る。セスから報告を受け、その度にオレは観察しに出掛けるのだ。
だけどアイツら、当然のように獣人達を傷付ける。その為、オレも加減なしにケチョンケチョンにして森から追い出し続けていた。
「……はぁ」
「どうなされたのですか、トーリ様」
「ん」
大きな溜め息を吐いたオレに、心配そうにセスが体を寄せてくる。
それに対し、オレは手にしていた一枚の手紙を彼にも見えるように差し出した。
「拝見致します。これは……」
珍しく言い淀んだセス。オレが頭を悩ませているのと、恐らく同じ理由だろう。
今朝、いつものようにソロから手紙が来た。
そこにはまぁ、予想出来なくもなかった事が書かれていたのである。
「魔の森の探索隊、ですか」
「面倒だ」
呟くセスに、オレも本音が出た。
だがこれは今までオレがしてきた事から派生した、やむを得ない現象である。
冒険者ギルドの一部の冒険者から出た苦情で、リドツォルの領主──ミニト・リリダ・マグスッドが重い腰を上げた。
冒険者いわく、奴隷を奪われた。金品を奪われた。装備品を奪われた。挙げ句の果てに、それらの資金の賠償責任を問いたい。──ホント、くそ冒険者。
普通に獣人たちを仲間として扱っていたならば、オレは口も手も出さなかった。
さて。
実際の問題解決には、森の入り口を閉ざしてしまえば良い。外部との繋がりがなくなれば、仮に森を焼き落とされてても『ここ』には何の問題も被害も起きないだろう。
だが、本当にそれで良いのかとも思う。
「仮に、セス。村の入り口を移動する事は可能か」
「はい、トーリ様。今すぐにでも移動可能です」
オレの問い掛けに対し、即座に是の返答が返ってきた。
外界との繋がりを。全く失くす事は難しいだろう。でも、常に繋がりがっている必要性もない。
現状、外部とは少しだけ。商人を通しての接触はあるものの、所謂輸出入の外交と同じだ。
小さな村規模ではあるが、衣食住に不便はあまりない。獣人達は、心身共に健康のようだ。それまで生きてきた過程が酷だったからか、今の平和に充分満足しているようである。
そこでオレは、一度村と森の接続を断つ事に決めた。
ソロと手紙のやり取りを定期的に続け。最近になってオレは、初めて知った事実があった。
どうやら。ここはリドツォルの町が所属するペゼトゥートの国土ではあるものの、ヒト族未攻略の地らしい。魔の森と呼ばれ、誰も森深くは入らないという。
リドツォルからそこそこ近いと思うのだが。ヒト族では対抗出来ない、凶悪な魔物がいるらしい。しかしながら森深くに住む狂暴な魔物は、餌が豊富なこの森から出る事はないようだ。
それでも、もしもの時の為に保安騎士団があるようで。実際にはここ数十年、大きな魔物被害はないとの事。──言われる程、狂暴でも凶悪でもなさそうである。
この森の中には貴重な鉱石や薬草があるものの、冒険者達も浅い部分で採取するだけらしい。奥地は危険だから、と。
稀に強欲な冒険者が森深くへ立ち入った時などは、ボロ雑巾のような肉塊となって森の外に捨てられるようだ。それこそ『食べる価値もない』、という言葉のない意思表示がなされる。
詳しい場所を伝えた訳ではないが、オレが住む地を幾度となく聞いてきたので答えた。それとなく返答した筈だが、土地勘は当然のようにソロが上である。
リドツォルから遠く離れている訳ではない。かつ、オレが告げたような『森』となると。ソロいわく、魔の森しかないらしい。薬草が豊富で、鉱石があって。冒険者が獣人を連れてやって来る。さらに、魔物もいる。
これだけで分かってしまったのだから、もうこれ以上は誰にも話さないようにしよう。
そもオレは村人以外の知り合いはいないのだから、ソロが口外しなければ問題はない。勿論他言しないようには伝えたが、ソロは当然とばかりに告げてくれている。
セスはそれでも警戒しているようだ。オレが信頼していると言った手前、それ以上は何も言わないでいてくれているだけだろう。──本当に色々とありがとうだ、セス。
※ ※ ※ ※ ※
魔の森という名前が分かったとはいえ、現状の村は既に森とは異なる空間に存在している。
例え山火事で森が焼失しようとも、全く支障がない程だ。
それでも。いや──だからこそ、か。村の纏め役であるクマ耳獣人には伝えたが、彼は既に知っていた。──というか。そもオレが助けた獣人たちは、丸耳のヒト族に奴隷として使われていたのだった。
荷物持ち兼囮兼ストレス解消用。
──あぁ、思い出したらまた苛ついてきた。
はぁ。
それで、現在は空間の入り口が接しているだけ。
そも周辺にはセスの結界があるから、魔物も野獣も近付く事はない。狭い範囲だからと、安全面を考慮して結界強度を上げてあるらしい。──素晴らしいぞ、セス。
そんな中でも、外部の状況は分かるようになっているようだ。
今でも時折、質の悪い冒険者がやって来る。セスから報告を受け、その度にオレは観察しに出掛けるのだ。
だけどアイツら、当然のように獣人達を傷付ける。その為、オレも加減なしにケチョンケチョンにして森から追い出し続けていた。
「……はぁ」
「どうなされたのですか、トーリ様」
「ん」
大きな溜め息を吐いたオレに、心配そうにセスが体を寄せてくる。
それに対し、オレは手にしていた一枚の手紙を彼にも見えるように差し出した。
「拝見致します。これは……」
珍しく言い淀んだセス。オレが頭を悩ませているのと、恐らく同じ理由だろう。
今朝、いつものようにソロから手紙が来た。
そこにはまぁ、予想出来なくもなかった事が書かれていたのである。
「魔の森の探索隊、ですか」
「面倒だ」
呟くセスに、オレも本音が出た。
だがこれは今までオレがしてきた事から派生した、やむを得ない現象である。
冒険者ギルドの一部の冒険者から出た苦情で、リドツォルの領主──ミニト・リリダ・マグスッドが重い腰を上げた。
冒険者いわく、奴隷を奪われた。金品を奪われた。装備品を奪われた。挙げ句の果てに、それらの資金の賠償責任を問いたい。──ホント、くそ冒険者。
普通に獣人たちを仲間として扱っていたならば、オレは口も手も出さなかった。
さて。
実際の問題解決には、森の入り口を閉ざしてしまえば良い。外部との繋がりがなくなれば、仮に森を焼き落とされてても『ここ』には何の問題も被害も起きないだろう。
だが、本当にそれで良いのかとも思う。
「仮に、セス。村の入り口を移動する事は可能か」
「はい、トーリ様。今すぐにでも移動可能です」
オレの問い掛けに対し、即座に是の返答が返ってきた。
外界との繋がりを。全く失くす事は難しいだろう。でも、常に繋がりがっている必要性もない。
現状、外部とは少しだけ。商人を通しての接触はあるものの、所謂輸出入の外交と同じだ。
小さな村規模ではあるが、衣食住に不便はあまりない。獣人達は、心身共に健康のようだ。それまで生きてきた過程が酷だったからか、今の平和に充分満足しているようである。
そこでオレは、一度村と森の接続を断つ事に決めた。
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