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5.自然と仲良し過ぎて一つの村みたいになってた
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※ ※ ※ ※ ※
クマ耳獣人の件から後──オレは、何回か村人の治療を行った。
元々奴隷解放時に外傷は治していたのだが、古傷はその対象から外れていたのである。そこにオレの意思は関係なく、対象者が多かった事も原因の一つと推測するが。精霊たちが『傷』と判断しなかった為だろう。
──とまぁ、それはどうでも良い。
実際問題として、諸々と彼等から聞いた話によるオレの認識。獣人たちの獣由来の部位は、己の尊厳というか矜持みたいなものがあるようだ。
そして、それを知ってか知らずか。言う事を聞かない気の強い獣人たちを征服する為、丸耳のヒト族は獣由来の部位をわざと傷付けるようだ。
質が悪い事に、対象の動きを拘束した上で。ゆっくりと。誰が上かを分からせる為だけに。従わせる為だけに。少しずつ削り取る。
獣部位は、他の肉体よりも敏感らしい。それ故。じわじわと刻まれ、見せ付けるように切り落とされる己の肉体。心が折れるようだ。──ホント、くそ。
こんな事実を聞くばかりで、オレは本当に。心底。この世界の人間──丸耳族に嫌悪感と不信感しか抱かない。
実際に歩み寄る気持ちが持てないのは、ただオレがコミュ障だからという理由ではない筈だ。
と、まぁこんな風に村で医術みたいな事を繰り返していれば。自然と村人との距離も近付く。
亜空間的な立ち位置になった村ではあったが。その事に関しては、誰しもが欠片も問題視していない。
気楽に『そうなんだ』で済んだと、ダヴィスが言ってた。
ともあれ、今は村人用の医院──というか、薬屋に来ている。
「それにしても、トーリ様はやはり素晴らしいです。我々、蜥蜴族は嗅覚で薬草を判別するのですが。精霊から教えて頂いたというこれらの薬草は、これまで使った事のあるどれよりも効能が優れています」
というのは、現在村で薬師として医療も受け持っている爬虫類人。その妻である爬虫類人も、薬師兼医師助手をしている。
彼らはひやつるな肌の持ち主だ。全身を鱗が覆っていて、一見固そうである。しかしながら実際には固いながらも弾力があって、鍛え上げられた筋肉のように艶がある。汗ばむ事がない為に、夏でも心地好さそうだ。
だがベタベタと触るのは失礼なので、オレは軽いボディータッチ程度にしている。──他のもふもふたちに対しても同じだがな。
本心ではもふりたい。だが、相手は獣部位があろうともヒトである。
自分が他者に。仮に手であっても、好き勝手に触られると思うと気分が悪いのだ。それが尊厳やら矜持やらを持っているという部分であれば、冗談ではないだろう。
大丈夫。オレにはセスがいる。
自然とセスのさらつるな毛皮を撫でても、彼は心地好いとまで言ってくれるのだ。──うん。浮気はすまい。
「薬草の管理は精霊がされていると伺いました」
「そうだ。生育などの問題があれば聞く」
「問題など、全くもってありません。ここの住人は病すら滅多に罹患しないので、使う薬も多少の擦過傷や切り傷程度ですからね」
にこやかなノコクスだ。
確かに医師にとっては、患者が少ない方が喜ばしいだろう。実際にこの村では、精霊が多く漂っているからか。ヒトは勿論、動植物が非常に健康的なのだ。
オレが森で採取した薬草類も、村の中で精霊が栽培してくれている。
本当に衣食住が全てこの空間の中で事足りる為、外界との接触を完全に断ってしまっても数年単位で生活が可能だ。オレの魔力があれば、精霊たちは自然界を補えるらしい。
「今では薬として外へ卸す程です。どうしても、外の商品を買うには金銭が必要ですからね」
「分かった。何か不足があれば言ってほしい」
「かしこまりました。いつもありがとうございます、トーリ様」
そうして何度も頭を下げるノコクスとカアナに別れを告げ、オレは自宅へと戻る。
実際に魔力は足りているようで。それは周囲の精霊たちを見れば分かる。いつもながら嬉しそうに、楽しそうにオレの周囲を漂う姿は見るだけでこちらも気分が高揚する程だ。
そういえば──今までは、普通に世界の一部だったこの場所。
森の外から野獣は入って来ていたし、少し深く森へ行けば魔物だっていた。でも、今は外界から隔離されている。
森へ狩りに行っていたティユは、当然これまでの行動の自由がなくなってしまっていた。
「セス。ティユは大丈夫そうか?」
「はい、トーリ様。ティユは、狩りが趣味という訳ではありません。今はウサギ耳獣人から料理を教わっているそうです」
「そうか。オレがティユの行動を制限してしまっていたのなら、申し訳ないと思ったのだが」
「トーリ様。全く問題なく、内部の生命体は生活を営めております」
「そうか。それなら良かった」
セスの言葉を聞いて、オレは安堵する。
風の精霊から情報を得ているセスなので、仮に村人たちの不満が聞こえたならばオレに教えてくれる筈だ。
生活に支障が起きていないのならば、隔離してしまった悪影響はないと判断出来るだろう。
クマ耳獣人の件から後──オレは、何回か村人の治療を行った。
元々奴隷解放時に外傷は治していたのだが、古傷はその対象から外れていたのである。そこにオレの意思は関係なく、対象者が多かった事も原因の一つと推測するが。精霊たちが『傷』と判断しなかった為だろう。
──とまぁ、それはどうでも良い。
実際問題として、諸々と彼等から聞いた話によるオレの認識。獣人たちの獣由来の部位は、己の尊厳というか矜持みたいなものがあるようだ。
そして、それを知ってか知らずか。言う事を聞かない気の強い獣人たちを征服する為、丸耳のヒト族は獣由来の部位をわざと傷付けるようだ。
質が悪い事に、対象の動きを拘束した上で。ゆっくりと。誰が上かを分からせる為だけに。従わせる為だけに。少しずつ削り取る。
獣部位は、他の肉体よりも敏感らしい。それ故。じわじわと刻まれ、見せ付けるように切り落とされる己の肉体。心が折れるようだ。──ホント、くそ。
こんな事実を聞くばかりで、オレは本当に。心底。この世界の人間──丸耳族に嫌悪感と不信感しか抱かない。
実際に歩み寄る気持ちが持てないのは、ただオレがコミュ障だからという理由ではない筈だ。
と、まぁこんな風に村で医術みたいな事を繰り返していれば。自然と村人との距離も近付く。
亜空間的な立ち位置になった村ではあったが。その事に関しては、誰しもが欠片も問題視していない。
気楽に『そうなんだ』で済んだと、ダヴィスが言ってた。
ともあれ、今は村人用の医院──というか、薬屋に来ている。
「それにしても、トーリ様はやはり素晴らしいです。我々、蜥蜴族は嗅覚で薬草を判別するのですが。精霊から教えて頂いたというこれらの薬草は、これまで使った事のあるどれよりも効能が優れています」
というのは、現在村で薬師として医療も受け持っている爬虫類人。その妻である爬虫類人も、薬師兼医師助手をしている。
彼らはひやつるな肌の持ち主だ。全身を鱗が覆っていて、一見固そうである。しかしながら実際には固いながらも弾力があって、鍛え上げられた筋肉のように艶がある。汗ばむ事がない為に、夏でも心地好さそうだ。
だがベタベタと触るのは失礼なので、オレは軽いボディータッチ程度にしている。──他のもふもふたちに対しても同じだがな。
本心ではもふりたい。だが、相手は獣部位があろうともヒトである。
自分が他者に。仮に手であっても、好き勝手に触られると思うと気分が悪いのだ。それが尊厳やら矜持やらを持っているという部分であれば、冗談ではないだろう。
大丈夫。オレにはセスがいる。
自然とセスのさらつるな毛皮を撫でても、彼は心地好いとまで言ってくれるのだ。──うん。浮気はすまい。
「薬草の管理は精霊がされていると伺いました」
「そうだ。生育などの問題があれば聞く」
「問題など、全くもってありません。ここの住人は病すら滅多に罹患しないので、使う薬も多少の擦過傷や切り傷程度ですからね」
にこやかなノコクスだ。
確かに医師にとっては、患者が少ない方が喜ばしいだろう。実際にこの村では、精霊が多く漂っているからか。ヒトは勿論、動植物が非常に健康的なのだ。
オレが森で採取した薬草類も、村の中で精霊が栽培してくれている。
本当に衣食住が全てこの空間の中で事足りる為、外界との接触を完全に断ってしまっても数年単位で生活が可能だ。オレの魔力があれば、精霊たちは自然界を補えるらしい。
「今では薬として外へ卸す程です。どうしても、外の商品を買うには金銭が必要ですからね」
「分かった。何か不足があれば言ってほしい」
「かしこまりました。いつもありがとうございます、トーリ様」
そうして何度も頭を下げるノコクスとカアナに別れを告げ、オレは自宅へと戻る。
実際に魔力は足りているようで。それは周囲の精霊たちを見れば分かる。いつもながら嬉しそうに、楽しそうにオレの周囲を漂う姿は見るだけでこちらも気分が高揚する程だ。
そういえば──今までは、普通に世界の一部だったこの場所。
森の外から野獣は入って来ていたし、少し深く森へ行けば魔物だっていた。でも、今は外界から隔離されている。
森へ狩りに行っていたティユは、当然これまでの行動の自由がなくなってしまっていた。
「セス。ティユは大丈夫そうか?」
「はい、トーリ様。ティユは、狩りが趣味という訳ではありません。今はウサギ耳獣人から料理を教わっているそうです」
「そうか。オレがティユの行動を制限してしまっていたのなら、申し訳ないと思ったのだが」
「トーリ様。全く問題なく、内部の生命体は生活を営めております」
「そうか。それなら良かった」
セスの言葉を聞いて、オレは安堵する。
風の精霊から情報を得ているセスなので、仮に村人たちの不満が聞こえたならばオレに教えてくれる筈だ。
生活に支障が起きていないのならば、隔離してしまった悪影響はないと判断出来るだろう。
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