SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

文字の大きさ
41 / 53
5.自然と仲良し過ぎて一つの村みたいになってた

5-5

しおりを挟む
◆ ◆ ◆ ◆ ◆sideソロ

「ハッハッハ」
「……どうなされたのですか、お祖父様」

 リドツォルの屋敷、ヴォストの執務室。
 そこでワシが急に声をあげて笑い出したものだから、部屋のあるじであるヴォストまごから怪訝そうな声が掛けられた。
 だが、笑わずにいられるものか。

 イタチの精霊様を肩に乗せた、小柄な少年を思い浮かべる。彼は出会いからして目を引く存在で。
 七色の精霊に好かれるの少年、トーリ。口数が少なく、表情もあまり変えない彼。しかしながらその黒曜石の瞳は、トーリの心をこれでもかと映し出していた。

「トーリが安住の地を得たようだの」
「っ?!」

 ワシがトーリの名を出せば、面白いように感情を表に出すヴォスト。
 本来この孫は冷徹で。仲間と認めた部下には懐の深いところを見せるが、それ以外に対しては──火魔法を使う癖に、氷のような性格だった筈。

「……そう、ですか」
「あぁ。既に多くの慕う者がそばにいるようだの」
「………………そばに」

 トーリが独りではないのだと告げれば、明らかに気落ちしたような呟きが聞こえた。
 だが、此度こたびはヴォストに非がある。距離感を誤ったのは愚孫。
 あれ程に精霊に好かれる者であれば、何処でも生きていける。言うなれば、このように小さな町では息苦しいだろう。
 それを見誤り、の者を手中に納めようとしたヴォスト。リドツォルの保安騎士団など、竜を溜め池に留めようとするも同義。

 竜などとは、いかにも伝説上の生物──存在すれども、その姿を目にして生きている者はいない──だが。トーリもまた、七色の精霊を纏う者。伝説上の生物と肩を並べよう彼は、我々のような凡人の思考は持つまい。
 金も──地位も権力も、彼には不要だろうて。実際にツェシェルアの徽章ブローチを押し付けた時も、迷惑そうだったからな。

「では、ワシも手紙を書きに自室に戻ろうかの」
「………………はい」

 ワシは生気が抜けたようなヴォストを執務室に残し、退室する。
 ヴォストの迷子のような気配は、爵位を継いだ頃ぶりかの。伯爵位とはいえ、あの時は二十をわずかばかり過ぎた若者。取り回すには、少しばかり荷が重かったかもしれぬが。

 それはそうと。
 手紙のやり取りをする為にトーリから使わされた大型の鳥類は、幼子くらいならば連れ帰れそうな立派なものだ。幾度か野菜なども配達してくれた事があるが、中には見た事もないようなものもあった。
 おそらくトーリは、こことは異なる離れた土地にいるのであろう。野菜の鮮度が非常に良いのは、彼の能力であるとしか思えない。──いや。存外近いのか?
 あの大型の鳥類であれば、かなりの距離を飛べそうな気もするが。

 ※ ※ ※ ※ ※

 ソロに手紙を送り、オレはセスとクマ耳獣人ダヴィスの家に来ていた。
 彼は物知りで温和なので、村人の纏め役をしてもらっている。皆の意見を取り纏めてオレに話してくれるので、とても助かっているのだ。──それでも個々に相談しに来る事はなくならないので、コミュ障のオレは都度神経をり減らしている。

「……って感じだ。それでも、基本的にはこれまでと変わらない」
「そ、そのような事が……。さすがは精霊に好かれたトーリ様。この村が安全に保たれるのであれば、異空間だろうが異世界だろうが構わないです」
「……そうか」
「はい。いつもながら、我々の事を気に掛けて頂いてありがとうございます」

 一応の状況説明はしたが、オレの不器用な言葉で理解されたのか不明だ。
 だがどうであれ、嫌であればここから出ていってもらうだけ。オレの事が好むと好まざるは関係なく、内部でゴタゴタしなければ良いのだ。

 ダヴィスはオレの説明に終始感動しているといった言葉を続け、最終的にいつものように感謝を返してくる。
 村の獣人たちもふもふを助けたのはオレだが、ずっとその謝意きもちを持ち続けられる意味が分からない。それ程に、過去が酷い扱いだったのだろうと推察するだけだ。

「村人に告げるかは任せる」
「かしこまりました。恐らく、外部の者以外は気にもしないと思われますが。皆、トーリ様に感謝しかないのですから」

 にこやかにダヴィスが続ける。
 その彼の右耳が欠けているのは、前の酷い主人のせいだと聞いた。可愛い丸耳が、片方だけ半円になってしまっている。

「……その耳、少し触っても良いか?」
「え?……あぁ、勿論です。どうぞ」

 一瞬驚いた様子を見せたが、すぐにダヴィスはオレに頭を向けて差し出した。
 こうも無防備で大丈夫かと思ったが、それ程にオレを信頼してくれているのだろう。

 オレはその掌サイズの丸いふわふわに、そっとれた。固い毛質なのかと思っていたが、意外ともふっと指が沈む。
 断面は毛がないのが余計に残念で、失われたもふもふを思い浮かべた。──すると、周囲から黄色の精霊たちが集まってくる。
 黄色は光の精霊。そうして治療を得意とするこの小さきものたちが離れると──どうしてか、丸いクマ耳に戻っていた。

「……お………………俺の……耳、が……」

 オレは内心、『あ、治った』くらいだったが。
 ダヴィスは滂沱ぼうだの涙を流していた。それはもう、喋れない程の興奮状態で。
 子供がいてもおかしくないくらいの年齢の男が、それこそダバーッと感涙だったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...