SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

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5.自然と仲良し過ぎて一つの村みたいになってた

5-4

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 ※ ※ ※ ※ ※

 風の月ペーロス──花咲くルトになれば、自然と緑が色濃くなっていく。
 この村も例外ではなく、本当に目に鮮やかな季節だ。

「トーリ様ぁ、生まれた~」
「おぉ、やったなぁ」

 暖かくなった事もあり、今は出産ラッシュだ。中でも、羊的動物キナンクエルの子供が凄い。
 朝から出産を見学に行っていたティユが、満面の笑顔で駆け戻ってきた。

 元々群れで行動する動物だからか、柵を建てて集団で飼育が可能だ。乳も肉も食用に向いていて、柔らかい皮まで紙の替わりや装飾品の加工に最適。
 大きさは牛程だから、村の中で様々な役に立ってる。草食で性質は大人しいし、乳を出し子供を育てる為に管理が容易だった。
 体毛は黒く短い。肉は臭みが少なく、乳はさっぱりしている為に飲みやすい。良いとこづくしだ。

「そろそろ、今の放牧場も手狭になってきたな」
「はい、トーリ様。しかしながら、この森の中では拡張する限界があります」
「そうだよなぁ、う~ん……。地下?いや、太陽がないと生き物はダメだよなぁ。……なら、空?いやいや、まさかなぁ」

 オレの脳内で、思い切り漫画ちっくな想像が繰り広げられる。
 だがここは現実なのだ。何処までが許容範囲なのか、この世界の常識がないオレでは判別がつかない。

「トーリ様。でしたら、空間をねじ曲げて拡げますか?」
「亜空間のように?」
「はい、トーリ様。さすがにセスの矮小な身では不可能ですが、トーリ様の膨大な魔力があれば容易かと愚考致します」

 何だか物凄い提案を受けてしまった。そんな気がする。
 ふむ。考えよう。同じ面積の空間を、それ以上の質量へ変える。──脳内で箱を作り、蓋を開けた。本来ならばその中身は、外から見えるサイズであるべき。だが、中は無限に拡がる。
 そうであるならば、とりあえず本来の外界との接点が一つでないとならないな。空間を切り雛して、別次元を繋げる感じ。
 そうすれば外的要因で悪影響を受ける事もなくなって、今よりも断然守護がしやすい。

 オレの想像で無限に膨らむ。
 村の入り口に門を作り、外界からはそれなりの──今のサイズで状態を見えるように柵で仕切る。柵を越して侵入は当然出来ないように、透明な壁で完全なる拒絶。勿論、空からも地中からも侵入不可だ。そも、そこに存在していないのだから。
 唯一の入り口は門で。これは大きめの丸太を組んで、馬車が通過出来るサイズだな。
 門の通過時に、結界を抜けるに値する存在かチェックして。はぶくのは、悪意や害意がある存在。爆発物や毒などの危険物も不可。そんなの、オレの村に不要だ。
 ここは城でも砦でもないから、戦闘要員なんていない。そも不要だし、村民に危ない事はさせられないからな。

 無茶苦茶妄想して楽しんでいたオレは、不意に現実に戻ってきた。
 自宅の中。目の前にカフェオレと軽食の乗ったテーブルと、椅子にくつろぐオレの前にいる白イタチのセス。

「あ……こんなんはどうだろ、セス」
「はい、トーリ様。大変素晴らしいお考えです。既に想いを受け、精霊たちが行動しております」
「え?」

 会話の途中であった筈だったので、オレは今までの想像をセスに話すべく口を開いた。だがしかし、返ってきたのは想定外の事実。
 考えよう。『既に』と、セスは言った。つまりは事後、だな。──え?オレが妄想している間に、それが現実に起こってるって事だよな?

「……見に行って良いか?」
「勿論でございます、トーリ様」

 半信半疑なオレは、セスの案内で村の入り口に足を運んだ。
 結果、凄いとしか言えない。

 まさにオレの想像を形にした門構えが出来ていて、空間の壁もそのまま。外からは石を投げたって弾かれる。
 試しに門に魔法を放ってみたが、到達する前にスンと力が霧散した。最強じゃね?

「凄いな、セス」
「いいえ、トーリ様。これは全てトーリ様の御力であり、セスは些細なお手伝いをしただけです。それにこの方式であれば、完全に外界と切り離す事も可能。仮に侵略者がいたとしても、立ち入る事すら叶わないでしょう」
「おぉう……」

 妄想が凄い結果になったと、オレは少し遠い目をする。──マジでこれ、平凡な生活が出来る人間技でない事は確かだ。
 同じように村の内部も確認して廻る。
 中での村人はいつものように、にこやかに穏やかに生活している。外界の変化に気付いていないようで、外と区切られた違和感も何もないようだった。

 そしてこれまでの村の端。今までは普通に森と繋がっていた場所だが、ここも見た目は変わらない。
 でもオレには分かる。土があって木があって、当然のようにれる事が出来るけど。拡げられる。
 何言ってるのかと思うかもしれないけど、文字通り。くに~って、思うがままに拡げられるのだ。──うん。深くは考えまい。

 オレはソロに報告だけしておこうと、セスと共に自宅へ帰る事にする。
 この森の正確な位置すらオレは把握していないが、徒歩一週間デイア程でソロのいるリドツォルに到着した筈だ。つまりはその領主か近隣の領主の土地である事は想像つく訳で。
 土地の不法占有とか、前世で考えたら罪なのではないだろうか。
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