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6.ここが魔の森だって知らなかった
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※ ※ ※ ※ ※
窓際で休憩中。不意に顔を上げたセス。
窓の外へ視線を向けているものの、ここではない何処かを見ている様子が気になって声を掛ける。
「どうした、セス」
「いえ。申し訳ございません、トーリ様。ただ今、魔の森でヒト族の生命反応が消えました」
「……獣人か?」
「いいえ、丸耳族です」
「それなら良い。奥へ入り込んで黒竜に見つかったんだろ」
「そのようです」
現在の村は魔の森と接していない。それでも捜索隊の情報を少しでも知りたくて、セスに状況が分かるようにしてもらっていた。
その方法までは聞いていないけど、セスの事だから上手く処理しているのだろう。先程もそうだったが、時折森の様子を教えてくれるのだ。
ちなみにオレは、黒竜と出会った事がない。セスからそう聞いているだけだ。
A級冒険者では歯が立たないようで、S級冒険者でも単独では勝てないだろうとの事。
そも自国内に片手の数もいないらしいS級冒険者を、そんな強大な魔物にぶつける訳にもいかない。不用意に森の奥へ立ち入らなければ襲って来ないとの事で、広大な森はやむを得ず殆どが手付かずにされているとか。
初めはそんな事を知らずにこの場で集落を築いたオレだったが、結果的に大きな護りがあった訳だ。
実際はオレの味方でなくとも、第三勢力があるだけで違う。──さすがに一国と戦争するつもりなんてないからな。
それはそうとて。捜索隊だか討伐隊だか不明な者達の侵入。
名目は冒険者達の痕跡を見つける事らしいが。仮に、逃げたと言われる獣人を発見したらどうするつもりなのかが怖い。隷属の首輪があるのだから、普通ならば脱走は不可能と判断されるだろう。あれは自分の意思では外せないのだ。
事実、能力ある者が。闇の精霊から力を借りて、精神系魔法で隷属させる魔道具。解除するのはまた別で。光の精霊から力を借りて、解除系魔法を行使しなければならないのだ。
それでも、隷属していた獣人を発見した最悪の場合。奴隷として扱っていたのだから、と。逃走扱いをされ、刑罰を受けそうである。──まぁそんな事、オレがさせないがな。
セスからの情報によれば、ギルドからの冒険者達は少数のパーティーを組んで森に入っているらしい。場所が見晴らしの悪い森だからか、大人数では逆に魔物に襲われやすいとの判断だろう。
ローラー作戦よろしく、一定の区画に区切って森に入っていったらしい。
だが、そも獣道すら曖昧なものだ。森の外周辺りは普段からヒトの出入りがあるが、少し奥に入れば日差しすら怪しい。
森はまるで意思を持っているかのように、外部からの侵入を阻もうとする。
方向感覚が狂い、己の足が向かう行方が分からない。それでも周囲が見渡せない為、確かめようもない。周りは当然のように同じような木々ばかりで、更には大地に高低がないので方角を見失う。
とまぁ、オレからしたら普段通りなのだ。──『方向音痴』というな。
歩いていたら着く、と思うが。何故か目的地が見えてこない。全く反対方向へ進んでいたなんて事もあり、何処で空間がねじ曲がっていたのかと不思議に思うのだ。
そも今ですら。セスのナビがなければ、オレはこの村の中でも目的地に着けない。自由に行き来するティユが羨ましいくらいだ。
自分では真っ直ぐ進んでいるつもりなのに、何故か違う場所に到達する。『この道を真っ直ぐ』なんて言葉は、結果的にオレは通用しない。否、適用されないのだ。──ホント不思議。
※ ※ ※ ※ ※
相変わらず、村の中は平和一色。
精霊たちのおかげで、外部と繋がっていなくても水は涌き出る。土の栄養も充分。当然のように日差しもあって、ちゃんと時間によって擬似太陽の位置も変わる。
一日の流れは外界と同じにしてくれているようで、村民や家畜用生物の体調を考慮してくれているようだ。
夜になれば月を模したものも上空を移動する為、はっきり言ってこれまでと全く違いがない。
「トーリ様ぁ。あたし、狩りがしたいのぉ」
「狩り、か。……奥に小さな森を作って、小動物を放すか」
「本当に~?ありがとうっ、トーリ様っ」
「ただし。村には侵入出来ないようにする。作物や飼育している生物に影響があってはならない」
「うんっ。あたしは兎的動物がいれば良い~」
「半日程御待ち頂ければ、十数種の生命体を確保出来ます」
「頼んだ、セス」
擬似森を生成する為、それなりの生態系を確保する必要がある。単独の食物連鎖が出来るようにだ。
ティユの言葉にオレは簡単に首肯するだけだが、それを実現する為の労力はセス任せだ。勿論オレの創造が必需品ではあるが、ざっくりとしたそれを完璧に補ってくれるセスがいてこその力業。
精霊たちはそんなセスをサポートしてくれて、その何処が欠けてもオレの世界は崩壊する。
最近の村では。衣食住の心配が無くなった為か、村民の中で娯楽を追求する者たちが出てきた。
ある者は麦から酒を作り出し。甘味や単純ではあるものの、玩具まで目にするようになったのだ。
窓際で休憩中。不意に顔を上げたセス。
窓の外へ視線を向けているものの、ここではない何処かを見ている様子が気になって声を掛ける。
「どうした、セス」
「いえ。申し訳ございません、トーリ様。ただ今、魔の森でヒト族の生命反応が消えました」
「……獣人か?」
「いいえ、丸耳族です」
「それなら良い。奥へ入り込んで黒竜に見つかったんだろ」
「そのようです」
現在の村は魔の森と接していない。それでも捜索隊の情報を少しでも知りたくて、セスに状況が分かるようにしてもらっていた。
その方法までは聞いていないけど、セスの事だから上手く処理しているのだろう。先程もそうだったが、時折森の様子を教えてくれるのだ。
ちなみにオレは、黒竜と出会った事がない。セスからそう聞いているだけだ。
A級冒険者では歯が立たないようで、S級冒険者でも単独では勝てないだろうとの事。
そも自国内に片手の数もいないらしいS級冒険者を、そんな強大な魔物にぶつける訳にもいかない。不用意に森の奥へ立ち入らなければ襲って来ないとの事で、広大な森はやむを得ず殆どが手付かずにされているとか。
初めはそんな事を知らずにこの場で集落を築いたオレだったが、結果的に大きな護りがあった訳だ。
実際はオレの味方でなくとも、第三勢力があるだけで違う。──さすがに一国と戦争するつもりなんてないからな。
それはそうとて。捜索隊だか討伐隊だか不明な者達の侵入。
名目は冒険者達の痕跡を見つける事らしいが。仮に、逃げたと言われる獣人を発見したらどうするつもりなのかが怖い。隷属の首輪があるのだから、普通ならば脱走は不可能と判断されるだろう。あれは自分の意思では外せないのだ。
事実、能力ある者が。闇の精霊から力を借りて、精神系魔法で隷属させる魔道具。解除するのはまた別で。光の精霊から力を借りて、解除系魔法を行使しなければならないのだ。
それでも、隷属していた獣人を発見した最悪の場合。奴隷として扱っていたのだから、と。逃走扱いをされ、刑罰を受けそうである。──まぁそんな事、オレがさせないがな。
セスからの情報によれば、ギルドからの冒険者達は少数のパーティーを組んで森に入っているらしい。場所が見晴らしの悪い森だからか、大人数では逆に魔物に襲われやすいとの判断だろう。
ローラー作戦よろしく、一定の区画に区切って森に入っていったらしい。
だが、そも獣道すら曖昧なものだ。森の外周辺りは普段からヒトの出入りがあるが、少し奥に入れば日差しすら怪しい。
森はまるで意思を持っているかのように、外部からの侵入を阻もうとする。
方向感覚が狂い、己の足が向かう行方が分からない。それでも周囲が見渡せない為、確かめようもない。周りは当然のように同じような木々ばかりで、更には大地に高低がないので方角を見失う。
とまぁ、オレからしたら普段通りなのだ。──『方向音痴』というな。
歩いていたら着く、と思うが。何故か目的地が見えてこない。全く反対方向へ進んでいたなんて事もあり、何処で空間がねじ曲がっていたのかと不思議に思うのだ。
そも今ですら。セスのナビがなければ、オレはこの村の中でも目的地に着けない。自由に行き来するティユが羨ましいくらいだ。
自分では真っ直ぐ進んでいるつもりなのに、何故か違う場所に到達する。『この道を真っ直ぐ』なんて言葉は、結果的にオレは通用しない。否、適用されないのだ。──ホント不思議。
※ ※ ※ ※ ※
相変わらず、村の中は平和一色。
精霊たちのおかげで、外部と繋がっていなくても水は涌き出る。土の栄養も充分。当然のように日差しもあって、ちゃんと時間によって擬似太陽の位置も変わる。
一日の流れは外界と同じにしてくれているようで、村民や家畜用生物の体調を考慮してくれているようだ。
夜になれば月を模したものも上空を移動する為、はっきり言ってこれまでと全く違いがない。
「トーリ様ぁ。あたし、狩りがしたいのぉ」
「狩り、か。……奥に小さな森を作って、小動物を放すか」
「本当に~?ありがとうっ、トーリ様っ」
「ただし。村には侵入出来ないようにする。作物や飼育している生物に影響があってはならない」
「うんっ。あたしは兎的動物がいれば良い~」
「半日程御待ち頂ければ、十数種の生命体を確保出来ます」
「頼んだ、セス」
擬似森を生成する為、それなりの生態系を確保する必要がある。単独の食物連鎖が出来るようにだ。
ティユの言葉にオレは簡単に首肯するだけだが、それを実現する為の労力はセス任せだ。勿論オレの創造が必需品ではあるが、ざっくりとしたそれを完璧に補ってくれるセスがいてこその力業。
精霊たちはそんなセスをサポートしてくれて、その何処が欠けてもオレの世界は崩壊する。
最近の村では。衣食住の心配が無くなった為か、村民の中で娯楽を追求する者たちが出てきた。
ある者は麦から酒を作り出し。甘味や単純ではあるものの、玩具まで目にするようになったのだ。
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