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7.独立多重種族国家をつくろう
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そんなこんなで一悶着はあったものの、結果的にオレ達の独立は叶った。──裏では精霊の反乱とか言われているようだけど。
別種族とは言えども、言葉が通じる二足歩行の種族に対しての扱い方が見直されたのだ。当然と言えば当然である。逆の扱い方をされたいのか問えば、誰だって返答は同じだからな。
一つ問題なのが──いや、これを問題と言って良いのかはさておき。
オレ的な私情ではあるのだが。
「トーリ様」
「……様は」
「いいえ、なりません。わたしはリドツォルの保安騎士団団長としてここにおります。そしてトーリ様は黒竜国の外交官としてのお立場でございます」
「……はあ……」
最終的に大きな溜め息で終える会話。相手は当然ながら、団長さんとオレね。これ、実は初めてではなく。何度言っても対応を変えてもらえないんだ。
さして仲良くもない。しかも可能ならばオレ的には避けて通りたい、何だか嫌煙したい人物の代表格が団長さんである。
しかしながら、必ず警護担当者としてやって来るのだ。
オレが黒竜国の外に出るのは、獣人達の受け入れの時だけ。──それも、森の入り口近くに造られた対話用建造物。その名を交渉館という。
ここで発見された獣人の受け渡し交渉がされる。大抵傷付いたぼろぼろの状態のまま連れてこられて、受け渡す側は横暴さを隠そうとしない冒険者。
それに直接対峙するオレには当然のように、肩に乗るセスが周囲へ睨みを聞かせている。更に言えば、黒竜が亜空間を通じて監視していた。
どうやら、丸耳族がオレを拉致しないか危惧しているらしい。端々から獣人達の、丸耳族に対する信頼感の無さがありありと見える対応だな。
そして始まる交渉だが。冒険者達は、当たり前のように獣人を渡す事へ対して対価を要求してくる。
内容はこれまで管理してきた期間中の必要経費──という名目の謝礼金だな。最低限とは言えども衣食住の費用は掛かるだろうから、理解は出来る。けれども納得はいかない。そっちがそうくるなら、こちらは慰謝料請求をするまでだ。
獣人達の肉体の状態を診た上で、心神喪失状態を加味して金額を算出する。
当然のように診断は公正を期して、獣人側と丸耳族側の双方の医師が立ち合う。結果はいつも同じだが。
冒険者達は自らが隷属させている獣人に対して、まともに治療など受けさせない。使い捨ての道具以下の扱いは、医師でなくとと見たらすぐに分かる程に。そうして冒険者側の請求額の、三倍から十倍の慰謝料請求となるのだ。
結果的に殆ど身ぐるみ剥がされるような形で全てを奪われる冒険者が続出し、見かねたソロじいさんが伯爵領内で農作業手伝いとして従事する事を条件に半数以上雇用してくれていた。
冒険者は自分の装備品に金が掛かるので、身ぐるみ剥がされると冒険にも出られないのである。そこそこ金になる魔獣は、攻撃も防御も向上させないと対峙すら不可能だからな。
まぁオレからしてみれば自業自得であり、同情する余地もない。
稀に抵抗しようとする冒険者もいるけど、そこはしっかりと団長さんがしめてくれているようだ。
「トーリ様、今回は四名の獣人達が国内へ送還される形になりました」
「あぁ、もふもふが可愛そうだったな。オレが後できっちり回復させてやる」
『トーリ。獣人族は転移させておいたぞ』
「ありがとう、黒竜。いつも助かる」
『良い。我も対価として食糧を受け取っているからな』
「ふふっ、それでもオレの方が貰いすぎだよ」
『その心意気が良いなぁ、トーリは』
ほのぼのとした黒竜との会話。
すぐ後にオレが獣人達を癒しに行くんだけどね。
冒険者達との交渉が終わり次第、オレはすぐさま踵を返す。団長さんが何か言いたげに口ぱくしているのなんて、見えない。気付かない。
何度かソロじいさんが食事をと、ツェシェルア家に誘いを掛けてくれる。だが、完全拒否。他の獣人達が心配するって理由もあるけど、オレ的には団長さんとこれ以上顔を合わせたくない。
顔を合わせる度に何か言いたげで、でも何も言わない。気持ち悪いにも程があるだろ。
オレはセスと離れる気なんて欠片もないから、団長さんがどんな交渉を持ち掛けてきても拒絶一択。でもでも、もしもセスが気に入る条件があったらどうする?
怖いなんてものじゃないだろ、そんなの。
※ ※ ※ ※ ※
もう何年も、そんな感じで獣人達を匿っている。
最近では漸くといった様子ではあるが、獣人への対応が和らいできていた。
丸耳族と仲良く冒険に出ていく獣人もいる。彼等が持つ腕力や俊敏さを買われ、対等な関係を築きつつあるようだ。
魔法や精霊が全てではないのだと、少しずつではあるが広まってきていた。
「トーリ様。もふアラームです」
「分かった、すぐに行く」
精霊に頼んで、争い事への警報を鳴らして貰っている。
多種族が生活する黒竜国では、人工が増えてからというもの、種族の違いからの争い事が度々勃発する。これへの対処もオレの仕事だ。
基本的に双方の話を聞いて、それを解消する。
大概つまらないいざこざなので、考え方の違いがあるのだと納得して貰っていた。
後からセスと精霊がアフターケアをしているようなので、皆がちゃんと理解してくれてとても助かっているぞ。
このままオレの魔力がある限り、ほんわかと生きていければ良いな。
別種族とは言えども、言葉が通じる二足歩行の種族に対しての扱い方が見直されたのだ。当然と言えば当然である。逆の扱い方をされたいのか問えば、誰だって返答は同じだからな。
一つ問題なのが──いや、これを問題と言って良いのかはさておき。
オレ的な私情ではあるのだが。
「トーリ様」
「……様は」
「いいえ、なりません。わたしはリドツォルの保安騎士団団長としてここにおります。そしてトーリ様は黒竜国の外交官としてのお立場でございます」
「……はあ……」
最終的に大きな溜め息で終える会話。相手は当然ながら、団長さんとオレね。これ、実は初めてではなく。何度言っても対応を変えてもらえないんだ。
さして仲良くもない。しかも可能ならばオレ的には避けて通りたい、何だか嫌煙したい人物の代表格が団長さんである。
しかしながら、必ず警護担当者としてやって来るのだ。
オレが黒竜国の外に出るのは、獣人達の受け入れの時だけ。──それも、森の入り口近くに造られた対話用建造物。その名を交渉館という。
ここで発見された獣人の受け渡し交渉がされる。大抵傷付いたぼろぼろの状態のまま連れてこられて、受け渡す側は横暴さを隠そうとしない冒険者。
それに直接対峙するオレには当然のように、肩に乗るセスが周囲へ睨みを聞かせている。更に言えば、黒竜が亜空間を通じて監視していた。
どうやら、丸耳族がオレを拉致しないか危惧しているらしい。端々から獣人達の、丸耳族に対する信頼感の無さがありありと見える対応だな。
そして始まる交渉だが。冒険者達は、当たり前のように獣人を渡す事へ対して対価を要求してくる。
内容はこれまで管理してきた期間中の必要経費──という名目の謝礼金だな。最低限とは言えども衣食住の費用は掛かるだろうから、理解は出来る。けれども納得はいかない。そっちがそうくるなら、こちらは慰謝料請求をするまでだ。
獣人達の肉体の状態を診た上で、心神喪失状態を加味して金額を算出する。
当然のように診断は公正を期して、獣人側と丸耳族側の双方の医師が立ち合う。結果はいつも同じだが。
冒険者達は自らが隷属させている獣人に対して、まともに治療など受けさせない。使い捨ての道具以下の扱いは、医師でなくとと見たらすぐに分かる程に。そうして冒険者側の請求額の、三倍から十倍の慰謝料請求となるのだ。
結果的に殆ど身ぐるみ剥がされるような形で全てを奪われる冒険者が続出し、見かねたソロじいさんが伯爵領内で農作業手伝いとして従事する事を条件に半数以上雇用してくれていた。
冒険者は自分の装備品に金が掛かるので、身ぐるみ剥がされると冒険にも出られないのである。そこそこ金になる魔獣は、攻撃も防御も向上させないと対峙すら不可能だからな。
まぁオレからしてみれば自業自得であり、同情する余地もない。
稀に抵抗しようとする冒険者もいるけど、そこはしっかりと団長さんがしめてくれているようだ。
「トーリ様、今回は四名の獣人達が国内へ送還される形になりました」
「あぁ、もふもふが可愛そうだったな。オレが後できっちり回復させてやる」
『トーリ。獣人族は転移させておいたぞ』
「ありがとう、黒竜。いつも助かる」
『良い。我も対価として食糧を受け取っているからな』
「ふふっ、それでもオレの方が貰いすぎだよ」
『その心意気が良いなぁ、トーリは』
ほのぼのとした黒竜との会話。
すぐ後にオレが獣人達を癒しに行くんだけどね。
冒険者達との交渉が終わり次第、オレはすぐさま踵を返す。団長さんが何か言いたげに口ぱくしているのなんて、見えない。気付かない。
何度かソロじいさんが食事をと、ツェシェルア家に誘いを掛けてくれる。だが、完全拒否。他の獣人達が心配するって理由もあるけど、オレ的には団長さんとこれ以上顔を合わせたくない。
顔を合わせる度に何か言いたげで、でも何も言わない。気持ち悪いにも程があるだろ。
オレはセスと離れる気なんて欠片もないから、団長さんがどんな交渉を持ち掛けてきても拒絶一択。でもでも、もしもセスが気に入る条件があったらどうする?
怖いなんてものじゃないだろ、そんなの。
※ ※ ※ ※ ※
もう何年も、そんな感じで獣人達を匿っている。
最近では漸くといった様子ではあるが、獣人への対応が和らいできていた。
丸耳族と仲良く冒険に出ていく獣人もいる。彼等が持つ腕力や俊敏さを買われ、対等な関係を築きつつあるようだ。
魔法や精霊が全てではないのだと、少しずつではあるが広まってきていた。
「トーリ様。もふアラームです」
「分かった、すぐに行く」
精霊に頼んで、争い事への警報を鳴らして貰っている。
多種族が生活する黒竜国では、人工が増えてからというもの、種族の違いからの争い事が度々勃発する。これへの対処もオレの仕事だ。
基本的に双方の話を聞いて、それを解消する。
大概つまらないいざこざなので、考え方の違いがあるのだと納得して貰っていた。
後からセスと精霊がアフターケアをしているようなので、皆がちゃんと理解してくれてとても助かっているぞ。
このままオレの魔力がある限り、ほんわかと生きていければ良いな。
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