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1509 俺の必殺
「ぐっ、あ、あいつ・・・」
レイマート・ハイランドはゆっくりと体を起こすと、ミゼルとクリチコの戦いに目を向けた。
火柱の直撃を受けたダメージは大きかった。だがリカルドが飲ませた回復薬によって、多少火傷も癒え、自力で立てるくらいには力が戻った。
「レイジェスの、黒魔法使い・・・ミゼルだったな」
驚いた・・・・・
レイマートは目を見張った。
なぜならレイジェスの黒魔法使いが、クリチコを相手に、互角の戦いを繰り広げていたからだ。
ミゼルの事を軽んじているわけではないが、今のクリチコは凄まじい力を持っている。
火の精霊をその身の宿し、炎の化身と化したクリチコは、辺り一帯を焼き尽くす勢いで炎を飛ばしていた。その一発一発が上級魔法に匹敵する火力を持っており、まともに食らえば骨まで焼き尽くされるだろう。それほどの驚異的な力を振るっているのだ。
しかしミゼルはそのクリチコと、真向から戦っていた。
上級魔法に匹敵する火の玉を、風魔法でいなし、そして迎撃しているのだ。
連続して撃たれるあの巨大な火の玉に対して、それができる者が果たしてどれだけいるだろうか?
並大抵の技量ではない。
「だが・・・」
あの男、クリチコの力の源は火の精霊だ。自然界の主である精霊の力は無尽蔵、底が無い。
対してミゼルの魔力は有限だ。かなりの魔力量を有しているようだが、精霊には比べられるはずがない。いずれは力尽きる時がくる。
お前が勝つためには、その魔力が底をつく前に精霊の火を破れる一撃をくらわすしかないんだぞ。
「・・・しつこい男だな」
クリチコは苛立ちに頬を引くつかせた。
目の前の男が想像以上に粘るからだ。実力がある事は認めていた、しかし精霊の火は一発一発が上級魔法に匹敵する威力を持っている。それを何発も何十発もぶつけているのに、この黒魔法使いは全て受けきっているのだ。
上級魔法を相殺するには、当然上級魔法をぶつける必要がある。受け流すにしても、それ相応の魔力が必要になる。並の魔法使いなら数発程度が関の山だろう。だがレイジェスの黒魔法使いミゼルは、すでに数十発分の魔力を放出している。これはクリチコの想定をはるかに超える魔力量だった。
「そこだっ!」
「っ!?」
驚異的な粘りを見せるミゼルに苛立ち、クリチコの意識が散漫になったその時、ミゼルの風魔法がクリチコの精霊の火を貫いた!
上級魔法ではない、それは風を鋭く飛ばしただけの刃だったが、クリチコの左肩を切り裂き血を流させた。
「・・・・・貴様」
「はぁ・・・はぁ・・・へっ、首を切ってやろうと思ったが、この火じゃさすがに難しいな」
際限なく火の玉を撃つクリチコによって、二人の周りは火の海と化していた。
視界が歪む程の炎に、呼吸をする事さえ痛みを覚える空間では、正確に狙いを付けて魔法を撃つ事は困難だった。
「・・・精霊の火を切ってくるとはな、その魔力量といい俺が思っていたよりずっと危険な男のようだ」
「そりゃあ、ありがとよ・・・はぁ、はぁ・・・けど、もう・・・はぁ・・・はぁ・・・今日はこの辺で、止めにしない?」
頬を伝う汗が流れ落ち、砂に吸い込まれていった。
両手を膝に着き、大きく息を切らせている、魔力量が常人をはるかに超えるミゼルでも、ここまで精霊の火を防ぎ続けた疲労は隠せない。
「ふざけた事を言うな、精霊の火をここまで防ぐ魔力は大したものだが、それももう限界か?楽にしてやろう」
クリチコはスッと右手を差し向けた。その手の平にはこれまでより一際大きな火の玉が作られる。
「くっ!」
「死ね」
表情を変える事なく低く冷たくそう言い放つと、クリチコはこの戦いを終わらせる一撃を撃った。
それは単純なものだった。だがまさか、この局面でそんな使い古した手を使ってくるとは思いもしなかった。
もう自分には戦う力など残っていないと見せかける、言わゆる死んだふりである。
力の尽きたミゼルに火の玉を食らわせる。それで終わりのはずだった。クリチコにとっては勝利は確定したも同然だった。
しかしクリチコが火の玉を撃ったその瞬間、対峙するボサボサ頭の黒魔法使いは、足元に溜めていた風を爆発させて飛び出したのだ!
「ッ!?」
クリチコの撃った火の玉は巨大だが、ただ真っ直ぐ撃たれただけで軌道など一目で見抜ける。
ミゼルは火の玉をかいくぐり、一気にクリチコの懐にまで入り込んだのだ!
なに!?こいつ!まだこんな力を残していたのか!疲労紺倍に見えたのは俺を油断させるため、単調な一発を撃たせたところで接近する目論見だったのか!
小癪な真似をする!だが、残念だったな?さっき風の刃で俺の肩を切った事で、自分の魔力なら精霊の火を突破できると考えたのだろう?黒魔法使いの貴様があえて接近してきたという事は、使う魔法は風の中級魔法サイクロン・プレッシャーしかない。上級魔法と遜色ない破壊力を持つその魔法なら、俺を仕留める事ができると思ったか?
馬鹿め!すでに火力は上げている!俺から立ち昇る炎は、さっきまでの数倍の密度となって俺の体を護っているのだ!俺自身の体にかかる負担も大きいが、もはやこの火は誰にも超える事のできない壁だ!貴様が俺にサイクロン・プレッシャーをぶつけたその時、貴様は精霊の火によって一瞬にして焼き尽くされるのだ!
やれるものならやってみろ!
黒魔法使いが接近戦を挑むならば、サイクロン・プレッシャーしかない。
とでも思ってんだろ?
ばーか!読まれてる事くらい百も承知なんだよ!ここで素直にソレでいくと思うか?
てめぇのパワーが一気に上がった事くらい、見れば分かるんだよ!
なんだよその火?熱波だけで黒焦げにされそうだ。そんなやべぇ火力にうっかり触れようものなら、一瞬で焼き殺されんのがオチだろ?俺がそれに触ると思うか?
俺の必殺は他にあるんだよ。
それほどの火力だ、おそらくてめぇに氷魔法は通用しねぇ。
普通に考えれば氷魔法が一番だろうが、竜氷縛が届く前に溶かされちまう。
火魔法も爆発も論外だ。かろうじて風魔法は届かせられるだろうが、もうその火の装甲を突破できるとは思えない。だったらどうする?
氷と風を合わせればいい!
クリチコの懐に入り込んだミゼルは、右手に風を、左手には氷を、二つの魔力を作り出し、そして重ねて融合させた。
「なにッ!?」
その異様な魔力に気づいた時にはもう遅かった。
サイクロン・プレッシャーが来ると見こし、待ちで構えていたクリチコには、躱す事は不可能。
「店長直伝の合成魔法だ。くらえ」
無数の鋭い氷、そして強く激しく渦巻く風がクリチコを貫いた。
レイマート・ハイランドはゆっくりと体を起こすと、ミゼルとクリチコの戦いに目を向けた。
火柱の直撃を受けたダメージは大きかった。だがリカルドが飲ませた回復薬によって、多少火傷も癒え、自力で立てるくらいには力が戻った。
「レイジェスの、黒魔法使い・・・ミゼルだったな」
驚いた・・・・・
レイマートは目を見張った。
なぜならレイジェスの黒魔法使いが、クリチコを相手に、互角の戦いを繰り広げていたからだ。
ミゼルの事を軽んじているわけではないが、今のクリチコは凄まじい力を持っている。
火の精霊をその身の宿し、炎の化身と化したクリチコは、辺り一帯を焼き尽くす勢いで炎を飛ばしていた。その一発一発が上級魔法に匹敵する火力を持っており、まともに食らえば骨まで焼き尽くされるだろう。それほどの驚異的な力を振るっているのだ。
しかしミゼルはそのクリチコと、真向から戦っていた。
上級魔法に匹敵する火の玉を、風魔法でいなし、そして迎撃しているのだ。
連続して撃たれるあの巨大な火の玉に対して、それができる者が果たしてどれだけいるだろうか?
並大抵の技量ではない。
「だが・・・」
あの男、クリチコの力の源は火の精霊だ。自然界の主である精霊の力は無尽蔵、底が無い。
対してミゼルの魔力は有限だ。かなりの魔力量を有しているようだが、精霊には比べられるはずがない。いずれは力尽きる時がくる。
お前が勝つためには、その魔力が底をつく前に精霊の火を破れる一撃をくらわすしかないんだぞ。
「・・・しつこい男だな」
クリチコは苛立ちに頬を引くつかせた。
目の前の男が想像以上に粘るからだ。実力がある事は認めていた、しかし精霊の火は一発一発が上級魔法に匹敵する威力を持っている。それを何発も何十発もぶつけているのに、この黒魔法使いは全て受けきっているのだ。
上級魔法を相殺するには、当然上級魔法をぶつける必要がある。受け流すにしても、それ相応の魔力が必要になる。並の魔法使いなら数発程度が関の山だろう。だがレイジェスの黒魔法使いミゼルは、すでに数十発分の魔力を放出している。これはクリチコの想定をはるかに超える魔力量だった。
「そこだっ!」
「っ!?」
驚異的な粘りを見せるミゼルに苛立ち、クリチコの意識が散漫になったその時、ミゼルの風魔法がクリチコの精霊の火を貫いた!
上級魔法ではない、それは風を鋭く飛ばしただけの刃だったが、クリチコの左肩を切り裂き血を流させた。
「・・・・・貴様」
「はぁ・・・はぁ・・・へっ、首を切ってやろうと思ったが、この火じゃさすがに難しいな」
際限なく火の玉を撃つクリチコによって、二人の周りは火の海と化していた。
視界が歪む程の炎に、呼吸をする事さえ痛みを覚える空間では、正確に狙いを付けて魔法を撃つ事は困難だった。
「・・・精霊の火を切ってくるとはな、その魔力量といい俺が思っていたよりずっと危険な男のようだ」
「そりゃあ、ありがとよ・・・はぁ、はぁ・・・けど、もう・・・はぁ・・・はぁ・・・今日はこの辺で、止めにしない?」
頬を伝う汗が流れ落ち、砂に吸い込まれていった。
両手を膝に着き、大きく息を切らせている、魔力量が常人をはるかに超えるミゼルでも、ここまで精霊の火を防ぎ続けた疲労は隠せない。
「ふざけた事を言うな、精霊の火をここまで防ぐ魔力は大したものだが、それももう限界か?楽にしてやろう」
クリチコはスッと右手を差し向けた。その手の平にはこれまでより一際大きな火の玉が作られる。
「くっ!」
「死ね」
表情を変える事なく低く冷たくそう言い放つと、クリチコはこの戦いを終わらせる一撃を撃った。
それは単純なものだった。だがまさか、この局面でそんな使い古した手を使ってくるとは思いもしなかった。
もう自分には戦う力など残っていないと見せかける、言わゆる死んだふりである。
力の尽きたミゼルに火の玉を食らわせる。それで終わりのはずだった。クリチコにとっては勝利は確定したも同然だった。
しかしクリチコが火の玉を撃ったその瞬間、対峙するボサボサ頭の黒魔法使いは、足元に溜めていた風を爆発させて飛び出したのだ!
「ッ!?」
クリチコの撃った火の玉は巨大だが、ただ真っ直ぐ撃たれただけで軌道など一目で見抜ける。
ミゼルは火の玉をかいくぐり、一気にクリチコの懐にまで入り込んだのだ!
なに!?こいつ!まだこんな力を残していたのか!疲労紺倍に見えたのは俺を油断させるため、単調な一発を撃たせたところで接近する目論見だったのか!
小癪な真似をする!だが、残念だったな?さっき風の刃で俺の肩を切った事で、自分の魔力なら精霊の火を突破できると考えたのだろう?黒魔法使いの貴様があえて接近してきたという事は、使う魔法は風の中級魔法サイクロン・プレッシャーしかない。上級魔法と遜色ない破壊力を持つその魔法なら、俺を仕留める事ができると思ったか?
馬鹿め!すでに火力は上げている!俺から立ち昇る炎は、さっきまでの数倍の密度となって俺の体を護っているのだ!俺自身の体にかかる負担も大きいが、もはやこの火は誰にも超える事のできない壁だ!貴様が俺にサイクロン・プレッシャーをぶつけたその時、貴様は精霊の火によって一瞬にして焼き尽くされるのだ!
やれるものならやってみろ!
黒魔法使いが接近戦を挑むならば、サイクロン・プレッシャーしかない。
とでも思ってんだろ?
ばーか!読まれてる事くらい百も承知なんだよ!ここで素直にソレでいくと思うか?
てめぇのパワーが一気に上がった事くらい、見れば分かるんだよ!
なんだよその火?熱波だけで黒焦げにされそうだ。そんなやべぇ火力にうっかり触れようものなら、一瞬で焼き殺されんのがオチだろ?俺がそれに触ると思うか?
俺の必殺は他にあるんだよ。
それほどの火力だ、おそらくてめぇに氷魔法は通用しねぇ。
普通に考えれば氷魔法が一番だろうが、竜氷縛が届く前に溶かされちまう。
火魔法も爆発も論外だ。かろうじて風魔法は届かせられるだろうが、もうその火の装甲を突破できるとは思えない。だったらどうする?
氷と風を合わせればいい!
クリチコの懐に入り込んだミゼルは、右手に風を、左手には氷を、二つの魔力を作り出し、そして重ねて融合させた。
「なにッ!?」
その異様な魔力に気づいた時にはもう遅かった。
サイクロン・プレッシャーが来ると見こし、待ちで構えていたクリチコには、躱す事は不可能。
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